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ちゅら星(36)
「*◎▲∴と申します。三ツ星旅行をご希望だそうで。」
僕らは唖然として口もきけなかった。
名前はとても発音できそうもないことだけは解った。
「ミンタカ星をご案内いたします。」ヒツジはニコニコしている。
僕らは口を開けたままだ。
「ちょっと悪いけど、ヒツジちゃんでしたっけ。あたしたちさっきちょっとだけ三つ星の話をしただけなのよ。」
「*◎▲∴と申します。」と言ってヒツジはニコニコしている。
「ヒツジちゃんでいいわね!」とユニヴァが念を押した。
「ホシマルサンカクユエニと呼んでくださっても構いませんが・・・。」とヒツジが言うので、ユニヴァは「んじゃ、ホシマルちゃんね!」と付け加えた。
それからホシマルちゃんはソファアからちょっと乗り出して、あごの下で両手を組んだ姿勢をとった。
「丘の上まで行っていらしたのですか?」
走って帰って来た僕らもだいぶ息が落ち着いたので、ソファアに移動した。
クーさんはテーブルの端の水差しを自分の分の水を一杯注いでから僕に回してよこした。
「ってことは、その窓の向こうが三ツ星の何とかいう星ってわけ?」
「はい、ミンタカ星です。」
「その名前、考古学のテキストで聞いたような気がする。」僕はそう思い出して言った。
「ええ、実際あまり名前を付けられたことはありません。何にでも名前を付けたがる種族が付けた名前がミンタカと言うだけです。」
「発音できない名前より無い方がましよね。」ユニヴァが皮肉っぽく言った。
「じゃあホシマルちゃんは、ミンタカ星の旅行会社のツアーガイドってことだね?」とクーさんが聞くと、ホシマルちゃんは待ってましたとばかりにソファアから立ちあがった。
そして僕らはまた窓の外へと踏み出して行った。
「さっき覗かれたと思いますので、丘の向こうは後にしてこちらの方へ行ってみましょう。」
そう言ってホシマルちゃんは、左側に続く平坦な小道を進んで行った。
「あれ、渦巻貝とビスケットの袋持った?」と途中でユニヴァが騒ぎ出したけれど、僕はちゃんと持ってきていた。
ホシマルちゃんはヒツジとはいっても、二足歩行のヒツジなのだ。
少し行くと林の中に入った。
鳥の鳴き声と午後の傾いた木漏れ日の中を、変なヒツジの後について進んで行った。
「気持のいいところね。」ユニヴァが機嫌よく言った。
「ところでこれはどんなツアーなんです?」一番後ろのクーさんから声がした。
「ポータルを開くことになっているはずですが・・・。」少し振り返ったホシマルちゃんが答えた。
「やっ、やっぱり・・・。」小さくユニヴァがつぶやいたのが聞こえた。
林を抜けると雄大な草原が広がった。
僕らは大草原のど真ん中を悠々と進んでいく。
途中のあちこちで家族連れのヒツジが草を食んでいるのを見かけた。
すぐ近くにいた顔の黒いタイプのヒツジの親子にホシマルちゃんが声をかけると、お母さんヒツジは二本足で立ちあがって「今年の牧草はとってもいいできだわ。」とほほ笑んだ。
子ヒツジは不思議そうな四角い瞳で僕らをじっと見つめた。
「ほら、あそこにレンガの門が見えますでしょう。あそこまで行きますからね。」少しへたばってきた僕らを感じてか、ホシマルちゃんが声をかけた。
大草原は沈みかけた夕陽で黄金色に染められて、草を食む羊たちの影が幻想的に長く延びていた。
レンガの門の先は石畳の続く集落になっているようだ。
石畳を進むホシマルちゃんの蹄の足音だけがコッツコツコッツコツと静かに響いた。
道の両脇にはノスタルジーな不ぞろいのレンガを積み上げた家が並び、どの家も手入れの行き届いた草花を飾りつけてあったり、壁に蔦を這わせたりしてある。
中でも一番目を奪われたのは、ピンクのバラを壁中にびっしり這わせてある家だ。
そしてホシマルちゃんはその家の前で止まり、ゴソゴソとお腹の毛の辺りから取り出した鍵でドアを開けた。
「さぁ、どうぞ。」
みずみずしいバラの香りに満たされている。
入ってすぐの部屋は、中央に大きな丸いテーブルがあり、大きなつぼにピンクのバラがどっさり活けてある。それを取り囲むように半円型の深緑のソファアが左右に一つづつ置いてある。奥の壁の方には2階へ続く階段が見えている。
僕らは右側のリビングらしき部屋に通された。
バラの模様のゴブラン織りのソファアに腰かけて、ユニヴァは床に届かない足をブランブランさせていた。
外壁がピンクのバラでびっしり埋め尽くされているばかりか、部屋の中の出窓にもバラの鉢植えがいくつも並んでいるのだ。
外はすっかり暗くなり始めていた。
しばらくしてホシマルちゃんが夕食を用いしてくれた。
緑色のパンとピンク色のスープだった。
お腹がすいていたのか、すぐにユニヴァがスープに取りかかった。
「甘酸っぱくておいしい。」
「イチゴとジャガイモのポタージュです。」ホシマルちゃんはニコニコして僕とクーさんにも勧めた。
思いのほかいけるスープだ。
「ヨモギパン?」いち早くパンにも手をつけたのはユニヴァだ。
「牧草入りの胚芽パンです。」
「そう言えばさっきのヒツジさんが今年の牧草はおいしいって言っていたね。」
クーさんが言うとホシマルちゃんはニコニコして「お代わりもありますよ。」と言った。
その晩僕らは2階の部屋の干し草のベッドで眠りについた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/05/26 12:44】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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