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ちゅら星(1)
1. クーさん
午前中だというのに気温32度。
きょうは誰かの誕生日パーティに行くことになっているので、きのうの夕方拾い集めた貝殻でちょっとしたプレゼントを作っている。
クーさんからのメールでは、誰の誕生日なのかは知らされていなかった。

クーさんと出会ったのは、先月の初め、初夏の海辺だった。
クーさんは、ガラスみたいなブルーの目をした少年のような人で、麦わら帽子をかぶっていた。でもけっこう大人なのだと思う。年齢は訊いたことがないのでわからない。
アイスキャンディーの旗を立てた自転車に乗ってやって来た。
アイスキャンディーを買いに来る子供がクーさんと呼んでいたので、なんとなくクーさんと呼ぶようになったのだが、ニックネームなのかなまえなのかはわからない。
僕はアイスキャンディーを買って、すぐそばのガードレールに腰を掛けて、ぼんやり海を眺めながらそれを齧っていた。
この辺りは海水浴場ではないので、それほどの賑わいではない。
クーさんは、ヒマそうに箱から一本アイスキャンディーを取り出して、僕の傍らに腰を掛けてキャンディーを齧った。
「この箱にいい絵が描けないかなぁ?」クーさんは自転車の荷台に着けた白いアイスキャンディーの箱を指して言った。
僕は時々絵を描く、たいていは晴れた海がメインの絵だ。そしてかなり自己満足な出来栄えの絵である。ただ夏の絵が描きたくなるのだ。
そんな絵をこの白い箱に描いてみてもいいかなと思った。
「海の絵がいいよ。かき氷の旗だって波の柄だからね。」と言ってみた。
クーさんは、目の前の海を指して「あの水平線がいいかもしれないな。」と言った。
「そうだ、この景色を書いてみよう。」
それからアクリル絵の具を持って来た僕は、夕方までかかって、真夏の海をキャンディー箱へ描き写した。
その間に、何本かのアイスキャンディーが売れた。
僕なりの表現のしかたで書いてみたけれど、クーさんはかなり喜んでくれた。
「お礼は必ずするつもりだけど、きょうのところはこれで悪いね。」
そう言ってクーさんは、ブルーのアイスキャンディーを僕に差し出した。
そしてまた、ふたりガードレールに腰掛けてキャンディーを齧った。
夕日に輝く海をバックに、真昼の青い海の絵を眺めた。
クーさんからは、連絡先としてメールアドレスを教えてもらったので、それから海をぶらつく時には、時々連絡を取り合って会うこともあった。
会うたびにクーさんは「この絵を描いてもらってからはよく売れるよ、お礼は必ずするからね。」と思惑ありげに言った。
クーさんがアイスキャンディー屋だけで生計を立てているかどうかはわからない。
僕らは出会っても、目の前の海の話くらいしか話さないことがほとんどだから。
とにかくクーさんからのメールでは、絵のお礼に今晩誰かの誕生日パーティに招待してくれるということで、15:00にあの海岸沿いのガードレールのところで待ち合わせなのだ。
誰かの誕生日パーティが絵のお礼だなんて、なんだか変な話だけれど、プレゼントもなしに誕生日パーティに行くわけにもいかないので、思いついたものがタカラガイで作ったカメなのだ。
なぜなら僕はインターネットで貝細工の店を開いているのだ。
ちょうどいい大きさのガラスビンに砂をひいて、作ったカメをおいてみた。
貝と一緒に拾った流木と珊瑚も飾りに入れて、海水をたっぷり満たした。
ビンのフタを空けたら潮の香りがするはずだ。
ビンの肩に絵の具で「Happy Birthday」と書いた。
みんなはデパートの包み紙に包まったプレゼントを持ってくるのだろうか?
僕は海を切り取ってプレゼントだ。
それからセロファンの袋にビンを入れて、首のところを金色のリボンでキューと縛った。
時計を見ると、もう13:00を回っていた。
昼ごはんを食べながら、着てゆくものを考えようとしたけれど、いったいどんなパーティなのか見当がつかないので、クーさんにメールで訊いてみることにした。
昼ご飯を食べ終わって、シャワーを浴びている間にクーさんからの返信メールが来ていた。
「僕はブルーのスーツに銀の蝶ネクタイと銀色の靴で行くよ。決まりもないしタキシードも必要ないけれど、素敵なジュエリーを忘れずにね。」
あのクーさんからは想像できない派手な装いにかなりビックリした。
さて、僕はと言うと・・・ジュエリー?きらきらのアクセサリーを付けてかなくちゃならないのだろうか?もう一度クーさんからのメールを読み直して、僕は首をかしげた。
しばらくクローゼットを眺めて、もう10年ものになる麻の白いスーツを出してみた。
年季の入ったクシャッと感が結構よかったりする。
それからクリーム色の地に白い透かしのハイビスカス模様が入ったアロハを着た。
それから金のネックレスをしてみたが最悪だ。
銀のブレスレットもやはりすぐ外した。
赤い珊瑚のネックレス、これは店で売るために女の子用に作ったのだけれど、なんだかきょうの僕にはよく似合う。大発見だ!
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【2006/12/24 17:19】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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