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ちゅら星(180)
「オーナーの友達なんですってね・・・。」女の子がコーンにアイスを詰めながら言う。
僕は頷く。
「どうぞ!」女の子がアイスクリームを差し出す。
アイスクリームを受け取った僕らは『深海』に向かう。
カウンターにもたれてくつろいだ様子の旧友がいた。
「やあ!」
旧友は冷蔵庫からボトルを取り出すと、僕らを奥の席に案内した。
「オーナー達が出かけてるんで大忙しだったんだ、今一息ついてたところだよ。」
そしてボトルの冷たいお茶をグラスに注ぐ。
「あのイエローサブマリンでお出かけってこと?」ユニヴァが言う。
「何か発見があったみたいなんだ。」旧友が言う。
「教えてよ!」ユニヴァが旧友に詰め寄る。
「分からないよ。」旧友が素っ気なく言う。
ユニヴァがつまらなそうに引き下がる。
「オーナーが深海から帰ってきたら分かるさ。」旧友が言う。
「いつ戻るの?」ユニヴァが訊く。
「さあ・・・早ければ夕方かな?」そう言って旧友は肩をすくめた。
ユニヴァはソファアにもたれる。
僕らは黄色い潜水艦で出かけたあの3人の帰りを待つことになった。
「彼らが戻ったら『封印された色』について訊きたいんだけどな・・・。」クーさんが言う。
旧友は思いついたように席を立つ。
しばらくすると、人数分のレッドソルティドッグを運んで来た。
「別名を『封印された色』というカクテル。」そう言ってクーさんの前に最初のグラスを置いた。
「赤が封印されたなんて話は、今まで聞いたことがないけどね。」僕が言う。
「ご覧の通り、今日も真っ赤なTシャツ着用してるし!」クーさんが胸を張って言う。
「ところで君はどうしてここの店を手伝うことになったんだっけ?」僕が旧友に訊く。
「元々ここは僕の店なんだ・・・。」旧友が『封印された色』を一口飲んで言う。
「そう言えば古い映画なんかやってるバーだったよね。」僕も昔何度か来た気がする。
「そう、別名『暇すぎるバー』ってヤツ。」
「今でもその名前通用しそうね。」ユニヴァが言う。
旧友がクスっと笑った。
「ある日、あのオーナーが突然入って来て、『ここは何て星だ?』なんて唐突に訊くんだ。
ぼくは見かけた客でもないし、変な人だなと思った。
で、『どこから来たの?』と訊いたんだ。
そしたらオーナーは『海から来た。』って言うんだ。
半漁人がいるって噂を聞いたことがあったからそれかなと思った。
それから『海底のポータルから来たんだ。』と言った。
やっぱりUMA系かと思った。
『予期せぬポータルに引き込まれてここに来た、助けて欲しい・・・。』
それから僕は食事を作って、ここならいつまでいてもいいからと言った。
彼はホッとしたように僕の作ったマカロニスープを食べたよ。
そしてここがレモン星だと分かると、認識のある宇宙域だったらしく更にホッとしたみたいだった。
だけど彼は散り散りになった仲間を探さなきゃならなくて、とりあえず自分の出てきたポータルの近辺を調査したいって言い出したんだ。
それから潜水艦なんかを調達したりしているうちに、この『深海』ができあがったってわけ!」
「君は『深海』のオーナーじゃないの?」僕が訊く。
「まあオーナーでもあるけどね。」
「え?」
「客がみんな彼のことをオーナーって呼ぶからオーナーってことにしてる。」旧友は笑った。
「だけど仲間も見つかったことだし、もう深海探索の必要は無いんじゃない?」ユニヴァが言う。
「だけどほら、レッドソルトとか見つけちゃったから・・・。」クーさんが言う。
「よっぽどの塩好きなのね。」ユニヴァが言ってグラスの縁のレッドソルトをなめる。
「深海に何があるって言うんだろうか・・・。」僕は『封印された色』を飲み干して言う。
ユニヴァは待ち遠しそうに潜水艦の小部屋の方を見た。
「コレで迎えに行ってみる?」ユニヴァが巨大真珠を取り出して言う。
その時ゴンと鈍い音がした。
「お?帰ってきたよ。」旧友が立ち上がった。
小部屋の床に黄色い物体がチラリと見えた。
ハッチが開いた様子もなく、オーナーの姿が突然小部屋に現れた。
あの黄色い潜水艦は渦巻きマークで転送できる仕組みだ。
それから白猿を肩に載せた金髪のおかっぱも姿を現した。
「やはりポータルが出現したよ。」オーナーはそう言ってソファアに身体を投げ出した。
「何飲んでるの?」おかっぱがユニヴァに訊く。
「今作るよ。」旧友が言う。
「岩塩の層がだいぶ海水で浸食されてきたから、奥に掘り進んでいったんだ。」オーナーが言う。
僕は海底じゃ岩塩は溶け出してしまうんじゃないかとずっと心配していた。
「そしたら奥の方が光り輝いてきて、更に進むとぽっかり空洞があってビックリ!」おかっぱが言う。
「コレが『封印された色』だと思ったよ。」オーナーが言う。
「真っ赤な渦がまるで太陽みたいに輝いてた・・・でも全然熱くはなかったけどね。」おかっぱが言う。
「・・・それじゃレッドソルトは溶けてなくなっちゃうわね。」ユニヴァが冷めた質問をした。
「あの岩塩の層はたぶん相当な大きさだと思うから無くなることはないだろうけど、さっき通路は埋めてきたよ。」
「せっかくポータル見つけたのに・・・。」旧友が『封印された色』を運んで来て言う。
「ポータルは岩塩に囲まれた空洞の中にあるから、そこへは座標で移動できる。」
「なるほどね。」ユニヴァが新しい『封印された色』に口をつける。
「で、ポータルには入ったの?」クーさんが言う。
「神の世界!」おかっぱが言う。
「何それ?」
「真っ白な大輪の花が一輪、水面から伸びてる。」白い猿が言う。
「見に行ってきてもいい?」ユニヴァの目がキラキラする。
ユニヴァの巨大真珠に座標を転送してもらう。
「君も来る?」僕は旧友に言う。
「食事の用意をしておくよ!」
僕とクーさんはソファアから立ち上がると、ユニヴァの巨大真珠に乗り込む。
リンゴの林だった内部はすっかり宇宙船の様相で、高い背もたれのついた真っ白いシートが半円を描くように8席並んでいる。
シートは固定されてはいないようで、ふわふわと浮いているように見える。
足下はキラキラ輝く明るいブルーのタイルだ。
ユニヴァが席に着くと銀色のパネルが浮き上がった。
ユニヴァがワープボタンに手をかけて僕とクーさんを見る。
僕らは慌てて席に着く。
瞬間移動。
真っ赤な空洞だ。
ポータルは輝いてグルグルと渦を巻いている。
「Go!」ユニヴァの声。
そしてスパーク!
目の前には神秘的な池が鏡のように静止していた。
そしてその丁度中央に真っ白な大輪の花。
「蓮ね。」ユニヴァが静かに言う。
池には大きな丸いお盆のような蓮の葉が、大小いくつも浮いている。
一輪の蓮の花は、まるでスポットライトを浴びているかのように自ら光を放っている。
「いつから咲いてるのかしらね・・・。」ユニヴァが言う。
「神々しくて永遠を感じるね・・・。」クーさんが言う。
僕らは巨大真珠で池の中央に進む。
「ここに降りてみない?」池の中央でユニヴァが言う。
いくら大きな蓮の葉とはいえ3人で乗るのは不安がある。
まずユニヴァが1人降りてみる。
蓮の葉に降りたユニヴァは大きく深呼吸する。
「いい香り。」そう言って巨大真珠の僕らに目を向けた。
ユニヴァの隣の更に大きい葉にクーさんが降りる。
それから僕も適当な葉に降りてみる。
なんとも言えない清々しい香りがする。
「あの真ん中のつぶつぶから香りがしてるのよね。」ユニヴァが言う。
池の水は透明で、水中の茎の様子も奥までよく見渡せるが、底は暗く見えないので池の深さは分からない。
カエルも魚も虫さえも姿は見えない。
「こんないい香りなのに、蝶々も蜂もいないのかしらね・・・。」ユニヴァが池を囲んでいる深い森を見渡す。
巨大真珠に戻った僕らは少し森を探索してみることにした。
木々の合間に入ろうとした瞬間巨大真珠が後戻りした。
「どうしたの?」僕がユニヴァに言う。
「・・・跳ね返った。」ユニヴァが不審そうな目を向ける。
「もしかしてこの巨大真珠と同じで、ホログラムの森なんじゃないの?」クーさんが言う。
「そうかも・・・。」ユニヴァが目の前の森を見つめて言う。
「いったいここはどこ?」ユニヴァが座標を調べ始める。
「レベル範囲外です。」パネルが言う。
「レベル範囲って何だろう?」ユニヴァが言う。
「やっぱり神の世界って事なんじゃないの?」クーさんが言う。
僕らは森の探索をあきらめ、いつまでも幻想的な蓮の花をただ眺めていた。

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【2023/03/30 17:25】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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