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ちゅら星(16)
12.夜行バスツアー
まだまだレモン星は夏で、クーさんはレモン星に滞在中だ。
僕は毎日のようにアイスキャンディー屋に行き、はちみつパンの一人旅の奮闘記など話して聞かせた。
そんなある日、僕とクーさんはガードレールに腰掛けてパインキャンディーを齧っていた。
クーさんが黒い紙切れを2枚ポケットから取り出して僕に差し出した。
銀色の文字で『夜行バスツアー』と書いてあるチケットだ。
「来週の夜は次元の歪みができて、別次元の星がちょっとの間だけ現れるんだけど、その時を狙ってその別次元の星を探検しようっていう企画でね、ちょっとヤバイけど行く?」
初めての一人旅をしてきたばかりだと言うのに、今度は別次元旅行だ。
「戻って来れなくなったりしないの?」
「たぶん・・・。」
クーさんにしては珍しく自信のない返事だ。
「知ってる人は知ってる有名なツアーなんだけどね、ヤミでしか手に入らないツアーなので保証はないんだ・・・命にもね。」そう言ってクーさんは笑った。
僕は不安を感じながらも、すごいチャンスを逃したくない気分になった。
そしてクーさんの手から一枚チケットを抜き取って眺めてみた。
『夜行バスツアー 月地下5番街cafeORE集合 新月19:00⇒』
あと5日で新月になる。
「どんな次元のどんな星なの?」
「歪みの具合によってどんな次元が現れるか予想がつかないけど、僕らの次元よりは低い次元だ。高い次元の世界では消え去ってしまった惑星なのだから、きっと怪しい星なんだろうね。僕も初めてだけど、きみが行かないならやめようと思う。」
全ては僕の決断にかかってしまった。
僕はそれから毎日アイスキャンディー屋に来るたびにチケットを眺め、結局新月の日の夕方になってコインを投げて行くことに決めたのだ。

レモン星には一つ月があって、眺める分にはおなじみの月なのだが、そこに実際に行ってみるのは僕にとっては初めてのことだ。
しかも今日は新月で月とは言ってもうっすら輪郭が見えるか見えないかなのだ。
僕らの車は飛行機の滑走路のようなライトでガイドされている道に降りて走行した。
すぐ先の左側に1の標識、右に2の標識が見えた。
それを過ぎると左側に3の標識、右に4の標識が見えて、次に現れた左側の5の標識を左折したところで車は停まった。
車を出ると地下鉄の入り口みたいな下に降りる階段があって『5番街入り口』と表示されている。
僕はクーさんについてその階段を降りて行った。
階段の下には重い鉄の扉が閉まっていて、僕らはそれを押して中に入った。
中に入ったとは言っても、外に出たようなもので、そこは地下街というよりは夜空の広がる外なのだ。街路樹と外灯が並ぶ道の先には賑やかな商店街が見える。街路樹の向こうにはマンションや住宅の明かりが見える。
こんな月の地下都市にも大勢の人が住んでいるらしい。
クーさんは商店街に入ってすぐの古びた扉に入った。
扉を入るとゆるい下り坂の人一人通れる廊下がまっすぐ奥にのびていて、突き当りまで行くと折り返してさらにゆるい坂が地下にのびていた。
さらにもう一度折り返して進んだ先にやっと扉が現れた。
扉を入ると古い貯水場の跡地のようなところで気味が悪かった。
そこはかなり広いのだが一面黒い水に満たされていて、僕らは出口の扉に続く飛び石を用心深く渡って行った。
扉を出ると石の壁の洞窟になっていて、行く先は急な上り坂になっている。
上り詰めた先は板戸でふさがれていたが、軽く開くことができた。
板戸の先も同じような石の洞窟で、たくさんの埃をかぶったワインが整然と並んでいる。
突き当たりは丸くて青い鉄の扉があるが、ダイヤルがついていて押しても引いてもびくともしない。
クーさんは一瞬立ち尽くしてから、扉をノックした。
すると向こう側から扉を操作している音が聞こえて、ゆっくりと扉が開いた。
中から厳つい赤ら顔の男と、耳の長い青白い顔の男がニコニコして顔を出した。
扉を出ると調理場になっていて、黒ウサギの女の子が薄暗い通路の向こうから「ごあんないしま~す。」と声をかけた。
僕らは黒ウサギについて行った。
薄暗い通路の先はカフェのフロアで、店はビールを飲む人で賑わっていた。
僕らは店内の様子には目もくれずガラスの自動扉から店を出た。
店のすぐ脇の路地に黒っぽいミニバスが停まっていた。
黒ウサギに促されてバスに乗り込むと、座席の半分以上は期待と不安の入り混じった顔ぶれでもう埋まっていた。
僕とクーさんは後ろから2番目の二人がけの席に並んで座った。
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テーマ:詩*唄*物語 - ジャンル:小説・文学

【2007/02/28 10:23】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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