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ちゅら星(142)
海からやってくるモコモコ雲達の流れは思いの外速くて、うっかりすると彼らの雲を見失いそうだ。
「ええっと、どの雲だっけ?」ユニヴァが雲だらけになった辺りを見て言う。
「ほら、あのずっと先に行っちゃったのだよ。」僕は見失わないように案内の雲をマークした。
「オッケイ!ロック完了。」
次第に混み合っていた雲はあちらこちらにはけて、巨大真珠も案内の雲に追いついた。
ゆるい上り坂の草原を進んで行く。
「何かしら?あのキラキラしているのは・・・。」ユニヴァが言う。
草原の先に大木のような物が見えるのだが、本来なら葉っぱが揺れているはずの上部がスパンコールの様に光り輝いているのだ。
「ああ、あそこ、我が家だからぁ。」黄色いクチバシが言う。
「寄るでしょ?」青いクチバシが僕らに訊く。
答えるまでもなく、雲をロック中の巨大真珠は雲を追って進んで行くだけだ。
そして、2羽の乗ったモコモコの雲は大木のキラキラの中へ突入した。
ユニヴァは慌てて追跡ロックを解除して、巨大真珠はその場に停止した。
キラキラに突入したモコモコの雲がキラキラに同化するかのように溶け込んでゆくと、次第にキラキラが少しずつ消滅していった。
そして、気がつけば木の上部全体が大きなモコモコ雲と化してしまった。
僕らの目の前には一本のモコモコ雲の大木がそびえている。
「遠慮しないで入っておいでよ。」雲の中から黄色いクチバシが顔を出した。
「別に遠慮はしてないけど、どこから入れって言うのよ。」ユニヴァが言う。
「変なこと言うなぁ、どこからでもいいに決まってるじゃん。」青いクチバシがの声が聞こえた。
「そのまま突入しちゃえばいいんじゃないの?」クーさんが言う。
ユニヴァは巨大真珠をゆっくりと前進させた。
「じゃあ、入るわよ。」
巨大真珠が雲の中へゆっくり進入していく。
「今、お茶でも入れるからぁ。」黄色いクチバシがソファアのクッションを整えながら言う。
「ユニヴァの家みたいな構造なんじゃないか?」クーさんが言う。
雲の中に入ってしまえば、そこには広々としたリビングが広がっていた。
不思議と大きな窓もあって、外の草原が見渡せる。
「何でもいいけど、ヒトの家入ったらさぁ、乗り物から降りれば・・・。」奥のソファアにふんぞり返っていた青いクチバシが言う。
そして、僕らは巨大真珠から降りた。
「冷たいので良かったぁ?」黄色いクチバシが飲み物を載せたお盆を運んできた。
「まぁ座れば?」青いクチバシが言う。
僕らはテーブルを囲むソファアに適当に腰掛けた。
一人一人の前にガラスのティーカップが並んだ。
黄色いクチバシはティーポットをカランカランと音をさせて揺らした。
僕らは冷たいレモンの味のお茶を頂いた。
「ねぇ、土星のポータルって近いの?」ユニヴァが訊く。
「かなり遠い。」青いクチバシが言う。
「どのくらいかかる?」おじさんが訊く。
「三ヶ月もあれば・・・。」青いクチバシが言いかけた。
「ウソでしょ?」ユニヴァの唖然とした顔が僕を見る。
「まぁ、ウソって言えばウソだし・・・ほんとって言えば・・・。」
「アンタ!ぶっ飛ばされたいの?」
「土星はポータルの宝庫だって言ったでしょ。」今度は黄色いクチバシが言った。
なるほど、ポータルを使えばもっと早く着けるということなのだろう。
「まぁ、半日くらいは見といてよ。」青いクチバシが言う。
「そんな近いのか・・・。」クーさんがため息に近い声で言った。
しばらくくつろいだ後、ポータルに向けて出発した。
僕らは巨大真珠で先に外に出た。
直ぐにモコモコ雲の大木の中から、小さいモコモコ雲が現れた。
小さいモコモコ雲が外に出ると、木はまたキラキラと輝きだした。
「ついて来て。」
僕らは彼らの乗るモコモコ雲の後について進んだ。
30メートルもいかないところで、モコモコ雲は止まっている。
見ると、モコモコ雲の真下の大地には3メートルほどのポータルの黒い渦がある。
「まずはここ。」
そう言ってモコモコ雲はポータルに吸い込まれるように入って行ってしまった。
ユニヴァは隣にいた僕に視線で頷くと。
巨大真珠をポータルに進めた。
「何だ!」僕とクーさんが瞬間的に言った。
出た先は、雑踏の中だ。
「こっちこっち。」
呼ぶ声にモコモコ雲を見つけた。
「変なところに出るでしょう。」黄色いクチバシが笑って言う。
そこはどうやら野外マーケットの途中らしく、カラフルなテントの露店がどこまでも続いていた。
僕らは喧騒を外れて、一歩路地に入った。
じめっとした細い路地には、古くさい小さな家が軒を並べている。
少し行くとまた広い道に出た。
それを渡るとまた細い路地が続いた。
さっきより少し洗練された住宅地になった気がする。
「ああ、ここの家だ。」青いクチバシが言った。
モコモコ雲は一軒のごく普通の家の前で停止した。
「お茶でもごちそうになるの?」ユニヴァが面倒そうに言う。
玄関にさがっていた金色の鈴を青いクチバシがつつく。
シャランシャラン・・・。
透明感のある音だ。
「どうぞ。」奥から声が聞こえた。
すると玄関ではなく、右側の中庭へ続く小さな木戸が自動で開いた。
モコモコ雲は木戸を抜けて露に濡れた草花の小道を進んで行く。
中庭の入り口はブーゲンビリアがアーチを作って迎えている。
アーチをくぐると芝生の開けた庭があり、左側には母屋の縁側が見えた。
そこには人影も鳥影も見えない。
庭のさらに奥は背の高い木が茂っている。
日陰に入ると芝生は苔に変わり、丁寧に石畳もひいてある。
少し先でモコモコ雲が停止した。
モコモコ雲の前には池があった。
黒々とした水面はよく見ると渦を巻いていて、ポータルだと分かる。
「今度はここ。」そう言ってモコモコ雲は水面にダイブした。
巨大真珠も続く。
「うわぁっ!」全員から声が出た。
ポータルの先は、まさに水中だ。
「見てよ、あの人達。」ユニヴァが上を指した。
2羽の白い鳥がまるでペンギンのように、水面に向かって泳いで行く。
巨大真珠も浮上する。
水面に出てみると、2羽の白い鳥は何事もなかったかのようにモコモコ雲の上にいた。
「海じゃなさそうだよな・・・。」クーさんが言う。
「・・・海よ。」ユニヴァが巨大真珠の高度を少し上げる。
島一つ見えない海の真ん中だ。
そして僕らが出てきたエリアだけ、人工的な壁で囲まれた状態になっている。
「この座標まで移動して。」青いクチバシが巨大真珠のパネルに座標を送信してきた。
瞬間、2羽のモコモコ雲は僕らの目の前から消え去った。
「いないわね。」
指定の座標の場所は、土埃の舞う広い通りに面した場所で、数軒の店がある。
「こっちこっち。」
声は、通りを渡った店の開け放たれた土間からだ。
巨大真珠は通りを横断し、僕らは店の前で巨大真珠を降りた。
「そば屋か?」クーさんが言う。
「ああ、皆の分も頼んでおいたからぁ。」黄色いクチバシが言った。
「鳥もおそばとか食べるの?」ユニヴァが訊く。
「穀類は大好物だからぁ。」黄色いクチバシが言う。
積み上げられた蒸籠が運ばれてきた。
「こりゃぁ上手そうじゃ。」おじさんがうれしそうに箸を取った。
2羽の鳥も、器用にクチバシでそばをすすった。
美味しくそばを頂いていると、そばつゆのポットも運ばれてきた。
「次のポータルは近いの?」僕が言う。
「うん、ここの裏庭。」青いクチバシが、そばつゆの猪口にクチバシを突っ込む。
「じゃ、直ぐ行けるわね。」ユニヴァも安心したようにそばつゆをすすった。
「でも、あと2時間は待たないとぉ。」黄色いクチバシが言う。
「一日に数回だけポータルが出現するんだ。」青いのが言う。
「他の時間は普通の井戸だからぁ、そばとか捏ねたりぃ・・・ね。」黄色いのが上手そうにそばつゆをすする。
そばつゆも空にしてしまうと、手持ち無沙汰から僕とクーさんは店の外に出た。
直ぐ隣にも店がある。
そば饅頭が湯気を噴かしている。
そば掻き、そば煎餅・・・。
「この辺は、そばが名産なんだね。」僕が言う。
「この辺って、どの辺だか見当もつかないけどね。」クーさんが言う。
すっかり日焼けしたポータルを模したキーホルダー。
井戸に囲まれたポータルの柄のTシャツ。
僕らは通りを渡って、さらにもう一軒の店に行く。
「何だ?パチンコかな?」クーさんがのぞき込む。
迷路のように板が張られたボードがある。
「これ動くんだよ。」僕はボードを動かしてみる。
ボードは角度が自由に動かせるようになっていて、傍らに置いてあるボールを載せて、迷路ゲームを楽しむという物だ。
店には誰もいない。
クーさんと僕はしばらく無断でゲームに興じた。
数回繰り返すと簡単になって飽きてきたが、それでも誰も現れることは無かった。
僕とクーさんはまた通りを渡り、そば屋へ戻ってきた。
「もうすぐだって。」ユニヴァが退屈そうに言った。

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【2018/07/06 16:37】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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