FC2ブログ
ちゅら星(152)
先ほどの畔に、姫の姿はもう見えなかった。
湖は奥に進むにつれて湖岸が狭まってきて、湖と言うよりは森の中を流れる川の様相だ。
ニョロとポニョは時々こちらを振り返っては、音も立てずに進んで行く。
日も落ちて、森はすっかり闇に包まれてきた。
葉の間から微かに見える空が、濃いオレンジ色に輝いている。
気がつくとニョロとポニョの姿が見えない。
そう思ったとたん、水面がモコンモコンと揺れ始めた。
「奴ら潜ったんじゃないか?」青いクチバシが言う。
どうやら水面下でグルグルと猛スピードで泳いでいるらしく、水面が渦を巻き始めた。
「何なのかしらね?」ユニヴァが言う。
「わああっ!!」
大きなひれが飛び出してきて、波ががザブンとかかる。
2羽の乗った雲が波に呑まれて、水面の渦に引き込まれた。
「まずいぞ!」クーさんが言う。
「どうする?」僕が言う。
ユニヴァが巨大真珠を着水した。
僕らはものすごい勢いで渦に呑まれていく。
水中ではニョロとポニョがグルグルと円を描いて回っている。
僕らと2羽の白い鳥は、その円の中に捕らわれている状態だ。
2羽は雲から飛び出し散り散りで水流に流されている。
「ココに引き込めるかしら?」ユニヴァが言う。
「やってみよう!」クーさんが僕に頷いて言う。
僕とクーさんは、それぞれに巨大真珠から腕だけを出して鳥たちの救助を試みる。
グルグルの水流で思うようには行かない。
黄色いクチバシの羽を一瞬つかんだ。
しかし滑るように離れてしまう。
「網みたいなのあったんじゃ・・・。」クーさんがそう言いかけた時。
今まで旋回していたニョロだかポニョだかが、ギザギザの歯をむき出しにした大きな口で黄色いクチバシに食らいついてきた。
危機一髪上手く逃れた黄色いクチバシだが、執拗にまたもヤツが食らいついてくる。
青いクチバシが、ヤツの脇腹にツツキを食らわす。
怯んだすきに逃げ出した黄色いクチバシを、僕が両手でしっかりとつかむ。
勇敢な青いクチバシを、今度はもう一匹のポニョだかニョロが追いかけ回す。
「ちょっと、クーちゃん!」ユニヴァが叫ぶ。
腕だけ出していたクーさんだが、半身を水中に出して青いクチバシに手を伸ばした。
「あああっっ・・・。」
ポニョの大きな口が青いクチバシをくわえると、青いクチバシをつかんだクーさんもその勢いで巨大真珠から引きずり出されてしまった。
辺りが突然静まりかえる。
気がつくと、巨大真珠を残して全てが消えたしまった。
「・・・。」
僕とユニヴァと、黄色いクチバシ、それと雲も捕獲した。
「見てよ!下。」ユニヴァが言う。
湖底に黒い渦が見える。
「あのポータルに入ったんだわ。」ユニヴァが言う。
巨大真珠はすぐに湖底のポータルに急いだ。
「ウソでしょ?」
ポータルは見る見るうちに薄れていき、僕らが到着するとそこはただの砂の湖底となってしまった。
「アイツ食われちゃったかしらね?」ユニヴァは無情にも言う。
「大丈夫みたい・・・。」黄色いクチバシには分かるらしい。
「クーさんの方は?」僕が訊く。
「手をけがしたけどぉ、大丈夫みたい。」黄色いクチバシが言う。
「つーか、どこ行っちゃたかわかるの?」ユニヴァが訊く。
「・・・、・・・、ココとは違う宇宙域みたい・・・。」
「違う宇宙域?」僕とユニヴァが同時に言って、黄色いクチバシを見た。
黄色いクチバシはつぶらな目をパチクリさせた。
ユニヴァが少し考え込む。
すでにこの宇宙域でさえ、ちゅら星とは別のところだというのに、クーさんはいったい何処へ行ってしまったというのだろう。
「ねぇピーちゃん・・・、あの洞窟のポータル使えるような気がしない?」
「え?・・・うん、使い用かもね!」
僕らは、とにかくこの森を出ることに決めた。
水中から出た巨大真珠は真っ暗な森をライトを小さく付けて進む。
「あの姫には見つかりたくないわよね。」ユニヴァが言う。
「姫って言うより魔女でしょ、魔物の餌にされたんだからぁ。」黄色いクチバシが言う。
「とにかく城には近づかないようにして行こう。」そう言って、僕はユニヴァから操縦を代わった。
僕は真っ暗な森を夕焼けの名残を探して西に進んだ。
やや開けた場所に出たので、少しだけ高度を上げると微かなオレンジ色が遠くに見えた。
「オッと!」
黒い鉄柵だ。
ここはまだ城の敷地内だったのだ。
鉄柵の背は高く、生い茂る木々にまで達している。
「縮小すれば?」ユニヴァが言う。
無理矢理木々を押しのけて出るより、その方がいい。
縮小した巨大真珠は鉄柵の隙間を抜け出した。
そしてもうオレンジ色の名残もすっかり消えて、夜の森が僕らを包んだ。
「ところでピーちゃん、どこに向かってるの?」ユニヴァが言った。
考えてみれば、森を抜け出すことだけを目標にしていた。
「あ~・・・帰りのポータルの場所はね、雲が覚えてるんだぁ。」黄色いクチバシはそう言って、傍らの雲に触れる。
「ハイテクな雲ね。」ユニヴァが言う。
「そうだユニヴァ、雲に乗ろう!」
それから、黄色いクチバシは巨大真珠を出て雲に飛び乗った。
そして縮小化した巨大真珠も雲に便乗した。
真っ暗な森の鬱蒼とした木々をすり抜け、雲はスルスルとスムーズに進む。
快適だ。
突然、雲の高度が少し上がった。
ザザザザッ!
大きな動物が下を通り過ぎて行ったようだ。
「気が利いてるじゃない。」ユニヴァが言う。
今度はせせらぎの音が聞こえてきた。
前方にうっすらと光るものがある。
「あれは白い川じゃないかな?」
行きにも見た真っ白な川のようだ。
「じゃあ、あの先のは青緑色のかもね。」先にもまた微かに光るものが見える。
しかし森は、ほとんど月明かりも星明かりも届かない。
しばらく行くと、木々の間に星空が覗くほど開けてきた。
「あの白いの池かしらね?」ユニヴァが言う。
月明かりに反射してか、大きな円形の光が見える。
「ああ・・・たぶんあそこだと思うぅ。」黄色いクチバシが言う。
近づくと確かに池だ。
色の判別は難しい。
巨大真珠を元のサイズに戻してから、ライトを照らしてみる。
「真っ黒みたいね。」ユニヴァが言う。
「ここは透明だったはずぅ。」黄色いクチバシが言う。
「渦も見えないけど・・・ポータルなの?」僕が言う。
「ああ・・・あっち側。」そう言って雲に乗った黄色いクチバシが池の向こうへと移動する。
池の端に小さな渦が巻いている。
「ちっちゃ・・・。」ユニヴァが言う。
「これでも、ちゃんとしたポータルだからぁ。」そう言うと黄色いクチバシは渦に飛び込んでしまった。
「行こっ!」ユニヴァの声で、僕らの巨大真珠も飛び込んだ。
到着したのは室内だった。
「この前、小屋を建てたんだぁ・・・雨でも大丈夫でしょぉ。」黄色いクチバシは自慢げに言った。
小屋の外は日が傾きかけているものの、まだ明るい時間だ。
黄色いクチバシ達のキラキラの木まではすぐだったので、僕らはそこで一休みした。
「美味しいケーキがあるんだぁ。」黄色いクチバシがお茶の用意をする。
「あの人達大丈夫かしらね?」ユニヴァ心配する。
「大丈夫よぉ!」黄色いクチバシは余裕な感じだ。
「そうね、そのうち見つかるでしょうね。」結局ユニヴァも余裕だ。
そして僕らは3等分にした5等分でも良さそうなロールケーキを頬張った。

スポンサーサイト



【2019/10/13 16:16】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
| ホーム |
WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

れもんちゅら

Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

teddybearSHOP:lemonchura

☆ちゅら星ヴィジュアル見に来て。

記事map

*ちゅら星*を途中から読まれるのに便利です。↓↓↓

全ての記事を表示する

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

category

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログ内検索

RSSフィード