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ちゅら星(150)
そう、最初のポータルは商店街のど真ん中に出るのだった。
巨大真珠はにぎやかな通りを避けて、すぐに細い脇道に入る。
「この先の大通りを越えて、真っ直ぐだったわね。」ユニヴァが言う。
僕らは大通りを越えて、閑静な住宅地を進む。
「ああ、あの家だね。」クーさんが言う。
玄関の金色の鈴を鳴らす。
少し緊張する。
「どうぞ。」微かな声が聞こえて、庭に入る木戸が開いた。
小道を進んで、ブーゲンビリアのアーチを抜けると広い中庭に出る。
何となく気まずいような思いで母屋の前を通り抜け、奥の森へと進む。
森の奥に、丸石で囲まれた池が見えた。
以前と同じように、水面は渦を巻いている。
巨大真珠は躊躇無く飛び込む。
「うわぁあっ!」
そう言えば、このポータルは水中に出るのだった。
巨大真珠は一気に浮上する。
そこは大海原のど真ん中、しかし何故かここだけコンクリートで囲まれている場所だ。
海上は雲一つ無く、みずみずしいブルーの太陽がメロウに照りつけている。
「ええっと・・・、この後は何処だっけ・・・。」ユニヴァが誰にとも無く言う。
「島かなんかじゃなかったっけ?」僕が言う。
クーさんのため息が聞こえた。
「座標移動だったと思うんだけど?」
「座標?」ユニヴァが過去の座標履歴を探る。
僕も、青いクチバシが指定した座標を使ったことを思い出した。
「あった!」ユニヴァの声と同時に移動した。
「よし来たぞ、あのそば屋だ。」クーさんが意気揚々と言う。
次のポータルは、そこのそば屋の裏庭の井戸だ。
ただし、渦が現れるのは一日に数回のみ。
僕らは、そば屋で次のポータルの予想時間を聞く。
「そうだにゃあ、あと一時間前後だと思うんよ~。」お茶を運んできた小柄なおばさんが言う。
「じゃ、みんな天ざるでいい?」ユニヴァが言う。
僕とクーさんは何となくそれに同意した。
「天ぷら揚げるんでにゃ、少し時間かかるよ。」おばさんが言う。
「井戸の渦に間に合うんなら大丈夫よ。」ユニヴァが言う。
おばさんはフフッと鼻で笑って、奥に入って行った。
僕らは熱いそば茶を前にして、埃っぽい外の景色を眺めた
「森に行って、どうする?」僕が言う。
「お姫様捜しだろ?」クーさんが言う。
「この前、見えたわよね・・・。」ユニヴァが神妙に言う。
「ああ、あのとんがり帽子のコビトみたいなの?」僕が言う。
ユニヴァが無言で頷く。
「だから、結局お姫様捜しってことでしょう・・・。」クーさんが念を押すように言ってお茶をすする。
「でもさ、お姫様って必ず魔女とセットで登場しない?」ユニヴァはお茶をすすって言う。
「えっ、魔女?」クーさんが口まで運んだお茶の茶碗を下ろす。
「確かに、あの真っ黒な森、魔女がいかにも住んでそうだよね・・・。」僕が言う。
「ヤバイかな・・・あの森・・・。」クーさんがおじけづく。
「ヤバイから、面白いんじゃない!」ユニヴァが言う。
「最近じゃ、ヤバいところにも行き慣れてきたしね。」ちょっと僕が皮肉る。
「あぁ・・・。」クーさんは小さい声で答えた。
埃っぽい通りに風が吹き抜ける。
少しの間を置いて、裏庭から涼しい風が通ってくる。
おばさんが大きな急須を持ってやって来た。
「今揚げてるところだからにゃ・・・。」そう言って、そば茶を注ぎ足す。
また、風が吹いて通りの土埃が上がる。
誰一人通る人も見えない。
店にも僕ら以外に客はない。
とても静かだ。
「はい、天ざるお待たせぇ。」
まず、僕とユニヴァの前に天ざるが来た。
「何の天ぷらかしらね?」ユニヴァが天ぷらの盛られたかごをのぞき込む。
すぐにクーさんの分も来た。
「この辺りで採れる山菜と川エビで、ピンクの衣のはモモ、黄色い衣はバナナだにゃ。」
「へぇ、デザート付きね。」ユニヴァはそう言って、まずは手のひら状の葉っぱの天ぷらに箸を付けた。
軽くサッパリとしたサクサクの天ぷらだ。
「まさに揚げたて、美味すぎ。」クーさんが満足そうに言う。
「うん、美味い。」パラッとした十割が、乾いた風に合うのだ。
おばさんがそば湯のポットを置いていく。
すっかり美味しい天ざるに満足して、ポータルのことなど忘れてしまいそうにまったりする。
会話もなく、静かな昼下がりの時が流れる。
「ああ、間に合ったみたいだね。」
静寂を破ったのは、青いクチバシの声だ。
そば屋に白い雲に乗った二羽が入って来た。
「集会がわりと早く終わったんでね、追いかけて来てみたんだ。」
「黒い森に行くんだったけぇ~?」黄色いクチバシが雲から降りて、僕らのテーブルに着く。
青いクチバシも僕の隣に座る。
おばさんが二羽の前にお茶を置く。
「そば粉のアイスクリーム・・・みんなも食べるでしょぉ?」黄色いクチバシが言う。
ユニヴァが頷く。
「じゃあ、5つ!」
案内役が来てくれたので、魔女の森の探検も心強くなった。
「あのね、魔女はいないと思うけどなぁ・・・。」黄色いクチバシが言う。
「森の奥に大きい湖があるよ。」青いクチバシが言う。
そば粉アイスクリームが届く。
上にはみたらしのタレがかかっていて、そばの唐揚げが数本添えてある。
「ポータル、もうすぐ開くはずよ。」ユニヴァが言う。
僕らはそば粉アイスクリームでポータルを待った。
それから間もなくポータルが出現し、僕らは井戸に飛び込んだ。
突然、目の前には青く輝く巨大な星。
僕らは軌道に乗ってゆっくりと移動していく。
先を行く二羽の雲は、宇宙用のキラキラのバリアーで包まれている。
すると目の前で突然雲が消えた。
と思ったら、今度は暗い水中だ。
「あぁ、ここ深海だぞ。」クーさんが言う。
「そうだ、カモフラージュ!」僕が言う。
サメや深海魚に寄りつかれたら面倒だ。
先を行く二羽の雲は、どんどん浮上していく。
僕らもそれを追いかける。
「案内役が来てくれて、助かるよね。」クーさんが暢気に言う。
浮上するにつれて、視界が明るくなる。
あちこちに色とりどりの塊が見える。
魚の群れだ。
「うわぁ!」クーさんが叫んだ。
視界が黄色一色になる。
巨大真珠が黄色い魚の群れに囲まれたようだ。
「そうだ、カモフラージュじゃなくてミラージュだ。」僕は慌ててミラージュに切替えた。
鏡に映った姿に驚いたように、黄色の群れが散り散りに去って行く。
モコモコ雲はもう海上に出たようだ。
僕らも急ぐ。
海上に出るとすぐそこに雲が待っていた。
「大丈夫?」青いクチバシは言って、またすぐ出発した。
しばらく行くと、パシャンと音を立ててモコモコ雲は海中に飛び込んだ。
「次は、あそこだったわね。」ユニヴァが以前を思い出したように言った。
海中に入ると、海底の白砂が渦を巻いているのが分かった。
あの二羽の姿はもう見えない。
すぐに渦に突入する。
そして、前にも見たあの怪しい景色だ。
虹色の金属質の岩場に、水銀のような銀色の波が打ち寄せている。
「さあ、もうすぐ森だよぉ。」黄色いクチバシが言う。
僕らはビニール細工のような奇妙な植物を眺めて、モコモコ雲について進む。
「幻想的だね。」僕が言う。
「でも、やっぱり住みたくはないよね。」クーさんが言う。
遠くに見えてきた真っ黒い塊。
あれが、お目当ての森だ。
「魔女はいないってさっ。」クーさんがニタついて僕に言う。
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【2019/07/24 15:10】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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