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ちゅら星(144)
「ふぅ~っ。」誰からともなく安堵のため息が聞こえた。
木漏れ日が揺れている。
森か林の中に着いたようだ。
「ここ本当に土星なんでしょうね。」
ユニヴァはそう言うと、巨大真珠の高度を森の上空まで上げた。
「初めて見る景色じゃがぁ・・・わしも土星を知り尽くしているわけでは・・・」
おじさんがそう言いかけると、ユニヴァがそれを遮った。
「ウソでしょ?」
「ウソだろっ!」クーさんも続いて言った。
僕はユニヴァとクーさんが見ている方を振り返った。
「ええっ、恐竜っ?」
巨大真珠の数十メーター先に、森からニョッキリと大きな首が突き出している。
巨大真珠はさらにゆっくりと上昇する。
「うわぁ、いっぱいいる。」
森のあちこちから十数頭の首が突き出して、木の梢をついばんでいる。
「見てよ、あれヤバそうなヤツじゃない?」
さらに向こうの平原には、メタリックな赤紫色で派手なひれが付いているヤツが見える。
「土星にこんなのがいるなんて聞いたこともなかったがのう・・・。」おじさんは言った。
「俺たちすごいの発見しちゃったんじゃ?」クーさんが嬉しそうに僕を見た。
「待ってよ、ここは・・・土星じゃないじゃない!」ユニヴァが慌てて言う。
「土星の衛星だわ・・・。」
ふと見上げると、青空に白く大きな惑星の姿が見える。
「ほぅ、ではタイタンじゃろうかのう?・・・。」おじさんが言う。
「タイタン?・・・。」
「タイタンは前人未踏の地が多いからのう、こんなのを見たという噂も後を絶たないんじゃよ。」
「やっぱり、すごいの見つけちゃったんだよ!」クーさんが暴れた。
「あっちに行ってみるわ!」ユニヴァが意気揚々と言って速度を上げた。
僕はその時ふと思い出した。
ところで僕らの目的は、ニワトリを救出することだったはずだ。
「ねぇユニヴァ、つーか・・・ニワトリはどうする?」僕が水を差すように言った。
僕のその一言で、巨大真珠は停止した。
恐竜が闊歩する夢のような景色が、少し色あせた気がした。
それから僕らは土星に戻り、ステーションのカフェで『土星Black』を注文して、旅の疲れを癒やした。
「すっかり忘れたわ・・・。」ユニヴァが言った。
「でも、あのモコモコ雲の鳥たちは、あそこにニワトリもいる様なこと言っていたよね。」僕が言う。
「え~、またあそこに戻るの?」ユニヴァがダレる。
「いいんじゃない?」クーさんがノウテンキに言う。
「何なのよ、クーちゃん?」ユニヴァが不満げにクーさんを見た。
「あの黒い森で、お姫様なんかも探したいしさぁ・・・。」クーさんが空を見つめて言った。
「・・・。」
ステーションの天井の窓が大きく開いて、午後の風が気持ちよく吹き抜けていく。
ユニヴァは空になったコーヒーカップを見てため息をついた。
「ここをタッチするんじゃよ。」
おじさんがそう言って、ユニヴァのコーヒーカップの上げ底になっている奥に指で触れた。
「わぁ、またいっぱいになった。」
「なんだ、おかわり自由なのか!」クーさんはそう言って、残りの『土星ブラック』を飲み干した。
またしばらく、無駄に静かな時が流れる。
「でも、あそこにニワトリがいたとして、アタシ達が探してる捕らわれのニワトリが見つかると思うの?」ユニヴァはまたカップを『土星ブラック』で満たした。
「マスターに無理でしたって謝っちゃえば?」クーさんが軽く言う。
「それはダメ!」ユニヴァがキッパリ言った。
「だって、それよりタイタンの恐竜とか探索したいじゃないか。」クーさんが返す。
「困ったのう・・・。」おじさんが面倒なムードをフォローするように言う。
僕も困ってはいるが、ニワトリを探し出す解決策がどうにも浮かばない。
その時、ユニヴァがコーヒーカップをカシャンと置いた。
「だけど、あの掃除機のゴミため場みたいなところで『めえぇぇぇ』をしたところで、またちゃんとあの場所に行けるかしらね・・・。」
「でも、他に方法が無いよ。」僕が言った。
「やってみよう、そして黒い森の探検ツアーのオプション付きでだ。」クーさんがやけに元気に言う。
「OK。」ユニヴァは力なく同意した。
「それじゃタイタンの探索は、ニワトリの事が解決してからじゃな。」おじさんが言った。
僕らは再びあの草原の巨大掃除機に吸い込まれるために、巨大真珠で出発した。
西日に草や木々が金色に輝いている。
前方に薄い膜の仕切りが見えてきた。
掃除機はあの先だ。
「掃除機のヤツ、何処かしら?」ユニヴァは巨大真珠の高度を少し上げた。
さらに奥に進む。
「見えないな・・・。」
巨大真珠は果てしない草原を右に左に飛び回る。
「今日の作業は終わってしまったんじゃなかろうか・・・もうすぐ日が暮れるからのう・・・。」おじさんが言う。
確かにその可能性が強い。
日はもう沈みかけている。
結局その日は全てをあきらめて、僕らは久しぶりにちゅら星の灯台へと戻った。
ちゅら星では、まだ西日が傾き始めたばかりで一番眩しい時間帯だ。
「おやっ・・・ニワトリは見つかったの。」小さな動物が灯台の窓から顔を出して迎えてくれた。
そして日が暮れると、大きな男は温かいスープとパンを用意してくれた。
おじさんはスープの入ったポットをもらうと、もう一人のおじさんが待つ森を抜けた先の古小屋に帰って行った。
僕らはだいぶ遅くまで、旅の話をした。
「状況が混乱しているよ、少し休んだ方がいいアイデアが来る。」小さな動物が僕らにアドバイスした。
それからみんな、それぞれの家路についた。
翌日は、また灯台に集合した。
ユニヴァは朝早くから来て、小さな動物たちと朝食まで済ませていた。
僕がユニヴァの脇に腰掛けると、丁度クーさんがドアから入って来た。
「朝食は?」大きな男が僕とクーさんに訊く。
「ジュースかなんかもらえる?」クーさんが言った。
直ぐに僕とクーさんに薄緑色のジュースがやって来た。
「お揃いじゃのう。」二人のおじさんも入って来た。
抱えていた袋をテーブルにドサリと置く。
ドーナツのいい香りだ。
「今日も土星に行くのかね?」青いシャツのおじさんが言う。
「わしゃあ、もういいじゃろ。」白いおじさんがそう言って席に着く。
土星の勝手もだいたい分かってきた。
今日は僕とクーさんとユニヴァの3人で出かけることにした。
大きな男は袋からドーナツを2つ取り出すと、残りのドーナツの袋とお茶のポットを手渡した。
そして僕らは、また土星に向けて出発した。
ちゅら星の軌道に出ると、ユニヴァは座標の履歴を出した。
「あ、これこれ・・・。」ユニヴァはそう言って、巨大真珠は一気にワープする。
「あれぇ?・・・ユニヴァ!」
ここは昨日帰ってきた時の、あのタイタンではないか。
「やっぱり、ここが気になっちゃって・・・。」ユニヴァは言う。
「だけど、ニワトリがぁ先じゃ?」僕が言う。
「もうっ!ニワトリが先とか卵が先って言う話なら、恐竜はニワトリのご先祖様でしょ・・・こっちが先に決まってるじゃない!」
「なぁ~るほどねぇ~・・・。」クーさんが変に感心した。
巨大真珠はタイタンの草原に高度を下げていく。
小さなラプトルの群れが走り抜けていくのが見えた。
「おおっ!いるねぇ~。」ワクワクを隠しきれない様子でクーさんが言った。
「アレもいるかしらね?」ユニヴァが言う。
「アレって?」僕が言う。
「そりゃあ、ティラノサウルスでしょう。」クーさんが腕まくりをして答えた。
僕は(状況はさらに混乱しています・・・。)と小さな動物に心の中でつぶやいていた。
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【2018/10/14 15:53】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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