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ちゅら星(97)
二日後、灯台のドーム。
依頼に応えてワイン持参でやって来た僕とクーさんとユニヴァは、トリちゃんの畑仕事に汗を流していた。
「じゃあ、残りの水やりをよろしくね。」
トリちゃんはあっさりそう言うと、野菜の大きなかごを抱えて引き上げていった。
「アイツぅぅ~!どういう態度なのよアレ。」ユニヴァが帰って行くトリちゃんの後ろ姿に噛みついた。
「つべこべ言ってないで、コレあっちのハーブに撒いてきて。」
農作業に慣れているクーさんが一番動いているように感じる。
僕は明日の腰と腕の筋肉のことを考えて、大きく身体を伸ばした。
「はい、ピーちゃんはあっちにコレ撒いてきてね。」
クーさんが僕の前に重そうなバケツの水を置いた。
ユニヴァがバケツの水を一気に撒いてハーブの苗を流してしまったので、面倒な植え直しをしたりしたけれど、僕らは何とか作業を終えて灯台へと向かった。
階段を上って行くと、いい香りが漂ってきた。
「おなか空いた・・・。」ユニヴァが力なく呟いた。
「おっ、お帰り!」僕らに気がついたトリちゃんが、キッチンの奥に走って行った。
僕らはため息とともにテーブルの椅子に腰を下ろした。
テーブルにはワインとワインオープナーとグラスと取り皿が用意されていた。
「ピーちゃんワイン開けて。」ユニヴァが言った。
僕は言われたままに半自動的にワインを開けた。
「今日は疲れたから・・・爽やかにさ・・・。」ユニヴァがキョロキョロあたりを見回した。
そして席を立つとキッチンの方へ入って行った。
「冷蔵庫開けるわよ。」
そう言ってユニヴァが冷蔵庫から調達してきたものは、氷とソーダの瓶だった。
ユニヴァはワインの入ったグラスに大きめの氷の塊を一粒落として、その上からソーダを注いだ。
「テーブルを開けてくれ。」トリちゃんがバカでかい皿を持ってやって来た。
皿ではない、それは板だ。
板の上には焼きたての巨大ピッツァ。
さっき漂っていたいい香りの張本人だ。
トリちゃんがテーブルにそれを置く間もなくユニヴァがピッツァに飛びついた。
「おぉ~いしぃ~い❤・・・でもホントは厚生地タイプのピザが好きなんだけどね・・・でもいけるっっ。」ユニヴァがへそ曲がりに褒めた。
トリちゃんはユニヴァを見て満足そうに微笑んでいた。
僕はトリちゃんのグラスにワインを注いだ。
トリちゃんはユニヴァのまねをして、氷とソーダを加えた。
この巨大ピッツァ、直径にして70センチくらいはあるだろうか。
「こっち半分はトマトとモッツァレラ、こっちはトマトとトウガラシとオニオンだよ。」
あっという間に半分以上なくなった。
「直ぐに次のが焼きあがるからね。」
「次のは何味?」ユニヴァがワインソーダを飲みほして言った。
「内緒だよ。」トリちゃんはそう言ってオーブンの様子を見に行った。
それから僕らは野菜ステックを齧りながら、次のピッツァを待った。
「ねぇ、畑仕事疲れるんだけど・・・トリちゃんの相方っていつ来るのよ?」ユニヴァが話を切り替えていった。
「トリ・・・ちゃん・・・?」
ユニヴァが適当に付けた名前に、トリちゃんが戸惑って訊き返した。
「・・・皆疲れたろう・・・明日は休んでいいよ。」名前の件は無視したのか、トリちゃんが言った。
「休むわよ!毎日来るなんて思わないでよ。」
「でも、一人じゃ水やり大変だぞ。」クーさんが気遣って言う。
「大丈夫、雨を降らせる。」
「降らせるって・・・?」僕が訊いた。
「ドームの上部に水蒸気を集めて・・・」
「雲を・・・」クーさんが言いかけた。
「そう雲を発生させるんだ。」
「出来るの?」ユニヴァが乗り出して言った。
「簡単なことだよ。」トリちゃんは軽く言って、ピッツァを取りに奥に走った。
僕ら三人はトリちゃんのいなくなった席を見つめてただ頷いた。
「今度のはハーブソースとソーセージ、半分はフルーツとカマンベールチーズだ。」
今度もユニヴァが一番最初に手を付けた。
余計なコメントは無かったが、顔がおいしいと告げている。
「やっぱり三人合体するとスゴイのね。」ユニヴァがピッツァを頬張りながら言った。
「そう?・・・そんなに美味い?」トリちゃんが笑った。
「コレはもち美味しいけど、じゃなくって・・・。」ユニヴァは話を切って、次の一切れに手を伸ばした。
「雨とか自由自在なことよ。」
「・・・うん、三位一体化するとエネルギーのバランスが整うからね。でも雨雲を作るのは、この灯台の機能を少し拡張するだけだよ。」
「相方っていうのもスゴイ人なの?」ユニヴァが興味深く質問を続ける。
「・・・うん、まあね。・・・僕のことをスゴイって言うのなら。」
彼の凄さについて、僕らはまだ何か確認したわけではなかった。
雨を降らせるという発言に動揺したものの、灯台の機能で解決できるらしく、僕はむしろこのスゴイ望遠鏡とスゴイ顕微鏡を備えた灯台の方が凄いんじゃないかという気がしていた。
「ところで、そのスゴイ人・・・いつ来るのよ。」ユニヴァが最初にした質問に戻した。
「・・・たぶん・・・明日かな?」
だったら早く言えよと言う突っ込みを抑えて、僕らはトリちゃんを見つめた。
「休まないわよ。」ユニヴァがポツリと言った。
「でも明日は相方もやって来るだろうし、水やりは雨で大丈夫だ。・・・だって疲れただろうユニヴァ?」トリちゃんは心配そうにユニヴァを覗きこんだ。
「来るわよ絶対!ねっ。」ユニヴァが僕とクーさんを見て強気に言った。
結局、翌日もワイン持参で僕らは灯台のドームに結集した。
思った通り筋肉痛は否めなかった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2012/10/22 15:48】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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