FC2ブログ
ちゅら星(96)
灯台の三人は散歩にでも行ったのだろうか、扉は開いているものの誰の姿も見えない。
「望遠鏡のところに上ってるのかもね?」僕が言った。
「じゃなきゃ、地下で顕微鏡でも覗いてるのよ。」ユニヴァが言った。
「おっ?帰ってきたかな?」クーさんが言った。
外の階段を上がって来る音が聞こえる。
「おや、来てたの。」現れた見知らぬ男が言った。
カゴいっぱいの野菜を抱えて、キッチンの奥に入って行った。
僕らは何も言わずに彼の行動を眼で追った。
「すぐお茶でも入れるよ。」彼は言った。
「冷たい方がいい?」また彼が言った。
身長は僕よりは高いが、ちょうどクーさんぐらいだろうか。
さほど日焼けしているわけではないが、白いタンクトップからのぞく鍛えられた肩から腕と脚の筋肉が安定感を感じさせる。
髪は頬にかかるくらいで色は紫がかった薄いグレー、瞳も同じく薄いグレーだ。
小さな動物達の知り合いだろうか、涼しげな好印象の青年ではある。
それからすぐに、彼は氷をカラカラ鳴らして飲み物を運んできた。
「一人だといろいろ大変だよね、もうすぐ相方も来るはずなんだけどさ・・・。」そう言って彼は飲み物を僕らの前に並べていった。
僕らは黙って彼を見ていた。
「君ら無口になったね・・・。」彼が僕らの方をチラリと見て言った。
僕は彼に何処かで会ったことがあるだろうかと思いを巡らせた。
「そうだ君たち!畑仕事を少し手伝ってもらえないだろうか?・・・相方が来るまでの間・・・。」彼は僕らを見つめた。
「さっきからアンタ何なのよ!」そこでユニヴァが口火を切った。
「あの三人は?」クーさんが訊いた。
彼は我に返ったように、目を丸くして僕らを見つめた。
「!!あっ・・・ごめん、すっかり忘れていたよ。」
ユニヴァが鼻で大きく呼吸をして、彼の言葉を待った。
「僕は・・・僕らなんだ。」
「あ?」クーさんが小さく訊き返す。
「この前、ビンの中の小さな火を見たろう?」
僕らは無言でうなずく。
「あれは三人を統合するための媒体であり、そして今君たちが見ているこの僕の体だ。」
「ええ?」またクーさんが訊き返した。
「トリニタス・・・。」
「トリニタス?」いちいちクーさんが訊き返す。
「僕は・・・僕らは三位一体化したんだ。」
「三位一体化?」またクーさんだ。
「僕らトリニタス星の者は新しい体を新調するために、一度3体に分かれる必要があるのだ。
今回は肉体と感情とマインドが偏りすぎてしまったのだがね・・・。」
「・・・。」さすがにクーさんも聞き返さなかった。
「見かけ上で言えば、その方が生意気な小さい動物よりはいいんじゃない。」ユニヴァが彼を品定めした。
「出来れば女の子の方がよかったのになぁ・・・。」クーさんが飲み物を一口飲んで言った。
「この変容の場合は、性別は変えられないんだ。」彼が言う。
「でもピンクの髪のお姉ちゃん、かわいかったのに・・・。」ユニヴァが言う。
彼は鼻で笑った。
「あれはお兄ちゃんだ。」
「お兄ちゃん?」またクーさんが訊き返した。
「今回の分離は偏りが激しかったのだ。」彼は笑った。
「肉体と・・・感情と・・・マインド・・・。」僕は小さくつぶやいた。
「彼は感情部分を大きく荷ったのは良かったのだが、あのビンの中の火・・・この新しい体を熟成させるという任務を受けたことで、母性的な女性性を意識しすぎたのだ。」
「はぁ~ん・・・。」クーさんは納得したようにうなずいた。
「そうだ、野菜・・・。」そう言って彼はキッチンに入って行った。
「食べてくでしょう?」彼が僕らに言った。
僕ら三人は一度顔を見合わせた。
「うん。」ユニヴァが答えた。
窓から西日が差しこんできたので、僕は窓を開けてみた。
潮風が気持ちいい。
「何かピンと来ないのよね。」ユニヴァが隣に来て言った。
僕は振り返ってキッチンにいる彼を見つめた。
「そのうち慣れるよ。」クーさんが言った。
料理する後ろ姿は大きな男を思い出させる。
三位一体の説明をする口調は小さな動物っぽさもあった。
ピンクの髪に由来するものと言ったら、優美なその姿だろうか・・・。
そして、野菜たっぷりのクリームシチューが運ばれてきた。
「パンがないから、ラスクで我慢してね。」
彼はそう言って、シャンパンのビンを勢いよく振った。
「アンタ、何やってんの?」っとユニヴァが言う間もなくシャンパンが吹き出した。
ビンの底にわずかに残った液体を、僕らは一口足らずずつ分け合って乾杯した。
「大丈夫!ユニヴァのところから持ってきたのがあるから。」
彼は、昨日ピンクの髪がユニヴァにねだって持って来た、あのワインを出してきた。
僕らは再びワインで、新しい出会いに乾杯した。
「新しい体って、誰がデザインするの?」ユニヴァがシチューに手をつけながら訊いた。
「ほぼ、熟成させるものの意識によるね、今回はピンクの髪の彼だった・・・。」
「なる・・・。」ユニヴァは小さく言って、スプーンを口に運んだ。
アサリの出汁が効いている。
本格的な味わいのシチューに僕らは感嘆した。
「料理の味は、あの大きな男ゆずりね・・・。」ユニヴァが言った。
「いや、これはそれ以前からの本来のものだ。彼が料理の能力を保持していてくれたのだ。」
「ふん・・・。」ユニヴァは黙ってシチューを食べた。
「ユニヴァ、今度来る時にまたワインを少し持って来てほしい。」彼がユニヴァに言う。
「そのアツカマシさは誰ゆずり?それとも本来のものかしら?」ユニヴァが嫌味に言い返した。
そして帰り道、僕はモニター越しのユニヴァとクーさんに言った。
「彼の名前、聞いてみればよかったね。」
するとユニヴァが答えた。
「トリニタス星人だから、トリちゃんでいいわよ。」
スポンサーサイト



テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2012/09/22 15:32】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
| ホーム |
WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

れもんちゅら

Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

teddybearSHOP:lemonchura

☆ちゅら星ヴィジュアル見に来て。

記事map

*ちゅら星*を途中から読まれるのに便利です。↓↓↓

全ての記事を表示する

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

category

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログ内検索

RSSフィード