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ちゅら星(94)
44.トリニタス
ユニヴァの応接間に帰ってきた僕らを、ピンクの髪と妖精が迎えてくれた。
「クッキー全部食べちゃったわよ。」ピンクの髪が空になったクッキーの箱を振って見せた。
「ああそれ、数年前からそこに置きっぱなしだったけど・・・大丈夫だった?」ユニヴァがピンクの髪の方をチラリと見て言った。
「・・・けっこうイケたわ・・・熟成されたのかも・・・。」ピンクの髪が返した。
それからニャントロがフズリナを取り出してGakcNtに言った。
「我らもそろそろ帰還しなければ・・・。」
GakcNtが頷いた時、どこかに見えなくなっていたユニヴァがワインの瓶を2本抱えて壁から現れた。
「30年もののワインで乾杯してからにしなさいよ。」
「ワオっ!」熟成もの好きなのかピンクの髪が声を上げた。
それから僕らは極上の赤ワインを楽しんだ。
妖精は小さなお皿に出してあげたワインを、泉の水でもすするようにして飲んでいる。
ニャントロがワインのボトルを取って、ピンクの髪のグラスに継ぎ足しながら言った。
「灯台のドームに、どんな用事があるのだ?・・・。」
「・・・んっ?灯台のドーム?・・・そこにいるの?彼ら。」ピンクの髪がニャントロを見つめた。
すぐにユニヴァの興味津々な目と耳は、ニャントロとピンクの髪の会話をキャッチしたようだ。
「ピンクのお姉ちゃん、小さな動物達の知り合いなの?」ユニヴァが言う。
それで僕は、まだレモン星の我が家へは帰れそうにもない気がしてきた。
「ちょっとした届け物よ・・・。」ピンクの髪は言った。
すると突然、ニャントロがフズリナをユニヴァの応接室のフワフワの壁に投げつけた。
「よし、我らはそろそろ行こう。」GackNtも腰を上げた。
「ユニヴァ、後のことは任せる。」ニャントロが少し笑って言った。
ユニヴァの応接室の壁に、銀色の渦がグルグルとうごめいている。
「今回のこと肝に銘じる、礼は次回必ず。」
GackNtはそう言ってニャントロの手を取ると、素早く渦の中に消えていってしまった。
「・・・どうする?」ユニヴァが言った。
「どうするって?」クーさんが訊いた。
「渦が開いてる・・・直ぐそこには白い宇宙だよ。」ユニヴァが言う。
またかという思いで、僕とクーさんは顔を見合わせた。
その時、僕らの会話を遮ってピンクの髪が言った。
「ちょいと黒猫ちゃん、あたし達のことを放り出しちゃ困るわよ。」
「そうだよユニヴァ、来客中だぞ。」クーさんが言った。
「GackNtも礼は次回にって言っていたんだから、またチャンスはあるさ。」僕が言った。
「うん・・・御礼って何かしら・・・。」
ユニヴァは力なくそう言うと、名残惜しそうに渦を眺めながらワインを一口飲んだ。
10分もすると渦は次第に小さくなり始めたが、ユニヴァはいつまでも壁の渦を眺めていた。
「・・・それより黒猫ちゃん、熟成されたチーズかなんか出しなさいよ。」ピンクの髪が熟成ネタで静寂を破った。
するとユニヴァは、眠りから覚めたかのようにチーズを取りに壁の中に入って行った。
しばらくして、数種類のチーズをのせた大皿を持ってユニヴァが戻ってくると、そのころには渦はもうすっかり消え去っていた。
「それで、彼らに何を届けに来たのよ?」ピンクの髪にユニヴァが訊いた。
「まあ、基本的なものよ。」ピンクの髪がまた曖昧に答えた。
「それより黒猫ちゃん・・・まだワインある?」ピンクの髪が言う。
「あたしユニヴァって言うの、着ぐるみ姿でもないのに黒猫ちゃんは止めてよ。」
「だってあんた、黒猫が匂ってるわよ。」
ユニヴァは腕に鼻をつけてクンクン臭いをかいでみた。
「べつに猫くさくなんかないけどっ?」
ピンクの髪は鼻で笑った。
「あたしはレディ・バタフライって言うの。」
「・・・どこのパブから来たのよ?」
ユニヴァはそう言うと、また壁の中に消えて言った。
そしてワインを両手に2本ずつ4本持って現れた。
それを見て、レディ・バタフライが言った。
「それじゃ、それ持って彼らのところに行きましょ。」
僕らはユニヴァの巨大真珠に乗り込んだ。
僕はすっかり眠っている妖精をクッションごと持って来て、僕の膝の上にのせた。
レディ・バタフライの膝の上にはチーズの大皿が乗っていた。
灯台のドームに入ると、眼下の海岸にいる小さな動物と大きな男が見えた。
「おや、珍しく二人揃ってお散歩か?」クーさんがそれを見て言った。
そして僕らの巨大真珠に気がつくと、二人はこちらに手を振って見せた。
「また、ずいぶん派手な装いだね。」小さな動物がレディ・バタフライに向かって言った。
レディ・バタフライは優雅な笑顔だけで答えた。
「で、例のモノは?」大きな男が言った。
「充分熟成されてるわ。」レディ・バタフライは両腕を組んで肩を震わせた。
大きな男と小さな動物は満足そうに頷いた。
僕は僕らには関係のない話をよそに、久しぶりの潮風を気持ちよく吸い込んだ。
「あの岩場の先にジャイアントケルプの森があるの知ってる?」ユニヴァが言った。
僕は知る由もなかった。
「泳ぐか?」クーさんが言った。
そして僕らは旧交を温めている三人を残して、岩場の向こうで海水浴を楽しむことにした。
「ホシマルちゃん元気かしらね?」ユニヴァが言った。
通りかかった崖の奥に、ミンタカ星へと続くポタールがほんのりと光を放っているのが見えた。
温泉の湧き出る岩場を抜けると、小さな海岸に出た。
「うわぁ。きれいっ。」ユニヴァが叫んだ。
波間にメロウな虹色の輝きが見える。
イルカの群れだ。
「あたし達も行こう。」ユニヴァはそう言って、ザブザブと海の中に入って行く。
僕とクーさんもユニヴァの後に続いた。
海中に入ると、いつの間にかユニヴァはイルカの着ぐるみ姿で虹色のイルカと戯れていた。
僕とクーさんも無様な二本足で仲間に加わった。
「ほら、もうそこが森よ。」
ユニヴァの指す方に、深い谷底から鬱蒼と茂る、巨大な海藻の森が黒々と見えた。
「なんか出そうだな・・・。」
クーさんの弱気な声をよそに、イルカなユニヴァは森の中へとぐんぐん進んで行く。
木漏れ日がゆらゆらと薄緑色の海藻を照らしている。
時々ケルプの合間にイルカの泳ぎが輝きを放つ。
僕は息継ぎをするのも忘れるほど、気分よくキラキラと美しいケルプの森を進んだ。
頬をなでる海藻が、異次元の旅の疲れを癒していった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2012/07/23 13:56】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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