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ちゅら星(92)
結局ユニヴァの思い通り僕らは水族館にやって来た。
カモフラージュしているものの、館内には数人のコンニャク人間がうろついていた。
ここでもいなくなった妖精を捜しているのだろう。
「見てよ、この小魚!どう見ても小さいクジラよね。」ユニヴァが近くのコンニャク水槽を見て楽しそうに言う。
「ギャー気持ち悪いっっ!アリ人間イヤダぁ~!!」縮小された巨大真珠の中で騒いでも、スピーカーから聞こえるユニヴァの声はいつものままなので、大騒ぎだ。
「それよりユニヴァ、GackNtはどこにいると思う?」僕が冷静にユニヴァの興奮を遮った。
「もっと奥の方じゃない?」ユニヴァが言った。
いくら僕でもその手には乗らない。
そしてニャントロが言った。
「ちょうどこの真上辺りにいるようだ・・・。」
何とか上に上がる階段を探さなければと僕は思った。
それから、ユニヴァの希望に反して巨大真珠は水族館を出た。
このフロアの壁でまだ探索していないのは、標本制作室の右側だけだ。
僕はそこに上階へ行く術があると見て、巨大真珠で向かった。
巨大真珠の触手は直ぐに新たな入り口を発見した。
そして扉も難なく開いてくれた。
中は5メートル四方くらいの部屋で、中央には2メートル位の半透明の円柱が立っている。
さっきからずっとサーッという音が聞こえている。
「ピーちゃん、その柱みたいなの竜巻っぽくない?」ユニヴァが言った。
「ああ、その中に入ると上に巻き上げてくれる仕組みだな。」クーさんが言った。
僕は少し円柱に巨大真珠を近づけて見た。
確かに空気の流れを感じる、そして一気に中に突入してみると僕らはもう新たなフロアにいた。
そこは白く輝く壁に囲まれた、ものすごく明るい大きな広間になっていた。
人影はまったく見えない。
軽やかな緑の植物があちこちに配置されていて、広間の淵の方には小さな小川が取り巻いている。
「ちょっと、直ぐそこに階段があるけど・・・。」ユニヴァが言った。
たぶんもう少し階下の壁を探れば、その先には階段に続く扉もあったのかもしれない。
「でも竜巻エレベーターの方が速くて面白いわよ。」ピンクの髪の彼女が言った。
気がつくと向こうからGackNtが歩いてくるのが見えた。
僕は巨大真珠をそちらに向けた。
「ここはこの施設の最上階だ。」巨大真珠に乗り込んだGackNtが言った。
「あの隅にメンテナンス用のハッチがある。」
ところがハッチのところに行ってみると、人一人がやっと通れるくらいの大きさで、巨大真珠では抜けられないことが分かった。
「このままじゃ無理だ、皆一度降りよう。」
巨大真珠を出て、僕は一瞬ドキッとした。
足元にコンニャクが数体転がっていたからだ。
「大丈夫、気を失っている。」GackNtが言った。
そしてユニヴァ達も通常サイズに戻って、巨大真珠から出てきた。
ハッチには鍵がかかっている。
「任せてよ。」ユニヴァはそう言うと、もう一度巨大真珠に乗り込んで、レーザービームを一発撃った。
見事に命中して、鍵は砕け散った。
ハッチの外は来た時同様の夜の景色だ。
「そう言えば、コンニャク人間が今は夜期だと言っていたね。」僕が言った。
「ここはいつでも夜よ。そして反対側はいつでも昼。」ピンクの髪が言った。
「じゃあ反対側に住めば明るいのにね。」ユニヴァが言った。
「高温すぎるのよ。特にコンニャク人間は干からびて生きていけないの。」ピンクの髪が言う。
「なぁ~んだ。」ユニヴァがどうでもよさそうに答えた。
最後にGackNtがハッチを閉めて、全員がドーム型の施設の屋根に立った。
「鍵を壊した音が聞こえたようだ。」GackNtが言った。
どうやら追手が来ているらしい、ハッチの中から声が聞こえる。
そして僕らの巨大真珠は、一気にこの星の上空へと飛び去った。
「とにかく安全な宇宙空間に出て、一息ついたら『メェ~~』を頼む。」GackNtが言った。
「オッケー。」面倒そうにユニヴァが答えた。
「昼側に行くのではないの?」ピンクの髪が言った。
「何しに?」ユニヴァと僕とクーさんが同時に言った。
「あなた方は、ちゅら星に行くのでは?」
「そうよね、ちゅら星っぽさ満開の人たちなのに・・・。」妖精も言った。
「もちろん僕らの目的はちゅら星だが、それとこの星の昼側に何が・・・?」GackNtがモニターのピンクの髪に問いかけた。
「ポータルよねぇ。」妖精が言うと、ピンクの髪も頷いた。
「ええっっ!ちゅら星へのポータルがあるっていうの?」ユニヴァが乗り出した。
僕もクーさんも乗り出した。
「遠距離からちゅら星を目指す者は、皆このポータルを利用するわ。そしてその旅行者を捕獲して、宇宙人コレクションを楽しむのがコンニャク人間の趣味と言うわけ。」
僕の脳裏には、ちゅら星の風景がリアルに蘇ってきた。
「やったぁ、昼側へGo!!」ユニヴァの声が響いた。
上空を回り込んで行くと、次第に明るくなっていくのが分かる。
その時僕は、さっきから考えていたことをGackNtに言ってみた。
「宇宙人コレクションなんかしているコンニャク人間を、あのまま放置していいと想う?」
「懲らしめたいと言うのか?」GackNtがモニター越しに僕を見た。
僕は小さくうなずいた。
「あれはあれでコンニャク人間の文明に於いては、生物学的に役立っていることもある。そして、その善し悪しには彼らもいつか必ず気付く時が来る・・・。僕らの介入することじゃないんだ。もちろん僕らはコンニャク詰めになんかされちゃいられないけどね。」GackNtはそう言って笑った。
「ねぇ、太陽とか恒星みたいなのはどこ?」ユニヴァが誰とは無しに質問した。
そう言えば最初に渦を出た時にも、この付近にそんな明るい星は見えなかったような気がした。
「ニャントロ、分かるか?」GackNtがニャントロに訊く。
しばらくしてニャントロが言った。
「昼側の地中深くに何処かの恒星に繋がるポータルが開いていて、そこからエネルギーが放出されているようだ。」
「信じられない、変な星。」ユニヴァが言った。
外気温は既に50℃近くに達している。
「ニャントロ、ポータルの座標は?」GackNtが言った。
どんな時でも、この猫人間達のチームワークは頼りになる。
「座標なら分かるわ。」ピンクの髪が言って、メモを読み上げた。
僕は間近にちゅら星を感じて、少し心臓がドキドキしてきた。
「ちゅら星人はそのお譲ちゃん?」ピンクの髪が言った。
「そうよ、アタシ。」ユニヴァが答えた。
すると、おとなしく縮小真珠の脇に腰かけていた妖精が向き直って、小さなユニヴァに話しかけた。
「ねねっ、妖精がいるドームを知らないかしら?」
ユニヴァは考えた風な顔をしている。
「ユニヴァ、ピクニックのあそこでしょ・・・。」僕が言った。
「ああ、いるいる、妖精がうじゃうじゃいるわよ、あそこなら。」ユニヴァは妖精に言う。
「うじゃうじゃ!うーれしーわぁ。」妖精は目をキラキラさせて喜んでいる。
「それでピンクの髪のお姉さんは、どこに行くつもりなの?」クーさんが興味津々に訊いてきた。
「逢うべき人がいるの。」ピンクの髪は短くそう言っただけだった。
「その逢うべき人々・・・我らの親しき者のようだ。」突然ニャントロが言った。
僕らはニャントロの言葉に耳を澄ませたが、ちょうどその時ポータルの近くに到着したようだった。
ニャントロが話をポータルへの案内に切り替えて言った。
「GackNt、あの十字型の岩、あの近くにポータルがあるはずだ。」
「あったぞ、あの窪みだな。」GackNtはそう言って、巨大真珠を降下させていった。
僕にも、岩陰の地面にぽっかりと穴が開いているのが見えた。
そして穴のすぐ上で一度静止してから、GackNtは巨大真珠をゆっくりと穴の中に降下させて行った。
洞窟の内部も、外部と変わらず同じ明るさを壁自体が放っていた。
温度は更に上昇して、180℃を軽く超えていった。
ある程度まで降りると、長い横穴が続いていた。
横穴に入って大分経つと、外気温が下がり、明るさも落ちてきたことに気がついた。
もう30分以上横穴を移動しただろうか、外気温は40℃くらいまで下がってきた。
「もうすぐよ。この先に・・・ほら聞こえる・・・。」ピンクの髪がそう言って耳を済ませたので、僕らも外の音に耳をすませた。
「水が流れてる・・・。」ユニヴァが言った。
「滝よ、滝を抜ければちゅら星。」ピンクの髪が言った。
「スピードUP!」ユニヴァが陽気に言う。
「落ちつけ。」GackNtはそう言って、慎重に巨大真珠を進めた。
滝の音がしだいによく聞こえてくる。
外気温は35℃に下がり、洞窟の壁の光は鈍くなり薄暗さが増してきた。
更に滝音が近づいてくる、ちゅら星は間近だ。
そして、GackNtが言った。
「この度は・・・、我のつまらぬ行動ミスにより、皆を命の危機に晒すほどの事態を招いたこと深く反省する。そして皆の愛と勇気にこの上なく感謝する。・・・。」
そしてモニター越しに僕らを見つめた。
「ちょっと、早く滝に突っ込みなさいよ!」ユニヴァがモニターいっぱいに顔を近づけて言った。
「お疲れさま・・・でした!」そしてGackNtは一気に巨大真珠で滝を突き抜けた。
そして僕らはちゅら星に戻って来たのだ。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2012/05/14 16:29】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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