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ちゅら星(90)
それからすぐに別のコンニャクがやって来て、僕らにお茶を出してくれた。
「長旅でお疲れでしょう?シャワー室のご用意があります。」コンニャクの一人が言った。
「それより、少し体を伸ばしたい、施設内を散歩しても・・・?」GackNtが突然コンニャクに訊いた。
「・・・。」
コンニャクはGackNtの突然の提案に一瞬キョトンとしていたが、素早く他のコンニャクが続けた。
「ええ、そこのターミナルプールの周りをご自由にどうぞ。」
GackNtはチラリと僕を見て、席を立って部屋を出て行った。
僕はなんとなくGackNtに呼ばれているような気がしてユニヴァの方を見た。
ユニヴァは何も言わないで、僕に眼だけでうなずいて見せた。
「僕もちょっと歩いてくるよ。」
僕はそう言ってGackNtの後を追って部屋を出た。
部屋を出ると、GackNtは直ぐ近くに立って僕を待っていたようだ。
それから僕らは並んで歩き始めた。
ターミナルプールの周囲はトラック2周分くらいあるだろうか、放射状に並んだ桟橋の入り口以外は手すりのついた低い壁に囲まれている。
「ニャントロがSOS信号をキャッチした。」GackNtが言う。
「誰の?」
「分からない。この施設の中からだ。」
「コンニャクの誰かかな?」
「否、この星の者ではないようだ。」
「ねぇGackNt、僕はコンニャクの奴らがなんか企んでいる気がするんだけど。」
「間違いない、企んでいるよ。」GackNtもさらりと同意した。
「あれ?今そこから誰か出てきたよねぇ・・・。」
僕らの先を歩いているコンニャクは、今僕らの左側にあるまっさらな壁から出てきたのだ。
「行ってみよう。」
GackNtはそう言うと、壁に手を差し出した。
「カモフラージュだ、行こう。」
そして、僕らは壁の中に入り込んで行った。
中は狭い通路だが、直ぐに階段に繋がり上階へ出た。
そこは非常に広いスペースのロビーだが、薄暗い。
ロビーと言っても、窓も扉もない四方壁に囲まれた丸い部屋だ。
僕らは壁にはカモフラージュされた入口があるはずだと、壁を手でなぞりながら壁沿いにゆっくりと進んだ。
その時、反対側の壁から一人のコンニャクが現れた。
僕らは息を飲んで、壁に寄り添って固まった。
幸い、薄暗く広いロビーのおかげで気付かれてはいない。
「ここだ。」
その時GackNtが小さく囁いて、僕の腕を引っ張った。
GackNtが入り口を見つけたので、僕らは手近な部屋に忍び込んだのだ。
その部屋はロビーよりさらに薄暗い。
「人気がなくてよかった。」GackNtが深呼吸を一つした。
「水族館?」僕が言った。
周りには、いくつもの水槽らしきものが、ぼんやりと青い光を放っている。
僕らは水槽を覗いてみる事にした。
「水槽じゃない・・・コンニャクだ。」
水槽に手を触れると、それはふにゃふにゃの透明なコンニャクだと分かった。
中には、小さな魚のような生き物が、氷漬けさながらにコンニャク漬けにされて固められている。
「ううっ!」僕は息をのんだ。
まともなヒューマノイドだ。
それからペンギンもクマ型人間も、コウモリ人間の姿も皆コンニャクで固められている。
「宇宙人の標本場だ。」GackNtが茫然と標本達を眺めながら言った。
しかもぼんやりと光るコンニャクは部屋のずうっと奥まで続いている、すごい数だ。
「誰かがコンニャクにされかけているはずだ、助けよう。」GackNtは僕を振り返るとそう言った。
ニャントロの受け取ったSOS信号がそれに違いない。
僕らは部屋を出て、また壁沿いに歩き標本制作室への入り口を捜した。
「これは、遅かれ僕らもああされちゃうって事だよね。」僕は奴らの企みを理解した。
「されてたまるか・・・。」
直ぐ近くの壁から二人のコンニャクが出てきた。
僕らは壁に張り付いて息を殺していた。
「そうだ、これがあった。」
僕はポケットから小型巨大真珠を取り出した。
巨大真珠に乗り込めば、カモフラージュして自由に行動できる。
巨大真珠に乗り込んだ僕とGackNtは、早速今やり過ごした二人が出てきた壁に入ってみた。
「なんだ、休憩室だ。」
比較的狭いスペースで、奥にスクリーンがあり、そこに向かってイスとテーブルが並んでいる。
数人のコンニャクが飲み物などを飲みながら、スクリーンに映るつまらなそうな映像を見るでもなしにそこにいた。
それからまたロビーに出た僕らは、巨大真珠から触手をだして入り口を捜して壁を探った。
結局、次にたどり着いた入り口は、最初に一人のコンニャクが出てきた場所だった。
「ん・・・制作室かな?」
そこは小さなスペースで、更に扉が用意されていた。
「開かない・・・。」僕は巨大真珠から手まで出して、ドアを引いたり押したりしてみた。
「誰か来るまで待つしかない。」
ちょうどその時、先程のコンニャクらしき一人が入って来た。
先程のコンニャクかどうかは分からない、判別は不可能だからだ。
コンニャクが難なく入って行った部屋には、奥に大きな金属製の筒が目立っている。
中央に大きめの丸窓がついていて、中で金属製の大きな羽が回転しているのが見える。
「ああやって、原料のコンニャクをかき回しているんだ。」GackNtは興味深く巨大真珠をコンニャク釜に近づけた。
さっきのコンニャクはこちらに歩いてくると、壁沿いに並んでいるハンドルの一つを握って引いた。
「冷蔵庫だ。」
「あれは、コンニャク?」
「否、コンニャク人間だろう。」
「・・・ってことは、死体?」
「どうやら・・・。」
どうやら、原料は死んだコンニャク人間を使用しているらしい。
それから僕らは更に部屋の奥に進んだ。
ちょうど大釜の後ろに細い通路があった。
通路の奥に扉があり、今度は近づくとすぐに開いてくれた。
大小のガラスケースが並んでいる。
「ここに標本用の素材を保管しているようだね・・・。」GackNtが言った。
けれども、どのケースも今は空のようだった。
「ピーちゃん、SOS感じる?」GackNtが僕に言った。
僕は首を振った。
GackNtも首を振った。
「もう何か処理をされちゃ・・・」
そう言いかけた時、微かに何か音がした。
カスカスッ、カスカスッ・・・。
「あの奥だ。」
たくさん並ぶガラスケースの脇に、10センチ四方くらいの小さなケースがあった。
「妖精・・・。」
トンボの様な透き通った二枚羽の女の子がガラスケースをしきりに叩いている。
「カモフラージュの僕達が分かるのだろうか?」
僕らはしばらく、妖精を観察していた。
ペチョン、ペチョン・・・。
コンニャクが通路をこちらに来る足音だ。
僕はとにかく、腕を出して妖精のケースをつかみ巨大真珠に引き入れた。
「はぁ、ありがと、あんた達、ちゅら星の人ね・・・。」ケースの中の妖精が僕らを見つめて言った。
「僕らは違うが、仲間にはちゅら星人もいる。」GackNtが言った。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2012/03/17 17:07】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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