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ちゅら星(87)
それから念のためユニヴァは発声練習を繰り返していた。
「そろそろだな。」ニャントロがユニヴァに言った。
そして僕とクーさんとニャントロは巨大真珠に乗り込んだ。
「ユニヴァ、よろしく頼むよ。」クーさんはそう言って僕らの乗った巨大真珠を最小化させた。
ちょうど女神の水晶玉と同じくらいのサイズになった僕らをユニヴァの手がつかんだ。
二人乗りのGackNtの席の前にはピラミッドに納まった水晶玉が設置されている。
そしてユニヴァの席の前には、僕がさっきジャングルの小枝でこしらえた、鳥の巣みたいな縮小巨大真珠の設置場所がある。
ユニヴァは両手でそっと僕らの乗った巨大真珠をその場所においた。
プゥーンという弦をはじいたような音が聞こえている。
ピラミッドからだ。
「んじゃ始めるわよ。」モニター越しのユニヴァが言う。
モニター越しのGackNtは静かに頷いた。
「んんんっ、ちゅら星へ!」ユニヴァはそう言うと「めぇぇぇ~~・・・」と声を上げた。
「めえええエエエエェェェ~~~~・・・・」
声の振動域が拡大していくのが分かる。
「メエエエエエエエエエエエエ~~~~・・・・・」
ハウリング音のように聞こえる。
水晶玉の中で光が瞬いている。
そしてジャングルの景色はかすんでいく。
「いいぞ。」小さい声でクーさんが言った。
ジャングルの景色はほとんど見えなくなり、煙のような白い靄が巨大真珠の周りを渦巻いている。
僕は緊張したままモニター越しのユニヴァを見つめていた。
「ん?」ニャントロの声が聞こえた。
白い靄の隙間に光の筋が見えてきたのだ。
「ふぅ、めええエエエエエ~~~・・・・」ユニヴァが息継ぎをして『メェ~~』を続けた。
「雨みたいだ?」クーさんが言った。
水滴のようなものが巨大真珠の窓に当たっている。
「大丈夫、安全な雨だ。」GackNtの声がした。
ユニヴァは『メェ~~』を続けている。
「いや、滝か?」またクーさんが言った。
水が流れ落ちる音が聞こえる。
「ここは、まさか・・・。」ニャントロが言った。
「まさかの風呂場のようだな。」GackNtが言った。
そしてその時ユニヴァの『メェ~~』が止まった。
「風呂場?」ユニヴァが窓の外に顔を向けた。
「ここがちゅら星なら、風呂場でもなんでもいいよ。」クーさんが言った。
「いくらなんでも一気にちゅら星は無理よ。」
風呂場に人影は見えないが、念のために巨大真珠をカモフラージュして、僕らは湯気の薄い方へ移動した。
「誰もいないぜ、久しぶりだ風呂入ろう。」クーさんがモニター越しにみんなに言った。
「待て、ここは比較的大きな街のようだ。」ニャントロが言った。
そしてニャントロは集中した。
「ユニヴァ!ここはなかなかいい星だ。」目を開けたニャントロが言った。
「でもちゅら星じゃないでしょ。」ユニヴァがそっけなく言った。
「美味い料理がある。」ニャントロが言った。
「やったぞ。」僕の隣でクーさんが声を上げた。
「しかもいい葡萄がよく育つ、最適の気候状態だ。」GackNtが言った。
「ワインか、いいな。」クーさんが答えて言った。
「風呂の前に、恐竜のステーキだ。」GackNtはそう言って風呂場の出口を探した。
僕らはこの街でもかなり大きい大衆浴場に着いたようだ。
大衆浴場を出ると商店がにぎわっていた。
ほとんどがヒューマノイド系ばかりだが、多様な種が行きかっている。
「十分対応できる星だ。」
僕らはカモフラージュのまま、近くの公園まで移動した。
ユニヴァが僕らの縮小巨大真珠をつかんで外に出たので、やっと僕ら三人も通常サイズに戻ることができた。
「あぁ、ちゃんと戻れたぜ。」クーさんは自分の体をチェックした。
どこの宇宙のどこの星かもわからないけれど、僕らは久しぶりにのんびり気分で中心街へ向かって散歩した。
「あっ、GackNtだ。」
先を行っていたのだろう、僕らの前方にGackNtの姿があった。
超巨大な恐竜を目の前にしてたたずんでいる。
超巨大な恐竜と言っても、恐竜そっくりの形をした建物なのだ。
「あいつ、ハラへってたんだな。」クーさんがGackNtを見て言った。
「この店でいいか?」僕らを確認したGackNtが言った。
僕らは大口を開けた恐竜の口の中へと入って行った。
店内に入ると、真っ赤なお目目のウサギ系ヒューマノイドの女の子が対応してくれた。
「バラエティコース5人分たのむ。」席に着くなりGackNtがウサギちゃんに告げた。
「ハイ、カシコマリマシタ。」ウサギちゃんはにっこりして下がって行った。
「ちょっとぉ!まだメニューも見てないのよ。」ユニヴァがGackNtに乗り出して言った。
「君らがあんまりのんびり歩いているので、店の前で5分以上検討した結果だ。」GackNtがユニヴァの抗議に答えて言った。
「デザートはあたしに決めさせて!!」とユニヴァが断言した。
「それより、向こうの席の黒っぽい二人組・・・。」GackNtがチラリと奥の席に目をやって言った。
「一斉に見るな!」ニャントロが振り向きかけた僕らを急に制した。
「なぜ、コウモリ人間がこんな所に・・・。」
ニャントロのその言葉に、結局僕らは揃って奥の席を見た。
一件見たところでは黒ネズミ人間にしか見えないその二人は、血の滴るような恐竜レアステーキをほおばっているところだ。
「彼らがどうやってこの星にたどり着いたかは知らないが、彼らが星ごとタイムワープしようとしていた理由がこれだ。」ニャントロが言った。
「恐竜ってこと?」ユニヴァが訊いた。
「彼らはピラルクも植物も食べない。食糧難なのだ。」ニャントロが言った。
「じゃあコウモリ人間達は、恐竜時代へタイムワープしようとしてたわけだね。」僕が言うとニャントロは頷いた。
「そんなに美味いの?・・・恐竜って。」僕は周りの席で恐竜料理を楽しむ客を横目で見た。
バラエティコースは生ハムのサラダから始まった。
小型恐竜のスープにトッピングされた目玉にはちょっと引いた。
・・・が食べて見ると意外に柔らかくおいしかった。
魚系恐竜のムースはサーモンのムースとほとんど変わらない。
メインのステーキは肉食竜と草食竜を選ぶことができたので、僕らは全員草食竜を選んだ。
ウサギちゃんが、肉食竜はクセがあるのではじめての方は草食竜がいいとアドバイスしたからだ。
それからユニヴァが、デザートに翼竜卵のプリンを注文した。
僕らはしっかり焼いた草食竜を、甘酸っぱい果物のソースで頂いた。
そして、食後のお茶と共に運ばれてきたのはプリン。
フルーツの中央に直径30cmはある巨大プリンだ。
「お取り分けいたします。」ウサギちゃんが言った。
「取り分けなくていいわ。」なぜかユニヴァがそれを断った。
ユニヴァは中央に置かれた巨大プリンの皿を、自分の前に引き寄せた。
みんなハテナな顔でそれを見守った。
ユニヴァはプリンにスプーンを突き刺して、大きい一口を食べた。
すると満足そうににっこりして、隣の席の僕の前に巨大プリンの皿を滑らせた。
僕はユニヴァにならって、スプーンですくって一口食べた。
そして、僕の隣のニャントロに皿を移動した。
ニャントロも一口食べた。
彼女には珍しく緩んだほほ笑みを見せた。
クーさんとGackNtまで回っても、巨大プリンはまだ10分の9くらい残っている。
そしてまたユニヴァからプリンが何度も巡回した。
気がつくと、あのコウモリ人間達の姿はもう消えていた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2011/12/21 16:37】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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