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ちゅら星(83)
「見て、渦が濃くなってきている。急がないと!」僕が言った。
「あたしとニャントロちゃんはこの二人乗りで行く、GackNtはピーちゃん達の方に乗って。」ユニヴァが早口に言った。
その時、巨大真珠を目の前にして、GackNtはポケットから何かをとりだした。
「この身体を返さなければ・・・彼を待っている人がいる。」
それは小さな透明のカプセルで、中で赤い光が振動しているのが見える。
「それが、この白ネズミの本当の持ち主か・・・。」ニャントロがGackNtの手の中のカプセルを見つめた。
それからニャントロは空を見上げて、渦を確認した。
「ユニヴァ、この小型宇宙船を我らに譲ってくれ。」突然ニャントロが言った。
その時僕が空を見上げると、急激に渦が黒ずんで収縮していくのが分かった。
「急げ、ユニヴァ。」ニャントロがユニヴァをせかした。
「済まない、ニャントロ。」GackNtは言って、素早く二人乗りに乗り込んだ。
しかしその2倍の素早さで、ユニヴァはGackNtの乗った二人乗りに飛び乗ったのだ。
「ユニヴァ!」ニャントロが叫ぶ。
「白ネズミを返しに行こう!ニャントロちゃんはそっちに乗って。」ユニヴァが言った。
「まて、ユニヴァ!」
GackNtの呼びかけに、ユニヴァはモニター越しに二ィっと笑った。
「無理よ、もう渦は閉まっちゃうわ。」
急げばまだ間に合うことは、僕とクーさんにも分かっていた。
時間が止まったように、誰も何も言わなかった。
そして渦は濃さを増し、次第に暗黒の夜空と化していったのだ。
僕らは異次元の世界に閉じ込められてしまった。
沈黙の時間が流れた後、クーさんが言った。
「とにかく、白ネズミを返しに行こう。」
その言葉に、やっとニャントロも巨大真珠へ乗り込んできた。
そして、GackNtが目的地へと進路をとったので、僕らはその後に続いた。
僕らは黄色く光る街へ到着した。
「彼らは金細工の職人だ。」GackNtが白ネズミについて説明した。
GackNtは彼の身体にウォークインした直後、コントロールを失い欲望のままに行動したため、彼のパートナーに心の傷を負わしてしまったようなのだ。
そして白ネズミ自身の信用も丸つぶれにしてしまった。
「ぶっ壊しちゃった関係、修復できるの?」クーさんが面倒臭そうに言った。
「わけない。」ニャントロは軽く答えた。
「倍にして返すつもりだ。」GackNtが言った。
その時、静かにしていたユニヴァから不意に声がした。
「人が来るわ、カモフラージュして。」
僕らは街の広場の片隅にいた。
繁華街ではないので、真っ暗なこの時間帯に人気はほとんど見えない。
人影の方に微かに揺れる光が見える、ロウソクの明かりだろうか。
「あの先は何か神聖な建物のようね。」ユニヴァが観察している。
「祈りの場だ。」ニャントロが言う。
ロウソクの光は祈りの場の方に向かって移動して行くようだ。
「ネズミグループは船外行動、ピーちゃんとクーちゃんはここで待機。」
ユニヴァがそう言うと、ネズミ人間姿の三人は巨大真珠を出て祈りの場へと向かった。
「やはり・・・彼女だ。」GackNtがつぶやいた。
白ネズミのパートナーの彼女は、ほっそりとした淡いグレーのネズミ人間だった。
彼女は祭壇にロウソクをそっと置いて、小さな声で何かつぶやいていた。
「彼の帰りを懇願している・・・彼は愛されている。」ニャントロが彼女の心を読んで言う。
それからGackNtはカプセルをとりだして一息に飲み込んだ。
そして、ニャントロにもたれかかる様にして意識を失っていった。
「大丈夫なの?この人・・・。」ユニヴァは死んだようなGackNtを見つめた。
ニャントロはユニヴァを見て静かに頷いたが、GackNtはピクリとも動かなくなってしまった。
しばらくするとGackNtの身体から発光する煙のようなものが立ち登り始めた。
煙の中にはキラキラした砂のようなものがたくさん見える。
次第にその砂は密度を増して、横たわる白ネズミの傍らでひと塊になっていく。
「ああ、GackNt!」姿を現した猫人間にユニヴァが思わず小さく叫んだ。
GackNtが抜け出した後の白ネズミは、まだニャントロにもたれかかったままピクリとも動かない。
「あ、彼女帰っちゃうわよ。」祭壇から立ちあがった彼女を見てユニヴァが言った。
彼女はユニヴァ達の気配に気がついたのか、足早に立ち去って行った。
その時、白ネズミの瞳が僅かに開いた。
「大丈夫か?」GackNtが声をかけた。
「んんっ・・・んああ・・・。」白ネズミは状況をつかめずに、ぼんやりと宙を見つめていた。
「任務は完了だ。」GackNtが白ネズミを見つめて言った。
「任務って?」ユニヴァが言うと、ニャントロは小さく首を振ってユニヴァを制した。
「任・・・務・・・??」白ネズミの瞳が猫人間のGackNtを見つめた。
「うん、全て上手くいった。」そうGackNtが言うと、白ネズミは起き上がろうとしたが、まだ思うように体が動かない様子だ。
「本当に宇宙人なんだね・・・。」
たぶん彼にとって猫人間のGackNtは、初めて遭遇したネズミ人間以外のヒューマノイドのはずだ。
「だけど何も覚えてないんだ・・・。」
「今から説明するよ。」GackNtはそう言って、物語を語り始めた。
一通の手紙がGackNtに届いた。
洞窟の封印を解いて来てほしいという依頼だった。
依頼主は年老いた宇宙の探検団の一人だ。
遠い昔、宇宙からの侵入者がこの星のある洞窟を封印した。
その洞窟には、この星にとって未だ知られたことのない未知の鉱物が眠っている。
探検家は後に鉱物を独り占めにしたいだけだったのだが、今となっては遠い星の鉱物に興味は失せてしまった。
そこで、封印したままでは星の住人に申し訳ないと思い至り、老探検家は『宇宙の便利屋GackNt』に封印を解くことを依頼したのだ。
しかし封印を解くには、あるネズミ一族の末裔のDNAに隠された暗号を知る必要があった。
そしてそれは女性のDNAの中に継承されている。
そこでGackNtが白ネズミの身体を借りて、その暗号を捜し出すという物語だった。
「ずいぶん壮大なドラマね・・・。」小さい声でユニヴァが言った。
「じゃあ・・・暗号が分かったんだね・・・。」白ネズミは少しだけ体を起こした。
その瞬間にニャントロが猫人間の姿に戻った。
宇宙人の姿でいた方が都合がいいだろうと察したからだ。
ユニヴァも慌てて着ぐるみの黒猫姿に変身した。
ユニヴァよりもハイレベルな存在の猫人間をイメージするのは難しかったので、とりあえずおなじみの着ぐるみ姿で間に合わせたのだ。
着ぐるみのユニヴァを見て、猫人間のニャントロは必死に笑いをこらえている。
白ネズミはチラリとユニヴァの方を見たが、暗がりのせいもあって着ぐるみのユニヴァも猫人間だと想ってくれたようだ。
「しかも洞窟の場所は、君の金鉱の奥にある。」
「本当に!!」白ネズミは一気に起き上がって叫んだ。
それから宇宙人三人組は白ネズミと共に、彼の金の採掘現場へと向かった。
彼が長い間に掘り進めた洞窟はいくつにも枝分かれして、かなり深くまで続いている。
「この辺だ、ここでいい。」GackNtが通路の途中で足を止めた。
「こんなところ?」ユニヴァが不審そうに言った。
本来の洞窟はさらに奥まで続いている。
GackNtは地面に右手を置いて集中し始めた。
するとGackNtの手の周りの土が少しずつ動き出すのが分かった。
やがてその土はズルズルと地下に吸い込まれるように流れ始める。
そしてGackNtが地面から手を離すと、すっぽりと穴が開いていて、土はさらに地下へと落ち続けていった。
しばらくすると土の流れは止まって、そこに人が通れるくらいの穴が開き、その下には空間があることが分かった。
「下に降りてみるといい。」
GackNtがそう言ったので、白ネズミがどこからかロープはしごとランプを出してきた。
そして白ネズミは慣れた手つきではしごを降りて行った。
ユニヴァがGackNtの開けた穴から中の様子を覗き込んでみると、一面のキラキラした壁面に圧倒されている白ネズミが見えた。
白ネズミはキラキラした鉱物をよく見ようと、ライトを壁面に近づけてみた。
「何かしら、紫色?」ユニヴァが言った。
「アメジストだ。」GackNtが答えた。
気がつくとニャントロの姿は見えなくなっていた。
「広場に巨大真珠を呼びに行っている。」GackNtがユニヴァの耳元で言った。
洞窟を出ると、真っ暗闇だったこの星にも夜明けが来ていた。
「それじゃ、僕らは行く。」
GackNtがそう言うと、白ネズミが少し悲しそうな顔をした。
「彼女・・・信じてくれるだろうか?」
「大丈夫よ、だってアメジストの証拠があるじゃない・・・。」ユニヴァが言った。
「でも、宇宙人の話までは・・・。」白ネズミは、彼女はまだ眠っているだろう家の方を見てつぶやいた。
「だったら待っててあげるから、彼女連れて来なさいよ。」
そう言うユニヴァに白ネズミはうなずいた。
そして不思議そうな顔でユニヴァの顔を見た後、GackNtとユニヴァを交互に何度か見ていたが、彼女を呼びに家に入って行った。
「着ぐるみだってバレたかな?」
そう言うユニヴァを見て、GackNtは苦笑いをした。
「お疲れさんっ。」
その声に振り替えると、巨大真珠と小型巨大真珠がすぐ後ろに来ていた。
「行こう。」GackNtがユニヴァに言った。
「でも、ネズミちゃん達待ってないと。」
その時、白ネズミの家の扉が開くのが見えた。
「いいから早く!」GackNtはそう言ってユニヴァの腕をつかんで巨大真珠に走った。
小型巨大真珠にはクーさんとニャントロが乗っていたので、二人は僕のいる巨大真珠に飛び乗って来た。
「白ネズミの上空を旋回した後、高度を一気に上げて急上昇で頼む。」GackNtが早口に言うと、モニター越しのクーさんも頷いた。
「見てよ、あのネズミの彼女、巨大真珠にビックリして腰抜かしちゃったわ。」ユニヴァが眼下を覗き込んで言った。
「みんなには世話をかけた・・・ありがとう。」GackNtがつぶやいた。
それから巨大真珠は高度を一気に上げて急上昇した。
すぐに白ネズミ達は見えなくなり、チューブに繋がれた碁石の並ぶ景色が広がった。
夜には色とりどりの碁石の街も、昼間は冴えないグレーぽい色合いで朝日を反射している。
「ところで、これからどうする。」モニターのクーさんから声がして、僕らは宇宙人ごっこから現実に引き戻された。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2011/08/21 12:13】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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