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ちゅら(81)
「それガス欠よ。」ユニヴァはそう言って立ち上がると、2番目のモニターに近づいて顔を寄せて小さな白い点を観察していた。
そして僕らは、そのユニヴァを目で追っていた。
「エネルギーシステムがどうかしちゃったのよ。」ユニヴァは言う。
「何でわかる?」クーさんがユニヴァの背中に質問した。
「たぶん彼はシステムの異常に気づいて、イチかバチかでレモン星にワープしようとしたのね・・・だけど結局ガス欠でこんなところに不時着、通常サイズに戻すためのありったけのパワーをSOS信号の送信に譲ったのでしょうね・・・。」
「うーん、かもね・・・。」クーさんもモニターを見つめた。
するとユニヴァは突然こちらに向きなおり、巨大真珠をポケットから取り出した。
そして僕らが乗り込むと、ユニヴァは室内を移動しやすいように巨大真珠を少し縮小させた。
巨大真珠に乗った僕らはとんがり耳に誘導されて、彼のいる2番目のモニターに映っていた部屋の前まで来た。
「開きません。」とんがり耳が部屋の入り口のパネルを操作している。
「周波数が通常時に戻らないと、扉は開かないはずですから・・・。」とんがり耳は諦めたようにパネルから手を外し、巨大真珠の中の僕らを見た。
「何者かが入室するとランダムに周波数が変動し始めるのです・・・。」とんがり耳は無表情に言った。
「止められるでしょう?」ユニヴァが面倒くさそうに言う。
「見たとおり止まっています。止まったままどうにも動かないのです。」僕らはため息だけをついた。
「こちらのアトラクションのシステムは正常なの?」ユニヴァが更に面倒くさそうに言った。
全く通常通りだそうだ。
「通常通り稼働しているのに、彼の周波数だけが変動しないのね・・・。」女神は困ったように頬杖をついた。
「ガス欠・・・?」僕に思いついたことがあった。
宇宙船の中でパワーを失ったままでは、酸素の供給さえままならず彼は命を失いかねない。
彼はこの部屋の周波数変動に使うエネルギーを生命維持のために宇宙船に取り込んでいるに違いない。
僕はそう思ったのだ。
「それだわ!ピーちゃん。」ユニヴァが突然に声をあげた。
「なんとかこの部屋のエネルギー供給量を増やせない?」
「やってみましょう。」とんがり耳はユニヴァの提案に、パネルのマイクでコントロール室を呼び出した。
それからしばらくしてパネルのスピーカーから声がした。
「出力50%アップして様子を見ます。」
とんがり耳が僕らの方を見て相づちをうった。
すぐにまたスピーカーから声がした。
「周波数が微妙に動いたので、更に出力をあげます。」
「よしっ!」クーさんの弾んだ声がした。
「うまくいきました。」
「やったあぁ!!」みんなの声があがって、僕らは初めてとんがり耳の笑顔を見た。
「通常時の周波に戻してホールド完了です。」
「開けましょう。」とんがり耳が慎重に言う。
そこにあったのは、鈍いグレーのだいぶ古い型の宇宙船だった。
そしてゆっくりと僕らのいるフロアへと進み出て来た。
シェードされていた窓がクリアになると、操縦席に彼の姿が確認できた。
「助かった・・・ありがとうございます。」直ぐに彼からのテレパシーを僕はキャッチした。
「もう大丈夫。」僕は檸檬星流のテレパシーで彼に言った。
それから僕らは応接室に戻って、とんがり耳にお礼と、多大な迷惑をかけたお詫びを何度も言った。
「僕、皆さんにどうやってお詫びしたら・・・。」
そう言って彼は困ったように僕を見た。
僕も困ってとんがり耳の顔を見た。
「損害はいくらでもありませんでした。どうかお気になさらないで・・・。」とんがり耳は言う。
「ここで少しキップ切りでも手伝っていきなさよ。」ユニヴァが冷たく言った。
ところが彼はすっかりその気になり、とんがり耳に掃除でも何でもさせてくれと迫ったのだ。
とんがり耳も最初は断ったものの、彼の気持ちがそれで治まるのならと、10日ほどあのミラールームのコントロールの手伝いをさせてくれることにしてくれた。
そして僕らはというと、ユニヴァの提案でその10日の間このカガミーランドを楽しもうという事になったのだ。
その提案に一番喜んだのはもちろん女神だった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2011/07/01 00:14】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(82)
「やっぱり・・・あたくしはミラーランドが一番好き!」女神が誰より一番楽しそうにしている。
僕らは3日足らずでカガミーランドの全てのフロアを回り尽くした。
個人的には僕はアクアランドが気に入ったのだが・・・。
「おや?アイツ仕事さぼってんじゃないの。」
そう言うクーさんの視線を追うと、不時着の彼が僕らの方に走ってくる。
「大変なんです・・・。」
「何かヘマでもやらかしたの?」ユニヴァが息を切らしている彼に冷たい視線を送った。
彼はそんなユニヴァを無視して、僕にテレパシーで伝えてきた。
どうやら彼の不時着したあの部屋に、また何者かが不時着したらしいのだ。
「ぶっ壊れてるな、あの部屋。」僕の説明を聞いたクーさんが言った。
「とにかくコントール室に来て下さい。」
僕らがコントール室に入っていくと、とんがり耳がまいったというように首を振って僕らを迎えた。
「お楽しみのところ申し訳ありません。」
「素晴らしいわ!カガミーランド。」緊迫したムードと裏腹に女神がカガミーランドを絶賛した。
「今回のお客様は宇宙船にも乗らずに・・・。」そうとんがり耳が説明し始めた時、ユニヴァが突然2番目のモニターに駆け寄った。
「ニャントロ!!」
「ええっ?」僕らも一斉にモニターに駆け寄った。
モニター越しに見えるのは、部屋の中央で途方に暮れて座り込んでいる金色の猫人間が一人、まさにニャントロだった。
「まさか・・・、またあなた方のお知り合いで?」とんがり耳が唖然とした顔で僕らを見ていた。
「扉、開かないの?」ユニヴァがもどかしそうにとんがり耳に言う。
「いえ、開きます。」
宇宙船にも乗らずに現れた猫人間を警戒して、閉じこめたままにしておいたそうなのだ。
「あの子は高次元の宇宙からやって来たの、直ぐに開けてよ!」ユニヴァはそう言うとニャントロのいるミラールームへ急いだ。
僕らもそれに従った。
「ユ、ユニヴァ・・・。」そこにいたニャントロがゆっくりと立ちあがって言った。
「ユニヴァの所に行くはずだった・・・。」
ニャントロはユニヴァに倒れ込むように抱きついた。
「周波数が突然変動したのだ・・・。」ニャントロが今出てきたミラールームを不審そうに振り返って言う。
ユニヴァはニャントロにここはレモン星の近くの人工星で、周波数を操作して楽しむ遊園地のアトラクションだということを説明した。
「しかし、なぜ移動中にこんな場所へ・・・。」
「確かに・・・レモン星の彼にしたって、なぜここに来てしまったのだろう・・・。」クーさんがとんがり耳を見た。
「ん?・・・まさか、夜行ツアー・・・。」とんがり耳が床を見つめたままポツリと言った。
「夜行ツアー?そう言えばそんな季節だねぇ・・・。」クーさんがのんきに言う。
毎年同じ頃になると、次元の歪みが出来て異次元の宇宙域が現れる。
数年前に僕とクーさんが参加したアレだ。
毎年チケットは出回っているらしいのだが、クーさんはこの前の夜行ツアーに懲りて、二度と行こうとはしないので、僕はあれ以来チケットも出回っていないのかと思っていた。
「夜行・・・ツアー?・・・どう言うことだ?」ニャントロが説明を求めたので、クーさんが手短に説明した。
「低次元・・・それだ!」ニャントロがクーさんの説明途中で叫んだ。
「どうしたのよ、ニャントロちゃん。」そう言いながらユニヴァは巨大真珠をポンその場に出した。
「そこに、GackNtがいる。」巨大真珠をみつめてニャントロが言った。
「GackNt?・・・どうして。」僕とクーさんが同時に言った。
「病気だ。」
「何処が悪いのよ。」ユニヴァが心配そうにニャントロの目をのぞき込んだ。
「うん?・・・心・・・か?」
「今時、どうやって心臓病になんか・・・?」ユニヴァが言った。
「あぁあ、なるほど!」クーさんは合点がいったようだ。
「要するにあり得ない様な低次元的疾患に対応するために、低次元宇宙に行って治療しようって、それでGackNtは・・・。」
「そういう病気ではない!」ニャントロはクーさんの話を遮ると、僕らをさておいて巨大真珠に乗り込んでしまった。
戸惑っているクーさんに僕が言った。
「いつもの無謀な行動っていう病気でしょ。」
そして僕とユニヴァも巨大真珠に乗り込んだ。
「クーちゃん!」ユニヴァのきっつい呼び出し声に、クーさんも渋々乗り込んで来た。
「ちょっと行って来る。」ユニヴァは女神にそう言って、そして巨大真珠を起動した。
次元の歪みはレモン星の月の向こうにすぐに確認できた。
そしてその中央には、わざとらしいほどのチカチカした光を放っている星がある。
「なんでこんな星にGackNtが?」クーさんが言った。
「宇宙のクレバスに落ちたのだ。」
「宇宙のクレバス?」僕とクーさんが同時に言った。
「あのちゅら星の灯台のものと似たようなものだ。」
ニャントロはたぶん灯台の地下の奈落のことを言っているに違いない。
GackNtは、再調査のために僕らが氷詰めのGackNtと出会ったあの星に行き、何かの事故ですべり落ちたようなのだ。
「ユニヴァ、だけどこの次元の扉いつ閉まってしまうか分からないんだよ。」
そんな僕の忠告にユニヴァは、チラリと横目をこちらに向けただけだった。
そして巨大真珠はまったりとした異次元へと突入して行った。
チカチカした星の大気圏に入ると、目に入って来たのは碁盤の目に通った交通用のチューブとその拠点を結ぶ碁石のような色とりどりに輝く街だった。
「チャラっとした星ね。」ユニヴァはそう言いながら、碁石の内部を見て見るためにさらに高度を下げた。
巨大真珠がこの星を半周くらいしたところでユニヴァが言った。
「人種はネズミ人間ばっかりのようね・・・。」
「大都市構造は素晴らしいが、外の宇宙とは全く交流がないようだ。」ニャントロの目から青白い光が放たれている。
この星の概要を読んでいるのだ。
「GackNtがいるのはもう少し北の街だ。」
「街に入るには、ネズミ人間でなきゃマズイわね。」ユニヴァが僕の顔を見て言った。
「変身できるのは、ユニヴァと我だ。」ニャントロの言葉にユニヴァはうなずいて巨大真珠を急降下させて行った。
「もう少し北・・・あぁ、あの青く光っている街へ。」ニャントロがGackNtの居場所を見つけたようだ。
巨大真珠をカモフラージュさせて、繁華街からは大分離れた人気のない場所に降り立った。
「ピーちゃん、二人乗り貸して。」ユニヴァに言われて僕はポケットの小型巨大真珠を渡した。
ユニヴァは外に出る瞬間にモワンと煙を出して、黒ネズミ人間になった。
続いてニャントロが金粉に包まれたかと思ったら、金色に近いベージュ色のネズミ人間になっていた。
そして二人は、僕の二人乗りの巨大真珠に乗り込んだ。
「クーちゃん、ピーちゃん、そこでじっとしていてよ!」そう言って小型真珠は街の中心部へと飛び去って行った。
「当然GackNtもネズミ人間に変身しているわけよね。」ユニヴァがモニター越しのニャントロに言った。
「・・・彼に変身能力はない。」
在る程度まで来たところで二人は巨大真珠を出ると、次第に賑わいでいく人ゴミの中へと入って行った。
「チャラチャラして落ち着かない街ね。」ユニヴァが不満げに街を見回して言った。
「この星は見かけのテクノロジーより、はるかにロウワーな社会だ。」
「ふぅん。」ユニヴァは興味なさそうに答えた。
「あの緑色の看板の店へ。」ニャントロが2ブロック先を指して言った。
その通路はほとんど酒場街で、その緑の看板も酒場のようだ。
「女の子二人で入るムードじゃないけど・・・。」
「我ら猫人間の性別は希薄だ。」
ユニヴァから見ても、ニャントロやGackNtは性別を判断しにくいことは確かだった。
そう言っている間に、ニャントロは店の扉を押し開けていた。
店内は大混雑で、右も左もネズミ人間で埋め尽くされている。
テーブル席は満席、バーカウンターも肩をすり合わせて並んでいる状態だ。
店内に音楽が流れているにもかかわらず、店の奥では楽器を演奏したり歌ったりしていて騒がしいうえ、それをかき消すほどの会話というよりは怒鳴りようだ。
ビシッ!!
すぐそばで平手打ちの音が響き、ユニヴァとニャントロはビクリとした。
そして、黄色いドレスの女の子が席を立って行くのが見えた。
「ちょっと、あのくそ生意気な白ネズミ・・・。」ユニヴァがニャントロを引き寄せて言った。
「Ga・・・GackNt・・・。」
二人は唖然として、瞳の輝きにGackNtを思わせる、その白ネズミを見ていた。
白ネズミは数人の女の子達に囲まれて、派手にはしゃいでいるところだった。
ユニヴァ達もとりあえず飲み物をもらって、離れて白ネズミを観察した。
しばらくすると、白ネズミは二人の女の子を引き連れて、別の女の子ばかりのテーブルへ乱入した。
それからそのテーブルにたくさんの飲み物が追加されて、さらに派手にはしゃぎ始めた。
それでもあまりの店内の喧騒で、目を離すと白ネズミを見失いそうになった。
そして、見失いかけたその時だった。
カウンターに並ぶユニヴァとニャントロの間にGackNtが割り込んできた。
「どうもっ、この店は初めて?」かなりチャラっとしているが、瞳が間違いなくGackNtだ。
「ど~こ触ってんのようっ!この変態っ!」ユニヴァの声が店を貫いた。
不意にニャントロに肩を掴まれたGackNtは、我に返ったようにニャントロを見つめた。
そしてそばにいた連れの女の子達に軽く手を振ると、ニャントロとユニヴァを引き連れてすぐに店の外に出たのだ。
「ウォークインか・・・珍しい方法をとったものだ。」ニャントロが静かに言った。
「そんなことより何なのよ、この変態行動のあり様は!!」未だユニヴァのテンションは治まっていない。
ニャントロは座り込んでいるGackNtを見下ろして、その無謀な行いに呆れて言った。
「低次元でのヒューマノイドの扱い方もわきまえないで、ウォークインなどするからコントロール不能になるのだ。」
「仕方がなかった・・・来てくれると信じていた、ニャントロ。」うなだれているGackNtを二人は見下ろしていた。
そしてニャントロは厳しく言った。
「次は、ないと思え。」
ユニヴァとニャントロがGackNtを連れて巨大真珠に戻って来るまでに、6時間近くが経過していた。
その間もこの星の空は漆黒の夜に閉ざされたままで、近くに太陽らしき恒星があるかどうかも疑わしいくらい少しの変化もない暗さだった。

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【2011/07/26 12:10】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

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Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

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