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ちゅら星(80)
それからバスはまもなく出発した。
月を出ると、ちゅら星やゴディ星とは反対方向へ進路をとっているのがわかった。
そしてレモン星を右手に見ながら、バスは僕にとっては未開のコースを進んでいった。
前方に一点の輝きが見える。
たぶんあの星を目指しているに違いない。
クーさんがまた天井から吊り下がっているお菓子を一つ取って食べた。
女神は久しぶりの宇宙旅行なのだろう、暗黒の車窓の景色を眺めている。
一見懐かしさも感じる古くさいバスのようだが、たぶん実際は超高速バスに違いない、ワープ走行もしていないのに輝く星がもう目の前に迫ってきていた。
「このバスすごいスピードなんだろうな。」と僕は呟いた。
「何言っちゃってんの?」ユニヴァがバカにしたように言った。
ユニヴァの説明によると、あの輝く星はレモン星の軌道上につくった人工的な小さな星で、輝いて見えるのは鏡で張りぼてにしてあるからだという。
なるほど、超高速なのではなく近かっただけなのだ。
鏡張りの星の中央にぽっかりと穴が空いている。
バスは吸い込まれるように、その穴へとアプローチされていった。
薄暗いトンネルを過ぎると、カラフルな映像が飛び交ってトンネルを彩った。
さらに進んでバスがスピードダウンすると、「ようこそカガミーランドへ・・・」と歌う音楽が聞こえてきた。
バスが到着したのは大きなバスターミナルだ。
回廊が渦巻き状に上下に続いている。
案内図によるとフロアは6つで、動物ランド、ミラーランド、アクアランド、アスレチックランド、エアランドがある。
「あれ?カガミーランドって全部ミラーランドじゃないんだぁ」クーさんが言った。
「鏡とかミラーとかめんどくさい所ねぇ・・・。」ユニヴァが言う。
僕はその時、前方の壁にある横顔の肖像画に目をとめた。
とがった耳に特徴のあるその絵のすぐ下には銀色の四角いボタンがある。
「押してみれば。」ユニヴァが言ったので、僕はボタンに手をやった。
すると肖像画が動いて正面を向いた。
そして、肖像画は話し始めた。
「私はこのカガミーランドの創設者★%#$&◎カガミです。今日も心行くまでこのカガミーランドをお楽しみ下さい。・・・」
「なんだ、カガミーランドのカガミって創設者の名前だったんだ・・・。」
クーさんがそう言うと、女神が小さく笑った。
「とがった耳ってどこら辺の星の人だったっけ・・・?発音も出来ない名前だしね・・・。」
ユニヴァはそう言って回廊を進み始めた。
「あの子いったい何処にいるんだろうか?」と僕が呟くと、「あのお姉さんに訊いてみよう。」とクーさんはブルーのストライプのバルーンスカートをはいたスタッフの女性の方へと近づいていった。
「最近ここに不時着した、レモン星の男の子を知りませんか?」
スタッフの女性はどうも知らない様子だ。
事情を話すと、オフィスに連絡を取ってくれた。
僕らはオフィスルームの応接室に通されて、担当者が来るのを待っていた。
現れた人物は、先ほどの絵の創設者カガミ氏と同様に耳のとがったタイプの男性だった。
「では、ご案内しますのでどうぞ。」
僕らは応接室を出るとカガミーランドの一つのアトラクションへ案内された。
アトラクションの中に入ると、そこは四方鏡張りの部屋になっていて、他には目立った特徴もない小さな箱部屋だ。
しかし一見ただの鏡に見えた壁なのだが、そこに映っている物は絶えず流動的に動いていて、自分の姿も流動的に変化している。
僕の姿も時には一本の筋にしか見えなくなったり、渦を巻いたようになったりもする。
「この部屋の鏡は一見珍しい不思議な鏡のように見えますが、実はごく普通の鏡にすぎません。」
とんがり耳の人はいきなり説明をし始めた。
「この部屋の物理周波数レベルを強制的に変えているのです。」
「そんなことできるの?」ユニヴァは天井の鏡に映っている僕らの姿を、と言うよりはペイズリー柄みたいな物を眺めながら言った。
「もちろん、ほんのわずかに変える程度ですが、我々の優秀な技術者達が時間をかけて開発したものです。」
「へぇ。」クーさんが細長くなっていく自分の姿を見つめながら言った。
「彼はたぶんワープの際に座標を間違えたか、あるいは何らかのエラーが生じてこんな妙な地点に不時着してしまったのではないでかと思われます・・・。」彼の口調は乱れることなく常に冷静だ。
しかし僕らは彼のその説明に何かいやな予感を感じて動揺を隠せなかった。
・・・と言ってもユニヴァだけはその場をグルグル回ったりしてアトラクションを楽しんでいのだが。
「どうぞこちらへ。」
それから僕らはアトラクションのコントロール室へ案内された。
モニターがいくつも並べられていて、先程僕らがいた様な鏡張りの小部屋の室内が16カット映し出されている。
その内のいくつかでは、アトラクションを楽しむ人々が、鏡に映る奇妙な姿にキャッキャ言っているのが見える。
「2番目のモニターを見て下さい。」
2番目のモニターには入室者の姿は見えなかった。
「よく見ると真ん中に白い点が見えませんか?」
「あぁ、あるね。」クーさんが言った。
僕にも確認することが出来た。
「あれが、彼です。」
「えぇっ!」僕らは一斉に声を上げた。
もちろん女神もだ。
「壁の鏡を見て下さい。」
モニター越しには見にくかったのだが、鏡に動くものが確認できる。
じっと見ていると、時折旧式の宇宙船らしきものが確認できた。
「あの子の宇宙船なのね・・・。」ユニヴァが言った。
「そうです。何故か分かりませんが、鏡の中には通常のサイズで映し出されているのです。」
「だけど何故お部屋の中央にいる彼はあんなに小さくなってしまっているのでしょう?」女神が言う。
「ワープ時のエラーでしょう・・・。」とんがり耳の人は無表情にそう答えた。
「ところでピーちゃん宛の手紙は誰が出したの?」いつの間にかイスに腰掛けていたユニヴァが言った。
「はい、ワープ到着直後彼からレモン星宛のSOS信号を確認しましたので、私どもでそちら様へ転送いたしました。」とんがり耳が言った。
「ふん・・・ワープ直後・・・。」ユニヴァが足を組み直した。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2011/05/30 23:16】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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