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ちゅら星(76)
41.裏ちゅら星
ニャミィとメオの一件が片付いた後、僕らはそれぞれの母星に戻って静かに日々を過ごした。
僕も久しぶりに戻ったレモン星の夏をのんびりと楽しんでいた。
そんなある日静寂を破ったのは、やはりユニヴァだった。
ちゅら星の夏も飽きたという理由で、当分はレモン星に滞在すると言って突然やって来たのだ。
しかもゴディ星はまだ寒さが残っていてつらいという理由で、数日中にクーさんもレモン星へ来ると言うことだ。
そして、またにぎやかな毎日が始まってしまったのだ。
僕らは数日間ほとんどの時間を海岸で過ごす毎日を送っていた。
仰向けに寝転んだユニヴァが流れる雲を眺めながら言う。
「あぁ、どこの夏も数日過ごしてみると結局同じようなものね・・・。」
「ちゅら星って常夏の星なの?」僕は夏のちゅら星しか見たことがない気がして訊いた。
「違うよ!」
僕の質問にユニヴァが答えると、クーさんが不審そうな顔をした。
「でもいつ行っても夏だよなぁ・・・。」やはりクーさんもそう言う。
するとユニヴァは立ち上がって、ポケットから取り出した巨大真珠を放り投げた。
「んじゃ乗ってよ!」
僕とクーさんは言われるがままに巨大真珠に乗り込んだ。
ちゅら星の軌道に入ると、いつもならすぐに大気圏に入るのだが、ユニヴァは軌道に乗ったままちゅら星を大きく回っていた。
ブルーの海がしだいにピンクがかっていくのがわかる。
柔らかなピンク色の海に見とれていると、ユニヴァが巨大真珠の高度を下げ始めた。
「なんだか夕方になって来たね。」
「ここからは夜の世界だからっ。」とユニヴァは言った。
でもユニヴァのドームにも夜は訪れていたはずだと僕は思った。
不審そうな僕とクーさんの様子を感じ取ってユニヴァが言った。
「あたしのところの夜は、人工的に作った夜ってこと。」
夕方の色合いを過ぎると、空は幻想的に青白く光っていた。
そして僕らは低空飛行でドームの一つも見当たらない静かな海を進んでいく。
「うわぁ氷の海だ。」
氷のぶつかる音がときどき気味悪く響いてくる。
その先には大陸のような氷原が広がっているのが見える。
ユニヴァが急に方向転換した。
「ほらあそこ!」
氷が不自然に転がっている。
「雪だるま?」
「動いてるよ。」クーさんが叫んだ。
「氷色のアザラシよ!」
それは氷の彫刻のように白夜の青白い光にキラキラと輝いていた。
「毛の一本一本が透明なんだね。」幻想的な動物だ。
それからしばらく行くとあちこちに氷色のクマも発見して、僕らは広い氷原を右に左にと猛スピードで飛び回った。
「ちょっと待って!何あれっ。」ユニヴァが目を見張った。
白く輝く氷色のマンモスの群れだ。
音も立てずに巨大な動物が眼下を通り過ぎて行く。
辺りは次第に暗い夜の世界へと変化していった。
「あっドームがある、行ってみよう。」
見えてきたドームはオーロラ色に揺らめいていた。
ドーム内の中央で巨大真珠から出た僕らは、慌ててまた巨大真珠の中へと逃げ込んだ。
温度調整をしていないのか、凍るように寒いのだ。
僕らはドームの中を巨大真珠のまま移動することにした。
シーンと静まり返ったホールの周りには、いくつもの曇りガラスの扉が並んでいた。
一つだけ大きな扉があったので、僕らはそこに向かった。
巨大真珠が扉に近づくと扉は開いた。
そのまた中にもいくつもの扉が並んでいる。
すぐ近くに開け放たれた扉があったので、巨大真珠はゆっくりと廊下を進んだ。
するとそこから真っ白なスーツに身を包んだ人が現れた。
それは頭から足の先までひとつながりのスーツで、唯一外に出ている顔はモコモコの毛に縁取られている。
「ああ驚いた。」とその人は巨大真珠にぶつかりそうになって言った。
「こにちわ。寒いので乗ったままでいるのよ。」ユニヴァが言った。
「冒険者の方たちはそうした方がいいわね。」
彼女は突然の僕らの来訪には驚いた風でもなかった。
この施設は一般には知られていないところだそうだが、冒険者の立ち寄りは多いらしく、白いスーツの彼女は快く僕らを案内してくれた。
「ここは秘密の研究所なの?」
「ここは冷蔵庫よ。」
白いスーツの彼女は通路の奥まで来ると、僕らのよりも小型の巨大真珠に乗り込んだ。
それから地下へ続くスロープを下りて行くと、巨大真珠の外気温度計がマイナス100℃近くに一気に下がって行ったのだ。
「この巨大真珠大丈夫かな?」クーさんが不安そうに言った。
「大丈夫に決まってるでしょ。これは宇宙船なのよ!」
それから僕らはDNA保管庫を一巡りした。
この宇宙域の生物のDNAを集めて保存してあるということだ。
金属の引き出しだらけの極寒地を僕らは早々に退散した。
その後、先ほど彼女が出てきた部屋に戻って来ても外気温はマイナス20℃を示していた。
「かっわいいっ!」ユニヴァが下の方を見て叫んだ。
足元にライトグレーの野ウサギが2匹跳ね跳んでいる。
「寒くないのかな?」と僕は不思議に思った。
「うそっ!寒くないの?」とユニヴァが天井の方を見て言った。
僕らの頭上で青いモルフォ蝶の群れが渦を巻いている。
気がつくと足元には、カンガルーやイノシシ、犬や猫はもちろん、部屋の奥には巨大なキリ
ンやゾウまで、部屋中所狭しと動物があふれ出していた。
「これは全部ホログラムよ。」
「ああ知ってる、動物園で使われてるシステムね。」
「よその星では個人的にペットとして楽しんでいる人も多いのよ。」
その時ユニヴァの目がキランと輝いたのを僕は見逃さなかった。
ユニヴァは巨大真珠をゆっくりと回転させて、マイナス20℃の動物園を観察している。
僕の目の前のフロントガラスに飛びついて来たのはカメレオンだ。
「あたし、そこの耳のとがったカラカルがいい!」ユニヴァが指さした。
ユニヴァがそう言うと、白いスーツの彼女は引き出しから小さなカラカルの顔のバッヂを取り出してユニヴァの方に差し出した。
ユニヴァは巨大真珠から腕だけを出してそのバッヂを受け取った。
カラカルの顔をスライドさせると三つのボタンが内蔵してある。
「赤いボタンを押して、その子の名前を音声入力すれば、もうあなたのペットよ。」
そう言って白いスーツの彼女は笑った。
「ピーちゃんには、あの綺麗なケツァルがいいよ。」
ユニヴァがそう言うと、白いスーツの彼女が僕にケツァルのバッヂを取り出した。
そのときワッサワッサと大きなセントバーナードが白いスーツの彼女にすり寄って来た。
「うわあ、その大きいのもちょうだい。」
僕は巨大真珠から腕を出して、ケツァルとセントバーナードのバッヂを受け取った。
「僕は・・・これがいい!」
クーさんが指さしたのは、なんと僕らの頭の上を優雅に通り過ぎていく頭の大きなナポレオンフィッシュだった。
「もちろん水槽なしで大丈夫、スキンシップもOKよ。」
そう言って白いスーツの彼女は引き出しからナポレオンフィッシュのバッヂを取り出した。
「とんがり耳!」ユニヴァが叫んだ。
するとユニヴァの膝の上にモワンっと耳の立ったカラカルが現れたのだ。
「ホログラムを終了するときは?」
「反対から名前を言うのよ。」
「え~っと・・・・・・・・・ミミリガントっ!」
カラカルは瞬時に消えた。
「ここに置くからね。」
白いスーツの誰かが、入り口の棚に銀色のビンを置いて行った。
「あたし達の食事よ。」
彼女はビンのふたを開けて光り輝く小さな粒を口に入れた。
「何なの?飴かしら・・・。」ユニヴァは彼女のすぐ近くまで巨大真珠を寄せて見た。
「フォトンの粒よ。ここは全く太陽光線が届かない場所だから・・・。」
そう言って白いスーツの彼女はもう一粒フォトンを口に入れた。
それから僕はバッヂのプレゼントにお礼を言った。
白いスーツの彼女はこんなおもちゃと言いながらも、乱用とこの施設の多言は慎むようにという交換条件を付けた。
もちろん僕らは快く了承した。
そして僕らはナポレオンフィッシュの泳ぐ巨大真珠に乗って日向の世界への帰路についたのだ。
「クーちゃん、そろそろその魚しまってくれない?目ざわりっ。」
ときどき巡ってくるナポレオンフィッシュの尾を除けながらユニヴァが言った。
クーさんは何度も呪文のように名前の反対言葉を唱えるのだけれど、どうやら相当凝った
名前をつけたらしく上手く消えてくれないようなのだ。
気がつくとユニヴァは小さな動物と大きな男の灯台のドームへ向かっていた。
小さな動物達に会うのは久しぶりだ。
いつもと変わらず、すぐに大きな男はお茶の用意をしてくれた。
久しぶりのあいさつもそこそこに、ユニヴァは小さなバッヂをテーブルに置いた。
小さな動物はユニヴァのプレゼントに喜んでセーターに着けてみようとしたのだが、ユニヴァに促されて白い犬のバッヂを前に思案中だ。
「かわいいワンちゃんの名前よ?ほら早く考えて!」ユニヴァは小さな動物をせかした。
「っと・・・・・・ミニ介!」
小さな動物がそう言った途端、テーブルの上に巨大なセントバーナードが現れた。
「うわぁ~っ!」さすがの大きな男ものけぞった。
「あんたたちにお土産よ。ミニ介!」
そう言ってユニヴァはセントバーナードの大きな足をなでた。
それから僕らは海岸に出て、かわいいホログラフィたちと戯れて遊んだ。
小さな動物がミニ介の背中によじ登ると、慌てたミニ介が走り出した。
しがみつく小さな動物とミニ介は海岸の端の方まで走り去って行った。
このホログラフィ達はバッヂから10メートル四方以上は離れないのだが、バッヂを持った人がのっかっている場合は当然どこまでも行く。
「ピーちゃんのケツァルも飛ばせなさいよ。」ユニヴァにせかされた。
ところで僕はまだケツァルの名前を決めかねていた。
「“コトリ”ちゃんくらいにしておきなさいって・・・。」
とユニヴァの声がして、僕らは未だにナポレオンフィッシュをしまえないでいるクーさんを見つめて笑った。
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【2011/02/01 15:29】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(77)
42.暗闇からの招待状
心配そうに遠くを見つめているのは大きな男だった。
「すぐ戻って来るわよ。」その様子にユニヴァが言った。
しかしそれからだいぶたってもミニ介と小さな動物が戻る様子はなかった。
「この黄色いボタンは何かな?」まだナポレオンフィッシュをしまえないでいるクーさんは、小さな動物のこともよそにバッヂのボタンを見てボソリと独りごとを言っている。
チラリとクーさんを見てユニヴァが言った。
「押してみなさいよ。」
「うわぁあっ!」と声を上げたのは、大きな男とクーさんが同時だった。
なんと乗馬のようにミニ介を乗りこなした小さな動物が海岸の向こうから現れたのだ。
そして、しまえないでいたクーさんのナポレオンフィッシュがボワンっと消えてくれたのだ。
小さな動物は、備え付けられていたミニ介の革の首輪をつかんで、僕らの前でミニ介を停止させた。
「黄色いボタンは強制解除ボタンのようだね。」とクーさんは言ってバッヂをポケットに押し込んだ。
それから灯台に戻って、大きな男が鍋いっぱいのポトフを用意してくれたので、それをつつきながらGackNtやメオとニャミィの事などを語って過ごした。
「それでだったのか・・・。」と小さな動物が宙を見つめて言った。
僕らはさしてそのことを気にすることもなくポトフをつついていた。
しばらくするとまた小さな動物が言った。
「君らを奈落に落としてやろう。」
僕らはポトフを食べる手を止めて、沈黙した。
「奈落って、この地下にあるあの真っ暗闇?」ユニヴァが目を見開いた。
「招待状が来ている。」小さな動物は言った。
「招待状?」
「それって何よ、悪魔かなんかから来てるの?」
すると小さな動物は、上まぶたを半分落として「怖いかい?」と言った。
「怖くなんかないわよ、行きたい、行きたい!」とユニヴァが独りで盛り上がりだしたのだ。
小さな動物は拍子抜けして、眼を開くとポトフを食べ始めた。
「もったいぶらないでよ。」ユニヴァが話の続きを催促した。
小さな動物は意地悪くポトフを食べ続けていた。
その時クーさんから小さな声が聞こえた。
「悪魔からって本当なの?」
クーさんはすっかりポトフを脇において、心配そうに小さな動物を見つめていた。
そして小さな動物はポトフの手を止めると、一気に笑いをはじかせた。
「クーちゃんをいじめるんじゃないわよ!」ユニヴァが言った。
「メオとニャミィの結婚パーティってところかな?」
「なんだ、脅かさないでくれよ・・・こう見えてもかなり憶病なんだからさ。」クーさんがため息をついて言った。
「でその招待状は?」ユニヴァが催促する。
「もう消えたよ。」
と言うのも、招待状と言っても手紙が届いたのではなく、突然枕元に現れたメッセンジャーがそう告げたということだからだそうだ。
そして僕らは一週間後に、再度この灯台に集合することとなった。
「あの王族っぽい猫人間の結婚パーティじゃ、僕らも支度を整えないとならないかな?」僕が言った。
「ああ、そのことなら全く気にする必要はないよ。何なら素っ裸でも構わない。」
小さな動物にそう言われても、素っ裸で来るつもりはないのだが・・・。
一週間後に、僕はいつものTシャッツに上着だけは持ってユニヴァにもらった小型巨大真珠に乗って灯台のドームに向かった。
僕が到着すると、もうみんな揃っていて、テーブルの下の地下への入り口も開かれていた。
「待ってたわよ。」ユニヴァは地下に潜るのが待ちきれない様子で僕の背中をたたいた。
それから大きな男が灯台の入り口のドアに厳重に鍵をかけて、窓の鎧戸も閉めた。
「今日は僕もお供するから、床の出入り口は明けっぱなしで行くことになるからね。」大きな男はそう言いながら、水とおやつの袋を僕に手渡した。
そして小さな動物を先頭に僕らは一人ずつ地下の螺旋階段へと降りて行った。
前と同様に目が慣れて来ると階段の絨毯がほのかに光っていることが分かった。
巨大顕微鏡の時よりも楽に感じたせいか、思ったよりも早く休憩地点にたどり着いた。
そこで僕の持たされた水とおやつでしばし休憩を取ったのだ。
甘いジャムサンドがとても気持ちをホッとさせた。
そうじゃなくても、今回はここの住人である小さな動物と大きな男が同行しているので、行先は奈落でも気楽な旅に感じる。
この先はいくらもかからないであの扉に到着する。
扉の前に来ると小さな動物が僕に鍵を渡した。
確かここのかぎの開け方はちょっと難しかったはずだ。
「90度ずつだよ。」小さな動物の声がした。
そうだ、まず90度回して、さらに奥に差し込んで90度回すのだった。
扉は開いた。
「右の棚にランプがある。」小さな動物に言われて、僕はランプに火を灯した。
僕らは薄明かりの中をエレベーターへと進んで言った。
「まず僕らが先に行こう。」小さな動物が大きな男を促した。
大きな男がエレベーターに乗り込むとエレベーターのボックスがだいぶ沈みこんだのが分かった。
「すぐに戻るよ。」そう言って小さな動物は足早に大きな男の肩に飛び乗った。
エレベーターは真っ暗な地下の地下へと降りて行き、ギリギリという滑車を回す音だけが聞こえている。
それでもさすがに大きな男の回す滑車の音は、早くスムーズに聞こえる。
多分もう地下に到着したはずだ。
そしてまた滑車の音が響き始めた。
「アイツ大丈夫かしらね?」ユニヴァが言った。
小さな動物が独り戻っているのだろう、何とも重くゆっくりとした音なのだ。
行きの3倍以上の時間をかけて戻って来た小さな動物がほのかな光の中で肩で息をしている。
「僕は少しここで休むよ。先に誰か降りてくれ。」
僕は残っていた水を小さな動物に手渡してエレベーターに乗り込んだ。
「当然僕だな。」そう言ってクーさんがエレベーターのハンドルを取った。
降りて行くエレベーターはすぐに暗闇に包まれ、目の前のクーさんですら全く見えなくなった。
「あの大きな男に負けないスピードで行くぜ。」とクーさんの声がした。
しばらくするとクーさんの息がだいぶ荒くなってきたのが分かった。
「もう少しだ。」下から大きな男の声が聞こえた。

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【2011/02/28 16:29】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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