FC2ブログ
ちゅら星(75)
間もなく到着したのは、お城とはほど遠い掘っ建て小屋の前だった。
しかし二人は顔を見合わせて勝利のほほ笑みを交わした。
なぜなら、そこが猫顔の王子のいる場所である事を裏付けているように、びっしりとその小屋の壁面にツルバラが覆っていたからだ。
入り口のドアは閉まっている。
ノックしてみた。
そして現れたのは薄紫色のペルシャ猫。
・・・かと思ったら、いきなり目の前でペルシャ猫顔のメイドにドロンっと変化したのだ。
ペルシャメイドは王妃の姿を見るなり、背筋をぴんと伸ばした。
そして「お待ち申しあげておりました。」と会釈をすると足早に小屋の中へ消えて行ってしまったのだ。
小屋の中を覗くと、なんとそこは豪華なシャンデリアがきらめく応接室だ。
ユニヴァと王妃が中の様子に驚いていると、奥からまたメイドが現れた。
今度は白猫顔のメイドだ。
「これはっ、バラジャムマシュマロの姫様。」白猫メイドが叫んだ。
「・・・・。」その時ユニヴァは、お城のお茶会の時のメイドだということを思いだした。
「さぁ、姫様もどうぞこちらへ。」白猫メイドがユニヴァを呼んだ。
気がつくと、王妃は既に金の縁取りの白いバラの袖付き椅子に通されていた。
「あたし姫様ってわけじゃないんだけどな。」ユニヴァはぶつぶつ言いながらピンクの野ばらの柄の椅子に腰かけた。
猫顔の王子は近くの森に散策に出かけているらしい。
白猫メイドが王子について説明していると、ペルシャメイドが来てお茶の用意を始めた。
「姫様達は何か大きな事故にお会いになったとかで・・・御無事で何よりです。」
「事故??」王妃がユニヴァの顔を見た。
「渦の移動中にタイムスリップしちゃったことよ。」ユニヴァは淹れたてのローズティをすすった。
「ここはなんでもバラなのね。あの人とこれから行く先もバラづくしなのかしらね・・・。」王妃はもう3枚目のローズクッキーを食べている。
白猫メイドがユニヴァのバラジャムレシピを覚えたいと言うので、ユニヴァは白猫とペルシャ猫を相手に教鞭をとることになった。
その後は、ユニヴァは黒猫、王妃はロシアンブルーの猫の姿になってソファアの上で昼寝をして過ごした。
夢の世界とはいっても、旅の疲れは感じるものだ。
夕方になると、奥のダイニングにディナーが用意され、王妃はキャッキャ言いながらシャンパンを楽しんだ。
ユニヴァはいつ王子が帰って来てもいいようにと、ほどほどに保っていた。
けれども、王子が帰って来たのは翌日の朝食の時だった。
ダイニングルームに入って来た王子は、ユニヴァと王妃を見ると嬉しそうに微笑んで、でもユニヴァ達から一番遠い席に静かに腰かけた。
そしてグラスの水を一口飲んで、ユニヴァ達に食事を続けるようにと言った。
朝食が済むと、王子の書斎へと通された。
その部屋は豪華なムードの他の部屋と違い、シンプルというよりは未来っぽい感じの飾り気のない部屋だった。
「ユニヴァ、君に感謝します。この再会のキーコードに君が同意してくれたことにも。」
「意味分かんないけど・・・。」ユニヴァは小さく言った。
「タイムマシーンはほぼ完成している。」
「ちょっと待ってよ、あたし達話の流れがあんまり分かってないんだけど・・・。」
ユニヴァがそう言うと、王妃もうなずいた。
「この人工的な夢の世界は次元が固定化されているので、通常は意識の次元移動が不可能なのだ。しかしリサイクルの際に全てが粒子化されている間にだけは移動可能になる・・・。」
「なぜ移動しなきゃならないのよ、ここもいいところじゃないの。」ユニヴァが口を挟んだ。
「進化する意識にはいろんなサイクルってものがあるだろう。ニャミィと再会の時だと言うのにドリームごっこにいつまでも興じていると、アイツに君みたいな最終兵器を使われる。」
「ニャミィってあたしのこと??・・・アイツって??・・・君みたいな最終兵器って??・・・」矢継ぎ早に王妃が突っ込んだ。
「君の名はニャミィ、そして僕はメオ。」とだけ王子は答えて話を続けた。
王子の名前がメオということは初めて知った。
ユニヴァは大体意味が分かってきたので、黙って彼の話の続きを聞いた。
「とにかくニャミィ、君と再会する今、僕はこのドリームワールドから出なければならなかった。しかし脱出の機会に君達が間に合わないことを知った。そしてリサイクル時に戻る手段としてコイツを作ったということだ。」
テーブルに埋め込まれているのは、手の中に入るほどの透明なボールだ。
ボールの中では、ぼんやりと霧が渦を描いてうごめいている。
「こんなのでタイムワープできるの?」ユニヴァはその小さなボールを見つめながら言った。
「充分だ。ただもう少し精密に移動できるようにと、昨日クリスタルを捜しに出かけたのだが・・・。」
「あぁ、それならこれこれっ・・・お土産よ。」ニャミィはあの時僕がへし折った水晶の枝をメオに差し出したのだ。
メオはそれを受け取ると、すぐにテーブルの上面を開けて作業を開始した。
それから何度か壁のパネルをチェックしてから、テーブルを元の状態に戻して席に着いた。
「これでいつでも行ける。」メオがそう言うと、テーブルに埋め込まれていたボールが浮きあがって来た。
「この後どこに行くの?」ユニヴァが訊いた。
メオとニャミィは顔を見合わせてほほ笑んだだけだった。
「また、逢えるの?」またユニヴァが訊いた。
「もちろん、レベル的にはGackNt達の宇宙と変わりはないから。」メオが言った。
いまひとつ分からない気はしたが、ユニヴァは分かったことにした。
どうやら任務終了の時が来たようだ。
そして「それじゃね。」とだけ言ってユニヴァは書斎を後にした。
気がつくと鰹節のいい香りがしていた。
「おぉっ、ユニヴァ。」クーさんがユニヴァの帰還に気がついた。
「お帰り、ユニヴァ。」僕もユニヴァに声をかけた。
隣のシートでは、まだニャミィが眠っている。
・・・と思ったその時、ニャミィの姿が煌めいて砂金のような粒子になり、そして何処かに消えていってしまった。
「どうやら上手くいったみたいね。」ソラがユニヴァに言った。
ユニヴァは黙ってうなずくと、クンクンと匂いをかいだ。
テーブルの上にたくさんのおにぎりが並んでいる。
「ちょうどいい時に目覚めるわよねぇ。」と言ってウミが笑った。
そしてユニヴァは鰹節たっぷりのおにぎりをほおばりながら言った。
「ねぇ、今夜はスペシャルカレーが食べたい気分。」
「スペシャルカレーって?」と僕が訊いた。
「特別美味いカレーってこと?」とクーさんが訊いた。
ユニヴァは「違うよ。」と言って、また一つおにぎりを食べた。
スポンサーサイト



テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2011/01/01 11:58】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
| ホーム |
WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

れもんちゅら

Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

teddybearSHOP:lemonchura

☆ちゅら星ヴィジュアル見に来て。

記事map

*ちゅら星*を途中から読まれるのに便利です。↓↓↓

全ての記事を表示する

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

category

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログ内検索

RSSフィード