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ちゅら星(74)
さて、ユニヴァと王妃は街の雑踏の中にいた。
朝の通勤時間なのだろうか、二人は人の流れを除けて通りの端に移動した。
「全然バラ園でもなんでもないじゃない。」ユニヴァが途方に暮れて言った。
巨大なビル群に囲まれた道路を、透明の亀が次々と滑りぬけていく。
「巨大真珠に乗ってバラ園を捜したらいいんじゃない?」王妃がユニヴァの顔を覗き込む。
「ここは夢の世界なのよ、あたし達の世界のものは通用しないのよ。」
そう言ってユニヴァはポケットから取り出した巨大真珠を放り投げると、空しくも小さなままの巨大真珠が道路に転げ落ちた。
「あっ、バラだ。」
街角の花屋に薄ピンク色の大輪のバラが並んでいる。
しばらくの間、二人はそれをただじっと見つめていた。
「いいバラでしょう。」花屋の店員が出て来て言う。
「今さっき届いたばかりだからね、香りもホラ・・・。」店員につられて二人はバラの花に顔を寄せてみた。
「ああ、猫顔の王子のバラ風呂を思い出すわ。」ユニヴァが言った。
「ねぇ、このバラどこから届いたの?」王妃がすかさず店員に尋ねてみる。
店員におおよその場所を聞いた二人は、あいさつもそこそこに歩き出した。
と、次の瞬間ユニヴァはさっきの花屋に逆戻りした。
「あの透明の亀でバラ園に行けるかしら?」
花屋の店員はきょとんとしてユニヴァを眺めていたが、すぐに答えてくれた。
「ああ、透明の亀って車のことだね。乗り場はもう少し先にあるよ。」
突然逆戻りしたユニヴァに気づかないまま通りを進んでいた王妃はだいぶ先まで行っていた。
そして、ユニヴァの姿を見つけて手を振っている。
王妃は亀乗り場の前で、ユニヴァに早く来るようにと手を振っていた。
亀乗り場はガラス張りの背の高いビルで、最上階までびっしりと透明の亀が詰まっているのが見える。
よく見ると、亀はゆっくりとビルの中を動いているのも分かった。
そして、2階から次々と亀が飛び立っては前方の道路に乗り、走行車線へと滑り出して行っていた。
ユニヴァ達も一階のロビーで受付を済ませると、キーをもらってエスカレーターで2階に回った。
2階のフロアには亀が30台ほどズラリと並んでいて、一台が出発すると上のフロアから新しい亀が降りてくる仕組みになっていた。
二人も適当な一台の亀に乗り込むと、二人の座席の中央にある八角形の穴に、同じ八角形の形をしたキーを差し込んだ。
コックピットがひときわ明るく輝いて、車内が明るくなった。
それから、地図上からバラ園の位置を捜してチェックを入れ、上下左右の矢印のボタンに囲まれた中央にある丸いボタンを押す。
透明の亀が滑り出した町並みはガラス張りのビルばかりで、太陽の光が乱反射してキラキラと鏡の国のような美しさだ。
やがて、二人の乗った亀は町を抜け、景色は次第に緑多い田園風景へと変わって行った。
「もうそろそろね。」地図を確認してユニヴァが言った。
「ちょっと見て、あれお城じゃない?」
王妃の言うとおり、メルヘンチックなお城が突然丘の中腹にあるのが見えた。
よく見るとその城は左右に観覧車とジェットコースターを従えているのが見える。
そして透明な亀はそのすぐ横を通り過ぎて行った。
その丘を大きく回ると、地図上ではもうそこにバラ園があるはずなのだ。
すると思った通り、丘の反対側の斜面一杯に広大なバラ園が広がっていたのだ。
黄色いバラがどこまでも続き、しばらくすると先程のあの薄ピンクの大きなバラも見えてきた。
そして透明な亀は中途半端な場所で停車した。
ユニヴァは地図を拡大表示して、バラ園の入り口にチェックを入れた。
透明な亀はまた走行を開始した。
訪ねてみると、ここはあまりにも巨大なバラ園であることが分かった。
建物の中からは大きな輸送用のコンテナを付けた亀が引っ切り無しに出て行く。
ユニヴァは通りかかったバラ園の人を呼び止めた。
「ここにロシアンブルーの猫はいないかしら?」
「野良猫なら時々見かけるけれど・・・。」その人は少し考えてから言った。
「猫じゃなかったら、猫型人間でもいいんだけど?」
「この変ではめったに猫型人間はみかけないねぇ・・・。」
その人が行ってしまうとふたりはわびしく途方に暮れた。
それから片隅の石の上に座って、次々と出て行くコンテナを力なく見つめて過ごした。
「そう言えば・・・。」先程のバラ園の人だ。
「お客さんにロシアンブルーの猫型人間がいたよ。このお姉ちゃんにそっくりな・・・。」
「その人に会いたいの!」王妃が立ちあがって言った。
二人はまたしばらくの間、石の上に座って待っていた。
そのお客さんの住所を捜すのにだいぶ時間がかかったからだ。
そして再び透明な亀に乗り込むと、ユニヴァは地図上で海上に浮かぶ島にチェックを入れた。
「どのくらいかかるかしら?」
「さっきの4倍はあるわね。」
亀はいくつかの小さな町を抜けて、また田園地を抜けて、また巨大なビルの多い街へとやって来た。
「もうすぐ港よ。」ユニヴァが地図を見て言った。
街はもう日が傾き始めていた。
「見てよっ、巨大な亀。」王妃が言った。
「亀って言っても、あっちのは海亀型だわ。ヒレがあるもの。」ユニヴァが言った。
港に着けられた巨大な海亀は、甲羅を大きく開いた形で次々と透明な亀を積み込んでいるところだった。
夕暮れに明るく目立つ建物が受け付けのようだ。
「明日の8時発の船です。」金髪の女の子がチケットを差し出した。
「明日?・・・この海亀に乗れないの?」ユニヴァが女の子に言った。
「申し訳ございません、本日の出向は2時までの受付となっております。」
ユニヴァは黙ってチケットを受け取ると、透明な亀で待っている王妃のところに戻った。
「明日まで動けないわ。」
ユニヴァは力なくそう言ってチケットを王妃に渡した。
しばらくチケットを眺めていた王妃がいつものように脳天気に言った。
「ねぇ、あのシャンデリア見える?」
見上げるとガラス張りのビルの中に大きなシャンデリアが異彩を放っているのが見えた。
「あそこに泊まりましょうよ。」
そして王妃の提案通り、二人はそのビルに向かった。
部屋は人数ごとのランクになっていて、二人用の部屋は思ったより広く、大きなガラス窓からはキラキラと輝く街の夜景と真っ黒な海とが半々に見渡せた。
ユニヴァが夜景を眺めている間、王妃はルームサービスのフードメニューを眺めていた。
「カレーでいいわね?」王妃はメニューを眺めたまま言った。
「うん、カレーってシーフード?」
「カレーはスペシャルカレーしかないのよ。」
そして王妃はスペシャルカレーとオリジナルドリンクを二人分注文すると、ソファアに足を放り出して横になった。
「スペシャルカレーとオリジナルドリンクっていったいどんなのよ?」ユニヴァがダイニングテーブルに頬杖をついて言う。
「写真ではすごくおいしそうよ。」王妃はそう言った。
注文してしまうと急にお腹がすいて来て、二人は待ち遠しくスペシャルカレーとオリジナルドリンクを待っていた。
しばらくすると軽やかな鈴の音と共に、ダイニングテーブルの上に突然カレーと飲み物の入ったグラスが現れた。
一日人探しに明け暮れた後のこの刺激的なカレーの香りはたまらない。
どうやらスペシャルカレーはシーフードのようだが、玉ねぎは確認できるもののエビやイカの姿は見えない。
ユニヴァはまずオリジナルドリンクに口をつけた。
「ココナッツジュース?」
「お酒でしょ?」
「ヤシ酒?」
「やだぁ、ココナッツカクテルみたいなものでしょう。」王妃はあきれたように言って、一気に半分あおった。
オリジナルドリンクがココナッツ味の飲み物だと判明したので、二人はすかさずスペシャルカレーに取り掛かった。
一口、二口、ユニヴァがスプーンを運ぶ手が止まらない。
「うん美味しい、お魚のカレーね。」王妃が言った。
半分以上食べ終えたユニヴァが手を休めて、ココナッツの飲み物を飲んだ。
「大好物の鰹のカレーよ。」満足そうにユニヴァは言って、残りのカレーに取り掛かった。
翌日、定刻通りに巨大海亀は出港した。
天井に相当する透明な海亀の甲羅からは、朝日が燦々と降り注いでいた。
二人は透明な亀ごとの乗船だったので座席はなく、乗船後も透明な亀に乗ったままか、甲板に出るかカフェテラスで過ごすしかなかった。
ユニヴァは透明な亀の座席で進行方向に進んでいく地図を見つめていた。
「はい、あったかい紅茶でよかったかな?」
王妃がいつの間にか、紅茶とクロワッサンを用意してきた。
目的の島に着いたのは、太陽がちょうど真上に来たころだった。
巨大海亀を出ると、透明な亀は地図の目的地点へ向けて滑り出した。
「ほらそこにも、ここもそうだわ。」
王妃が指さすあちこちには、鰹カレーの旗や看板が見える。
島の港はかなりローカルなムードではあったが、港を出て島の内部に入って行くと、さらにローカルで、林と畑が繰り返されているようにしか感じられなかった。
「信号機がないところがいいわね。」王妃が陽気に言った。
上り坂を上がっていくと、周りの景色は森林一色になり木漏れ日がチラチラと眩しく光った。
「猫顔の王子がいそうなムードになって来たわよっ。」
次第に目的地に近づく地図を見ながらユニヴァが言った。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/12/02 16:06】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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