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ちゅら星(72)
その少年はヒューマノイド型ではあるけれども、透明な体に太いしっぽまで生えている。
僕は、さらにとんでもない別の宇宙へ来てしまったのではないかと、少し心配になっていた。
「ところでここは何て言う惑星なの?」僕は少年に尋ねてみた。
少年はちらりと僕の方を見てから、またドーナツにかじりついた。
それからおじさんは少年の口に最後の一口を押しこむと、手に着いたドーナツの粉を払い落した。
「・・・」少年はモグモグしながら僕を見つめた。
「あたしたち、どこの宇宙域にいるのか知りたいのよ。」
少年はユニヴァの方に目をやったが、その質問にも答える様子ではない。
「もしかして、この星は金属のようなもので覆われているんじゃないのかい?」今度はクーさんが質問した。
「そりゃあ宇宙船だからね、金属で出来ているさ。」
「宇宙船?」
「お爺ちゃんが作ったんだ。」
「・・・ってことは、今僕らは君のお爺ちゃんが作った宇宙船の中にいるってこと?」
琥珀色の子供は当然と言うような顔でうなずくと、おじさんの持っていたドーナツの袋から自分でまたひとつ取りだした。
そして僕らの間をするりと通って、ドアの方へと歩いて行く。
「操縦室はこっちだよ。」
僕らは少年の機嫌が良くなったことにホッとして、彼の後に続いた。
僕らが入って来たドアの正面が操縦室のようだ。
操縦室と言っても、先程の部屋と同様、荒削りの洞窟のようなところだ。
「ここから外のようすを見るんだ。」
そう言って少年が覗くのは、まるで旧式の潜水艦の潜望鏡のような装置だ。
他にあるシステムと言えば、大きな金属製のレバーと、中央の重そうなハンドルだ。
「このハンドルで方向転換するっ。」少年は小さな身体で力いっぱいハンドルを回した。
「あれ?・・・ここどこだ。」興味本位で潜望鏡を覗いていたクーさんがつぶやいた。
するとまた興味本位に、おじさんの一人がクーさんを退けて潜望鏡を覗いた。
「んがっ?・・・なんじゃトウモロコシ畑か?」
「まだもう少ししないと収穫できないんだよ。」琥珀色の子供は言った。
そして同様に潜望鏡を覗いたユニヴァは状況を理解したようだ。
「あたし達、この子のおもちゃ箱に不時着しちゃったみたいね。」
それから僕らは次の部屋に案内され、彼の貴重な収集品の数々についての説明に付き合った。
それが終わると、彼は残りの一つの部屋に向かった。
途中、少年は僕らが降りてきた上に伸びる通路を見上げて言った。
「この上にも新しい部屋が出来るはずなんだけどね。お爺ちゃん、冬眠の時期に入っちゃったんだ。」
扉を開けると、その部屋は他の部屋とは違い、狭いけれども明るく人工的な素材の壁で囲まれていた。
「ここは出口だよ。」
そう言って少年がスイッチを操作すると、一瞬の閃光が走った。
そして再びドアを開けて、琥珀色の少年はトウモロコシの畑の中へと飛び出して行ったのだ。
「どこだか知らないけど、やっと出られたわね。」王妃がうんざり顔で言うのが聞こえた。
振り返ると、張りぼてのような巨大な金属の要塞がそびえ建っていた。
それから僕らはこの場所をモニターするために、すぐに巨大真珠を取り出した。
「ちゅら星だわ・・・んん?あたしの部屋??」
なぜか座標はユニヴァの部屋を示している。
僕は嫌な予感がした、どうやら妙な場所に入りこんでしまったようなのだ。
いつの間にか琥珀色の少年の姿は見えなくなっていた。
おじさんたちは小型に収納したポンコツ船を巨大化させるのに、振ったり叩いたりして悪戦中だ。
しばらく考えていたユニヴァが思いついたように言った。
「あの子にはもう渦は消えちゃったって言ったけど、誰もあの渦が消えたかどうか見てないわよねぇ。」
僕とクーさんはとにかくうなずいた。
「戻ろう、それしかないよ。最悪これがあるし。」ユニヴァは渦巻貝の袋をぎゅっと握った。
そして再び僕らは、おもちゃの宇宙船の内部に入って行ったのだ。
渦が消えてしまわないことを願って、心が急いでいる。
問題なのはおじさん二人で、どうにもポンコツが巨大化しないらしい。
「そうだ、これに乗って。」僕はユニヴァからもらった、あの二人乗りの巨大真珠を取りだした。
そして祈る気持ちで通路を上昇して行った。
「あったぁ。」僕らの声が揃って言った。
真っ暗な洞窟内だが、確かにどんよりと渦巻くものがある。
「突っ込んで!」と言うユニヴァの声の後に、おじさんたちの「おぉ~っ!」という声が続いた。
そして次の瞬間・・・なぜか僕らはユニヴァの部屋に到着したのだ。
「何だ、このふわふわの壁は?」
僕の宇宙船に乗ったままのおじさん達は、いぶかしげにユニヴァの部屋を見回している。
僕らはホッとしたものの、フに落ちない苦笑いを浮かべていた。
「どういうこと?」
「渦が変だよ。」
ユニヴァの応接室の窓に浮かぶ渦を見ると、奇妙に収縮を繰り返している。
「二つある。渦が二つ重なっているんだ。」クーさんが窓に顔を寄せて観察してみる。
「ほら、一回り大きい方が点滅しているんだよ。」
その時低い竹笛の音に僕が気づいて、ユニヴァはあわてて渦巻貝を耳にあてた。
「ええっ、そんなに?・・・そうだったわね・・・ええっ、でもそんなに?・・・」
それからしばらくユニヴァは、たぶんニャントロと話を続けていた。
僕とクーさんはおじさん達に、ここはちゅら星で今はユニヴァの応接室にいるということを説明した。
王妃は、すっかりユニヴァのソファアに横になってくつろいでいる。
おじさんが僕の手のひらに、貸し出していた二人乗りの巨大真珠を返してよこした。
そして、僕が当分貸し出していいと提案するのもよそに、二人はポンコツ船の巨大化に専念していた。
「ニャントロが、30年間も連絡が取れなかったんで心配してたって言ってた。」
「何のこと?」僕はユニヴァの言う意味が分からなかった。
「ああそうだ、ここでは3年間ってことになるけど・・・。」
「3年間って何よ?」クーさんが口を尖らせて訊いた。
「だから、ウラシマ何とかみたいな話があるじゃない、あれでしょ?」ユニヴァがめんどくさそうにそう言った。
どうやら妙な渦で移動している間に、時間が加速してしまったらしい。
「どうでもいいわ、老化しちゃったわけでもないしね。」のんきな王妃がゆっくりとソファアから体を起こした。
それからユニヴァは、まだ小さなポンコツ船と悪戦しているおじさん達に、サッカーボールくらいの球を差し出した。
「これあげるよ、旧型だから持ち歩きには大きいけどね。それよりはたぶんマシ。」
サッカーボールはヒョイと放っただけで、難なく宇宙船に巨大化した。
そして、ユニヴァは僕らに巨大真珠に乗るように言って、出発を急いだ。
「3年も経っちゃったから、ちょっと面倒なことになってるらしいのよ。」
王妃がチラリとユニヴァの横顔に眼をやった。
おじさん達はちゅら星の上空で、感謝と再会を約束して航路を別にした。
そして僕らは、ニャントロのフズリナ探し以来のキャニオンドームへと向かったのだ。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/10/01 14:46】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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