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ちゅら星(71)
「何の音?」ユニヴァが僕を見て言った。
気がつくと船内に低い竹笛のような音が聞こえている。
「ああっ!マチからだぁ。」
その音源はあの紫に光る渦巻貝だったのだ。
ユニヴァは慌てて渦巻貝を耳に当ててみた。
そしてしばらくの沈黙の時間が過ぎて、ユニヴァは何かを聞いているようだった。
まわりの僕らには何も聞こえては来ない。
「ありがとう。それじゃまた後で。」そう言ってユニヴァは渦巻貝をひざの上に下ろした。
「友達からかい?」クーさんが言う。
「ニャントロからよ。また後で連絡するって。」
「ニャントロってサイキックのわりには、つまんないテクノロジー使うわね。」王妃はそう言うと同時に上空を指差した。
やっとあのおじさんたちがやって来たようだ。
こちらに近づくにつれてガタガタという騒音が響いてきた。
「ほんとにポンコツだねぇ。」クーさんがあきれて言った。
するとモニターにノイズだらけのおじさんの映像が浮かんだ。
「待たせたね。ポンコツなもんで起動に時間がかかるんだ。」
「オーケー、だったらここには降りないで、そのまま渦に突入しちゃって。」
ユニヴァはそう言うと、すぐに巨大真珠を起動させた。
「んじゃ、お先に。」と短く言ってモニターからノイズだらけのおじさんが消えた。
そしてゴトゴト音とともに渦の中へとおじさんたちのポンコツは飲み込まれて行った。
そしてユニヴァは渦の輪郭に沿うように旋回させながら、巨大真珠を渦の中央に突入させた。
次の瞬間、僕らがあたりを確認する間もなくモニターが騒いだ。
「なんだここは?」
「システムが壊れてて、どこの星か検討もつかんのじゃ。」
「暗いようだが、夜なのか?」
「宇宙空間でないことは確かだ。」
おじさん二人はけたたましくしゃべり続けた。
しかも辺りにはポンコツのゴトゴト音も響いている。
「うるさーいっ。ここはどっかの星の洞窟かなんかの中よ。」ユニヴァが大声を出した。
「どっかの星?」
「洞窟?」
そう言っておじさんたちはしばらく静かになった。
そしてユニヴァはこの場所をモニターするようにクーさんに頼んだ。
しばらく辺りを眺めてみたが、僕らの乗り物が発する光源で見える範囲には洞窟の壁面が見えるだけだった。
「おっかしーなぁ。」クーさんがモニター画面を見ながら独り言をもらした。
「どうかしたの?」僕が言った。
「地上に出るルートが確保できない、ものすごく硬い金属に覆われているんだ。」
「なんだって?」
「こんなとこに閉じ込められるくらいなら、あの別次元にいた方が・・・。」
また、おじさんたちが騒ぎ出した。
「ちょっと待って、地下に続く空洞ができてる。」クーさんがモニターを見るように僕を促した。
「ほら、ここだ。」
それはまさに僕たちのいる洞窟空間の中央からまっすぐ下に伸びていた。
「きっと下に何かあるわ!」ユニヴァが小さく言ったのが聞こえた。
そして、次の瞬間もうユニヴァは巨大真珠を発進させていた。
「ついて来て!」ユニヴァのその言葉に、おじさんたちも慌ててポンコツを起動させた。
10メートルも進まないところに地下への通路が伸びていた。
広さも均等なまま地下にまっすぐに伸びるその通路は、人工的なものであるように感じられるが、壁面はごつごつしていて高度なテクノロジーは感じ取れなかった。
僕らはゆっくりと下降して行ったのだが、その通路は思ったよりも短かった。
到着した小さな部屋のような空洞は、金属製の古びた四つのドアで取り囲まれていた。
「どうする?」ユニヴァが正面のドアを睨んだまま言った。
「外気の状態は安全だけど?」クーさんが言った。
おじさんたちは静かにしている。
「どれでもいいから早く開けてみましょうよ。」王妃が脳天気に言う。
「そうね。」
するとユニヴァはそう言って、僕らは巨大真珠を降りてみることになった。
僕がひとつのドアノブに手をかけた。
かすかに錆びついた感はあるが、軽く開きそうだ。
「ねぇ今、中で音がしたわよ。」声を潜めて王妃が言った。
僕は回しかけたドアノブをぎゅっと力を入れて握った。
「うわ、何かいるぅっ。」その声は中から聞こえて来たのだ。
震えるような小さな声だ。
「怖がってるわ。」ユニヴァが言った。
そして僕はドアをゆっくりと細く開けてみた。
「うわぁぁ、うわぁぁ・・・。」
子供だ。
琥珀のような透明な黄色のからだに、大きな太いシッポが目立つ。
「こんにちは。大丈夫、あたしたちは何もしないわ。」ユニヴァがゆっくりと話しかけた。
琥珀色の子供は壁に張り付いたまま、肩で息をしている。
「どこからここに来た。」
「渦を通って。」
「なんだ渦って?」
「話せば長いわ。とにかく偶然、ここにたどり着いちゃったのよ。」
ユニヴァのそんな説明では、琥珀色の子供の不信感が消える様子もない。
「あたしたちここから脱出したいのよ。あなたもあたしたちに早く消えてもらいたいでしょう。」
少年は何も言わずに僕らを睨みつけている。
「渦から出てきたのなら、渦から出て行けばいい。」
「もう消えちゃったのよ、渦は。」ユニヴァがため息をついた。
すると、おじさんの一人がすたすたと少年の方へ近づいて行った。
おじさんはドーナツの袋を差し出すと「さぁ、お食べ。」と少年に笑いかけた。
少年はさらに壁に身をひきつけると、叔父さんを睨みつけた。
「さっき揚げたばかりじゃよ、まだ温かいぞ。」
少年は少しだけ袋に目をやった。
それからおじさんは袋のドーナツをひとつ取って、少年の目の前に差し出した。
すると、少年はおじさんの手に待ったドーナツを直にかじったのだ。
「子供は腹がへっとると機嫌が悪いもんじゃよ。」おじさんはそう言って笑った。
そして僕らも、まるで動物のようにおじさんの手からドーナツをかじる少年を見て笑わずにはいられなかった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/01 16:49】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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