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ちゅら星(70)
すっかりお腹も一杯になった王妃は満足そうに椅子の背に身体を持たせてリラックスすると、ウェイターに食後のお茶を注文した。
「その夢の国に住んでるって言う変わり者の猫も乗馬をするんでしょう?」
猫顔の王子のことを言っているのだ。
「あんたあの人のこと何も知らないの?」
そうユニヴァが言うと、王妃はコクリとあどけなくうなずいた。
「僕らが出会った時も、馬に乗って現れたよねユニヴァ。」僕が言った。
すると王妃が僕の言葉を聞くか聞かないうちに言った。
「そうだ、これから馬を見に行きましょう。」
僕らは再び巨大真珠で大海原の上空へと飛び出して行った。
「この先に休火山があって、そのカルデラの草原にたくさんの馬がいるのよ。」
しばらくすると緑に覆われた小高い島が見えてきた。
見かけは火山に見えないのだが、近づいて行くと頂上が窪んだ平地になっていることが分かった。
しかも思いのほかその平地は広大で、中央には大きな池が陣取り、それに続く何本もの川がキラキラと輝いていた。
「ほらそこに。」
王妃の言葉に木々の間を見ると、4頭ほどのシマウマの姿が見えた。
「川のほとりを見て!」ユニヴァが叫んだ。
そしてそれを見たクーさんが叫んだ、「ユニコーンだよっ!初めて見た。」
フサフサのタテガミの真っ白いその馬は、頭に一角を備えていた。
「ちょっとぉ、あたしあの馬に乗りたいっ。」またユニヴァが叫んだ。
それはいかにもユニヴァ好みのピンク色の馬で、足元がブーツのようなフサフサの毛で覆われているのだ。
「ここの馬は野生だから、乗馬は無理よ。」王妃がさらりとユニヴァの期待をかわした。
それから僕らは巨大真珠から降りて、珍しい馬達を遠くに見ながら川沿いを散策して過ごした。
「エビの隣はイカのレストランなのよ。」唐突に王妃が言った。
彼女はもうお腹がすいたとでも言うのだろうか。
「しかし引き上げようにも、さっきからユニヴァの姿が見えないと思うんだけど・・・。」
僕がそう言うと、王妃とクーさんも辺りを見回したがユニヴァの姿は見当たらなかった。
「馬に食われた?」クーさんが、クーさんらしいつまらないことを言った。
心配になって来た僕らが、巨大真珠に乗って上空から探そうと思い乗り込んだ時だった。
「ちょ~っとっっ!おいてかないでよ。」
向こうから小走りにやって来るユニヴァは、何か袋のようなものを抱えていた。
そして巨大真珠にたどり着いたユニヴァは持っていた袋を僕らに差し出した。
「さぁ、お食べ。」
袋の中身を見るまでもなく、その香りは僕の記憶をすぐに蘇らせた。
「まさか、あの『ドーナツあげます。』・・・。」
ユニヴァはそう呟いた僕の顔に向かってニタッと笑うと、一気に巨大真珠を発進した。
そして大きな池を超えたところのある、林の中へ着陸した。
そこには細い木々を集めて作った簡素な小屋が建てられていた。
「ほら、あそこにいるわよ。」
ユニヴァの指さす方を見ると、芝生の上でパターゴルフを楽しんでいるあのおじさん二人が見えた。
「ホントだ・・・。」僕とクーさんが同時に言った。
しかし何故このおじさんたちがここにいるのだ、ここは渦を通って来た白い宇宙だというのに。
僕らは再会を喜んだあと、そのことについてすぐに質問してみた。
「新たなドーナツを求めて旅をしている時じゃった。在る星で渦状の模様がある池を発見したんじゃ。するとこ奴が『たまには渦巻デニッシュなんぞとシャレ込んでみるのもいいの。』などとぬかすものじゃ、近寄って水を汲もうとした途端この地に放り出されたのじゃ。」
そう言っておじさんは、相棒の腕を肘でつついた。
「コイツが飲み込まれて驚いていると、渦が次第に小さくなり始めたんだ。それでとにかくと思い、このポンコツに乗り込んで一気にワシも渦に飛び込んだのじゃよ。」
事の顛末を話し終えると二人は揃って言った。
「いったいここは何処なんじゃ?」
僕らの宇宙とは全く別の宇宙空間だということを知ると、二人は慌てふためいて僕らに助けを求めてきた。
当然僕らは承諾し、一緒に帰還の日を待つことにしたのだ。
「それで、いつまで待てば帰れるのかね?」おじさんは待ち遠しいとばかりに尋ねた。
「次の渦が出るまでよ。」ユニヴァがドーナツを一口かじって言った。
「渦?」
「渦なら・・・のう?」
二人が言うには渦が出ているというのだ。
「きのうこのポンコツで西の海を散策していると、ドーナツ型の島を見つけたんじゃよ。
中央にぽっかり潮だまりができていてワシら好みのいい島だ。移住する気満々で上陸してみると、なんと潮だまりの中にあの渦が現れておる、もう渦はこりごりだと逃げて帰って来たというわけなんじゃが・・・のう。」
それを聞いた僕らは、一気にスイッチが入った。
ユニヴァは食べかけのドーナツを袋に戻すと言った。
「すぐ出発よ!」
おじさんたちも出発の用意に慌てた。
「まぁだ油が熱いから気をつけて運ぶように・・・。」
「それより宇宙船をこっちに移動して来てくれんか。」
僕らは先にドーナツ島に行って、渦を確認してみる事にした。
巨大真珠は大海原を西に進んで行った。
「思いのほか早く帰れそうだね。」クーさんがホッとしたように言う。
「あの人たちにお別れできそうもないわね。」ユニヴァがつぶやいた。
渦は待ってくれない、僕らはGackNtとニャントロのところへ戻っているわけにはいかないのだ。
僕らは帰還の渦を目前にして、少しブルーな気分になった。
「あの人たちってGackNtとニャントロのこと?」王妃が軽く言う。
「ああ、あんたはこのまま出発しても大丈夫よね?」ユニヴァが王妃に訊いた。
「あたしはいつでもオッケーよ。」あくまで王妃は脳天気に答える。
ふと気がつくと、僕らはドーナツ島らしき島を通り過ぎようとしていた。
慌ててUターンし、低空で島の周りを旋回してみた。
明らかに鈍い銀色の渦が池の表面に渦巻いている。
僕らは巨大真珠を着陸させて、おじさんたちの宇宙船が到着するのを待った。
まだ、渦は安定している。
「だけどユニヴァ、今朝GackNtが君に言っていたよね、LUME星で僕らは再会することになるって・・・。意味はよくわからないけどさ。」
ユニヴァは力なくうなずいた。
「もしかして、彼らにお別れできなかったことを悔やんでいるのかな?」王妃がユニヴァの顔を覗いて言った。
「だってこんなに早く渦が現れると思ってなかったんだもん。」
「ニャントロは超スーパー飛びぬけたサイキックよ。違う宇宙でも連絡ぐらいとれるんじゃないの?」
そう言って王妃はドーナツを一つ取ってパクリと食べた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/08/01 17:13】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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