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ちゅら星(65)
けれどもユニヴァの部屋に戻って来たとたん、その安堵感は一気に吹き飛んだ。
ニャントロの手からはフズリナがこぼれ落ちた。
「渦が閉じていく・・・。」
そして、もう指先も通らないほど小さくなっていた渦は、無情にも僕らの目の前で完全に閉じて消えてしまった。
「ニャントロちゃん・・・。」ユニヴァがかすれたような声で言った。
ニャントロは茫然と渦の消えた跡を見つめ続けているだけだ。
僕らもかける言葉を失っていた。
「また近いうちに渦が出るわよ。」そう言ったもののユニヴァは気まずそうな顔をした。
「計算ミスか・・・速い・・・なぜ・・・前の時も・・・計算は無効なのか・・・」
「白い宇宙とこっちの宇宙との関係じゃ、ちょっとやそっとの計算じゃ済まないだろうなぁ。」クーさんが無責任に言った。
「そうだ女神、『女神の占い洞窟』に行こう。」
そして、女神はいつものように水晶を前にして座っていた。
「渦なら必ずまた現れるでしょう。」
女神は僕らが座る間もなく唐突に言った。
それについては僕らもさほど驚きもしなかったのだが、女神の話はまだ続いた。
「それよりも・・・探し出さなければならない。」
「もう見つけたわよ、フズリナでしょう。」ユニヴァが口をはさんだ。
「ニャントロ・・・。」女神はニャントロを見つめた。
ニャントロは戸惑って、両脇のクーさんとユニヴァへ交互に顔を向けた。
「ニャントロ、あなたはこの宇宙で・・・ある氷の星へ行く必要があるようです。」
それから女神は水晶玉に両手を置いたまま目を閉じて、しばらくじっとしていた。
「もっと正確な情報を伝えたいのですが、何かが邪魔をして読み取れないのです。」
「氷の星って、どこの星のことなの?」ユニヴァが訊いた。
女神は首を横に振ったが、思いついたように顔を上げた。
「あぁ、ひとつだけ・・・その氷の星はその昔、何処か非常に遠い場所から移動してきたのかもしれません。」
「『めぇ~~』で行ったらどうかな?」
『めぇ~~』というのはあの妙な声を出すワープ方法のことだ。
「無理です、あの場所の鮮明な映像を見る事が出来ないのですから。」女神はそう言った。
僕らは、渦がまた出るという太鼓判を押されたものの、さらなる課題を頂戴して重い気持ちで『女神の占い洞窟』を出た。
「誰か、氷の星に心当たりのある人~?」ユニヴァの部屋に戻る途中でユニヴァが言った。
誰も答えなかった。
部屋に戻った僕らの目に留まったのは、あのフズリナだった。
なんと、さっきニャントロが手から滑り落とした時の衝撃で、周りについていた岩が綺麗に剥がれ落ちていたのだ。
そして白い光の脈を優雅に波打っている。
ニャントロは愛おしそうにフズリナを抱き上げた。
「フズリナが・・・我を案内する。」
そう言うとニャントロは、フズリナを両手で掲げ妙な呪文を唱え始めた。
呪文は聞きなれない発音で真似することさえできないのだが、「氷の星」という単語だけは聞きとることができた。
すると化石のキャニオンの時の渦巻貝のように、フズリナの真っ白な光が光線になってユニヴァの部屋の壁を突き刺していた。
「方角的には三つ星方面だね。」クーさんが言った。
そして僕らが向かった先は灯台のドームだ。
ここには三つ星の一つであるミンタカ星へのポータルがある。
しかしその前に、小さな動物と大きな男にも会って、氷の星に関する情報を集めるつもりだ。
小さな動物の灯台には、最上階に望遠鏡が取り付けてある。
小さな動物が氷の星について何か知っていてもおかしくないのだ。
「ああ、あの星の事かい?」すぐさま小さな動物はそう答えた。
「でも、悪いことは言わないからやめた方がいいよ。」
小さな動物がそう言うと、大きな男も僕らを心配そうに見つめてうなずいた。
「ヤバイ星なの?」ユニヴァが上目遣いに言った。
「かなりね。」小さな動物は腕を組みなおした。
僕とクーさんは顔を見合わせて、小さくため息をついた。
「それより、そこまで行くのが大変そうね。」ユニヴァはあくまで行く気だ。
「いや、ミンタカ星からなら正確な座標も分かるだろうし、巨大真珠のワープでもわけなく行けるさ。」
「な~んだ、良かった。」とユニヴァが言った。
「良くない!」と心の中でクーさんが言うのが聞こえた気がした。
「ヤバイって、どういうことなのか説明してくれよ。」クーさんが慌てて話題を元に戻した。
「邪悪だ。」
「何が?」
「あの星の生命体が。」
「どんな風に?」
「そこまでは分からない。」
クーさんはがっくり首を垂らした。
「よくわかんないって言うのなら、案外大丈夫かもね。」ユニヴァが明るく言った。
「小さき者よ・・・しかし我、行かねばならぬ・・・氷の星へ。」
小さな動物はため息をついて言った。
「とにかく、ホシマルちゃんのところへ一緒に行こう。」
小さな動物はそう言うと、この前ユニヴァからプレゼントされた巨大真珠に大きな男と共に乗り込んだ。
ミンタカ星の大草原は朝一番の光に照らされていて、羊たちの影が長く延びていた。
「ここから・・・近い・・・氷の星・・・。」
ニャントロに抱かれたフズリナの光は、以前より力強く輝いていた。
ホシマルちゃんの家の前に着くと、裏庭で草を食んでいるホシマルちゃんの姿が見えた。
ホシマルちゃんは僕らに気がつくと、庭の木戸を開けてくれた。
「今日は相談があって来たんだけど、どうぞお食事を続けて。」
ユニヴァは草を食むホシマルちゃんの周りを歩きながら、氷の星を探している旨を話した。
ユニヴァが話し終わっても、ホシマルちゃんの食事は続いていた。
「ねぇホシマルちゃん、知ってるんでしょ氷の星のこと。」
「悪魔の星なの?」小さな動物が口を挟んだ。
「鬼か悪魔かは知らないが・・・その昔、針の先ほどもない小さな次元の渦がほんの一瞬だけ現れたそうです。その渦を通ってどこの宇宙とも知れない場所から数匹の邪悪な生き物が侵入したということです。しかしその後まもなくあの星は得体のしれないエネルギーで包まれてしまった。ですから密封状態になってしまって、中で何が起こっているかはわかりません、近隣の宇宙に害を及ぼすことも今のところはないのです。」
「ほらね、邪悪でしょ。」小さな動物が得意げに言った。
「あのエネルギーシールドの中に入ることは不可能でしょう。それにもし入れたとしても、変にあの星にかかわって静かなこの宇宙を乱すようなことがあってもいけませんよ。」
ホシマルちゃんが諭すように言ってユニヴァを見た。
「分かったわ。でもニャントロちゃんはたぶんその星に行くことになっちゃうのよ。ホシマルちゃん念のため座標だけ教えてよ。」
ニャントロちゃん以外の僕らはユニヴァの脳天気な発言に唖然とした。
それからホシマルちゃんは、ニャントロちゃんをしばらく眺めていた。
ニャントロちゃんの目から金色の光線が出ているのがわかった。
何かテレパシーで伝えているのだろうか。
ホシマルちゃんにはテレパシーが通じたのか、それとも漠然と何かを感じたのか、少し考えるとユニヴァにメモを取るように言った。
僕らはついに邪悪な氷の星の座標を知ってしまったのだ。
けれどもシールドされていて入ることなんかできないのだから、心配はいらないはずだった。
そう、いらないはずだったのだ・・・。
数日後、ユニヴァがとにかく近くまで行ってみようと言うので、僕とクーさんとニャントロはユニヴァの巨大真珠に乗せられて、氷の星を間近に見える辺りまで移動した。
シールドに覆われているせいで、星というよりはツルンとした光沢のある白い球体に見えた。
「そんなに悪そうでもないじゃない。」ユニヴァが言った。
「中身がよくわからないってだけでも気持ちが悪いよ。」クーさんは言った。
その時、ニャントロが巨大真珠の透明な壁面に手をついて乗り出したのだ。
「この・・・このシールドは・・・。」
「何よ?」ユニヴァが驚いてニャントロを見た。
「我、通れる・・・方法がある・・・このシールド・・・通り抜ける。」
ニャントロは目を輝かせて嬉しそうに僕らを見た。
僕とクーさんはあまり嬉しくなかったのだが・・・。
「このエネルギー・・・我、創れる・・・ゆえに・・・我、壊せる。」
そう言うとニャントロは、目を瞑って氷の星に意識を集中し始めた。
しばらくして目を開くと、ニャントロの目からは粒子の混ざった青い光線が一直線に氷の惑星に向かって伸び始めた。
気がつくと、ユニヴァが巨大真珠を前方に移動し始めていた。
シールド近くまで来ると、ニャントロの光線が当たっているシールドの粒子は流動し始めていた。
「もう通れるの?」ユニヴァが静かにニャントロに聞く。
「たぶん・・・。」
そんな時のユニヴァの行動は早かった。
一気にエネルギーを充てんすると、最大スピードで突っ込んだのだ。
ザザザザザザザザアァーッ。
幸い、氷にぶち当たらずに済んだようだ。
しかしあまりの振動で巨大真珠は全く操縦不能だ。
巨大真珠は雪の斜面を削るようにして、どこまでも下へとすべり落ちて言った。
やっとのことで止まった場所は、まるで森のように氷の柱が立ち並ぶ場所だった。
「そんなに邪悪そうでもないじゃない。それで一体ここに何があるっていうのよ?」ユニヴァは基本中の基本の質問を思い出したようだ。
ニャントロはただ氷の森の奥をうつろに眺めていた。
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【2010/05/07 16:11】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(66)
「とにかく浮上して、この森の全体像を見てみなきゃ。」ユニヴァは巨大真珠を起動した。
上空に出てみると、星全体を覆っていると思えるほど森は果てしなく続いていた。
「一体ここに何があるっていうのよ?」ユニヴァがさっきと同じ質問をした。
「なぜだ・・・この星にあのシールドが・・・なぜ・・・。」
そう呟いてニャントロは遠くを見つめて思いにふけっていた。
「昔、渦を通って白い宇宙から来た人がシールドしたんじゃないの?」ユニヴァが軽く言う。
「白い・・・宇宙・・・。」
「ニャントロちゃん、昔来た時あんたがシールドしてったんじゃない?」
ニャントロは遠くを見つめて考え事をしたまま首を振った。
「とにかく少し移動してみよう。」
クーさんの言葉に促されて、巨大真珠は当てもなく進みだした。
しばらくすると一本の深い溝が左右に長く走っているのが分かった。
「降りてみる?」
とくに誰も返事をしなかったが、ユニヴァはゆっくりと溝の中に巨大真珠を降ろして行った。
幅は7~8メートル位だろうか、降りて行くに従って氷が青みがかっていく。
辺りが薄暗くなり、100メートルほど下降したところで着地した。
「ちょっと邪悪っぽくなって来たね。」ユニヴァはおどけてそう言った。
それから、その薄暗い氷の通路をあてずっぽうに右側に進んで行くことにした。
進むにつれて溝がだんだん深まっていくことに気がついたころ、前方に明るい光が見えてきた。
「何かありそうね。」ユニヴァが言った。
近くまで行くと、それはほんのりと明るさがある洞窟の入り口だった。
「このまま進む気かい?きっと何かいるよ。」クーさんが弱音を吐き始めた。
「何かいなきゃ意味ないじゃないの。」ユニヴァは巨大真珠を洞窟に侵入させた。
すぐ行き止まりが見えた。
引き返そうとしたその時、雪の塊のように見えていたものが動き出したのだ。
「どぅわあぁぁーっ!」クーさんの叫び声が、狭い巨大真珠内に響きわたった。
しかしその生き物は寝返りを打っただけのようだった。
そしてあくびをした時の丸くあんぐりとあいたその口には、サメのように二重に重なる鋭いギザギザの歯が見えた。
僕らは早々に洞窟を抜け出した。
「もう、溝の探検は終わりにしよう。」
クーさんが情けなく言うので、ひとまず上空に出ることにした。
そしてまた、当てもなく氷の森を見下ろしてただ巨大真珠を進めて行った。
「何だろう、ピラミッド?」
氷の木々の間に、明らかに人工遺物と思えるものが見えたのだ。
それは氷でできてはいるが、よくある階段ピラミッドの形をしていた。
「ピラミッドにしては小ぶりだね。」約10メートル四方のピラミッドを見て僕が言った。
巨大真珠がピラミッドの前に降り立ってみると、そこに小さな入り口があることが分かった。
「ここからは歩きよ。」ユニヴァは巨大真珠のシステムをダウンして言った。
「大気は?」
「安全だけど、ちょっと寒いかもね。」
着ぐるみのユニヴァは、半袖シャツの僕とクーさんを見て言った。
クーさんは巨大真珠から出ると、寒さと恐怖で歯をガチガチ言わせた。
ピラミッドの入り口を入ると、不思議と寒さを感じなくなった。
さっきの洞窟と同様、ピラミッドの内部にもほんのりと明るさがあった。
「行き止まりだ。」
ユニヴァは行き止まりの氷の壁に両手をついた。
「あぁっ!」突然ニャントロが壁の前で声を上げた。
ニャントロの視線の先を見ると、そこに何かの記号が掘られているのが分かった。
点と線をつないで描かれる星座の絵のようなものだ。
それからニャントロは目を瞑って意識を集中し始めたのだ。
すると星座の絵が眩しいほど光を放射したかと思うと、次の瞬間には扉は消え去り、奥には空間が広がっていた。
「お墓なの?」
僕らは部屋の中心に鎮座している長方形の飛びぬけて透明な氷の棺に近づいて行った。
その氷の中には、一体のニャントロそっくりの白い猫人間が横たわっていた。
「あんたにそっくりね・・・。」ユニヴァがささやいた。
「我・・・双子の生まれと聞く・・・まさか・・・これが片割れ・・・。」
「とても死んでいるようには見えない美しさだ。」クーさんが感動して言った。
僕にもとても死んでいるようには見えなかった。
「眠りを・・・覚まさなければ・・・。」
ニャントロの言葉に耳を疑った。
「この人眠ってるって言うの?」
「ピラミッドで?・・・しかも氷詰めで?」
「眠りを覚ます・・・我・・・そのために来た。」
ニャントロはそう静かに言うと、氷の棺に近づいて横たわる美しいその寝顔を見つめた。
僕らは氷の中の猫人間がいつ目を覚ますのかと、息をのんで見つめていた。
その時、「そうだ・・・花だ・・・。」とニャントロが言った。
そしてニャントロはピラミッドの出口へと向かった。
「ちょーっとっ!この人まっだ眠ってるじゃない。」ユニヴァが慌ててニャントロを呼び止めた。
僕とクーさんもあっけにとられていた。
「・・・花が・・・必要なのだ。」静かにニャントロが言った。
「花?・・・この氷の星で?・・・無理よ。」
ニャントロはそう言うユニヴァを黙って見つめた。
仕方なく僕らは巨大真珠に乗り込み、植物など一切見当たらない氷の森の上空を手当たりしだいに進んだ。
「ねぇユニヴァ、なんだか妙に明るくなってきたみたいな気がするけど・・・?」
僕がそう言うと、ユニヴァは明るさが強くなる方に向かって進行方向を変えた。
「下を見て、流氷だ。氷が溶け出しているんだ。」
僕らは何か良い兆しを感じた。
しばらくすると氷はまばらになり、さらに進んで行くと、もう僕らは氷も消えた大海の上を飛行していた。
「これなら海藻くらいは生息できそうね。」ユニヴァがスピードを上げたのが分かった。
そして僕らの目に待望の花が映ったのは、それから間もなくの地点だった。
それは明るい水中に揺れる花畑のようだった。
僕らは水中に揺れる瑞々しい花畑の上を、驚きと感動を以って散歩していた。
より綺麗な花を見つけようと、光の方向へさらに進んで行った。
そして、ついに光源らしき場所にたどり着いたのだ。
その光は水中深くから木漏れ日のようにあふれ出てメロウな金色に揺らめいていた。
ユニヴァは慎重に巨大真珠を海中に潜らせて行った。
「海底に何かあるのかしら?」
「この星の中心核が透けて見えているのだったりして・・・。」
その真相は誰にも分からなかったが、それは目が眩むほどの美しさだった。
そしてその光は果てしなく深い場所から発光しているようだった。
「暖かくてきれいな水よ。」ユニヴァがデータを見てそう言った。
それから僕ら全員は、巨大真珠を抜け出して海中に滑り出したのだ。
巨大真珠に戻って来た時には、みんな手に小さな花束を握っていた。
そして僕らは座標を設定して、まもなくピラミッドの場所まで戻って来たのだ。

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【2010/05/08 15:58】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(67)
ピラミッドの中は、僕らに寒さは感じないものの、巨大真珠を出ると花は一瞬にして凍りついてしまった。
ニャントロが凍りついた花束を、氷の棺の上に掲げた。
そして意識を集中し始めたのが、僕らにも分かった。
次第にニャントロの身体が揺らめくエネルギーに包まれているように見えてきた。
するとその揺らめくエネルギーがニャントロの手から花束に伝わって行き、花束の氷が解け始めたのだ。
そして一滴のしずくが氷の棺の上に落ちた時、氷の中の猫人間が一瞬電気を帯びたようにクラゲ色に輝いたのだ。
そして二滴目のしずくが落ちた時、氷の棺が一気に水と化し流れ落ちた。
そして三滴目のしずくが落ちた時、猫人間の目が静かに開き、ニャントロの目から放たれたラメ入りの白い光線が、横たわる猫人間の目に向けて放射されたのだ。
猫人間の瞳が僅かに動いて、ニャントロの姿をとらえたようだ。
そして、そっと息を吸い込んだ後、微かな声が聞こえた。
「もう・・・そんなに時間が・・・経ったのか・・・。」
ニャントロにさえ、いったいこれがどういう事なのかは分からなかったはずだ。
それから猫人間は、まるでベッドの上で朝目覚めたみたいに体を伸ばしてから、先程まで氷詰めだった事など知らないかのように寝台から降りると、僕らをさらに奥にある隠し部屋に案内した。
そこは豪華な半円型の長椅子がある応接間だったが、全てのものは氷でできていた。
猫人間は僕らに長椅子をすすめてから、彼は長椅子の前の袖付きの椅子に腰かけた。
「我はGackNtなる響き。ニャントロの双子の片割れ。故あって次元の渦に捕らわれ、時を待つ運命を選んだ。」
「GackNt・・・片割れ・・・。」ニャントロは茫然とGackNtを見つめていた。
「それじゃ、あなたが邪悪な・・・。」
ユニヴァがそう言いかけたので、僕は慌ててユニヴァのお尻のあたりをこっそりつついた。
「なぁ~にするのよっっ!」
かえって大げさな事になってしまった。
「その昔、小さな次元の渦を通り、遠い別次元の心未熟な生物がここに侵入した。我が高次の宇宙においてそれを察知したゆえ、我も渦を抜け侵入者がこの宇宙に悪影響を及ぼす事なきようシールドを以って対処した。」
「なんだ、いい人なんじゃない。」ユニヴァが言った。
「しかし、侵入者たちはすさまじい勢いで増殖を続けるので、我はその侵入生物自体を安全な状態に変容させる必要があった。」
「まさかあの洞窟にいたすごい歯のヤツ?」クーさんが言った。
GackNtがクーさんを見てうなずいた。
「そして我がエネルギーを増幅させるためこのピラミッドを造り、エネルギーの放出を持続させるため、我ここに永く眠ることとなった。」
「じゃあもうここの生物は邪悪じゃなくなったの?」
GackNtはユニヴァにうなずいた。
「あれで?」クーさんが言った。
「若干の凶暴さは残っている、しかしいずれ絶滅に向かうであろう。」
僕とクーさんとユニヴァはGackNtに大きな拍手を送った。
そしてニャントロを見つめて言った。
「必ず来ると信じていたよ・・・。」
それからしばらくの沈黙が流れた後、GackNtは立ち上がって言った。
「さて、今となってはここに長居する意味もなくなった。」
ニャントロは意味も分からず黙ってGackNtを見ていた。
「さぁ、君に託したフズリナを・・・。」GackNtが言った。
すぐにユニヴァが気づいて、巨大真珠の中からフズリナを持って来てくれた。
フズリナはいつも通り白い光を波打っている。
「その壁にしよう。」GackNtはニャントロのすぐ脇の壁を指した。
「思いっきり投げつけて。」GackNtがニャントロを促した。
ニャントロはその言葉に驚いたように、ただGackNtを見ていた。
「そのフズリナが渦を創るのだよ。」
何てことだ、僕らは顔を見合わせた。
そして次の瞬間、ニャントロはフズリナを壁に投げつけたのだ。
シュワッという微かな音がして壁に渦が現れた。
それからGackNtが奥の壁に近づいて何か操作をすると、一辺が30cmくらいの光るミニピラミッドが宙に現れた。
きっとこのミニピラミッドは宇宙船なのだろう、それにしても我々が乗り込めそうなサイズではない。
「さぁ、行くよ。」
そうGackNtが言ったので、ニャントロは名残惜しそうな顔で僕らの方を振り返った。
そして、まもなくGackNtとニャントロの姿はぼんやりとかすんでいって、視界からすっかり消えてしまった。
「乗って、あたし達も続くわよ!」ユニヴァが叫んで巨大真珠に走った。
「うえぇ?」僕とクーさんはぎょっとしたものの、とにかく巨大真珠に乗り込んだ。
「ユニヴァ!僕ら戻れなくなるよ。」
「大丈夫よ!女神が渦はまた出るって太鼓判押してたもの。それにコレ!」
ユニヴァは足元の紫の光波打つ渦巻貝を指さしてウィンクして見せた。
そして、もう次の瞬間には僕らはまっ白しろな宇宙にいたのだ。
僕とクーさんは大きくため息をつくことしかできなかった。

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【2010/05/09 19:57】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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