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ちゅら星(61)
38.ユニヴァからのプレゼント
緑色の貝殻をいくつか拾って家に戻ってみると、玄関に誰か立っている。
ユニヴァではない。
スラリとした男の子だ。
男の子は僕に気がつくと、待ってましたとばかりに駆け寄って来た。
「始めまして。宇宙旅行のことでお話を伺いたくて来ました。」
彼はにこやかにその旨をテレパシーで伝えてきた。
ここレモン星の男の子のようだ。
「僕、宇宙旅行をしたいんです。」
レモン星では、まだ宇宙旅行は一般的ではないのだ。
偶然クーさんみたいな人に知り合わない限り、仕事などでの必要がない限り宇宙に出ることはないし、一般向けの宇宙空間移動システムなど用意されていない。
「どこで僕のことを知ったの?」
扉を開いて、彼を家の中へ通した。
「何度かお出かけになるのを目撃したんです。」
「どこか目的の惑星があるの?」
「いえ・・・。」彼は困ったように言ってうつむいた。
「あなたに憧れているんです。あなたのように宇宙を庭みたいに飛び回ってみたいんです。」
僕はしばらく考え込んだ。
クーさんやユニヴァに頼めば簡単なことだけど、レモン星の人々をむやみに宇宙へ連れ出すのはどんなものかと考えた。
「・・・いいよ。」
彼は顔いっぱいで笑顔を作った。
「でも、僕だって宇宙に出るのには友達の助けがなきゃ無理なんだ。」
「ここはレモン星ですから・・・。」男の子は分かっていると言ったようにそう答えた。
そして僕が友達に相談をしてみるという事を約束にして、彼は帰って行った。
僕がユニヴァとクーさんに同文の手紙を出した数日後、巨大真珠でユニヴァがやって来た。
「そのお兄ちゃんも呼んだらどお?」
すぐに僕は彼の連絡先へメールしてみた。
メールの返信を待っていると、近くで声がした。
「うわっ、僕これに乗れるんですね!」
「こっちから乗るのよ!」
僕が紹介する間もなく、突然現れた彼はユニヴァに促されて巨大真珠に搭乗した。
「こんなに早くに連れて行ってもらえるなんて、本当に感謝します。」
「ないしょ話はだめよ!」ユニヴァが僕らをにらんだ。
彼がレモン星のテレパシーで僕に伝えてきたのが解ったからだ。
まず巨大真珠はゴディ星へ向かった。
クーさんの家の周りは、一面うっすらと雪に覆われていた。
寒そうにクーさんがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
「雪ダルマと見まちがえるところだったよ。」
乗り込んできたクーさんはそう言って男の子ににこりとほほ笑んだ。
それからユニヴァがどこに行こうとしているのかは誰も知らなかった。
僕はただ男の子が宇宙旅行を楽しんでくれればよかったのだ。
ユニヴァはちゅら星の大気圏に入ると、ユニヴァのドームの裏側あたりのまだ僕が行ったことのない地域を飛行した。
「ユニヴァ、どこに行こうっていうの?」
「へへっ。」ユニヴァは笑うようにささやいて巨大真珠を急降下させて行った。
とても小さなドームに僕らは着いた。
そしてとても殺風景だ。
そこは透明のドームに囲まれた丸い床の中央に小さな地下に続くらせん階段があるだけだ。
ユニヴァは巨大真珠をポケットに押し込むと、そそくさと階段を下りて行った。
そして不安そうな男の子の肩を叩いて、僕らも階段を下りて行くことにした。
ユニヴァが階段を降り切ると、急に明るくなった。
自動扉が開いたのだ。
そしてかすかに機械音が聞こえてくるのがわかった。
中央には円筒状のガラス箱があって、その中に腕だけを入れて作業している人がいる。
左側ではカラフルな壁の前を行ったり来たりしている人もいる。
「あれっ、巨大真珠?」
右側の壁には真っ白に輝く巨大真珠がズラリと一列に並んでいる。
僕らが唖然としている間に、ユニヴァは中央のガラス箱の方に進んでいた。
「できてる?」
ユニヴァがそう声をかけると、作業中の人が振り向いた。
「ああユニヴァちゃん、できてるよ。」
それからガラス箱からゆっくり腕を引き出すとその人はユニヴァと共にこちらに歩いて来た。
そして僕らのすぐ後ろの棚から小さな箱を4つ取り出した。
取っ手のついた赤い小さな箱だ。
ユニヴァは嬉しそうにそれを受け取ると、もう階段を上りはじめていた。
そして巨大真珠に乗り込むと、すぐにちゅら星の大気圏を出た。
今度はどこに行こうというのだ。
男の子にとっては満足のいく初の宇宙旅行となっているに違いない。
見えてきたのはあの小さな動物たちのいる灯台のドームだ。
サクッと音を立てて巨大真珠は海岸の砂の上に着地した。
灯台へ続く階段を上って行き、ユニヴァが灯台の扉をノックした。
「これはこれは・・・。」
突然の僕らの訪問に大きな男が驚いていると、ちょろちょろと小さな動物も駆け寄ってきた。
そして全員テーブルに着くと小さな動物が言った。
「レモン星の子?」
「はい。無理にお願いして宇宙旅行に連れて来てもらったんです。」
大きな男がカゴいっぱいのパウンドケーキとお茶を用意してくれた。
「今日は特別な日なんだよ。」と小さな動物が言った。
「知ってるわよ。」ユニヴァが答えた。
僕とクーさんは思い当たらず顔を見合わせた。
「君たちに初めて会った日だ。」
ミンタカ星のポータルを通ってここに来てからもう1年もたっていたのだ。
「そしてこのドームが無事元のちゅら星に戻れた日だよ。」
「おめでとう!プレゼントだよ。」ユニヴァがさっきの赤い箱を一つテーブルに置いた。
思いがけない贈り物に喜んで、小さな動物はあわてて箱に手をかけた。
大きな男も上から覗き込むようにした。
「まさかっ?」小さな動物と大きな男は同時に叫んだ。
箱から取り出したのはユニヴァのよりちょっと小ぶりの巨大真珠だ。
小さな動物がテーブル越しに広いスペースにそれを放り投げると、すぐにそれは巨大化して床に着地した。
「二人用だけどね。」ユニヴァが言った。
小さな動物と大きな男がキャッキャ言って乗り込んでいると、僕とクーさんにも赤い箱が手渡された。
「これでいつでもちゅら星においでよ。」
ユニヴァはそう言って、満足そうに小さな動物たちの様子を眺めた。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2010/01/03 16:58】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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