FC2ブログ
ちゅら星(60)
37.女神の占い洞窟
黒い渦巻が現れたらすぐに連絡をすると言っていたが、その後連絡もなく僕らはお互いに静かに過ごしているところだ。
それからまただいぶたったある日、気がつくと海辺のガードレールにアイスキャンディーの旗が風にたなびいていた。
クーさんは僕がやって来たのを見ると、久しぶりのあいさつもなしに薄紅色のアイスキャンディーを差し出した。
「チェリーフレイバー?珍しいねぇ。」と僕はお礼も言わずにさくらんぼのアイスキャンディーを齧った。
「フレイバーなんて失礼だなっ、ちゃんと果汁も入ってるよ。20%ね!」
それから当然ユニヴァの話になり、そして当然翌日にはクーさんとちゅら星へ出かけることになったのだ。
ユニヴァの部屋のドアを開けて入ると、突然頭上からカゴに入ったオウムがビヨォーーーンと目の前に落ちてきた。
「ユニヴァはお出かけ!用件があれば伝えてやるよっ。」生意気そうにオウムが言った。
オウムは面倒くさそうに右足でリズムをとりながら、僕らの回答を待った。
「また来ると伝えてくれ。」何とかクーさんがその場をかわしてくれたので、僕らはオウムに作り笑いを残して外に出た。
「まったくユニヴァの考えるシステムは、相手を困惑させてくれるよ。」クーさんがぶつぶつと独り言のように摩訶不思議なユニヴァの部屋に対して苦情を漏らした。
「ユニヴァどこに行ったんだろう。」
それからクーさんもどうしたものかとしばらく考えていた。
そして、ユニヴァの行動はユニヴァの部屋以上に予測不可能だという結論に達したのだが、クーさんが意外なことを言った。
「『✞女神の占い洞窟』に行ってみよう。」
唖然としてクーさんを見つめたまま静止した僕の視界の中で、クーさんは『✞女神の占い洞窟』へ向かってスタスタと歩き出した。
「クーさん、いったいあそこへ行ってどうしようって言うの?」
「だってここまで来てユニヴァに逢わずに帰るのも無駄ってもんでしょ。」
そして僕らはあの薄いブルーの文字で『✞女神の占い洞窟』と小さく書かれた扉を開けて入って行った。
奥まで進んでいくと、女神はこの前と同じように水晶玉を前にして座っていた。
どうしていいか分からずたたずんでいると、「お掛けになって。」と女神の声が聞こえた。
僕とクーさんは無言のまま席に着いた。
水晶玉に目をやると、そこには見覚えのある黒猫の着ぐるみの後ろ姿が映っていた。
「ユニヴァだ、何処だろう?」
「ちゅら星よ。」
「ああ、ここはピクニックのドームじゃないか?」クーさんも水晶玉を食い入るように覗き込んでいた。
「ここは象の森のドームです。」
僕はすぐにクーさんに視線をやったが、クーさんは首を振った。
クーさんの知らないドームらしい。
「『✞女神のワープシステム』をご利用になる?」女神が少し目を上げていった。
「はい、ぜひ。」
それから女神は水晶玉に手を当てて目を閉じた。
僕らは何処からワープ装置が飛び出してくるのかと、辺りをキョロキョロしていると女神が妙な声を上げ始めた。
マともメともつかない高い声が響き渡った。
僕の周りで空気が振動しているようだ。
それから女神の声とは別に耳元で小さく振動音が聞こえる。
体の周りにオレンジ色っぽい炎が揺らめいているかと思うと、炎の色がどんどん明るくなっていって僕は青白い強い光の球に包まれた。
「あれっ、いらっしゃい。匂っちゃったかな?」目の前のユニヴァが言った。
「いやっ、どうも。」とっさに出た言葉はそれだった。
「それにしてもずいぶん突飛な現れ方ね。」
辺りには香辛料のいい香りが充満していた。
その時、太ったおじさんが垣根の向こうから現れたと思ったら、なんと二足歩行の象だった。
「タンドリーチキンのお代わりをもう少し頼むよ。」
そう言って太ったおじさん、いや象さんは垣根の向こうに戻って行った。
「か、神様じゃないの?今の・・・。」クーさんは象さんがいた垣根を凝視したまま言った。
「神様じゃないよ。でも修業を積んだ偉い人だよって言うか象だよ。」
そう言いながらユニヴァは大きな鍋のふたを開けた。
ものすごいカレーっぽい香りが広がった。
「クーちゃんとピーちゃんも向こうのテーブルで待ってて。」とユニヴァは言った。
僕はそのままユニヴァがタンドリーチキンを皿に盛り付ける様子を眺めていた。
クーさんは垣根まで歩いて行くと、木々の合間からあちらの様子をうかがっていた。
それから僕も垣根をのぞいてみようと歩き出したところで、ユニヴァが声をかけた。
「これ象さんに持って行って。ピーちゃんたちのはすぐ持って行くからね。」
そう言ってタンドリーチキンが山盛り乗った皿を渡された。
垣根の前まで行くと、僕に気がついたクーさんは親切にも枝を抑えて僕が通りやすいように垣根を開けてくれた。
僕は躊躇する間もなく、象さんたちのいるテーブルへと押し出されてしまった。
「おお来た、この中央に置いておくれ。」
僕がお皿を置くと、次々と長い鼻がお皿のチキンをつかんでいった。
僕はその場に立ちつくして、象さんたちの食事風景を眺めていた。
そのまま鼻から口へ運ぶ象もいれば、鼻でつかんだチキンを手に持ち替えて齧りついている象もいる。
その時コツコツとテーブルをたたく音に気がついた。
クーさんが長テーブルの一番端の席に座って僕を呼んでいたのだ。
それからユニヴァはビリヤニの上にタンドリーチキンを乗せた皿を僕らのために用意してくれた。
なんともいい香りがする。
ところが食べるためのスプーンや箸が見当たらない。
「こうだ!」クーさんがそう言ってチキンを手でつかんだところでユニヴァが現れた。
「クーさん、お箸が来たよ。」と僕は言った。
「これで食べると6倍はおいしんだからっ。」得意げにユニヴァは言って、僕らに小枝を2本ずつ配った。
確かに小枝の箸で食べるというのは、何だか特別な味わいを感じた。
でも結局チキンに関しては、手で食べる他なかったのだ。
そのタンドリーチキンは本格的でものすごく辛い、そしてビリヤニというのはカレーの炊き込みご飯なのだそうだ。
僕らが食べている間にも、象さんたちはタンドリーチキンをもう一回とビリヤニを2回お代わりした。
さすが太ったおじさんたちはすごい食欲だ。
おじさんたちに食後の紅茶を配り終わると、ユニヴァも一息つくことができた。
「ここはいい香辛料があるから料理し甲斐があるってもんよ・・・。ところでどうやってここに来たの?」
どうやらユニヴァが一番気になっていたことがそれらしい。
「『✞女神の占い洞窟』」クーさんが小さい声で言った。
「何占って来たのよ?恋?」ユニヴァはゲラゲラ笑った。
僕はクーさんをホロウするように続けた。
「ユニヴァの家に行ったらカゴのオウムしかいなくてね、女神に探してもらおうと思いついたのさ。」
「な~るっ。」ユニヴァも合点がいったようだ。
「・・・でもどうして占いでここにボヨンっと現れるわけ?」
「『✞女神のワープシステム』」またクーさんが小さい声で答えた。
そしてまた僕は説明した。
「象の森のドームは初めて聞くドームだったけど、女神がワープシステムを勧めてくれたのでお願いしたんだ。それで『めぇ~~』って・・・。」
「何それ?」ユニヴァの眼の色は明らかに輝きだしてきた。
しかし僕とクーさんにも『めぇ~~』についてはよくわからなかったのだ。

それからまたユニヴァにもクーさんにも会わずに過ごす日が長く続いた。
レモン星はまだ肌寒い日が続いていたが、僕は夏に向けて新しい貝細工のデザインを考えて過ごした。
ふと思いつたデザインでどうしても緑色の貝殻を手に入れたくなったので、海岸に散歩に出ようとした時だった。
玄関先にボヨンっとユニヴァが現れた。
「何か飲ませて!のどカラカラなの。」しかも現れて第一声がこれだ。
僕は急いで冷蔵庫を開けると、牛乳を一本つかんだ。
ユニヴァは一気にそれを飲み干すと、膝に手を置いた姿勢で呼吸を整えていた。
「今、女神に『めぇ~~』を習っているところなの。」
「ああ、あの『めぇ~~』のワープ法だね。」
「でもレモン星まではツライっ!もっとヴォイストレーニングしないと。」
ユニヴァはそう言うけれど、あの『めぇ~~』で惑星間のワープまでしちゃうなんて驚きだ。
それから僕とユニヴァは海岸へ下りて、久しぶりにのんびり散歩を楽しんだ。
そしてちゅら星への帰り道には、ユニヴァはポケットから巨大真珠を出して帰って行った。
スポンサーサイト



テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/10/05 14:46】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
| ホーム |
WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

れもんちゅら

Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

teddybearSHOP:lemonchura

☆ちゅら星ヴィジュアル見に来て。

記事map

*ちゅら星*を途中から読まれるのに便利です。↓↓↓

全ての記事を表示する

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

category

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログ内検索

RSSフィード