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ちゅら星(59)
36.叶えたいこと
僕とクーさんが次にユニヴァのところに訪れた時には、窓はすっかり元通りの青空の景色で、黒い渦巻のカケラも残っていなかった。
それなのにユニヴァはなんだか不満そうなのだ。
「あの渦巻、また現れないかな?」ユニヴァが言った。
「何言ってんのぉ?」
いつだってユニヴァの発言には仰天させられるのだ。
「あんた達だってあの世界をもっと覗いてみたいと思うでしょう。」
「そりゃそうだけど・・・」と僕は小さく言って、クーさんの方を見た。
「危険すぎるね。」クーさんがキッパリ言った。
と言うより、あの渦巻がまた現れる可能性がどれほど低いことかと僕は内心思った。
それでもあきらめ切れないと言うように、腕組みしたユニヴァは窓の前を行ったり来たりして思案していた。
しばらくして僕とクーさんがすっかりソファアの上でダレ始めたころ、突然ユニヴァが行ったり来たりを止めた。
「そうだ!」ユニヴァはそう言って足早に部屋を出て行った。
残された僕とクーさんは、しばらく見つめ合った後すぐに後を追って部屋を出た。
フカフカの絨毯の広間に出ると、遠くの扉を入って行くユニヴァの姿が見えた。
「何だろう、あの部屋。」
僕らはユニヴァの入って行った扉に急いだ。
『✞女神の占い洞窟』真っ白な扉に薄いブルーの文字がぼんやりと光って読める。
「占い?」
僕とクーさんは、読めないユニヴァの行動に扉の前で戸惑っていた。
そして扉の『✞女神の占い洞窟』と言うブルーの文字を何度も読み返してから。
クーさんは僕の瞳を見てうなずくと、扉に手を掛けたのだ。
一瞬中は真っ暗で、中に入ることを躊躇したが、すぐに奥が薄明るくなんていることが分かった。
扉を閉めると水の滴るような音がポチャンポチャンと響いていた。
壁は壁と言うより透き通った薄青色の岩だ。
『✞女神の占い洞窟』の名前の通り、中はゴツゴツした岩の壁で部屋とは思われない洞窟の作りになっているのだ。
とは言ってもユニヴァの部屋だってモコモコの壁に覆われていて、僕には想像しがたい作りの部屋なのだが。
奥に入って行くとユニヴァは僕らが来るのを待っていたように「あぁ来たわ。」と言った。
ユニヴァは大きな水晶の鎮座するテーブルの前に座っていた。
ユニヴァのテーブルをはさんだ前にはベールを被った女神が座っていた。
僕とクーさんは用意されていた椅子にユニヴァをはさんで左右に座った。
女神はテーブルの上で両手を重ねたまま、しばらく水晶を眺めていた。
「叶えたいことがあって来たのね。」
ユニヴァは目を輝かせてウンウンと首を縦に振って答えた。
「渦巻が見えるわ・・・黒い渦巻・・・」
またユニヴァがウンウンと答えた。
この占い師、的中させているのだろうか?
「この渦巻は次元の扉です。」
女神がそう言うと、ユニヴァは目を丸くして僕とクーさんを交互に見た。
「あなた達は渦巻の向こうを旅した事があるのね。」
女神はちょっと驚いたようで、水晶から目を離して僕らの方をちらっとだけ見た。
それからしばらく沈黙が続いていたが、全員が静かに水晶玉を見つめ続けていた。
「あなた・・・」女神がゆっくりユニヴァの方に目を上げた。
「渦巻を待っているのね。」
女神がそう言ってユニヴァを見つめた。
「ねぇ早く教えてよ、また現れてくれるの渦巻は?」ユニヴァが急かすように女神に言った。
「もちろん!」きっぱりと女神が言った。
ユニヴァの喜びをよそに、僕とクーさんは動揺を隠せないほど驚いた。
「ちょっと、それ本当なの?」この洞窟に入って初めてクーさんの声が聞こえた。
僕はクーさんの声で、怪しい水晶玉の世界から少しだけ現実に引き戻れたような気がした。
「実現しないことが思いつく事はないのです。」占い師が言った。
女神はユニヴァがまたあの渦巻の向こうの世界に行きたいと考えたのなら、また向こうの世界に行くという未来があるに決まっていると言うのだ。
「それって、未来の方が先にあるってこと?」ユニヴァがテーブルに肘をついて言った。
女神は水晶玉を布で撫でた。
「アタシは思いつかないくらいすごい事をしたいのになぁ。」ユニヴァが言った。
「複合的な理由で思いも寄らないような事は起きるでしょう。」
女神は水晶玉を拭いてから、今日の占いが終わったことを告げた。
洞窟の部屋を出ると、広間の眩しさが目にしみた。
「占いって言うのは、何だか分かったような、分からないようなものだね。」とクーさんが首を掻きながら言った。
広間の中央にユニヴァのものと同じような巨大真珠が着地している。
近寄ると中に大きな男の姿が見えた。
「ちょっとだけ貸し出してたんだ。」ユニヴァが走って近づいて行った。
間近まで来ると、小さな動物が一人前に着席しているのも見えた。
小さな動物は今まで大きな男の肩に乗っての搭乗ばかりだったので満足げな顔をしている。
「また渦巻が出るかどうか、占って来たんだ。」小さな動物にユニヴァが言った。
「で、何だって?」
「実現しないことが思いつく事はないのです。」って言われた。
「思いは磁石のように引き合っているからねぇ。」
小さな動物はいつも何か解っちゃってるようなもの言いなのだ。
「知ってる!ロールケーキが食べたいと思うと、ロールケーキを引き寄せちゃうって公式でしょう。」
ユニヴァがそう言うと、小さな動物は巨大真珠に入って行った。
そしてケーキの包みを持って出て来ると、それをユニヴァの目の前に差し出した。
「はい、お土産のロールケーキだよ。」
「巨大真珠をお借りしたお礼です。今朝焼いてきました。」と大きな男が笑った。
ケーキを受け取るとユニヴァはすぐにユニヴァの部屋に向かって歩き出した。
「でも未来にあるお皿にのったロールケーキもユニヴァを引き寄せているってことだよ。」小さな動物は小走りに後をついて行く。
「あたしはどんなロールケーキにでも引き寄せられちゃうのよ!特にイチゴのにはね。」
小さな動物はその答えに深く納得した様子だった。
大きな男のロールケーキはアプリコット入りだったが、ユニヴァを十二分に引き寄せているのが僕にも分かった。
しかし、まだあの黒い渦巻は現れそうもない。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/08/27 17:03】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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