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ちゅら星(57)
僕らは次の瞬間真っ白な閃光に包まれた。
目が慣れてくるとそこには静かな白い空間が広がっていた。
「明るい。」ユニヴァが窓の濃度を強くしたので、僕らは緑色のサングラスの中にいるみたいになった。
確かに予想に反する光景だ。
「何だろう?・・・あれ。」クーさんが遠くを指さした。
「星みたいなのが光ってるね。」
一面キラキラと瞬く大小の光で埋め尽くされているように見える。
僕らが出てきた方向には、うす黄色い巨大なクリームみたいなものが渦を巻いていた。
僕らはきっと、あのクリームの中に突っ込んで行けばユニヴァの部屋に戻れるのだろう。
・・・たぶん。
「ちょっとー、あれ見てよ!」
ユニヴァが示した方向には、惑星のような巨大な球体がいくつも浮いていた。
しかも水色に輝く巨大な惑星からは、すぐ右側の少し小さめの緑色の星へ一滴のしずくが今にも滴り落ちそうに伸びているのだ。
「ここ宇宙空間なの?」ユニヴァがクーさんを振り向いた。
「かもね・・・真っ白な・・・。」クーさんが惑星を凝視したまま答えた。
宇宙は黒いものだと思い込んでいたことに、僕は今気がついた。
巨大真珠は次第に惑星に近付いていた。
いつの間にかユニヴァが巨大真珠をゆっくり移動していたのだ。
「どうするつもり?」不安そうにクーさんが言った。
「あの緑の星に降りてさ、しずくが落ちるところを見ようよ。」
愉快そうなユニヴァをよそに、僕とクーさんはモニター越しに顔を見合わせた。
「あの星の安全も何も確認していないのに・・・?」と僕が言う間からクーさんが口をはさんだ。
「あの星どころか、この宇宙領域が何なのかさえ分からないんだぜ!それにホントに戻れるのかどうかさえ・・・。」ヒステリックにクーさんが言った。
「だけど戻っちゃたら、二度とここに来ることが出来ないかもしれないのに!」
確かにそうだとは思ったが、危険すぎる気もした。
「それにどうせ戻れないなら、楽しんじゃおうよ。ねぇ!」と言ってユニヴァはモニター越しに僕を見て笑った
すぐ隣のモニターにはクーさんの青ざめた顔が映っていた。
緑色の星は近付くにつれ白っぽい緑色にあせてきた。
大気圏の雲のせいでそう見えるのだ。
少し圧力を感じて、緑色の星の大気圏に入った。
「良さそうな星じゃない。」ユニヴァが軽く言った。
僕らは雲の近くまで降りてから、雲の隙間を探して移動した。
雲がまばらなところに来ると、緑の絨毯の間を血管のようにたくさんのキラキラ光る河が流れているのが見えた。
「あのしずくが流れて来るのね。」
進むにつれて雲が晴れてきたので、巨大真珠はさらに下降して行った。
僕らは一本の大きな川に沿って進んだ。
川を上流まで溯れば、あのしずくが落ちる場所に着くはずだからだ。
予想通りに大きな海のような場所が見えてきた。
濃い青色の塊だ。
しかしそれは見たこともないほどの黒々とした深い色の青だった。
「深い。」
僕らはその青色に少し恐怖を感じたほどだ。
この星の中心部まで届いちゃうのではないかと思うほどの深さを感じる巨大な水たまりなのだ。
それから気を取り直して、沿岸に沿って進んだ。
ユニヴァが一時停止した。
「上を見て。」
僕らの頭上では巨大なレンズがゆらゆらと震えていた。
「今にも落ちてきそう。」嬉しそうにユニヴァが言う。
「少し高度を上げておいた方がいい。」クーさんが言った。
僕らはしずくが落ちた時の状況を考えて、安全な距離を取って待った。
「案外落ちてくるまでに、何年もかかったりしてね。」と僕が言い終えた時だった。
ゴゴーーーーンッ
一瞬のうちにしずくは巨大な津波となって緑色の星全部をすっぽりと覆ってしまった。
緑の星は一瞬にして水の星に変身してしまったようだ。
上を見上げると、水色の惑星にはまた少し水のたわみが出来始めているのが見えた。
「スポンジみたいな星ね。」
気がつくともう所々に水のはけた場所が見えてきた。
そして僕らは適当な水のはけた場所の平らな岩の上に巨大真珠を着地させた。
「大気は安全よ。出てみる?」
けれども僕らは、巨大真珠の中から広大な湿原を眺めていた。
遠くを見ていた僕は、すぐそばで何か動くものを感じてギョッとした。
「何かいるぞっ!」
するとそいつはすぐに岩の淵から這い上がって来た。
「L、Lume星人?」
ユニヴァと、クーさんが驚きの顔を僕に向けた。
「・・・小さいけどそっくり・・・。」
真っ白な体のそいつは無防備な様子で巨大真珠の前に立って、僕らを見ていた。
「ここはLume星ですか?」いきなりユニヴァがスピーカーで話しかけた。
Lume星人もどきはユニヴァの方に少し顔を向けただけだ。
「でもちょっとLume星とは違う気がするなぁ。」
いくら僕でも明らかにLume星じゃないことは分かっていた。
「こんな時に・・・」
ユニヴァはマチから託されたあの紫色の貝殻の通信機器を持ってきていなかったことを悔しがった。
その時小さなLume星人もどきが何か言った。
「宇宙人が来たなんて誰にも言わないよ。」
「どうして?」
「『マオンが出た!』って言ってたらね、誰も信じてくれなくなっちゃうからさ。」
マオンについては知らないが、その話はどこかで聞いたことがある気がした
「そのお話なら知ってる。ソープスとかって言うのよ。」ユニヴァが得意そうに言った。
「アソーポスじゃなかった?」クーさんが訂正したが、僕は何となく違うような気がした。
「ああそれ、イソップじゃない?」
「そんな変な名前じゃないわよ。」ユニヴァが言った。
小さなLume星人もどきは、キョトンとしたかわいらしい表情で僕らを見つめていた。
「童話は九九だからね。」
「九九?」
「九九を覚えとくといいよ、簡単に倍数計算ができるんだ。」
「知ってるわよ、そんなの。」
生意気そうにしゃべる小さなLume星人もどきに、ユニヴァがちょっとムッとした。
「でも、童話は九九じゃないでしょ。」
「童話は九九だよ。」
小さなLume星人もどきはユニヴァを相手に、腰に手を当てて説明し始めた。
「マオンが来てもいないのにマオンが来たなんて嘘をついていると、本当にマオンが来た時には・・・?」
ユニヴァが半自動的に答えた。「誰も来てくれなくなる。」
「そうっ。」
「ガオガオンが捕まえたチョロッピを見逃してやると・・・。」
ユニヴァが答える。「罠にかかったとき、チョロッピが縄をかじって助けてくれる。」
「もうわかってきたでしょ。」
「童話は九九だね。」ユニヴァは納得させられてしまった。
「でも、キミがあたし達に会ったことは嘘じゃないよ。」
「そうだね、じゃ後でみんなに自慢するよ!」
「あたし達はちゅら星から来たの、ちゅら星よ!」
それから小さなLume星人もどきが心配そうに指をさした。
「ちゅら星ってあの渦巻の中にあるんでしょう?」
見ると渦巻が僕らが来た時よりもだいぶ小さくなっていた。
ユニヴァはすぐに巨大真珠を離陸させた。
僕とクーさんは慌てたとは言え、小さなLume星人もどきに手を振った。
せっかく友達なれたのにサヨナラも告げずにかわいそうに思ったのだ。
でもユニヴァは必死だった。
大気圏を抜けると僕とクーさんにも緊張が走った、渦がかなり小さくなっている事が分かったからだ。
「ギリギリかもっ!」
次の瞬間見慣れたユニヴァの部屋が現れて、ユニヴァは急ブレーキをかけた。
ユニヴァの部屋の壁がモアモアの素材の壁でなかったら、巨大真珠の一部に傷が付いていたに違いない。
巨大真珠はちょっとしたショックと共に停止して、僕らは無事帰還したのだ。
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【2009/07/04 17:08】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(3) |
ちゅら星(58)
35.異次元の彗星
依然として黒い渦巻は窓の中央に小さく残ったままだったが、もう僕らに恐怖感はなかった。
そして、無事を祝っていつものようにシャンパンを開けた。
しばらくして僕は、出がけに届いていた小さな動物からの手紙が気になった。
「ユニヴァ、小さな動物から手紙来てたんじゃない?」
ユニヴァは忘れてたと言うようにわざと間抜けな顔をしてから、自分の目の前に小さく蛍光ピンクの文字を出して読み始めた。
こちらからは反転された文字が見えたけれど、ユニヴァ宛の手紙なので見ないように努めた。ユニヴァの目が時々大きく見開くたび、手紙の内容が気になった。
ユニヴァが手紙を開いたまま、僕らの方に顔を向けた。
「彗星のこと知ってた?」
「彗星?」僕は特に思い当らなかった。
「・・・っああ、なんか不思議な彗星が来るって言ってたね、コースが全く分からないらしいけど心配ないって聞いたよ・・・あれっ、白い宇宙に行ってる間に見逃したかも!」クーさんは悔しそうに言った。
「不思議って?」
「たぶん別次元から飛んで来るとか、そんなのじゃない?」
ユニヴァは手紙の続きを読んだ。
その時、「ガオガオ」とワニの鳴くような声が聞こえた。
「手紙読んでる間に本人が来ちゃったよ。」
ユニヴァがそう言って、数秒後には部屋の隅に大きな男とその肩に乗った小さな動物の姿があった。
小さな動物は猛スピードで大きな男の肩から滑り降りて来た。
「ああ無事だったんだね!」
小さな動物は僕らが白い宇宙に行っていたことを知っていたとでも言うのだろうか。
その心配様ときたら、未だに小さな心臓の鼓動が目に見えるほどだ。
それから小さな動物は目を丸くしてあの黒い渦巻の名残を凝視した。
「あそこから出てきたんだね、彗星。」
「彗星?」
「あの高次元の彗星だよ。」
「何の事よ。」
「彗星が飛び出してくるところをここで見てたんじゃないの?」
僕らはそろって首を横に振った。
小さな動物は唖然として大きな男の顔を見た。
「まさかあの大事件を知らないとでも?」大きな男がいぶかしげに言った。
「他のみんなはちゅら星のどこかと言うことしか解らないだろうけど、僕は動物の直感と灯台にあるレーダーを駆使して、彗星が飛び出した完璧な座標を割り出したんだ。それがここさ!」
「ここから?」
「彗星が?」
「飛び出した?」
それから長い沈黙の後、ちょっとがっかりしたように小さな声で小さな動物が言った。
「見てないんだね。彗星・・・。」
「あたし達、そっち側の宇宙に行ってたのよ。」ユニヴァが視線で黒い渦巻を指した。
そして、小さな動物は目を丸くして感慨深げに首を振った。
「まさに君たちらしいよ。」
それから僕らは白い宇宙であった事を説明した。
と言うよりは、次から次にくる小さな動物の質問に答えるようにして話は進んだ。
「因果応報の九九だよ。」小さな動物が言った。
「因果応報の九九?」
「たとえばユニヴァの大好きなロールケーキを、お腹を空かせてかわいそうな小さな動物ちゃんにあげるとする。すると、ある日困っているユニヴァのところに小さな動物ちゃんが現れて、ユニヴァの嫌いなカボチャのパイを食べてくれる。」
「『ナントカの恩返し』はこういったケースの因果応報の九九って事だよ。」
僕とクーさんは「なるほど」と唸った。
「その答えは、アンタがパンパカパンのデブになるってことね!」ユニヴァはそう言ってげらげら笑った。
とにかく僕たちは小さな動物の説明で、小さなLume星人が「童話は九九」と言っていた理由をさらに納得したりした。
それから少し休憩を取ってユニヴァがアップルパイを用意してくれた。
「ところで彗星はどうだった?」クーさんが問いかけた。
「ちゅら星から真っ青な光の塊が飛び出して来たと思ったら、その尻尾の長いこと長いこと。
はるか彼方に彗星が見えなくなった後もまだ尻尾の端が出てこないありさまだった。」
大きな男は相当彗星に感動したらしく、待ってましたとばかりに説明してくれた。
「異次元の彗星は違うね、音楽まで聞こえるんだ。」
ユニヴァはハッとした顔をした。
「木琴と笛みたいなのじゃない?」
小さな動物がパイを飲み込みながら、ウンウンと首を縦に振った。
僕らは異次元のものすごい彗星を見逃してしまったことを後悔したが、小さな動物たちはあっち側の宇宙を見てみたかったと言って悔しがった。

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【2009/07/28 11:45】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(3) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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