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ちゅら星(55)
33.ペンギンとの再会
七色イルカの島の砂浜で僕らはしばし休憩をとった。
とにかくレモン星にたどり着いたということだけで、何にも変えられないような安心感を得ていた。
落ち着きを取り戻した僕らは、イルカの助けなしに僕の家へは帰ることができないことに気がついた。
日差しは、午後の時間帯の色を帯びてきていた。
「虹ちゃんの家の場所、あたし覚えてると思うわ。」
僕らは前に訪れた時の記憶を元に、虹ちゃんのあの大きな渦巻貝の家に向かった。
以前、巨大パエリアを食べたレストランを過ぎて、迷わず虹ちゃんの家へとたどり着いた。
ところが扉は開く様子もなく、貝殻の壁をコツコツと叩いてみたりもしたのだが、虹ちゃんが出てくる気配はないのだ。
しばらく待った後、僕らはあきらめて元の道を戻り始めた。
角を曲がってあのレストランの路地に入ってくると、小さな動物が大きな男の肩で言った。
「ねぇ、お腹すきすぎだよ。」
「ろくに歩きもしないのに?」ユニヴァが皮肉を言った。
「さっき巨大パエリアがどうとか言ってたよね?」
そしてユニヴァは何も答えないまま、レストランの階段を上って行った。
僕らは大きな丸テーブルを囲んで、巨大パエリアとチェリーの沈んだ飲み物を注文した。
パエリアを待ちながらチェリーの飲み物を飲んでいると、どこかでギターの音が聞こえた。
店の奥の一角が小さなステージになっていて、一人のギタリストがチューニングをしているようだ。
「それにしてもネレイドって不思議な場所だったね。」と遠くを見つめてユニヴァがつぶやいた。
「あの生意気なペンギンっ!」と小さな動物も遠くを見つめて呟いていた。
それからしばらく沈黙が続いたあと、小さな動物の頭の中ではペンギンのことで一杯だと言わんばかりに、またペンギンの事を話し始めた。
「あのペンギンのポータルの教え方覚えているでしょ?」
「そう言えば生意気な詩みたいなのをツラツラ言っていたよね。」
僕がそう言うと小さな動物は遠くを睨み据えて「ムカつくっ。」と小さく言った。
確かにペンギンはもったいぶった言い方をしていたのを覚えている。
『藻の茂みの奥深く、光輝く魚たち、辺鄙で神秘な星までも、素早く案内いたします。・・・』
そう呟いたのはクーさんだった。
「ほんの数メーター泳ぎだしただけで、全く前後左右がわからなくなってしまったんだ。」
「確かに!」とユニヴァが言った。
「だからあたしは、とにかく一直線に進んだのよ。」
「真っ青一色の中で途方に暮れていると、ペンギンが通りかかったんだ。」
「アイツだねっ。」小さな動物が乗り出して言った。
「確かに感じ悪い視線で僕の方に寄って来て、『今日は迷子が多い日だ。』とか呟いてから、突然その詩みたいなのを朗読して泳ぎ去って行ったよ。」
「アイツめっ!」小さな動物がまた言った。
「でもおかげで、みんなに会ってここに戻ってくることができたよ。」クーさんはそう言ってあの時のいきさつを語った。
気がつくとユニヴァの姿が見えなくなっていた。
「ちょっとアンタっ!」ユニヴァの声だ。
ギタリストのそばでユニヴァが何か叫んでいる。
ドタドタと騒々しく僕らが近寄ると、なんとギタリストの傍らに置いてあるモニターにあのペンギンのにくたらしい顔が映っている。
「僕が作詞を依頼しているペンギンなんだ・・・。」と突然モニター付の通信機器をユニヴァに占領されて、ギタリストはキョトンとして僕らに言った。
そして、「簡単なことを難しく言う、それが詩人の仕事!」とユニヴァが言うと、小さな動物が拍手を送った。
するとペンギンはさらに生意気な流し目で、僕らを見て言った。
「単純の中には、深淵が隠されている!」
まったく口の減らないペンギンだ。
しかし僕らはペンギンに感謝していないわけではなかった。
あの時ペンギンに出会わなければ、僕らはあの巨大なウミウシのいる惑星をレモン星のどこかだと思い込んでさまようことになっていたのだから。
「ねぇ、こんどあの惑星を案内してよ!」唐突にユニヴァが言った。
僕らは耳を疑って一斉にユニヴァを見つめた。
「だってせっかく珍しい星のお友達見つけたんだものっ・・・。」
「えっ、友達・・・?」ペンギンが怖気づいたように言った。
「ムカつく友達さっ。」小さな動物がペンギンを睨みつけるようにして言った。
「お前、ほんとムカつくな。」なんだかちょっと嬉しそうにペンギンが言い返した。
「お前もなっ。」また小さな動物が吐き捨てた。
それからギタリストは音楽の事でペンギンと打ち合わせていた。
席に戻るとちょうど巨大パエリアが出来上がって来た。
それから僕らは黙ってパエリアを夢中で食べた。
「あら、久し振り。」
キュートなドレスの女の人がすぐそばに立っていた。
「に、虹ちゃん?」
きれいに巻いた髪とメイクですぐには虹ちゃんだとわからなかったのだ。
「もうすぐあたしが歌うわよ。」得意そうに虹ちゃんは言うと、近くにいたウェイトレスを呼んで、僕らのために巨大焼きそばを注文してくれた。
パエリアはあと少しでなくなりそうだけれど、お腹はまだまだ余裕があったので、ユニヴァはバンザイまでして喜んだのでした。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/05/10 15:28】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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