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ちゅら星(53)
「それにしてもこの狭い迷路にいると、海王星のドリームトラベル以上に夢の中をさまよっているような気分になるよ。」と小さな動物がため息まじりに言った。
「しかも悪い夢だな。」とクーさんが続けた。
ユニヴァの姿はまだ戻ってこない。
僕は暇つぶしに階段を数段降りてみたのだが、腰まで水に浸かってすっかり服がぬれてしまうと、そのまま一気に頭まで潜ってみた。
目の前には広大な水中が広がっていた。
四方から柔らかな光の柱が差し込んでいてメロウな青緑色の世界だ。
足元は濃いブルーで計り知れない深さであることもなんとなくわかった。
そして辺りにはユニヴァの姿どころか、差し込む光以外には青緑色一面だけしか見えるものは何も無い。
階段を上ろうとした時、僕は水中で呼吸ができることに気がついた。
「どうだった。」僕が水中から顔を出すとクーさんが訊いた。
「海王星の海みたいに呼吸ができるよ。」
僕がそう言うと今度はクーさんが階段を降りて水中に入って行った。
しばらくすると水中に見えていたクーさんの姿が消えた。
あの青緑色の深淵の中に泳ぎだしたのだろうか。
「誰か来るよ。」小さな動物が言った。
耳を澄ましてみると、ザッブザッブ、ザッブザッブとこの水の通路を歩く音が聞こえてきた。
僕らはじっと誰かがあの角を曲がってここに来るのを待った。
「ペンギンだね。」
頭の上の黄色い飾り羽を揺らしながら一羽のペンギンが歩いて来る。
ペンギンは黙って僕らの脇をすり抜けると階段を降りて行く。
「あのちょっと。」小さな動物がペンギンに声をかけた。
ペンギンが無表情にこちらを振り向いた。
「僕たちポータルを探しているんだけど・・・。」
「どちらへ行くの?」無表情に抑揚の無い口調でペンギンが言った。
僕があわてて「レレ、レモン星です。」と答えると、ペンギンは無表情に目の前の壁をみつめた。
「イルカなの?」唐突にペンギンが僕を見上げた。
「あんたはまさかクジラ?」ペンギンが大きな男を仰ぎ見た。
「ああそうそう、虹色のイルカ見たことある?」
「あぁ、またあの子に会いたいなぁ・・・。」
「レモン星みたいなローカルな星、憧れちゃうなぁ・・・。」
「まだ島の北側の海域には行ったことないんだよね、噂だとなんでも・・・」
そこで小さな動物がペンギンのおしゃべりを遮った。
「レモン星のポータルはどこにあるの?」
「今日は僕、レモン星にはいかないんだ。」
ペンギンはそう言うと階段を降りて水中に消えていってしまった。
「なんだアイツ!」悔しそうに小さな動物が吐き捨てた。
そしてユニヴァもクーさんも戻らないままかなりの時間が過ぎていった。
「お待たせぴょん。」
ついにイルカなユニヴァが階段から顔を出した。
「ポータルは?」
「あったあった。」
僕らはホッとした。
けれどもまだクーさんが戻っていなかったのだ。
ユニヴァは「子供じゃないわ。」と軽く言うと、僕らに着いて来るようにと言って、さっさと水中に入って行ってしまった。
結局クーさんを心配しながらも僕らはユニヴァの後に続いた。
ユニヴァは下へ下へと深く潜って行った。
不思議と疲れや水圧は感じないのだけれど、とてつもない深さまで来ていることは確かだった。
次第に何もなかった水中に海藻がゆらゆらと見えるようになってきた。
ユニヴァは振り向きもせずに黙々と泳ぎ続けた。
海藻の林を抜けると、また何もない青緑色が果てしなく続いた。
ユニヴァがやっとこちらを振り向いたので、ポータルは近いのだろうとホッとした。
ユニヴァが指さす方を見ると階段が見えた。
まさか元の場所に戻ってきてしまったのだろうか?
階段を上がってみると先ほどと同じ景色があった。
「似てるけど違うのよ。」とユニヴァは言って、ザブザブとあの狭い通路を進みだした。
僕と大きな男と小さな動物は顔を見合わせた。
けれどもユニヴァに従う他はなかったのだ。
ザブザブと4回右に曲がり階段を上がって水から解放されると、乾いた狭い道を進んで行った。
途中まで来るとユニヴァが突然立ち止った。
そしてポケットから巨大真珠を出して、僕らに乗るようにと言った。
「なんで最初からこれで移動しなかったのかな?」
確かに発狂しそうなこの道を徒歩で行くより、この方がはるかに快適だったのだ。
巨大真珠は4回右に曲がって、僕らはポータルのある場所までたどり着いたのだ。
ポータルにとどまっていると、辺りは次第に灰緑色の霧で満たされていった。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/04/06 16:52】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(1) |
ちゅら星(54)
閃光が走った次の瞬間、僕らは轟音と共に黒い岩に囲まれた場所にいた。
「ピーちゃんここ何処?」
ユニヴァの声は轟音にかき消されてやっとこ聞こえる。
僕は首を横に振った。
レモン星の住人だからと言って、レモン星を知り尽くしているわけではないのだ。
轟音は続いている。
巨大真珠から降りると轟音は更に大きく響いた。
「あ、海だ。」岩の隙間からチョロチョロと出ていった小さな動物が叫んでいる。
この轟音は岩に打ち付ける波の音のようだ。
僕らは黒い岩を伝って小さな動物のいる方へと進んで行った。
その先には砂浜が広がっていて、小さな動物は潮風に吹かれてグゥーンと伸びをした。
「うわっ、何てきれいな海の色!」
「サンゴだ!」
そう僕が言うと、みんな波を蹴ってザブザブとサンゴ礁に進んで行った。
僕は何かぐにゃりとしたものを踏みつけて、その場を跳ね退いた。
「何すんのよぅ!」ピンクのサンゴの近くから低い声がした。
足元の水中をよく見てみると、何とサンゴ礁ではなく巨大なウミウシが横たわっていたのだ。
その大きさは大きな男と大差ないほどの巨大さなのだ。
どうやら僕はピンクストライプのウミウシのスカートの裾を踏んでしまったらしい。
しかもあちらにもこちらにも、カラフルなウミウシが何十匹と海底を埋め尽くしている。
僕に踏まれたウミウシがピンクの裾を大きくこちらにひるがえして来たので、僕は慌てて砂浜に走りあがった。
僕らは岩場に避難してから、その美しい海底の光景に感動してしばらく見とれていた。
ウミウシの色や模様のバリエーションは、まるで奇麗な夏のパラソルを見ているような鮮やかさだ。
「おや、さっきの・・・。」
振り返ると頭に黄色い羽根飾りのあるペンギンがいた。
「あっ、さっきの!」小さな動物もペンギンに向かって言い返した。
「おや、キミ達はレモン星に行くのじゃなかったかい?」
僕は嫌な予感がした。
「えっ、ここレモン星じゃないの?」ユニヴァが驚いて言った。
「すぐ近くにレモン星にそっくりのライム星って星ならあるぜ。」意地悪そうにペンギンが言った。
やはりここはレモン星なんかじゃなかったのだ。
しかもライム星と言う名前には聞き覚えがあった。
ラブリーカカオの試食会で会った宇宙服を着たクーさんの友達が住む星だったはずだ。
彼はマイカーでちゅら星に来ていて、ライム星と言うのはとっても遠いところだと言っていた。
僕らはそのライム星の近くの星にいるということなのだろうか。
唖然として、沈黙を続けている僕らにペンギンが言った。
「もしかしてポータル間違いちゃったのかな・・・?」
その意地悪そうな口調に、小さな動物がペンギンの方をキッと睨んだ。
しばらくしてユニヴァはペンギンの方に向き直ると言った。
「あたしたちレモン星に行きたいのよ。」
「もしかしてキミ達、ネレイドのポータルを使うのは初めてだったりして?」
ユニヴァはコクリとうなずいた。
ペンギンは生意気そうに腕を組んだ。
「まずはセンターに行って。」
「センターって?」
「センターはセンターだよ。」
「どこにあるの?」
「だからセンターはセンターだよ。」
「ネレイドのどこにあるかって聞いてるのよ!」ユニヴァがちょっと苛立った。
「センター!」
「まん中ってこと?」
「藻の茂みの奥深く、光輝く魚たち、辺鄙で神秘な星までも、素早く案内いたします。」
「何それ?」
はてな顔のユニヴァをよそに、ペンギンは変な詩のような言葉を残したまま、岩から飛び降りて海に入って行ってしまった。
「ネレイドに戻ろう。」僕が言った。
「クーちゃん大丈夫かな?・・・」急にクーさんを心配しながら、すっかり肩を落としたユニヴァはさっき出てきた黒い岩の方へと歩き出した。
ネレイドに戻った僕らは、今度は巨大真珠に乗り込んだまま海藻が見えるところまで海中を進んで行った。
そして藻の茂みをどんどん奥まで進んで行く。
藻が絡まりあって進みにくいうえ、前方の様子も全く海藻しか見えない状態のまま進んで行くと、小指くらいの小さな金色の魚が数匹現れた。
藻の茂みがまばらになるにつれて、金色の魚の数が増えていった。
魚たちは僕らの巨大真珠を避けるように大きくうねりながら回遊して行く。
魚の群れを抜けて振り返ると、回遊する魚群が金色の壁のように立ちはだかっていた。
そしてそれはどこまでも続いていて、そこには魚の壁に囲まれた大きな空間が広がっていた。
とにかく僕らは魚の壁から離れて、金色に明るい水中を中央へと進んで行った。
何かの影が動いたようだ。
1頭のイルカが近づいてくる。
「どちらまで?」
ユニヴァが巨大真珠を透明化すると、イルカは僕らの顔を珍しそうに眺めた。
「あなた方、迷子のお友達を探してはいない?」
クーさんだ。
僕らはコクリとイルカにうなずいた。
さらに中央付近に進んで行くと、迷子の子供のように2頭のイルカに挟まれたクーさんの姿があった。
ホッとしたクーさんが巨大真珠に乗り込もうとするとイルカが言った。
「センターのポータルは一人ずつの移動方法なので、乗り物から出る必要があります。」
僕らはイルカの言葉に従い、ユニヴァは真珠をポケットに押し込んだ。
「それでどちらへ?」再びイルカが聞いた。
「レモン星へ。」僕とユニヴァは声をそろえて言った。
するとあの金色の魚が一匹、そして2匹、3匹、4匹5匹やって来た。
「今からこの魚に触れれば、次の瞬間にはレモン星にいます。ではまたいらして下さい。いつでもお待ちしております。」そう言うとイルカはどこかに消え去って行った。
金色の魚は時々向きを変えながら、その場に5匹仲良く留まっている。
「これに触ればいいのね。」ユニヴァがそーっと指を差し出した。
そして魚に触れたその瞬間ユニヴァの姿が消え去った。
そして残された僕らも魚のおかげでレモン星へたどり着くことができたのである。
とは言うものの、僕らがついた先は海の中だった。
幸い水深の浅いところだったので、すぐに砂浜にたどり着くことができた。
そうだ、ここは見覚えのある海岸だ。
そこは、あの虹ちゃんや月ちゃんがいる七色イルカの島に違いなかった。
僕らはポータルを利用したにしてはずいぶん遠回りをして、ついにレモン星へたどり着いたのだった。

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【2009/04/13 15:48】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(1) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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