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ちゅら星(52)
32.ネレイドからの帰還
ワープボタンを押すとすぐに僕らは鬱蒼とした森の中に到着した。
僕の目の前の景色はどこまでも続く木々が見えるだけで、洞窟や泉のようなポータルっぽいものは何も見当たらなかった。
「どこがポータルなんだろうね・・・」と言いかけたところで、ユニヴァが「行くわよ。」と言ったのでユニヴァの方を振り返ると、ユニヴァから見える景色のまん前に緑色の光が渦を巻いて空中に浮かんでいるのが一瞬見えた。
「・・・。」
「着いたのユニヴァ?」
「・・・たぶん。」
僕らの目の前には一面のうすぼやけた灰緑色が見えるだけだった。
「変な磁場に入り込んじゃったんじゃないか?」
「ワープで海王星に戻れるだろうか?」
「ねぇ、なんかちょっと動いてる。」
「これ霧みたいなものかも。」
「・・・。」
「・・・。」
「晴れてきそう・・・。」
そのうすぼやけた灰緑の霧はゆっくりと晴れていった。
だいぶ霧が消えてみると、白い壁に挟まれた狭い通路いっぱいいっぱいの場所に巨大真珠が浮いていることがわかった。
白い壁はだいぶ高く2階建ての家の屋根ほどの高さだ、空を仰ぐとどんよりと黄色っぽく曇ったクリーム色の空が壁と同じ色合いを見せていた。
特に大気に問題があるわけではないので、僕らはその場で巨大真珠から降りて歩いてみることにした。
とは言っても、左右を壁に挟まれた狭い道が一方にどこまでも続いているだけなのだ。
もう片方は同じ高さの壁で行き止まりになっている。
「もっと人魚ちゃんにネレイドのこと聞いてくればよかった。」
「うん・・・。」僕とクーさんは小さく答えた。
大きな男とその肩にいる小さな動物は不安そうに黙っている。
そしてユニヴァは歩き始めた。
全員ただユニヴァの後に続くしかなかった。
壁はどこまでも続き、曲がり角さえないように思えた。
しばらくすると、ユニヴァは急に立ち止ってポケットから真珠を取り出して巨大化させた。
僕の目の前で真珠が道をふさいだ。
「やっぱり上空から行くべきでしょ。」とユニヴァは言って巨大真珠に乗り込んだ。
そして僕らも乗り込んだ。
一気に上昇しようとした巨大真珠は何かにぶつかって跳ね返されて、危うく地面に打ちつけられるところだった。
再度、慎重に上昇していくと壁の高さでゼリー状の透明なバリアーがあってそれ以上上昇できないようになっていることがわかった。
「と言うことは、あたしたちはこの壁の迷路を行くしかないってことなの?」
ユニヴァが絶望的な声を上げた。
そしてまた、僕らは巨大真珠をポケットにしまって白い迷路を歩き出した。
「あ、行き止まり。」歩調も緩めず、力なくユニヴァが言った。
何も答えないまま、みんなユニヴァの後に着いていた。
「あっ!左に曲がれる。」と言ってユニヴァが走り出した。
左に曲がった僕たちが見たのは、また同じような途方もなく続く白い壁の道だけだった。
きっとまた曲がり角があるということだけが唯一の希望だったけれど、その希望で僕らの歩くペースは少し早くなっていた。
やっとさっきの二倍くらい歩いて曲がり角が現れた。
「また左に折れてる。」
案の定僕らの目の前には全く同じと言っていいような景色が続いていた。
文句の一つも誰も言わないのは、ただどこかに到着したい気持ちしかないからかもしれない。
この狭く変化のない景色は精神的にこたえてきた。
いつの間にかまた歩くペースは遅くなっていた。
それでもユニヴァのすぐ後ろの僕はいい方で、振り返ると大分離れて大きな男と小さな動物、そしてさらに後方をクーさんが歩いているようだった。
道に迷うことがないだけがこの道の取り得だ。
そしてさらにさらに歩いて「あーぁ発狂しそう。」と小さな動物がつぶやいたころ、また左の曲がり角を見つけたユニヴァが「今度こそ、今度こそ・・・。」と祈るみたいにつぶやき始めた。
しかし曲がった先の状態は全く祈りには答えていなかった。
「ねぇユニヴァ、僕たちもう四回左に曲がったよね。」
「うん、確かにね。」
「もしかしてもしかすると、四回曲がるって元の所に戻っちゃったりしない?」
「そうね、もしかするとありえる。」
「ってことは僕ら、あの壁の裏側に着いちゃうってことだよね。」
「なんか壁っぽいものが見えてきたけど・・・。」
ユニヴァと僕の足が止まって、大きな動物とクーさんの足音が近づいてくるのがわかった。
一所に集まった僕らは顔を見合わせたが、誰もないも言わなかった。
「海王星に戻ろう・・・。」と小さな動物が言った。
しかし海王星へのポータルを使うと言うことは、またこの狭くて白い道を発狂しそうになりながら元来たあの場所まで戻らなければならないということなのだ。
すると思いついたようにクーさんが言った。
「ねぇ、その先の突き当りがさっきのポータルの場所の裏側だとしたら、その先の壁の付近もポータルの機能があるかもしれないじゃない。」
何の根拠もない思いつきだけれど、突き当りまではすぐそこだった。
「あれっ、何だろう?」ユニヴァが走って行った。
突き当りの手前に地下に続く階段が降りている。
階段を数段降りてみると、中は意外に明るく、天井は先ほどと全く同じようにクリーム色のゼリー状の空が鈍く光っていた。
そして相変わらず白くて狭い道がうんざりするほど続いている。
ユニヴァが最初に階段を降りて行ってみたが、階段の下の方には水がたまっていたので途中で躊躇した。
僕が少しずつ降りてみると、かなり透明度の高いきれいな水がちょうど僕のひざ下くらいの深さまで来ていることがわかった。
きっと五人とも冒険好きなのだろうか、僕らは当たり前のように水に浸った白くて狭い道をザブザブと歩き出していた。
しばらく行くと例によって左の曲がり角になった。
水はどこまでも同じ水位を保っていた。
黙々と歩き続けた僕たちは例によってさらに2度左の曲がり角を曲がり、4つ目の曲がり角に差し掛かろうとしていた。
「今度は何があると思う。」とユニヴァが振り返って言った。
「さぁ・・・疲れたね。」と僕は答えた。
そして四つ目の曲がり角を曲がっても白くて狭い道は続いていて、しばらくすると突き当りの壁が見えてきた。
壁の手前に到着したユニヴァが言った。
「また階段が降りてる・・・。」
水面下に続く階段が深く水中に降りていた。
「・・・。」
「あたし、様子を見てくるよ。」
ユニヴァは階段を一歩一歩降りて水中に沈んで行く。
すっかり水中に沈んだユニヴァは左壁の方を指さして僕らに何か訴えている。
どうやらこの地下では左側の壁がなくなっていて、広々とした空間が広がっているらしい。
するとユニヴァはボワァンと細かい泡の渦に包まれたかと思うとイルカに化けて、機敏な泳ぎですぐに僕らの視界から消え去って行ってしまった。
そして僕は、本当にこんなところにレモン星へのポータルがあるのだろうかと思った。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2009/03/09 16:46】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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