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ちゅら星(43)
29. ユニヴァの未来な乗り物
それからしばらくは、クーさんにもユニヴァにも合うこともなく、僕はレモン星で静かな毎日を過ごしていた。
クーさんのアイスキャンディーが懐かしくなって散歩に出たある日、眼下の海岸で妙に光っているものに気がついた。
よく見ると、直径6センチくらいのありえないほど大きな真珠の粒が転がっている。
すぐに海岸に降りて近くまで行ってみると、大きな真珠は一瞬のうちに直径3メートルまで膨れ上がった。
僕は逃げる間もなくその場に腰をついて倒れた。
そして真珠の壁の中から抜け出てきたのは、白いミニのワンピースに黄色のチーフを首に巻いているユニヴァだった。
「あれ、ピーちゃん迎えに来てくれたの?」ユニヴァは不思議そうに僕を見て言った。
それから真珠の壁をコンコンとノックするようにして「未来っぽいでしょ。」と言って、白い歯まで見せて自慢げに笑った。
この巨大な真珠はちゅら星での最新の乗り物で、今までの車に取って代わるものなのだそうだ。
しかも6センチにまでコンパクト化できるので、いつでも携帯することができるところが魅力らしい。
「それにもっとすごいのは水の中でもオッケーなんだ。」
ユニヴァの自慢は止まらない。
「ほんとは海に沈めておいてからピーちゃんを呼んで来て、大きい真珠だよってだまそうと思っていたのになぁ。」
僕は十分に大きい真珠だと思ってびっくりしたことを白状した。
「それから運転席は自由自在に回転するから、方向転換も簡単なんだよね。」
ユニヴァはそう言ってから僕の瞳を覗き込んで、「乗ってみる?」と言った。
ユニヴァが真珠の壁に掌を当てると、壁が少し揺らめいたように見えた。
そしてユニヴァはもう片方の手で中に入るようにと僕を促した。
僕が恐る恐る手を差し出してみると何の抵抗もなく壁を抜けることができた。
巨大真珠の中はシンプルで、中心に円筒形の柱があり背中合わせに4つのシートが十字の位置に配置されていて、全てのシートの前に同じパネルが設置してある。
ユニヴァが席に着いたので、僕もそのすぐ隣のシートに着いた。
ユニヴァの方を振り返っても、シートは90度ごとの配置なので、ここからはユニヴァの横顔が少し見える程度だ。
「ここだよ!ピーちゃん。」その時、僕の前のパネルの左側にユニヴァの顔が映った。
すると今度はまっ白だった壁はスッと霧が晴れるように透明になり、外の風景が見通せるようになった。
それから何の振動もないまま海岸から浮き上がると、ゆっくりと上昇し始めた。
海岸線が見渡せるあたりまで上昇すると、僕らは瞬間的にレモン星の外の宇宙空間にいた。
しばらくの間パネルの横のユニヴァは黙って僕を見つめていて、それからユニヴァの顔がさらにアップになり輪郭が画面からはずれて目と鼻と口だけになったユニヴァは言った。
「灯台の地下の顕微鏡。」
僕の記憶はあの小さな動物の灯台での出来事を呼び寄せた。
そして少し間を開けてから「見てみたいでしょう。」とユニヴァは言った。
僕は黙ってうなずいた。
「どんなに苦労したことでしょう!・・・でもやっと、灯台の地下へ通してもらえる。」
「小さな動物に交渉したの。」僕は直接隣のシートのユニヴァを振り返った。
ユニヴァも体をこちらにひねって、歯まで見せてウィンクして見せた。
それから僕らはクーさんのいるゴディ星へと向かった。
時々すれ違う車が僕らの巨大真珠を珍しそうに眺めていた。
クーさんは僕とユニヴァそろっての訪問に、何か大事件でも起こったのかと目を丸くして驚いていた。
僕もユニヴァもポケットの中の真珠の事は黙っていた。
僕が昔クーさんと約束していたゴディ星のサンゴが見たいと言って、海に誘い出すというのが僕とユニヴァの計画だった。
クーさんは快く僕らをサンゴのポイントへとボートを出して案内してくれた。
その海中には小さな透明のドームがいくつも並んでいて、その中に紫色の立派なサンゴが育成しているのだ。
「ゴディ星のサンゴは変わった保護膜を張るんだね。」と僕はボートの上から海を覗き込みながら言った。
けれどもよく見ると透明な保護膜の隅にどう見ても人工的な四角いものがあるのがわかった。
「ここはゴディ星のサンゴを守るための養殖場だよ。僕が管理しているドームのサンゴなら君達にも少し分けてあげられるからね。」
それから少し行ったところでクーさんは海にザブンと入ってドームについている四角いものを操作すると、そのドームは溶けるように消えた。
その時ユニヴァがポケットから海中に巨大真珠を落として、わざとらしく叫んだのだ。
「なっ、何あれ!」
巨大真珠に気がついたクーさんはそれを拾い上げると、珍しそうに眺めてからユニヴァに手渡した。
「このあたりで真珠はあまり見ないけれど、もっと沖の方に行けば巨大な阿古屋貝がたくさんいるから、更に大きい真珠が採れることもあるんだよ。」
僕とユニヴァは口を半開きにして顔を見合わせた。
次の瞬間ユニヴァが手に持っていた真珠を放り投げると、真珠は3メートルに膨張しながら海底に着地した。
そしてユニヴァが「こんなに大きいのが採れるの?」とニィーと笑った。
さすがのクーさんもかなりびっくりしたようだった。
その間に「海岸で待ってるわねー。」とユニヴァは言うと巨大真珠に乗り込んで、あっという間に僕らを残して飛び去って行ってしまった。
クーさんは気を取り直して、良さそうな紫色のサンゴを折ってくれた。
そして海底にちょこんと出ている四角いものを操作すると、モヤモヤしたものが現れて、サンゴは元のようにドームに納まった。
僕とクーさんがボートで海岸に戻ってみると、春の陽ざしの海岸では真珠色の卵を抱いた黒猫が昼寝をしているところだった。
それから僕にとっては二度目の、クーさんにとっては初めてのユニヴァの自慢話を聞いてから、僕ら三人は巨大真珠に乗り込んだのだ。
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/09/29 16:23】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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