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ちゅら星(40)
「さて、任務完了。ホシマルちゃんの家に帰っておいしいものでも食べよう。」ユニヴァがバンザイをしながら言った。
ユニヴァが岩の隙間の方に戻ろうとするとホシマルちゃんが呼び止めた。
「ユニヴァさん、ここが本当にちゅら星なのか、またちゅら星のどの辺りなのかを調べなくてもよろしいのですか?」
「だって早く帰らないと・・・。ホシマルちゃんの家に着くころには夜になっちゃうよ。」
結局僕らはユニヴァにしたがって、また岩の隙間を抜けて帰って行った。
ホシマルちゃんの家に着くころにはすっかり夜になってしまっていた。
翌日は少し早起きをした。
そしてあの大草原を2時間歩き通して海辺にたどり着いた。
ホシマルちゃんはペリカンを呼んで、昨日の2倍ほどのサンドウィッチを注文した。
しばらくするとペリカンは相棒を連れて飛んできて、それぞれにくわえたバスケットをドサリと降ろした。
ホシマルちゃんは片方のバスケットのなかみを、もう一方のバスケットに山盛りに詰め込んでしまうと、サインをした紙と空いた方のバスケットをペリカンに返した。
それから僕らは草むらの道をサンドウィッチを頬張りながらのんびりとあの丘を目指して歩いて行った。
バスケットを腕にかけて歩いているクーさんの姿がなんだか可笑しかったので、僕はバカみたいに列の一番後ろで独りでクスクス笑っていた。
僕らの旅は順調に進み、岩の隙間も変わりなく開いていた。
ちゅら星のどこかの海岸は、昨日とはうって変わって真っ暗な夜の海がザワザワと波音だけを響かせていた。
「あぁ、三色の月。」ユニヴァがつぶやいた。
「ちゅら星で間違いないようですな。」ホシマルちゃんが言った。
「あっちに三つ星も見えるよ。」と僕が指さした。
「ああ、あの端のがミンタカ星です。」とホシマルちゃんも指をさした。
それを見てユニヴァは僕らの後ろでかすかに光る岩の隙間を見て言った。
「すぐそこなのにね。」
それから僕らは海岸を少し歩いて、緩やかな登り口を見つけて砂浜から上がって行った。
特に人工的な道もなく、その先には黒い松林が続いているようだ。
「ねぇ、あそこに光が見える。」
沖の方だろうか、小さく光るものが見えた。
「船かな?」
「昨日見た時、確かあの辺は岬になっていたような気がするけど。」クーさんが言った。
「灯台かな?」
ここがどこなのかを知る手がかりだと信じて、僕らは再び海岸に降りると、光の方を目指して星空のビーチを進んで行った。
だいぶ明りが大きくなって来たころ、崖に突き当り僕らは行き場を失った。
少し戻ったところで、小さな登り口を何とか見つけることができた。
砂浜から上がると、そこには雑草の多い小道が通っていた。
光の方向へ進んでいると先頭を行っていたユニヴァが転んだような音がした。
「みんな、ここ階段になってるから。」ユニヴァがボソッと言った。
それから丸太でできた階段が続いていて、目的の光はもうすぐそこだ。
階段を上がるにつれ、夜風が少し寒いくらいに感じた。
突然その扉は開いて、中から光と共に大きな人影が現れた。
瞬時に、僕らは一歩退いたところで息をのみ固まった。
「ようこそ、お待ちしておりました。」大きな影はそう言って、僕らを室内へ促すように奥へ入って行った。
僕らはドアの外で固まったままでいた。
部屋の中からはカランカランとグラスに氷が踊る音が響いてきた。
「さぁ中で冷たいものでもどうぞ。」大きな影が奥から僕らを呼んでいるようだ。
ユニヴァにつつかれて、ホシマルちゃんが一歩足を進めた。
ドアを入ると洒落た透明ガラスの丸テーブルに肘をついている小さな動物がいる。
生意気そうにこちらを見ていた。
先ほどの大きな影に見えていた大きな男がお茶の用意をしている。
「どの子がユニヴァ?」と生意気そうな小さな動物が言った。
「あたしだけど・・・。」
「やっとポータルを開いてくれたんだね。」
僕らは大きな男に促されるままにテーブルの席に着いた。
「ユニヴァはここがどこだか知っているの?」
「ちゅら星でしょ。」
「ちゅら星のどのドームか知っているの?」
ユニヴァは大きく首を振った。
「ここは歴史の流れからはずれてしまったドームだよ。」
「何それ。」ユニヴァは興味なさそうに冷たいお茶をズズッとすすった。
「いつしか僕らだけがこのドームにとり残されて今に至る。」
「かわいそうに。」とユニヴァは軽くあしらう。
「その昔、この灯台はあの三つ星へ向かう船のためのターニングポイントだった。」
小さな動物はお茶のグラスを両手で包みこんだまま話し続ける。
「しかしいつの日か三ツ星旅行をするものが少なくなり、今では三つ星を意識することさえ珍しい事となってしまった。」
「あら、あたしたち三ツ星旅行のこと話してたのよ!それでほら、この人ホシマルちゃんて言ってね、何とか言う三つ星から突然現れたの・・・」
小さな動物は動じない顔でユニヴァの早口なおしゃべりを聞いてから言った。
「君はポータルを開く鍵の役割だから三つ星を意識したのさ。今時には珍しいタイプだったわけだね。」
「そりゃまあピーちゃんがラッキーラブレターを見つけてLume星に行かなきゃ、三つ星の事なんか思いもしなかったろうけど。」
小さな動物は手の中のグラスからお茶をすすった。
しばらく沈黙が流れて、その間に大きな男がお茶を継ぎ足してくれた。
小さな動物が突然口を開いた。
「Lume星のポータルについてユニヴァに知らせておこう。」
ユニヴァは目を見開いて乗り出した。
「あんた、なんか知ってるって言うの!」
小さな動物は面倒くさそうに小さく2度うなずいた。
「今から2百何十年か後にちゅら星に新しいドームが出現する。ある日突然。君はそのドームでLume星へのポータルに出会う事になる。」
「それでっ、もっとくわしく教えてよぉ。」
「それだけ。」小さな動物はそれ以上は何も知らないという風だった。
いつの間にか窓の外はピンク色の朝になりかけていた。
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【2008/08/01 17:11】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(41)
「タクシー来るかしら?」ユニヴァは窓から外を見ながら小さい動物に聞いた。
「来ないよ。」
驚いたようにユニヴァは小さい動物を振り返った。
「だって、ここは歴史の流れからはずれているんだ。」
「じゃあ、あたしがポータルを開いた意味がないじゃない。」
ユニヴァはそれ以上話すことをやめて、じっと窓の外を見ていた。
僕は思いついて、ちょっとした提案をしてみた。
「ねえ君たち、そこの海岸のポータルを抜けて、ミンタカ星経由で表のちゅら星に戻ってみるってどう?」
僕は気まずいムードを解消するために軽い気持ちで言ってみたのだが、この意見にその場にいた一同は大きく反応した。
僕の意見は全員の大賛成を受けたのだ。
「なぜすぐに思いつかなかったのだろう!」クーさんは僕を褒めちぎったうえ、僕の頭をグルグルと撫でた。
すぐに大きな男が朝食の用意を始めた。
僕らはバスケットに残っているサンドウィッチを広げ、男が作ってくれたコーンスープで朝食を済ませてから、朝日の輝く海岸へと出て行った。
小さな動物は大きな男の肩に乗っていた。
海岸の岩の隙間の前に来ると小さな動物が言った。
「そこの崖の先に海中温泉があるんだ。」
僕らは1メートルくらいの低い崖を登ってみた。
海の中へとなだらかに続く磯が広がっていた。
あちこちの窪みに波がはじけて、バッサバサと音が途切れなく抑揚を繰り返している。
「ほら、あの辺の静かな窪みがいいよ。」
小さな動物は男の肩からポンッと降りて窪みに向かって行った。
その後をすぐに黒猫が追いかけた。ユニヴァだ。
窪みに飛び込んだユニヴァと小さな動物は流されないようにと、岩の淵にしっかりとつかまってゆらゆら大きく揺れる波に浮かんだ体を揺られていた。
それからホシマルちゃんがボチャンと飛び込んだので、その衝撃で岩から手を放してしまった小さな動物とユニヴァは慌ててホシマルちゃんの腕にしがみついた。
大きな男は丁寧に着ていたものを乾いた岩の上にたたむと、近くの別の窪みに入った。
大きな男で一杯になった窪みから大量のお湯があふれて流れた。
僕とクーさんもちょっと波しぶきがかかるが、別の窪みを見つけて裸になって飛び込んだ。
ヌルヌルと足元に海藻らしきものを感じるのが気持ち悪いが、湯加減はちょうどいい。
もう少し先の海に浸かった窪みには2頭のイルカがいて、寄せる波にメロウな虹色の体を輝かせていた。
しばらくして、動物組の三人が温泉から上がり始めたので、僕らも上がって服を着た。
風が気持ちよかったけれど、ちょっと潮でべたつく感じもした。
それから崖を降りて、再び岩の隙間の前に来た。
「僕らがこのちゅら星を離れたら、こっちのちゅら星はどうなっちゃうんだろう。」
小さな動物は、岩の隙間の前で怖気づいたようだ。
「このままに決まってるでしょう。」ユニヴァがキッパリ言った。
僕は小さな動物の前に座って、目線を小さな動物に合わせて言った。
「大丈夫。表のちゅら星に馴染めなかったら、すぐまたここに戻ってくればいいんだからさ。」
「そうだね、僕ちょこっと表のちゅら星を見てみたいんだ。」
小さな動物はそう言うと一番を切って岩の隙間に入って行った。
朝早くに出てきたので、温泉に寄り道などしたもののお昼前にはホシマルちゃんの家に着いた。
ホシマルちゃんがヌードル入りの野菜スープとカゴ一杯のラスクを用意してくれた。
「今、僕はあの彼方に見えていた三つ星の一つにいるんだね。」
小さな動物がスープの手を止めてそう言うと、ホシマルちゃんが大きくうなずいた。
小さな動物はフフフと小さく笑った。
ちゅら星のユニヴァの応接間に帰る僕らは、来た時とは反対側にホシマルちゃんの家の裏手に続く石畳を進んで行った。
ホシマルちゃんが別の帰り道を案内すると言うからだ。
ホシマルちゃんの家の裏手はどこまでもピンクのバラの生け垣が続いていて、その中は庭と言うよりは、広大な私有の牧草地になっているようだ。
石畳はしばらくするとキラキラ光る石が埋め込まれた白いコンクリートの道に代わった。
道の両脇には人工的に植えられた涼しげな街路樹や草花が植えこまれている。
道は広場に出て、広場の中央の床には「Marine◎Town」と青い光る石でつづられ、MarineとTownの間に赤と白の浮き輪マークがついていた。
道は広場の先へも続いていたが、ホシマルちゃんは広場の隅の階段に向かった。
この広場の片側は高い崖が壁のようにそびえ立っていて、その岩肌を這うようにジグザグに階段がのびているのだ。
上まで登るには200段以上はありそうな気がする。
ホシマルちゃんは階段をゆっくりと登って行った。
僕ら全員その後に続いた。
階段の折り返し地点の踊り場では、しばし休憩をとった。
広場の先の道は、あの白い立方体が並ぶ町に続いていることが見渡せた。
この上まで登れば、この星で最初の時に来たあの丘に出るのだ。
折り返し地点の踊り場の景色は、高くなる毎に美しさを増していった。
少し強い海風がうっとうしく感じた。
丘の上に到着すると、ホシマルちゃんはキラキラ光る海を堪能していた。
全員が丘の上に到着したことを確認すると、ユニヴァは「まだちゃんとあたしの応接間の窓開いているかしら。」と言って、小走りに丘を駆け下りて行った。
僕らがゆっくりと坂を下って行くと、すっかりちゅら星に到着済みのユニヴァが応接間の窓から手を振っていた。
岩にぽっかり空いた窓の前で、小さな動物は大きく深呼吸をした。
そしてユニヴァの手に抱っこされて表ちゅら星へ帰還していった。
ユニヴァは「すぐお茶にしましょうね~。」と言ってモコモコの壁の中に消えて行った。
小さい動物と大きな男は不思議そうに窓の外のミンタカ星の景色を眺めていた。
ユニヴァはグラスを乗せた白いワゴンとともに壁の中から現れた。
そして「お茶の前に乾杯よね!」とユニヴァは勢いよくシャンパンの栓を切った。
僕らは帰還を祝って乾杯した。
そして今日はゆっくり休んで、明日は車で小さな動物と大きな男にこのちゅら星を案内することに決まった。
するとホシマルちゃんが立ち上がって言った。
「さて、この窓もそろそろ閉じますので私はお暇させていただきます。」
みんな一斉にホシマルちゃんを見た。
小さな動物がホシマルちゃんに走り寄った。
「窓が閉じちゃったら、もしあの灯台に戻りたくなったら僕らどうするんだよ。」
「必要ならばいつでも参ります。」
小さな動物は困惑して僕らを振り返った。
僕らはホシマルちゃんの顔に目を移した。
「わたしのことを思ってくだされば、いつでもまた参ります。ユニヴァさんは特別な通信手段を持っているのですから。」とホシマルちゃんはニッコリ笑うと、窓の外に出てミンタカ星から軽く手を振って、あっさり帰って行ってしまった。
僕らは力強い案内役がいなくなった事で少しがっかりした思いでボッーとしていた。
するとミンタカ星の景色がかすみ始め、あっという間に窓は一面の青空の景色に戻ってしまった。
緊張した顔の小さな動物を見たユニヴァが言った。
「明日はこのちゅら星をたくさん案内するから、楽しみにしていてね。」
小さな動物はちょとだけ笑った。

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【2008/08/12 15:35】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(1) |
ちゅら星(42)
28. 灯台のドーム
翌朝、僕ら四人と一匹はいつもよりちょっと大きめの車に乗り込んだ。
「ああ、僕らちゅら星の大気圏を飛んでいるよ。」小さな動物が窓の景色にかじりつきながら懐かしそうに言った。
「さてと、アンタ行ってみたいドームはあるの?」
「蝶々のドームでレモネードを飲みながらのんびりしたいね。」
車は蝶々のドームへ向かった。
僕とクーさんは蝶々のドームへ行くのは初めてのことだが、そこはたくさんの蝶々が飛び交うジャングルドームだそうだ。
「僕は本来蝶々のドームの出身なんだ。」小さな動物は自慢げに言った。
その時、ユニヴァが「あれっ!」と小さく叫んで窓に寄った。
僕ら全員窓の外を覗き込んだ。
「僕らのドームだ!ほらよく見て、うっすら灯台が見えるでしょう!」
「ポータルを開いたせいかもしれない。」大きな男がぼそりと言った。
「この前までは蝶々のドームの隣にこんなドームは絶対なかったわ。」ユニヴァはそう言って急きょ行き先を蝶々のドームから灯台のドームへと変更した。
そして車は砂浜に止まり、僕らは灯台のすぐ下の海岸に立った。
「僕ら表のちゅら星に戻れたんだ。」小さな動物が不思議そうにドームの天井の先のちゅら星の青空を仰いだ。
その間にユニヴァはあの岩の隙間に向かって走り出していた。
僕らはユニヴァのあとをゆっくりと追いかけた。
向こうからユニヴァが両腕で大きく丸を作って見せて、大きな声で「ちゃんと開いてる~!」と叫んでいる。
それから当然のことながら、僕らはポータルを抜けてホシマルちゃんの家へ向かったのだ。
こちらはもうだいぶ陽が傾いていた。
海岸まで来た時、ペリカンを見るとユニヴァがサンドウィッチを食べようと言い出した。
ユニヴァは近くにいたペリカンに「バスケット2つ分サンドウィッチちょうだい。」と言ってみたが、ペリカンは不思議そうな顔でユニヴァをじっと見てから2・3歩後ずさりしただけだった。
ところがお手上げポーズのユニヴァの背後にいた大きな男がミンタカ語らしきものでペリカンに何か言った。
ペリカンはうなずくとすぐに飛び立っていった。
大きな男は身体とは対照的に小さな歯を見せて笑った。
サンドウィッチが届くと、早くホシマルちゃんの驚く顔が見たいという理由で、僕らはサンドウィッチをかじりながら牧草の大草原に入って行った。
そして永遠に続くような牧草地を2時間ほど歩いてレンガの門の前にたどり着いた。
辺りはすっかり薄暗くなっていたが、その先には相変わらずのピンクのバラが咲き誇るホシマルちゃんの家が見えた。
僕らが石畳の道に踏み出したその時、背後からホシマルちゃんの声がした。
「これは驚きました。」ホシマルちゃんだ。
ホシマルちゃんは僕らとの再会を喜ぶと、急ぎ足で石畳の道をコツコツ行って、僕らをバラの邸宅へと招いてくれた。
それからユニヴァは小さな動物たちの灯台のドームがちゅら星に出現した事などをホシマルちゃんに早口で話した。
ホシマルちゃんは驚きと喜びで混乱しながらミントティとバラジャムパイを用意してくれた。
昨日まで一緒だったにもかかわらず、何年ぶりに再開したかのような気分になった。
すっかり長居した後、帰り際にユニヴァが軽く「また来るわね。」と言うと、それは本当の意味で軽い「また来るわね。」なのだと僕はしみじみ思ったりした。
さらにホシマルちゃんは「よろしければユニヴァさんの応接間に窓を開きますよ。」と言ってくれたのだが、今回はあくまでもあのポータルを通って帰ることにした。
僕らは月明かりの牧草地を黒く光る海を目指してまた歩き出した。
ポータルを抜けると、ちゅら星の午後の日差しに迎えられた。
灯台まで帰ってくると小さな動物はあちらこちらの部屋に入ってみてから、全てが昨日ままの状態であることを確認したようだった。
僕らはのんびり過ごし、窓から夕方の闇が入り始めたころ小さな動物が思いついたように言った。
「今日からまた灯台の明かりを灯そう。ここが三ツ星へのポータルであることを示すためにね。」
そして、小さな動物は階段を駆け上がって行った。
大きな男を残して、僕らも灯台に明かりをともすところを見ようと小さな動物の後について行った。
階段は灯台の側面に沿ってらせん状に回って行く。
僕はユニヴァと行った海王星のドリームトラベルのことを思い出していた。
僕らが狭い階段から顔をのぞかせると、小さな動物が待っていたかのように巨大なライトを灯したところだった。
グルングルンと巨大なライトが回っているのを僕らはしばらく眺めていた。
「この上に展望室があるんだ。」
ライトが眩しい狭い室内の壁に小さな梯子が架かっている。
小さな動物は軽やかに梯子を駆け上って行った。
続いてユニヴァが梯子を登り、その次に僕が続いた。
展望室には本格的な立派な望遠鏡が設置してあるのだ。
しかしその部屋は極端に狭く、僕が体をかがめて入った後、続いてきたクーさんは梯子に足をかけたまま首だけを出しているより他なかった。
僕らが見守る中、小さな動物に促されてユニヴァが望遠鏡を覗いてみた。
「ウヮ~、ホシマルちゃん家が見えちゃいそうだよ。」
そう言ってユニヴァが興奮している間にも、小さな動物は手慣れた感じで望遠鏡を操作していく。
「ウヮ~、宇宙をどんどん進んで行ってるみたい。」
小さな動物はどんどんズームアップしていっているようだ。
望遠鏡を覗いたままのユニヴァが言った。
「ここは8千億光年くらいの宇宙?」
「ハハハッ・・・それじゃ宇宙の始まりでさえ通り越しちゃうよ。」小さな動物が大笑いをした。
「早く宇宙の始まりのところまでズームアップしてよ。」ユニヴァが望遠鏡から目を離してちらっと小さな動物に目をやった。
「この望遠鏡じゃそんな遠くまで見えないよ。」
「ダメね。」と言ってまたユニヴァは望遠鏡を覗き込んだ。
ズームアップを続けながら小さな動物が言った。
「宇宙の始まりが見たいならものすごい顕微鏡を覗けばいい。」
しばらく間があってから、僕とクーさんは同時に「どういうこと?」と小さな動物に問いかけた。
それからもうこれ以上ズームアップできないところまでアップしたので、クーさんから順に梯子を下りて、僕らは下のダイニングルームへと戻って行った。
小さな動物は僕とクーさんの質問には一向に答える様子がなかった。
テーブルには温かい料理が並べられ、大きな男は僕らが下りてくるのを待っていた。
そして一同テーブルを囲んで、この灯台のドームがちゅら星に戻ってきたことを祝って乾杯した。
帰りの車に乗り込む時も小さな動物はシャンパンのせいか上機嫌で、真っ暗な海にのびる灯台の光を感慨深げに仰いでいた。
そしてホシマルちゃんの時のように、軽く「またね。」と挨拶をして僕らは別れた。
僕とクーさんがドームを飛び出した車の中でホッとしたひと時を過ごしている時、ユニヴァは真剣な面持ちで何か考えにふけっていた。
「地下、地下よ!」ユニヴァが突然僕を見た。
「あの灯台の地下にはものすごい顕微鏡があるに違いない。」
ユニヴァは、小さな動物が宇宙の始まりの事を知っているようなそぶりだったのは、地下に隠してあるものすごい顕微鏡でそれを発見したからだというのだ。
僕はそうなのかもしれないと思った。
そしてユニヴァは今度あの灯台に行った時には絶対に見せてもらうんだと言って、その後は黒猫になって眠ってしまった。
クーさんは丸まった黒猫を眺めて言った。
「小さな小さな小さな点のその先が見える顕微鏡・・・見てみたいね。」

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【2008/08/28 15:04】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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