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ちゅら星(26)
19. キャニオンキャンディー
海王星だって、通常はちゅら星に行く時と同様に車で来るのが普通だ。
よく覚えていないけれど、ドリームトラベルの帰りも車で帰ったようだ。
しかし今日の僕らは、海王星のジャングルのあの小さな泉の前に立って、このポータルをぬけて帰ろうとしていた。
足から泉に入ると、重りでもついているかのように深く深く沈んで行った。
底に至ることはなく、光も届かなくなってしばらくすると突然の閃光とともに浮き上がって目の前にはあの水晶の洞窟が現れたのだ。

そして僕らは水晶の洞窟から狭い穴をとおって抜け出し、入ってきた洞窟を通ってようやくキャニオンへの出口をくぐり出た。
もうすっかり夕暮れで、目の前にはみずみずしい三日月が光っていた。
紫とオレンジが混ざった色の空が幻想的な大自然をライトアップしていた。
一息つくと、岩棚の先に小さな動物が腰掛けていることに気がついた。
僕らはしばらく入り口付近にたたずんでその動物の後姿を見ていた。
小さな白っぽいクマのようだ。
花のようないい香りが漂っている。
人影に気づいたのかゆっくりとクマがこちらを振り向いた。
そして僕らに驚くこともなく、ぺろぺろキャンディーをなめていた。
「こにちわ!」ユニヴァが挨拶した。
子グマは腰を上げてぴょこぴょこと寄ってくると、首から掛けていたポシェットからぺろぺろキャンディーを3本取り出してユニヴァに差し出した。
ユニヴァはそれを受け取ると、クーさんのポケットに手を突っ込んで真珠を一粒取り出すと子グマに差し出した。
子グマはそれを受け取ると目を丸くして、手のひらに載せて眺めていた。
「それはキャンディーじゃないから食べちゃダメだよ、お母さんにプレゼントするといいよ。」とユニヴァが付け加えた。
子グマはこくりと頷いて器用に崖を降りていった。
ここから車で帰るにしても、キャニオンドームの車付き場までは来た時のように崖を100メートル程登らなければならない、僕らは朝までこの洞窟で一休みすることにした。
三人とも腹ペコだったが、ぺろぺろキャンディーをなめる以外に口にするものはなかった。
キャンディーはバラとハチミツの香りがした。
クーさんが岩を駆け抜けて行った小さな黒ウサギを見て「うまそう。」とつぶやいた。
暗くなると急激に気温が下がって風も吹いてきたけれど、洞窟の中は比較的寒さをしのぐことができた。
ユニヴァが地面にケーキの絵を書き始めた頃、さっきの子グマが洞窟の入り口に顔を出した。
子グマは僕らの様子を見回してから洞窟の入り口にバスケットを置いて、行ってしまった。
バスケットの中には丸いパンが六つとジャムのビンと温かいお茶のポットが入っていた。
僕がバスケットの中身を出して調べているうちにユニヴァはもうパンにかじりついていた。
「ユニヴァあせらないで、せっかくだからジャムも塗ったらいいよ。」と僕は言った。
ユニヴァはたっぷりと薄紫色のジャムを塗ったパンをうっとり眺めてからパクリとかぶりついた。
「うわぁ大好きなバラジャムだぁ。」
幸せそうなユニヴァを横目に僕とクーさんもバラジャムを塗ったパンを食べた。
美味しい夕食と温かいお茶で僕らはすっかり満足することができた。
「真珠のお礼かな?」とユニヴァがつぶやいた。

翌朝、崖を登る前に子グマが降りていった方を少し散策してみることにした。
空になったバスケットも返さなければならなかった。
下まで降りると乾燥した大地には小さな淡い紫色のバラが群生していた。
ユニヴァがバラに鼻をくっつけて香りをかいでいると、あの子グマが姿を見せた。
その向こうには小さな洞窟の入り口が見えた。
子グマに誘われて洞窟の中に入ってみるとむせかえるほどのバラの香りがしていた。
そこでは子グマよりは大きいけれど小柄なクマが大鍋をかき回しているところだった。
クマはかき混ぜる手を止めて汗をぬぐいながら僕らに微笑んだ。
それからクラッカーとローズティを用意してくれて、僕らはお茶を楽しみながら、昨晩の差し入れのお礼を言った。
テーブルの小さな容器の中にはユニヴァがあげた真珠が一粒光っていた。
突然「卵ある?」とユニヴァがお母さんグマに尋ねた。
「ええ。外の鳥小屋に行けば産み立てがあるはずよ。」お母さんグマは答えると、ユニヴァは少しもらっても構わないかと聞いてから、外に駆け出して行った。
しばらくして卵をいくつか抱えてユニヴァが戻って来ると「この卵でバラジャム入りのマシュマロ作ってあげたいの。」と言った。
ユニヴァは手際よくマシュマロ作りをして、お母さんグマは時々ジャムの大鍋をかき回していた。
あっという間に大きなお皿山盛りにマシュマロが積みあがった。
出来上がったバラジャム入りのマシュマロは、いつかのバラ園で食べたものとそっくりのかたちをしていたが、あの時とは少し違うバラの香りがした。
初めて食べたのでクーさんはかなり感動して、ユニヴァにマシュマロショップを開くことを勧めたりした。
このクマ達にはマシュマロははじめてだったらしく目を丸くして食べていた。
そしてユニヴァはマシュマロのレシピを伝え、真珠の入った容器にもう何粒かの真珠を追加してきた。
それから帰りのおやつ用にマシュマロをいくつか袋に詰めてもらって、僕達はクマの洞窟に別れを告げ、その後はひたすら崖を登り続けた。
降りる時に比べてかなりの時間がかかった。
やっとのことで上まで登りついた頃には、また夕暮れ時に差し掛かる時間になっていた。
僕らが座り込んで疲れを癒していると、向こうから一人のバックパッカーが歩いてくるのが見えた。
バックパッカーは僕らに気が付いて、こちらにゆっくりと歩いてきた。
「こんにちは。」
そう言うバックパッカーの顔には見覚えがあるような気がした。
「あら。あなたはケーキの途中で消えちゃった人ね。」とユニヴァが言った。
そうだ、彼はドリームトラベルの時にお城の下で突然現れて、お茶の途中でケーキをふたくち食べたところで消えて行ってしまった男の人だ。
バックパッカーは確かにそんな夢を最近見たと言った。
それからユニヴァはバックパッカーにマシュマロを勧めながら、「夢の続きをどうぞ。」といって笑った。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2007/07/05 10:39】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(27)
20.コンサート
僕らは海王星で集めたポケットの収穫物を近いうちに山分けすることにして、とにかく無事にそれぞれの家に帰って疲れを癒した。
しばらくしてポストに届いたのは、2通の手紙だった。
1通はあの子グマからの贈り物だった。
手紙には「キャニオンキャンディー食べてください。また遊びに来てね。」とだけ書いてあり、あのぺろぺろキャンディーが1本同封されていた。
もう1通はユニヴァからの手紙だった。
「来週バードドームのコンサートに参加する時に、あの真珠のネックレスを着けたいの。
明日こちらに来てください。」とだけ書いてあった。
ユニヴァの目当ては真珠なのだろうけど、僕は海王星の貝殻を全部袋に詰めて明日ユニヴァのドームへ行く用意をした。

翌朝クーさんからメールが届き、僕とクーさんはいつものガードレールの所から車に乗ってちゅら星へ向かった。
ユニヴァのドームはまるでショッピングモールのようで、パーティでなくてもピンクの絨毯の広間は行き交う人たちで賑わっていた。
ユニヴァの白い扉を入った僕とクーさんは、いつかの時と同じようにヒヨコやワニに迎えられて、応接室のソファアに腰掛けてユニヴァのお出ましを待った。
僕とクーさんは、応接室のテーブルの上に丁寧に貝殻を並べ、小さなリンゴがのっていたフルーツ皿からリンゴをのけて、そのフルーツ皿へ真珠をざらざらと入れた。
しばらくしてふわふわの壁の中からぺろぺろキャンディーをくわえたユニヴァが現れた。
そしてテーブルの上の収穫物を眺めてから言った。
「ピーちゃん、真珠のネックレスどんなのにしたらいい?」
僕はおもむろに腕を組んでテーブルの上を眺めた。
僕は真っ青な貝殻の上に一番大きな真珠の粒を置いてみた。
そしてそれを細いプラチナの輪に通すことを提案した。
ユニヴァは調度マリンブルーのドレスを着る予定だからぴったりかもと言って賛成した。
それから僕らは貝殻と真珠を三人で均等に分け合った。
僕はユニヴァのネックレスを作るための蒼い貝殻と大きい真珠も預かって帰り、ジュエリーに整えてから宇宙便でユニヴァへ届けた。
それから数日後にはユニヴァからお礼の手紙と、バードドームのコンサートの招待券が届いた。

バードドームの木漏れ日が揺れる大理石の広場で、僕とクーさんは車から降りた。
鳥のさえずりがすがすがしいが、近くの木には鳥の姿は見えなかった。
それよりも広場の中央の花壇と広場を取り巻く花壇を行き来する蝶が天国な気分をかもし出していた。
人影はなく、僕もクーさんもバードドームは初めてだったが、森の奥へ続く大理石の道が僕らを案内しているようだ。
大理石の道を進んで行くと、向こうからピアノの音色が聞こえてきた。
僕らの前に新たな大理石の広場が広がった。
中央には真っ白なグランドピアノがあって、大きな鳥が四本の指を器用に使ってピアノを奏でている。
「ようこそ。」という声に振り返るとユニヴァがそこにいた。
ユニヴァは大きく襟の開いた真っ青な絹のドレスを着ていた。
そしてその胸元には僕の作った真珠のジュエリーが見事にマッチしていた。
僕らは近くの木漏れ日の揺れるテーブルに座った。
「今日はいったい何を歌うの?」とクーさんが訊いた。
「ちょうちょ。」とユニヴァが答えた。
「ちょうちょってあのちょうちょ?」と僕が訊き直した。
「たぶんピーちゃんが知ってるのは、“ちょうちょ!ちょうちょ!菜の葉に・・・”って歌うのだと思うけど、今日あたしが歌うのは“蝶蝶蝶!蝶蝶蝶!菜の葉に・・・”って言う風に歌うのなんだな。」となんとなく自慢げにユニヴァは言った。
僕はユニヴァの言う意味がよくわからなかったけれど、美味しいご馳走も食べられると言うので、とりあえず始まるのを楽しみにした。
それに進化した鳥を見るのも初めてのことだった。
楽器を扱っているのは全てそんな鳥達だ。
「あたしが歌う番はずっと後だから、ゆっくり一緒にお食事できるわよ。」と言ってからユニヴァは席を外した。
そしてユニヴァがピアニストの鳥に近づいて行くと、それに気が付いたピアニストの鳥は弾いていた曲を上手い事終わらせてから、ピアノを離れてユニヴァとともにこちらへ歩いてきた。
「ようこそバードドームへ。こちらは初めてですかな?」
オウムのようなくちばしでピアニストが僕らに挨拶した。
「初めましてレモン星からです。コンサート楽しみにしています。」僕らは答えた。
それから今日のコンサートのテーマが『新緑の森』であるとか、今日のために何とか言う星から腕のいいシェフを招いているとか、今日のプログラムにないもので演奏する予定の曲はどこかの星の何とか言う有名な古い民謡だとか、今聞いたのにもう忘れてしまったけれど、そんな話をしばらく僕らにしてからピアニストはまたピアノに戻って行った。
それからしばらく静かになり、鳥のさえずりだけが聞こえていた。
すると、静かにバイオリンの音色が流れ出して、次第にたくさんの楽器の演奏が加わりコンサートの始まりを告げた。
4曲目に入ったところで、建物のバルコニーには美味しそうなバイキングの用意が整ったようだった。
真っ白なお皿に思い思いの料理をのせて、僕らは先ほどの木漏れ日のテーブルで、シャンパンとともに料理を楽しんでいた。
「おや。」
お皿を片手に僕らのテーブルの脇を通り過ぎようとした人影が足をとめた。
すぐにクーさんは気がついた。
「これはこれは、その節は美味しいお菓子でお茶をご馳走になました。すっかりご無沙汰しております。」
薄いブルーのギリシャ風なローブをまとった半透明人間は、あのワビサビの白フクロウだ。
「へぇ。クーちゃんとピーちゃんって白フクロウさんと知り合いだったの?」とユニヴァがきょとんとした。
「ユニヴァだってラブリーカカオでクルミ餅食べたじゃないか。」
「あぁ。あれはおいしかったわね。」生意気そうにユニヴァが言った。
「あんなものでよろしければいつでも私のところへいらして下さい。」
半透明人間はユニヴァに笑ってそう言った。
会釈をして立ち去ろうとした半透明人間に僕が訊いた。
「あの、あなたも今日は何か歌われるんですか?」
「いやいや歌は歌いませんが、私は琴の演奏で参加いたしますよ。」
僕らは声をそろえて「楽しみにしてます。」と言った。

ユニヴァは『ちょうちょ』を僕らの知らない異星人と二人でデュエットした。
ユニヴァのドレスに良く合う青い絨毯の上で歌った。
とっても上手に歌えていたが、ちょっと表情が緊張していたように見えた。
歌い終わった瞬間、蒼い絨毯だった蝶々達が舞い上がっていったのがすばらしかった。
それからほっとして戻ってきたユニヴァとともに、ケーキを食べながら白フクロウの琴の合奏を楽しむことができた。
鳥達のコンサートの後、夜からは虫達のコンサートが始まるらしかったが、僕らはその前にバードドームを離れた。
お土産に今日演奏した曲の中から好きな1曲をオルゴールにして持ち帰れたので、もちろんユニヴァの『ちょうちょ』をチョイスした。

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【2007/07/11 11:48】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(28)
21.黄色いバラと手紙
コンサートの後、僕らはユニヴァのドームへ向かった。
ピンクのじゅうたんの大広間でユニヴァはクーさんと僕に一枚づつ封筒を手渡した。
白くてバラの型押しがしてある封筒だ、クーさんが封を開けて中から一枚のチケットを取り出した。
そしてユニヴァは「それじゃ明日ね。」と言ってユニヴァの白いドアの中に消えて行ってしまった。
ユニヴァの消えた白い扉をポカンと眺めている僕を置き去りにして、クーさんはハワイアンバーの方へ歩き出していたので、僕はあわてて後を追った。
それからクーさんはハワイアンバーの前をすり抜けて、その先の細い通路に入って行った。
通路の中に入ってみると、天井は思いのほか高くて満天の夜空が再現されている。
両側の壁はスクリーンの代わりをして立体的な映像が奥行きを作り出している。
通路を行く僕らは、まるで静かな海に架けられた大理石の橋を渡っていくような気分にさせられた。
そしてその先には、光があふれる建物への入口がある。
入口のすぐ上には金色の文字で『☆☆☆☆☆HOTEL』と書いてある。
フロントでクーさんはユニヴァからもらったチケットを出したので、僕もあわてて封筒を開けた。
そして案内されたのは、廊下の一番奥の向かい合わせの二部屋だった。
クーさんが「それじゃあとで。」と言って、僕らはそれぞれの部屋に入った。
部屋の中に入ると一面真っ白で奥行きさえ感じられない、僕は全くビックリしてしまってすぐに外に飛び出した。
扉を出ると腹を抱えてクックと笑っているクーさんがいた。
どうやらクーさんは僕がびっくりするのが見たくて、さっさと自分の部屋に入っていったふりをしたらしい。
「ところでクーさん、いつまでも笑ってないで、いったいどうしたらいいのか教えてよ。」
そして再度クーさんと一緒に僕の部屋へ入ってみた。
相変わらず真っ白な世界に一歩踏み出すと、目の前の空間に空色の文字が浮かび上がった。
それと同時に「本日はようこそお越しくださいました。最初にお好みのスタイルをタッチするか発音して下さい。」というアナウンスが空間に流れた。
空色の文字でいくつかの単語が浮かんでいる。
『ライト リキッド エア マテリアル ダーク ・・・』
「ぼくらの場合マテリアルあたりが無難かな?」とクーさんが言った。
僕は浮かんでいるマテリアルの文字をタッチした。
するとやっと僕の目の前に空間らしい奥行きのある部屋が現れ、その奥にはオーガンジーのカーテンがかかった大きな窓さえある。
真っ白なソファアと真っ白なベッドもある。
「メニュー」とクーさんが言った。
また目の前にブルーの文字が現れた。
『レイアウト カラー テーマ オプション フロント ・・・』
「このままでもかまわないけど、このタッチメニューでレイアウトは自由に変えられる。テーマで遊びすぎないようにね。フロントを選択すればフロントと話ができる。それじゃおやすみ。」そう言ってクーさんは僕の部屋を出て行った。
それから僕は「テーマ」と文字に向かって言ってみた。
新たに文字が浮かび上がった。
『自然 宇宙 歴史 民族 文化 社会 機械 ・・・』
僕はてきとうに「自然」と言ってみた。
『空 海 山 川 滝 湖 岩 木 草 花 動物 ・・・』
「動物」
『水生動物 陸生動物 空生動物 ・・・』
「陸生動物」
その時、ポワンという警告音がしてアナウンスが流れた。
「選択モードで選択の方法を選ぶことができます。」
右下の方に選択モードというのがあって点滅し始めた。
「選択モード」
『索引 発音 マーク カラー ・・・』
「発音」
『発音してください。』
とにかく思いついた動物を答えてみた。「ヒツジ」
部屋が一気に緑の丘になって、ソファアやベッドの白い布の下からは干し草がはみ出している。
天井には青い空に雲が流れて、どこからか気持のいい花の香りのそよ風さえ吹いている。
ベッドの上には2匹のかわいい子ヒツジが寝息を立てているし、ベッドの脇からはのっそりと一頭現れた。
クーさんがテーマで遊びすぎないようにと言った理由がよくわかった。
しかしこれから眠らなければならないというのに、青い空に白い雲はつらい気がして、もう一度メニューを呼び出した。
別のテーマに変更しようと考えていると、左下にある太陽と月のマークに気がついた。
太陽と月のマークにタッチしてみた。
『オート設定 太陽マーク 月マーク 自由設定・・・』太陽のマークが点滅している。
「オート設定」
すぐに月夜の草原になった。ちゅら星のリアルタイムの設定なのだと思う。
それからメニュー画面のレイアウトでシャワー室の扉を適当な場所に作ってからシャワーを浴びた。
その後も僕はテーマ遊びを何時間か続けて、18世紀王朝な部屋で眠りについた。

目が覚めるとまだ朝日が昇りかけの早朝だった。
しっとりしたビロードのカーテンを開けると、窓の外にはちゅら星の海が輝いていた。
それから新しいゲームソフトを買ったばかりの子供のように、僕はまたテーマ遊びのためにメニューを呼び出した。
そして手当たり次第に項目を呼び出していくのだ。
「花」、「カラー」、「黄色」、「バラ」。
どこまでも続く黄色のバラの庭が現れた。
壁はどこまでも続くバラ園が立体的に再現されて、この部屋は調度その中央の広場に相当する。
ソファアやベッドはみずみずしい黄色いバラが敷き詰めてあって、座るのに気が引けてしまうようだ。
僕は猫顔の王子と一緒に入ったバラのジャッグジーを思い出したので、バスルームの扉を作って朝風呂に入ることにした。
現れたバスルームの扉を開けると、バスルームの中まで黄色いバラのテーマに統一されていて、当然バスタブは黄色いバラで埋め尽くされていた。
そして僕がバスタブに飛び込んでみると、黄色いバラバラバラ!!
お湯一滴入っていない、まさにバラ100%の風呂だったのだ。
僕は黄色いバラに埋もれたまま、給水ボタンを押してお湯が溜まっていくのをじっと待った。
水位が上がると黄色いバラがあふれ出して、バスルームじゅう黄色いバラで埋め尽くされていった。
風呂からあがって黄色いバラのベッドにドサリと腰をおろすと、枕もとのバラに埋もれている白い封筒が目に入った。
手に取って見ると、封もされていないので中の手紙を取り出して見た。
「Congratulations!たくさんのテーマの中から、このラッキーラブレターを見つけ出したあなたに会えるのを楽しみにしています。Lume星マチより。」
Lume星マチって何だろう?
手紙の最後には紫色の渦巻マークみたいなのが手書きで書いてある。
Congratulations!っていうのは僕に対してなんだろうか?
それからその手紙を胸のポケットにしまってから、僕は部屋を出てクーさんの部屋のドアをノックした。
一分ほど待たされて、クーさんが顔を出した。
「さぁ、そろそろ出かける?」と言いながら、クーさんは僕を部屋に迎えてくれた。
ドアを閉めた瞬間、フワッと浮いたような気がしたと思ったら、僕らは水中に浮かんでいた。
部屋の奥には、僕の部屋と同様のちゅら星の海が一望の窓が見える。
それから大きなスクリーンには、前に一度見たことがある映画が映っていて、クーさんはその辺りをゆらゆらとクラゲみたいにただよっている。
「僕はリキッドタイプの部屋が好きだ。」とクーさんが言った。
それから僕らはチェックアウトを済ませて、☆☆☆☆☆Hotelを出た。
海に架かる大理石の橋に見立てた通路は、朝日に輝く海で眩しかった。

ユニヴァの応接室の空色のソファアで、僕らはユニヴァが出てくるのを待っていた。
僕は胸のポケットにしまっておいた手紙を思い出して、取り出して見た。
「クーさん、さっき黄色いバラのテーマでこんな手紙を見つけたんだ。」
クーさんは僕の手紙をのぞきこんだ。
「Congratulations!たくさんのテーマの中から、このラッキーラブレターを見つけ出したあなたに会えるのを楽しみにしています。Lume星マチより。」
クーさんは首をかしげた。
「何だろう?ラッキーラブレターだってよ。」
しばらくして壁の中からユニヴァが現れた。
「ご機嫌You!」と言ってユニヴァはユニヴァの席に着いた。
そして「何それ?ラッキーラブレター?」とユニヴァが聞いた。
僕とクーさんは顔を見合わせた。
そして僕は無言のままユニヴァにその手紙を渡した。
手紙を受け取るとユニヴァは間髪置かずに「マジっ!」っと僕を見た。
「ユニヴァ、ラッキーラブレターっていったい何?」と見つめあう僕とユニヴァにクーさんが割り込んだ。
ユニヴァはゆっくりとクーさんの方に顔を向けた。
「クーちゃん、Lume星って知らないの?」
「知らない。」とクーさんは言った。
「銀河の中心近くにある超進化した星だよ。一番左側の三ツ星にポータルがあるって言うけど、とにかくとても遠くて見えない星なの。」
「それで、ラッキーラブレターって?」
「そのうち、この渦巻がグルグル回りだして、吸い込まれてLume星に連れて行かれちゃうのよ。」
ユニヴァは手紙の紫色の手書きの渦巻をじっと見つめた。
「なんだか怖いよ。」と僕は言った。
「でもLume星って案外いいところかもよ!なんてったってここよりずっと進化してるんだから。」
ユニヴァが僕ににっこりした。
「軽く言うなぁ。これ断れるんでしょ?手紙捨てちゃうとかさ・・・。」
「知らない。」と冷たくユニヴァは言って、僕に手紙を返した。
「マチってLume星人の名前かな?」と、クーさんが僕の手から手紙をとった。
「たぶんね。」とユニヴァは言った。

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【2007/07/16 11:35】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

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