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ちゅら星(24)
17. 七色イルカの島
ちゅら星から戻って3日後には、赤いクマを連れたユニヴァがレモン星にやって来た。
その日は赤いクマとユニヴァはイルカに化けて二人でレモン星の海を楽しんでいたようだった。
次の日はクーさんも連れ立って、僕ら4人はボートで赤い珊瑚の群生地へと向かった。
天気が良かったので、珊瑚も鮮やかな色合いを見せていた。
ユニヴァは赤い珊瑚に心ときめかせていたようだったけれど、もったいないから今日はやめとくと言って眺めているだけだった。
赤いクマが小さな赤い珊瑚の枝を一本だけ持って帰ることにした。
僕とクーさんが取った珊瑚を船において、ボートが流れて行かないように錘を岩に引っ掛ける作業をしている間に赤いクマとユニヴァはイルカに化けて、何処か遠くのほうまで行ってしまっていた。
僕とクーさんは日差しの強い船の上でイルカのジャンプが何処かに見えはしないかと目を凝らして探した。
だいぶたった頃、船の脇に顔を出したのは僕の友達の七色イルカだった。
レモン星のイルカとはテレパシーで会話が可能だ。
「キミの友達が僕の家に来ているよ、キミ達も早くおいでよ。」
僕はイルカの言ったことをクーさんに通訳した。
けれどもいつのまにか七色イルカも姿を消してしまい、僕とクーさんは途方にくれていた。
遠くに2頭のイルカのジャンプが見えた。
僕の友達の七色イルカともう一頭は少し黄色がかった別の七色イルカだった。
船の近くまで来ると何度もジャンプして「背鰭につかまるように。」とせかしたので、僕とクーさんは海に飛び込んで、それぞれ僕は友達の七色イルカに、クーさんは黄色っぽい七色イルカにつかまって明るい海中を疾走した。
海の色が深いブルーをしたところまでやってくると、しばらく海上で僕らに充分に呼吸をさせてから、イルカ達はぐんぐんと僕らを海底へ運んで行った。
どこまでも続く海藻のカーテンをくぐって行ってしばらくすると、キラキラと木漏れ日が揺れるようになってきたので、僕はもうすぐ水面に出れると安心した。

気が付くと僕は海岸に打ち上げられたようになって眠っていたようだ。
そばにはまだクーさんが眠っていた。
夕方の陽で椰子の木が影を長く伸ばしていた。
イルカ達はいったい僕らをどこに連れてきてしまったのだろうか。
しばらくしてクーさんも眠りから覚めたのだが、僕らは口もきかずに波の音をきいてぼんやりしていた。
「ユニヴァ達どこにいるんだろうか?」僕が最初に口を開いた。
クーさんは横に首を振っただけだ。
海はますます夕日にキラキラしてきた。
途方にくれていると、やっと椰子の向こうから人影が現れた。
白いTシャツに空色のショートパンツのすらっとした女の子だ。
「おまたせ!気がついたんだね。」
そう言って僕とクーさんにジュースのビンを差し出した。
僕らは冷たいグレープフルーツ味のジュースを一気に飲み干した。
「あたしが誰だかわかる?」と女の子は言った。
僕は珍しくすぐに気がついて「七色イルカでしょ?」と答えた。
そして女の子は「みんなが待ってるよ。」と言って歩き出した。
僕とクーさんは少し遅れて女の子について行った。
海岸から続く道は途中から急な上り坂になっていた。
坂道を登りきると見晴らしのいい公園があった。
女の子は公園を抜けてその先の下り坂の道を降りていった。
坂道の先は閑静な住宅街のようだ、道の両側の街路樹が夕方の涼風に揺れている。
大きな道路の手前まで行ったところで、先を行く女の子が僕らを振り返って右側の建物を指差してから、建物の方へ入って行った。
たどり着くと、そこにはライトブルーの木造の建物があって、階段を上がった先のバルコニーには看板のかかった扉が見えた。
レストランかカフェのようだ。
僕とクーさんは階段を上がって、扉を開けた。
「いらっしゃいませ。」
「今、女の子が入って来たと思うんだけど・・・。」
すぐに店員は気がついて、僕らを女の子のテーブルへ案内してくれた。
ユニヴァも赤いクマもいた。
それから黄色いワンピースの女の子はさっきの黄色っぽいイルカに違いない。
みんなはサクランボが一粒沈んでいる透明で発泡性の飲み物を飲んでいた。
すぐに僕とクーさんの前にも同じ飲み物が届いて、僕らは乾杯した。
一息入れて僕は一人一人の顔を見回したが、みんな嬉しそうににっこり笑った。
それで僕は肩をすくめながら「いったいここは何処なの?」とつぶやいた。
七色イルカの女の子が答えた。
「イルカ次元の島。ここではイルカもヒューマノイドなんだよ。」
僕はなんとなく理解してうなずいた。
クーさんもうなずいていた。
「ところで虹色イルカさん、なんか食べても構わない?」急に空腹を感じてきた。
「今にパエリヤが届くわ。それにしても虹色イルカさんなんてなんだか変ね。」と言って女の子は笑った。
「名まえ?なんと呼べば?」と聞くと、虹色イルカは何か口を開いたのだが、僕らには何も聞こえなかった。
虹のイメージだけ感じ取ることができた。
ユニヴァは少しきょろきょろしてから僕の方を見て言った。
「あぁわかった。虹ちゃんね!」
七色イルカは少し考えてから「それでいいわ。」と満足げに言った。
それからユニヴァが黄色っぽいイルカの女の子の方に顔を向けると、お月様のイメージを感じた。
「月ちゃんね。」と赤いクマが言った。
月ちゃんはにっこりした。
そして僕らもそれぞれに名前を発表して、赤いクマの名前が陽子ちゃんだと言うことも知った。
それからまもなく直径60cmくらいある大きなパエリヤの鍋が届いた。
ムール貝やエビがたくさん乗っていて美味しそうだ。
僕らはおこげまでさらりと食べ尽くしてしまって、次のメニューが運ばれるのを待ち遠しく思うほどだった。

レストランを出るとすっかり夜になっていた。
イルカ次元の島の空は、いつものレモン星の夜空とは全く違う星座がきらめいていた。
虹ちゃん達は大通りを右に折れてしばらく行ったところの路地に入っていった。
静かな住宅街なのだが、先ほどの普通の住宅街と違うのは、家が大きな巻貝や大きなサザエに扉がついたようなものなのだ。
暗い路地のあちこちにぼんやり明るく大きな貝がそびえているのである。
「あら、大きなオオムガイ。」とユニヴァが言った方には、大きなオウムガイを平たく横に倒して渦巻きの入り口を扉で塞いだような家があった。
虹ちゃんは「これがあたし達のお家よ。」と言って、オウムガイに取り付けてある半透明色の扉をあけた。
扉を入って、渦巻きの通路を少し進むと広間に出た。
貝殻の壁が発光していて、部屋中を明るく照明している。
部屋の中央に珊瑚の大きなテーブルがあって、その周りに海綿のクッションが適当に散らばっている。
僕らはテーブルを囲んで海面のクッションに座った。
月ちゃんが何処からかクッキーの缶を持ってきてテーブルの上で開けた。
「このクッキー何処かの有名なクッキーよね?」とユニヴァが言うと、月ちゃんは海底散策で見つけたのだと言った。
きっと難破船か何かの荷物だったのだろう。
それからいくつも難破船の収集物を見せてもらった後は、月ちゃんと虹ちゃんが海綿の毛布をたくさん用意してくれたので、僕らは適当に包まって眠った。

翌朝丸まっている黒猫のユニヴァ以外は起きて、テーブルを囲んでお茶を飲んでいると、ブオーンと音がして金髪の女の子が広間に入ってきた。
「チェリーパイいっぱい焼いたから持ってきた。」
金髪の女の子はそう言って、チェリーパイの箱を10個も重ねてテーブルに置いた。
とてもいい匂いがして、僕のおなかがグゥーとなった。
金髪の女の子は僕の方を見て「一人二箱ずつなら足りるでしょう?」と笑った。
黒猫になって丸まっていたユニヴァはチェリーパイの香りにすぐに反応して起きてきた。
そして金髪の女の子には挨拶もせずに、一箱取ると箱の蓋を開けた。
焦げ目の付いたサクランボ柄のパイの蓋の切れ目から、キラキラした赤い粒粒が覗いている。
ユニヴァは箱からパイを持ち上げると、ホールのまま齧りついた。
そして金髪の女の子ににっこりして、またパイに齧りついた。
それから僕も一箱取って、ユニヴァと同じように齧りついた。
クーさんもそれに加わって、結局みんな一箱ずつ取ると、陽子ちゃんも虹ちゃんも月ちゃんも真似して齧りついた。
そんな僕らを見て、「あたしも帰って齧りつこう。」と女の子は笑いながら帰っていった。
その日の午後、僕らは流れ着いた海岸で遊んだ後、虹ちゃんと月ちゃんに送ってもらって珊瑚の群生地のボートのところまで帰ってきた。
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【2007/06/02 13:35】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(25)
18. 海王星
帰りのボートを漕ぎながら、僕はフッと思い出した。
「ねぇユニヴァ、ドリームトラベルのこと覚えてる?」
「バラ園のことでしょ、ずいぶん昔の話ね。」とユニヴァは答えた。
僕はついこの間の出来事なのに何を言っているのだろうと思った。
少したってからユニヴァが答えた。
「あぁ、ついこの間よね。あの夢は小さい頃にも見たことがあったのよ。」
「なんだかよく覚えていないのだけど、いったいあの灯台のあったところは何処だったの?」
「海王星。」
僕はせいぜいレモン星かちゅら星の何処かだろうと思っていたので、ちょっと驚いた。
「海王星は海ばっかりの星で、小さな島がところどころにあるの。その一つの島の灯台に行ったってわけ。」
「海王星か・・・。」僕はオールの手を止めて、空を見上げた。
「ドリームトラベルか、子供の頃よく夏休みに行ったものだよ。」とクーさんが言った。
やはりドリームトラベルの後は少しぼーっとしてしまうので、長期のお休みに行くことにしていたらしい。
「海王星か・・・。」また僕がつぶやいた。
「僕の貝細工ショップは海王星のマークなんだよな。」
でもどうしてユニヴァと海王星に行くことになったのだろう?
突然ユニヴァが大きな声を出した。
「そうだ!あたし達ちゅら星で海王星へのポータルを見つけたんだ。」

数日後、僕とユニヴァとクーさんはちゅら星のキャニオンドームで待ち合わせた。
赤茶けた土肌を見せた渓谷が聳え立っている。
真っ青な空とのコントラストがとても美しい大自然だ。
僕は大自然に深呼吸してからユニヴァに尋ねた。
「このドームは初めてな気がするけどなぁ・・・。」
ユニヴァは何も答えずに、崖の下を用心深く覗き込んだ。
眼下にも西日に赤く輝く土肌が続いている。
そして見当をつけたらしく、緩やかな崖を選んで降りはじめた。
「この下に水晶の洞窟みたいなのがきっとあるはずよ。」
僕らは崖をおりるのに集中した。
1時間ほどかけて100メートルくらい降りたのだろうか。
少し広々とした岩棚に降りてくると、ユニヴァが待っていた。
そしてユニヴァの後の岩には、直径1メートルくらいの穴がぽっかりと開いている。
「そうだ!この奥に水晶があるんだ。」僕はなんとなく思い出した。
それから僕らは洞窟の奥へと入っていった。
洞窟の中は乾いた外の岩肌とは対照的に、奥に行くほど湿度が高くなっているようだ。
そして外から届く光が心細くなってきた頃、小さな光が先に見えた。
だいぶ先に何かがあるのだろうと思っていると、それは数メーター先にある奥へ続く小さな穴なのだということがわかった。
小さな穴の中から発光しているのだ。
近くまで来ると人ひとりやっとこ通れるくらいの穴で、中を覗くと水晶の宝石箱のような空間が広がっていた。
「あの中央の水晶に囲まれた泉が海王星へのポータルよ。」
静かにユニヴァが言った。
僕は思い出した。
ある日ユニヴァからの手紙で、ユニヴァの水晶狩りに付き合わされることになったのだ。
なんでもダウジングの練習をはじめたから水晶の振り子を作りたいと言うのが目的だったはずだ。
そしてユニヴァはコインにチェーンを付けた簡単な振り子で、キャニオンドームに水晶があることを見当つけたので、僕らはここに来ることになったのだった。
ユニヴァはドロンと黒猫に変わると、余裕で小さな穴に入って行ってしまった。
僕とクーさんは這いずりながらなんとか穴を抜けてユニヴァに続いた。
幻想的な水晶の柱の間を行く僕らは、泉から発光する光で青白く照らし出されている。
洞窟の壁はその光を水晶が乱反射して万華鏡のようだ。
ユニヴァが黒猫の金色に光る目で僕らを見上げた。
「クーさん、あの時僕とユニヴァはうっかりしてこの泉に落ちたんだ。」
そして僕がまだ説明途中のうちに、ユニヴァは前足を伸ばすようにして泉に頭から入って行った。
クーさんが何も言わず頷いた。
僕はやや恐る恐る足を泉に浸けた。
「そんなに冷たくないよ!」とクーさんに告げてから、僕は一気に飛び込んだ。

泉に入ってしまうと急な流れがあり、あっという間に何処かへ運ばれてしまう。
そして流れが止まると明るい水面が見えるところに出るのだ。
水面に顔を出すと、辺りは緑が生い茂り鳥のさえずりが目を覚まさせてくれる。
黒猫のユニヴァは水からあがってブルブルと身体を乾かしているところだ。
まもなくクーさんも水面に顔を出した。
濡れた身体を乾かすのには丁度いい、ここは南国の森林のような気候だった。
僕らが出てきたところは透き通った小さな池のような泉で、かなり深いのか底は見えないのだが、プクプクと小さな気泡がゆっくりと湧き上がってきているのがわかる。
しばらくして身体が乾いてくると、ユニヴァは女の子のユニヴァに戻っていた。
「ほらね。ここ海王星の島よ。」
このジャングルを見回したところで、海王星と判断する決め手は特になかった。
僕もクーさんも黙っていた。
それからユニヴァは拾った枝を振り回しながら、立ち上がって歩き始めた。
いったい何処にいるかもわからない僕とクーさんは、ただユニヴァの後に従った。
まもなくジャングルを抜けると白い砂浜と真っ青な海が広がっていた。
海は穏やかで遠くに小さな白波が見える。
「ちょっと待っててね。」とユニヴァは言って、海にザブザブと入って行ってしまった。
僕は真っ白な貝殻を見つけてポケットに入れた。
真っ青な貝も見つけた。
いつのまにかポケットがいっぱいになって、クーさんのポケットも借りることにした。
しばらくしてユニヴァが水中から顔を出した。
「さぁ行くわよ。」
そういうユニヴァの両脇には大きなウミガメの甲羅が浮いていた。
僕らはユニヴァのところまでザブザブと入って行った。
「海王星の海を案内するから、あんた達はこの子につかまるなり乗るなりしてよ。」
僕とクーさんは浦島太郎のようになってカメに乗ると海中に引き込まれて行った。
ユニヴァの足はピンク色の人魚の鰭になっていた。
明るい色の海藻がたくさん生えていて僕らの肩にさらさらとあたって気持ちがいい。
真っ白な海底の砂には先ほどの真っ青な貝があちらこちらに見える。
しばらくして、水中なのに普通に呼吸していることに気が付いた。
ここはレモン星やちゅら星の海とは何かが違う海のようだ。
珊瑚の影に何かいると思ったら二人の人魚がいて、通り過ぎる僕らに手を振った。
ユニヴァがゆっくりとスピードを落としたので、カメ達もスピードを落とした。
さっきの人魚を振り返ると大きな貝をこじ開けようとしているところだ。
僕らは彼女達のところに戻って行って、その作業を手伝った。
さすがにクーさんと僕の力は役に立つことができた。
そしてぱっくりと開いた大きな貝の中はと言うと、百粒ほどもありそうな大粒の真珠がびっしりと入っていた。
僕のポケットは貝殻でいっぱいだったけれど、クーさんの片方のポケットがまだ空いていたので、それに入るだけたっぷりと真珠を頂いた。
ユニヴァは人魚に変身中なのでポケットはなかったけれど、大きそうな粒をしきりに選んでクーさんのポケットに詰めていた。

それから人魚達としばらく海中を散策した後、重いポケットの僕らは元の島に戻ってきた。
送ってきてくれた人魚達は、砂浜に腰掛けて打ち寄せる波に鰭をパチャパチャさせながら別れを惜しんでくれた。
「今度来る時はトリトンを案内するわ。」と一人の人魚が言った。
「トリトンって?」とユニヴァが尋ねた。
海王星の人魚達は通常は足のあるヒューマノイドで、トリトンと呼ばれる海王星の月が生活の場所なのだそうだ。
そしてもう片方の人魚が遠くを指差した方を見ると、真っ青な水平線からうっすらと白い月が昇り始めているのが見えた。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2007/06/11 21:23】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
contest
時々はテディベアのコンテストなどに参加してみたりもするのです。
でもね檸檬美らさんの本当の名前で参加しているのでね。。。まいっか。

これは2006年の飛騨高山テディベアエコビレッジさんのコンテスト
お題は「ハーモニー」
檸檬美らの「瞑想~meditation~」はなんともうれしい特別賞です。
ありがとうございました。
詳しくはコンテストのhpにて見られます。
mdt


こちらは2007年日本テディベア協会さんの第1回グローバルコンテスト
ベア以外のカテゴリーで参加なので鳥にしましたです!
こちらもうれしいことにエントリーさせていただけました。
ありがとうございます。が賞には今一歩でした。
タイトルは「WingEggBird」です。
web

【2007/06/13 18:58】 | contest | トラックバック(0) | コメント(0) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

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Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

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