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ちゅら星(22)
16. バラ園
僕は長い螺旋階段を上っている途中だ。
もう何百段上ったのだろうか。
幅1m程の真っ白で何の飾り気もない階段がとぐろを巻いて上へ上へと続いている。
ところで僕はいったい何時から何のために階段を上っているのだろう。
この上に何があると言うのだ。
僕は階段の途中に腰掛けて一休みすることにした。
何の音も聞こえない。
いや、聞こえる。風の音だろうか。
螺旋階段の中心の柱の中から聞こえるようだ。
柱の壁に耳を当ててみる、確かにこの中の音だ。
少しだけ潮の香りも感じる、海の近くなのだろうか?
それからまた僕は階段を上り始めた。
はるか上の方から足音が降りてくる。
「誰か降りてくる。」僕は一人つぶやいた。
少しずつ足音は近づいている。

そして目の前に金髪の双子の女の子が現れた。
二人は目をぱちくりさせて僕を見ている。
僕はなにか言うべきなのだろうか。
スローモーションがかかっているようだ。
すると女の子の一人がスローモーションで口を開いた。
なにか話し掛けているようだが、僕には全く聞こえない。
もう一人と顔を見合わせて、呆れたようにお互いに首を横に振っている。

気が付くとビーチベッドに横たわっていた。
起き上がって窓の外を見ると空しか見えない。
いや、よく見ると真っ青な空と真っ青な海だ。
あんまり真っ青なので空と海の区別がつかない程だ。
「ここがどこだかわかる?」金髪の女の子が僕に尋ねた。
「灯台の上でしょ。」と僕は答えた。
「やっと正気に戻ったようね。ここは一人で階段を上ると記憶が飛散しちゃうのよ。」
「知ってるよ。あれユニヴァは?」
それから僕と双子の三人はユニヴァを探すために、大急ぎで階段を駆け下りて行った。
そう言えば僕はユニヴァがのろまだと意地悪を言ったので、わざと一段抜かしで急いでいるうちにユニヴァとの距離がだいぶ離れてしまったような気がしてきた。
階段の途中に腰掛けているユニヴァを発見した。
僕はユニヴァをおんぶして再び階段を上って行った。
灯台の上のビーチベッドにユニヴァを下ろすと、すぐにユニヴァは煙に包まれて黒猫になり、そして丸くなって眠った。僕は少し安心した。
「ところでキミ達もトラベルしに来たの?」と僕は双子に訊いた。
「あたし達はすっかりトラベルを楽しんだ後よ。灯台守さんに留守番頼まれているところなの。」と二人は声をそろえて答えた。
そう言えばこの二人は、いつかのユニヴァのパーティで食事をしたあの僕の仲良しサークルの双子だ。
まだ、飛散してしまった記憶が戻っている最中なのだろう、すこしづつ記憶が戻ってくる。
「そう言えば久しぶりだね。ユニヴァのパーティの時は楽しかった。」
「あぁよかった。どうやらあたし達の事も思い出したみたいね。」
ユニヴァのほうを振り返ると女の子のユニヴァに戻ってビーチベッドに腰掛けていた。
まだちょっと寝ぼけた顔をしている。
「ユニヴァ、僕ら記憶が飛散しちゃって大変なところだったんだよ。」
「助けてくれてありがとぉ。でもまだ金髪娘ちゃんが二重に見えるよ。」
僕と双子は大笑いした。
「ユニヴァちゃん。あたし達双子のキキとララだよ。」
ユニヴァは目をパチッと開けて「あぁ了解。記憶が一気に戻ったよ。」と元気に照れ笑いをした。
それから双子が冷蔵庫からサイダーを出してきて4人で飲んだ。
すっかり正気に戻った僕らは、ベランダに出て風に吹かれてきらきらの海を眺めていた。
部屋に戻ると銀色の宇宙人ぽいスーツを着た背の高い二人の女の人がいた。
「お帰りなさい。」と双子はその二人に言った。
「ユニヴァとピーね?」と片方の女の人が僕らを見て言った。
ユニヴァは何も答える様子がないので、とりあえず僕はうなずいた。
「ピー!初めまして。あたし達はここの灯台守で、こっちはソラで、あたしはウミって言うのよろしくね。」
それから双子が僕らの記憶飛散事件を灯台守に言いつけた。
灯台守は呆れた顔でユニヴァを睨んだ。
ユニヴァは目をそらして海を見ているフリをしているようだ。
しばらくして双子が帰った後、灯台守の二人は買い物の荷物をすっかり片付けてコーヒーを入れてくれた。
「さて、今日はどんなトラベルがご希望なの?」
窓の近くで知らんぷりしていたユニヴァが静かに席についてコーヒーを一口すすった。
「あたし達バラ園に行きたいんだけど。」
すぐに灯台守はコンピュータのキーボードをピョコピョコと叩いた。
「あったわ!ずいぶん古いドリームだけどいいかしら?」
ユニヴァはコーヒーのカップに口をつけたまま答えた。
「バラ園だもの、古い方がいい感じじゃない?」
「それじゃこれに決めるわね。」とソラが言うと、ウミが別の機械のダイアルを操作した。
「あの、僕初心者なんだけどドリームトラベルって何?」
ウミがダイアルを操作しながら教えてくれた。
ドリームトラベルとは、いつか誰かが眠っている間に見た夢の世界を何時でも第三者が、しかも複数で行くことのできるシステムなのだそうだ。
この機械にお望みの夢の世界の座標をセットして、そこの座席で眠りに入るのだそうだ。「大丈夫、あたしがスイッチを入れればすぐに眠りに落ちるわ。」
僕とユニヴァはゆったりした座席に座りリクライニングを倒した。
「それじゃピーちゃん、夢の世界でね。」とユニヴァの声が聞こえた。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2007/05/12 20:53】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(23)
目の前には白いバラが一面広がっている。
夢の世界とは言っても、特に普段と変わったことは感じない。
「ピーちゃん、いいところだね。」と隣に立っていたユニヴァがちょっとはしゃいで言った。
ほんの少しだけセピアの霧がかかったような、白バラ一色のバラ園の風景だ。
向こうに温室のような建物が見える。
僕らはそちらに向かって歩いて行った。
ユニヴァは大きなバラの花を見つけると、鼻を押しつけて香りを嗅いでいた。
そしていい香りのバラを見つけると、僕にもいい香りだからと勧めたりした。
すがすがしいフルーティな香りがする。
温室の入り口の扉は開いている。
温室の中はバナナやパパイヤなどの南国の植物がいっぱいで、奥には蓮池が広がっている。
オニバスの葉の上には黄色い蝶がとまっている。
「あっちに行ってみよう。」
ユニヴァはそう言って、池の端にかかった橋を渡って行った。
橋の先はシダが生い茂る岩の裏に回っていて、薄暗いトンネルになっている。
トンネルの中は薄青く光っている。光ゴケに覆われているのだ。
湿度が高い、雨の音が聞こえる。
「あれ!滝があるよ。」とユニヴァの声が聞こえたので、僕もそちらへ急いだ。
洞窟の出口は滝が落ちている。
僕らは滝の裏側にいるのだ。
そして、外に出る細い通路を発見した。
通路を出ると、そこはもう温室ではなく完全な外で、目の前の足元には広い滝壷が見下ろせた。
僕らは滝壷に降りる岩の階段を下まで降りて行き、大きな岩の上に立って水しぶきを浴びた後、滝壷から流れ出した川に沿って歩きはじめた。
辺りは明るい木漏れ日の揺れる白樺の林が広がっている。
「ピーちゃん、ほら。」とユニヴァが指をさす方を見ると、2頭の鹿がじっと僕らの方を見て立っているのが見えた。
しばらく僕らも鹿を見ていると、向きを変えて林の奥へ跳んで行ってしまった。
「ここには誰もいないのかな?」とユニヴァがつぶやいた。
「でも誰かがバラ園を手入れしているんだよ。」と僕は答えた。
でも人のいそうな気配はどこにも感じられない。
「あれ、きれいな花びら。」
そう言ってユニヴァがコーラルピンクの花びらを一枚手に採った。
「ユニヴァ、あっちにも。」
「ぴーちゃん、あそこにも落ちてる。」
「キミ達、ほらここにもあるよ。」
僕らは聞きなれない声に驚いて顔をあげた。
かたわらに白馬を連れた猫顔の王子が次々と落ちている花びらを拾っている。
僕らがしばらく眺めていると、王子は顔を上げて僕らを見てにっこり笑いかけた。
王子は猫のロシアンブルーを人間型にしたようなタイプで、顔については全くの大きな猫そのものなのだ。
「さて、城に帰ってお茶にしよう。」王子はそう言ってパチンと指を鳴らした。
すぐに林の向こうから鞍をつけた茶色の馬が一頭僕らの前に現れた。
僕は王子に手伝ってもらって茶色の馬に乗せてもらった。
ユニヴァは王子に抱えられて王子の白馬に乗せられた。
僕は乗馬の経験がないので、王子は馬をゆっくりと歩かせて進んだ。
しばらくして乗馬にも慣れてきて、木漏れ日の林を馬に乗って進むのを楽しんでいると、王子が立ち止まって猫顔で僕を振り返った。
蔦の絡まる鉄の格子の門があった。
王子が僕の姿を確認してから、また前方を向くと自然に門が開いて、王子は門の中へと進んで行った。
門の先は白いミニバラの生垣にはさまれた通路が続いている。
50メートル程で通路を抜けると、前には大きな噴水の池が広がっていて、その先にはクリーム色のウェディングケーキのようなお城が見えた。
「ユニヴァ。このお城を覚えている?」王子は抱えたユニヴァの顔を覗き込むようにして言った。
ユニヴァはこっくりとうなずいた。
「ああ、あたしよく覚えているこのお城。だってあたしが建てたお城だもの。」
それから池を取り囲む歩道をお城に向かって進んだ。
ユニヴァが王子に言った。「このお城はあの時のままになっているの?」
「もちろん。ここの時空はいつでもこのままだよ。」
ユニヴァが僕の方を一度振り返ってから言った。「ピーちゃん。ステキなバラのお部屋で美味しいローズティをご馳走できそうよ。」
「どうしてユニヴァはここを知ってるの?」
「このバラ園の夢は、あたしも前に本当に夢で見たことがあったのよ。」
お城がもう間近に迫ってきた。思ったよりも小ぢんまりしている。
お城に続く階段のところまで来て、馬から降りようとしていると目の前に突如男の人が現れた。
王子は馬から降りて、その男の人のそばに寄ってにっこり笑った。
「これから丁度お茶にするところですよ。」
男の人もにっこりした。
僕ら4人は階段を上がり、開かれた大扉を入って大理石の大広間へと入った。
ユニヴァは大広間の中央に駆け出して行って、その場でクルクルと何度も回った。
「うわぁ!あたしのお城だ。」
それから金の手すりのついた広い螺旋階段を駆け上がって行ってしまった。
僕が心配してユニヴァを呼び止めようとしたけれど、王子はにっこりしていたので、僕と王子と男の人は後からゆっくりと螺旋階段を上がっていった。
階段の上は上まで吹き抜けになっていて、長いシャンデリアが上から釣り下がっている。
ユニヴァの姿はどこにも見えなかったが、そのまま僕らは2階の奥に続く廊下を進んで行った。
廊下の絨毯はピンクと金のバラ柄で、壁もブルー地に白やピンクのバラがぼんやりとしている。
王子が金色のバラの彫刻の扉を白いバラの花の取っ手をまわして開けた。
午後の庭が見渡せる明るい部屋でユニヴァがお茶の用意をしていた。
ふかふかの白い絨毯は歩きづらいくらいだ。
丸テーブルの真ん中には大きなバラ柄の壺に大輪のバラがクス玉のようにびっしりと生けられていて、部屋中バラの香りに満たされている。
僕らが席につくのを待てないようにユニヴァがお茶を配り始めた。
席につくと部屋に満たされたバラの香りとはまた違う芳香がカップから漂った。
どこからか白猫のメイドが現れて、ケーキを配って行った。
真っ白なお皿には色とりどりの花びらが数枚散らかっていて、丸くて真っ白な生クリームに包まれたケーキのてっぺんには小さなピンク色のバラのつぼみの砂糖漬けがのっている。
バルコニーはピンクのバラで埋め尽くされている。
庭の木がバルコニーにさしかかって部屋の中まで木漏れ日が差し込み気持ちがいい。
僕らがゆっくりと美味しいローズティとケーキを味わっていると、食べている途中のままあの男の人が突如消えて行ってしまった。
僕は男の人がいなくなった席と食べかけのケーキを凝視していた。
「目がさめてしまったようだね。」と王子が言った。
「まだふたくちしか食べてないのに・・・。」とユニヴァは残念そうに言って、口についたクリームをぬぐった。
2杯目のローズティが配られると、また白猫のメイドがやって来てバラの形のマシュマロの皿をテーブルに置いた。
「よかったらキミもお茶に加わらない?」と僕が言うと、メイドは王子とユニヴァの顔を交互に見た。
王子がにっこりしたのを見て、嬉しそうにメイドは席についた。
ユニヴァはメイドにもお茶を入れてあげながら、マシュマロの中にはバラジャムが入ってるのだと説明した。
僕らはバラ尽くしのお茶の後、びっしりの白バラが浮いているジャックジーな大理石風呂に案内された。
ユニヴァは黒猫の姿で現れて風呂中を泳ぎまわった。
裸になった王子は身体や手足の形は人間なのだが、全身ブルーグレーの毛で覆われていてシッポもある。
猫は水が嫌いと聞いていたが、すっかり彼らニセ猫はリラックスしているようだった。
夕方になって西日が差してきたのだろうか、水面の白バラがセピアにかすんできたように感じた。
遠くでユニヴァの声が聞こえたような気がした。
「それじゃ王子。また来るわね・・・。」

目の前の窓越しには真っ青な空が広がっていた。
少しすると、真っ青な空だけではなく、真っ青な海も見えることに気がついた。
あんまり真っ青なので空と海の区別がつかなかったのだ。
ピョコピョコとキーボードを叩く音の方を見るとソラがいた。
「もう少しそこで休んでいるのがいいわ。」テーブルにいたウミが言った。
隣を見るとユニヴァが大あくびをしているところだった。

テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学

【2007/05/21 17:10】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

れもんちゅら

Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

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