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ちゅら星(20)
14.毬藻プール
僕とクーさんは初夏になって海水浴のシーズンになった頃、あの時のピクニックで友達になった双子とオレンジのクマに湖へ案内してもらう約束をしていた。

川の乗り場で最初にオレンジのクマがシャボン玉に乗り込むと、シャボン玉は小川を滑るようにしてから空中に浮き上がった。
その様子を口を空けて見ている僕らにクマが手を振った。
僕は女の子に押され次にシャボン玉に乗った。
ちょっとロープウェイに似た乗り心地だ。
先を行くクマが手を振るので僕も答えて手を振った。
大草原のすばらしい眺めを堪能するのには最高の乗り物だ。
初夏の大草原はみどりが若くて以前来た時よりずっと鮮やかでみずみずしい。
しばらくして振り返ると、シャボン玉の中のクーさんが見えたので手を振った。
シャボン玉は森の上空を行く、初夏の新緑が萌えたっている。
そして森の向こうはなんと美しいターコイズブルーの湖がキラキラと輝いているのだ。
シャボン玉は少しずつ湖の方へ下降して行った。
オレンジのクマのシャボン玉は着水して、桟橋のようなところへ流れて行く。
足元に広がる湖の色はまるで水色のプールだ。

皆そろったので僕らは着替えて湖に飛び込んだ。
「何てきれいなブルーなんだろう。」僕が感激して言うと、女の子がこの湖の名前を教えてくれた。
「毬藻プールって言うの。」
すると男の子が「ついておいでよ。」と言って泳ぎだした。
少し行くと湖底に大きな岩がたくさんある場所になった。
どの岩も水晶か石英みたいに透明で湖のブルーを映してキラキラしている。
その岩の地帯が終わる辺りで、男の子は泳ぎをとめると一つの岩の上に立った。
僕もすぐ隣の岩に立ってみると、目の前の水中にはあのターコイズブルーの毬藻が一面見えるではないか。
「ユニヴァの毬藻だ。」僕は一人つぶやいた。
それから思った、ユニヴァのやつ『ちゅら星の海』なんて書いてたけれど、『ちゅら星の湖』じゃないかと。
それから男の子が毬藻プールはドーナツ型をしていて、真ん中に小さな丸い島があることを教えてくれた。
中央にあるその島の砂浜に上がって、僕らは砂を掘ってピンク色のカニを探して遊んだ。
何かいい匂いがするような気がして、僕はすぐ隣にいたオレンジのクマに鼻を近づけてクンクンとかいでみた。
「ピーちゃん、何してるの?」と女の子がいぶかしげに訊いた。
オレンジのクマは「僕、いい匂いするでしょ。」と嬉しそうに言った。
その匂いは島の奥からのようで、僕らは匂いを追って赤い花が咲き乱れる林を進んで行っみることにした。
椰子の葉を葺いた丸い家が現れた。周りはバルコニーに囲まれており、広い階段が付いていて、とってもいい香りが漂っている。
階段の登り口には『ドーナツあげます。』と小さな看板が立っている。
僕らはお互いに顔を見合わせてニィと笑い、広い階段を上がっていった。
階段を上がったところの入り口には扉はなく、長い縄のれんがかかっていた。
僕は縄のれんをよけて中の様子を伺った。
大きなテーブルがあり、違う種類のたくさんの椅子がおいてある。
日に焼けているのか黒人種なのかはわからないが、二人の黒い肌の老人がテーブルの隅でビー玉を転がしたゲームをしているところだ。
ゲームをしているテーブルのすぐ隣には、油のたっぷり入った丸い大鍋ある。
僕らがそろそろと中に入って行くと、二人はゲームの手を止めてこちらを振り向いた。
白髪の方が「ドーナツかい?」とニコニコして言った。
僕らはそろってうなずいた。
それから白髪のおじさんは奥から、一枚の大きな板を運んできた。
板の上には型貫された白いドーナツ生地がきれいに50個並んでいた。
そしておじさんは「それじゃ、ドーナツあげるよ。」と言うと、丁寧に鍋の淵を滑らすようにして白いドーナツ生地を油の中に落としていった。
男の子が小さな声で「『ドーナツあげるよ。』ってそういう意味か。」とつぶやいた。
おじさんはプックリ浮き上がってきたドーナツをくるっと裏返した。
こんがりキツネ色になっていくドーナツの鍋を取り囲んで僕らはじっと見つめていた。
ドーナツがお皿に載ると、僕らは適当な席について、サックサクのドーナツを齧った。
「こんなところにドーナツ屋さんがあるなんてぜんぜん知らなかった。」と女の子が言った。
「ドーナツ屋ってわけじゃないんだがな。」とおじさんが答えた。
「じゃ何屋さんなの。」
「ドーナツ好きの家じゃ。」
なんでもドーナツ好きのこの二人は世界を旅して周るうちに、ある時ドーナツ型のこの湖を発見して、すっかり気に入ったのでここに住み着き、ドーナツ探検旅行の秘密の拠点にしているのだそうだ。
そしておじさんは「だからいくらでもドーナツなら尋ねてくれた皆にあげるのじゃよ。」と言って満足そうに自分で揚げたドーナツを眺めてから、バクッと齧った。
男の子は小さな声で「やっぱり『ドーナツあげます。』でよかったのか。」とつぶやいた。

それから夕方、シャボン玉に乗って大草原に戻ってきた僕らは、丘のふもとの双子のおばあさんの家でチーズフォンデュをご馳走になった。
双子もオレンジのクマも、レモン星の人と友達になったのは初めてだと言うので、いつかレモン星にも遊びに来てくれるようにと言って、翌日の朝僕らは彼らに別れを告げた。
僕は帰り道、最近は黒い宇宙空間を暗黒とは感じなくなり、広々として気持ちよく感じるほどになったのはなぜだろうかと不思議に思って窓から宇宙空間を眺めていた。
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【2007/04/13 14:53】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(21)
15.海底洞窟
そんなことを思いながら宇宙空間に飛び出してまもなくの時、ププゥと警告音がなって、目の前のピカピカの茶色の壁に映像が現れた。
ユニヴァだ。目をぱちくりさせている。
「隣にいるのよ、シェードを上げてみて。」
シェードを上げると、僕らの車のすぐ隣にユニヴァが乗っている黒い車が、僕らと反対方向を向いて宇宙空間に浮いている。
ユニヴァは流し目で僕らの方をチラと見た。
それからまた映像のユニヴァが言った。
「レモン星へ帰るの?あたしの家に寄ってけばいいのに。」
クーさんが僕の顔を見たのでうなずくと、クーさんはユニヴァの映像に向かって「オーケイ。」と言った。
そして隣の車のユニヴァを見てみると、こちらに向かって口まで開けてウィンクしてからシェードを閉めてさっさっと出発してしまった。
僕らの車は大きくUターンしてユニヴァの車を追いかけた。
ちゅら星の大気圏に入ると、またユニヴァの映像が現れた。
「海に行こうよ!海水浴ドームで待ってて、すぐ行くから。」
クーさんは「海水浴ドーム」と車に告げた。

2年ぶりに来た海水浴のドームだけれど、相変わらずすぐそこの売店には黄色い水玉の海水パンツが売られていた。
幸い僕らは毬藻プールの帰りなので、海水パンツは持ち合わせていた。
すっかり着替えてユニヴァを待ちわびていると、車付き場にユニヴァの黒い車が現れた。
扉が開くと中から黄色いビキニを着けた赤いクマが出てきた。
それから続いてイルカの着ぐるみが現れた。
イルカの着ぐるみは「おまたせぴょ~ん。」と変な挨拶をしながらこちらに寄って来た。
イルカの喉の辺りの穴から出ている顔はユニヴァだ。
左右の鰭の下からは腕が出ていて、尾鰭の下からは足が出ている状態だ。
「あの赤いクマちゃんはあたしの友達だよ。」とユニヴァが後ろの方で恥ずかしそうにしていた赤いクマを指すと、赤いクマはちょこちょことこちらに寄ってきて笑った。
それから僕ら4名はドームの外の海に出て行った。
赤いブイの手前の浅い海を散歩しながら、ユニヴァは赤いクマを紹介してくれた。
「ヒューマノイド系と友達になりたいって言うから連れて来たの。」
赤いクマは海が大好きで、ちゅら星では海があるドームは全てまわっているらしい。
ゴディ星の海にも何度も行っているそうだ。
レモン星はちょっと遠いし、進化したクマは珍しがられてしまうので、まだ行ったことがないそうだ。
そして僕と友達になったので、今度はレモン星に泳ぎに行きたいと嬉しそうに笑った。
ところで、イルカや人魚に変身できるユニヴァがなぜ今日は変なイルカの着ぐるみなのかと聞いてみたら、僕らの泳ぎのレベルに合わせてイルカの着ぐるみ程度にしておいたのだそうだ。
こんなカッコじゃ泳ぎにくいと思うのだけれど。
それから僕らは赤いブイと青いブイの間のやや深い海でウォーミングアップをして、ユニヴァも着ぐるみで泳ぐのにだいぶ慣れてきた頃、青いブイを越えてさらに深い海に進んで行った。
前にクーさんと二人できた時には青いブイの内側までだったので、僕にとっては初めての区域だ。
青いブイを越えると海底は崖淵になっていて急に深くなっている。
岩から生えている海藻やイソギンチャクで色鮮やかだが、そのさらに下には濃いブルーの深い海が広がっている。
急にユニヴァが勢いよく泳ぎだした方を見ると、青いウミガメを追いかけている。
僕らも後を追いかける。
ウミガメはどんどん深く海の底に入って行くので、僕はこの辺であきらめたい所なのだがユニヴァは一向にあきらめる様子がなく、どんどん深くへと追いかけて行く。
僕らは仕方なくウミガメを追っているイルカ人間を追う。
どこまで息が続くだろうか。
もう戻らなければと思い、後ろから来ていたクーさんと赤いクマを振り返った。
するとクーさんがユニヴァの方を見るようにと指差している。
ユニヴァは深いブルーの海にぽっかり開いた洞窟の前で手招きしている。
僕らが洞窟の入り口にたどり着いた頃、ユニヴァはもうだいぶ洞窟の中を進んでいた。
洞窟の奥はほんのり明るい。
ユニヴァの姿が見えなくなったと思って洞窟内を見回すと、僕の真上にイルカの尾鰭と二本の足が見えた。
水面が見える、息が吸えそうだ。
そこは海底洞窟の途中にできた空気のある場所だった。
僕はちょっとかび臭い空気を十分吸ってからユニヴァの顔を見た。
「こんなところ知らなかったでしょ?」
「どんどん泳いでいっちゃうから心配したよ。」
ユニヴァはへへへと笑った。
後から到着したクーさんと赤いクマはまだ荒い息をしていた。
「ところでユニヴァ、あのウミガメは?」と僕が言うと、ユニヴァは思い出したと言うように目を見張って、またザブンと海底洞窟へ潜って行った。
そして僕らもそれに続いた。
洞窟は先に進むにつれてだんだん明るくなってゆく。
どうやらその先は明るい海に抜けているようだ。

洞窟を抜けたそこは、なんとあの毬藻プールだった。
僕は驚いて、すぐに水面上に顔を出してみた。
ドーナツの真ん中の島も見える。
そこにクーさんが顔を出して、驚いてる僕のそばに寄ってきた。
「驚いたね。」とクーさんは辺りを眺めながら言った。
ユニヴァと赤いクマは毬藻プールをゆっくり泳ぎ回るウミガメと遊んでいた。
ずっと前にウミガメを追いかけていて発見した洞窟なのだそうだ。
暗い海底にある洞窟なので、ウミガメがいないとなかなか洞窟にたどり着けないらしい。
「クーちゃんやピーちゃんが一緒の時にウミガメに出会えたんで、嬉しくなって慌てて追いかけちゃったよ。」と言ってユニヴァは笑った。
それから僕とクーさんは、秘密の洞窟へ案内してくれたユニヴァへのお返しに、秘密のドーナツ好きの家へ案内した。
おじさんは美味しいドーナツを揚げながら、明日からまた新たなドーナツを探して宇宙旅行へ出かけるのだとはりきっていて、袋に詰めてお土産のドーナツまで用意してくれた。
帰りはお土産のドーナツを抱えて海底を潜って行くわけにもいかないので、シャボン玉に乗って帰ることになった。
草原ではピンクの女の子グマがミントの葉を摘んでいるところに遭遇した。
LovelyCacaoのメルとピクニックに来ていると言う。
僕らはピクニックの仲間に加えてもらい、ドーナツを広げて午後の風に吹かれてお茶を楽しんだ。
でも、ドーナツの入手先と海底洞窟のことは誰も何もしゃべらなかった。
それは僕とクーさんとユニヴァと赤いクマの4人だけの秘密なのだから。
そしてあのピクニックの友達だけの・・・。

それぞれ車に乗って帰る時、僕が赤いクマに近いうちにレモン星の海に来るようにと言うと、ユニヴァが「オッケイ!行く行く。」と返事をくれた。
そして僕とクーさんは再びちゅら星を離れた。

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【2007/04/23 13:34】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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【2007/04/30 15:40】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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