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ちゅら星(14)
10.ミントゼリー
レモン星にまた夏がやってきたので、クーさんもレモン星に長期滞在でやって来た。
クーさんはゴディ星の夏よりちゅら星の夏よりレモン星の夏が一番好きなのだそうだ。
「来週ピンクのクマのドームに行こう。」
久しぶりのちゅら星への誘いにワクワクした。
「温泉で会ったグリーンのクマがパーティを企画したらしいよ。」

車を降りると、ピンクの女の子グマが出迎えてくれた。
涼しげなミントの香りがしている。
そこは直径50メートルくらいの円形の部屋で、壁は微かに向こうが透ける氷砂糖のような感じの壁で、床はアイスブルーの天然石のようだ。
ピンクの女の子グマに案内されてその部屋を出てみると、明るい日差しが差し込むガラスのドームの中央に白い柱があり、僕らはその中から出てきたところだった。
「ほら見て。」と女の子グマが床を指した。
床はドームの壁面のように半透明で薄緑色をしている。
よく見るとその下で何か動いているようだ。
「うわぁ、水族館になっているの?」と僕はちょっと大きい声をあげた。
そして膝をついて床の中をのぞいてみた。
「どお。水族館じゃなくてごめんね。」と悪そうに女の子グマが小さく言った。
なんとパーティに来た人たちが泳いでいるのだ。
それから僕らはガラスのらせん階段を降りて、シールドルームを通った。
けれども今回は半透明人間にはならなかった。
僕らが着てきた服のままなのだが、キラキラした粉のようなものに覆われているのだ。
キラキラにシールドされた僕らは、白い大理石の広間に案内された。
ミントの香りに満たされている広間の先には、一面の薄緑色が広がっている。
そして「楽しいわよー。」と言いながら、ピンクの女の子グマは薄緑色の中に飛び込んで、もぐっていってしまった。
僕らもこわごわ飛び込んでみると、なんとそれはミントゼリーなのだ。
そして潜っていってもぜんぜん苦しくなってこない。
奥の方に進んで行くと人影が増えてきた。下の方には明るく輝くドームが見える。
僕らがドームの近くまで泳いで行くと、自動的にドームの中に吸い込まれてしまった。
「やぁ、ようこそ。」
あの温泉の時のライトグリーンのクマだ。
そこはゼリーからは隔離されたパーティルームになっていた。
「いったいこんな不思議なところは生まれて初めてだよ。」
さすがのクーさんもミントゼリーの海には驚いたようだ。
「実はちょっと前に、クーさんもよく知っているブルーのクマがね、かき氷の海パーティを企画してね、あんまり冷たくて不評だっから、こんどは僕がミントゼリーの海を企画してみたわけなんだ。」
寒いのが苦手な僕は、かき氷の海でなくてよかったと思った。
それから僕らはこのパーティルームで、サンドウィッチやフルーツなどを頂いた。
もちろんミントゼリーのフルーツポンチもあったし、ミントティーやミントリキュールのカクテルもあった。
僕とクーさんがグラスホッパーで乾杯していると、パーティルームの外から誰かが壁をコツコツたたいている。
人魚のユニヴァだ。今日はちょうどいい帆立貝のブラを着けている。
ライトグリーンのクマがユニヴァに反対側に回るように合図をした。
すると僕らのように自動的に吸い込まれて入ってきた。
「あたしもそのみどりのが飲みたいんだけど。」
と僕らのグラスホッパーをさしてユニヴァが言った。
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テーマ:物語(自作) - ジャンル:小説・文学

【2007/02/08 10:17】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(15)
11.はちみつドーム
夏も終わりに近づいた頃、あのあじさいの傘の小さなシロクマから手紙が届いた。
「ピーちゃんへ。」
「はちみつパン食べにおいでよ。あしたのお昼に車が行くからね。」
ずいぶん急な話だなと思っていると、クラクションがなった。
外に出てみるとドアの開いた車が止まっていて、よく見ると座席に手紙が置いてある。
「ピーちゃんへ。ちゅら星はちみつドーム行き。小さなシロクマのニニより。」
小さなシロクマは一日日付をまちがえたらしい、僕は慌てて新しいTシャツとジーンズに着替えて、車に飛び乗った。

車が着いたのは、森の真ん中にぽっかり空いたような一面黄色い花の広場だ。
周りはうっそうとした針葉樹に囲まれている。
今日はクーさんも一緒じゃないので、これから一体どうしたらいいのか見当もつかない。
車はいつのまにか何処かに消えていった。
僕は広場の端の方まで歩いて行き、森の入り口の木陰の大きな木の根に腰掛けて途方にくれた。
1時間くらいたっただろうか、広場の真ん中に一台の車が停まった。
扉が開いたが乗客はいないようだ。
置手紙でもあるのかと近寄ろうとした時に、白猫がシートから飛び降りてきた。
ユニヴァに違いないと思った。
白猫は僕の足元まで来ると、立ち止まって僕の顔を見上げた。
僕は猫の知恵も借りたい心境で見つめていると、白猫が口を開いた。
「迷子なの?」
「小さなシロクマのニニのところに行きたいのだけど、このドームは初めてでどこへ行けばいいのか困っているんだ。」
僕が話すのを見つめていた白猫は、視線を森の奥へ移すと「ついておいで。」といって歩き出した。
僕はどうやらユニヴァではなさそうな白猫にとぼとぼとついて森の道を進んで行った。
「遠いの?」という僕の質問に白猫が答えた。
「シロクマは氷の国に住んでいるのよ。」
この辺りは夏の森林だ。そして僕はTシャツとジーンズで来ている。
「このドームの中に氷の国があるの?」
「まさか、ニニはニセシロクマよ。」白猫はチラッと僕を流し目で振り返った。
「じゃあニニって何者なのさ?」
白猫はちょっといらいらした調子で「質問の多い人ね。」と言って黙って歩き続けた。
しばらく行くとうっそうとしていた木々が少し明るくなってきた。
そして明るい先には湖が広がっている。
僕らが森を抜けたところは桟橋になっていて、小さな赤いボートがある。
白猫がボートに飛び乗ったので、僕も続いて乗り込んだ。
底に投げ出されているオールを拾おうした時、ボートは自然に動き出した。
周りの景色を望むと森のはるか向こうには雪山が見える。
とてもドームの中とは思えない雄大な景色が広がっているのだ。
ホログラムで演出してあるのだろう。
ボートの行く先に小さな桟橋が見えていて、そこに小さな茶色のクマが立っていた。
「ピーちゃん。ようこそ。ようこそ。」そのクマは目をクリクリさせて僕を歓迎した。
そこにある家らしきものは、山小屋風に丸太を組んだつくりなのだが、屋根は平で全体的に正方形なのだ。
入り口は小さくて、小さなクマにはちょうどいいのだが、僕は身体を縮めなければならない。
中に入ると天井は低いが僕でも普通に立てる程度はあり、小さなテーブルセットやキッチン、ソファアや暖炉があって、まるでよくできたおままごとセットのようだ。
いつのまにか白猫はそこのソファアのクッションで足などなめてくつろいでいる。
僕と小さなクマは木をくりぬいたボウルでミルクココアを飲んだ。
「ニニはここにいるの?」と僕が聞くと、小さなクマは生意気そうな目で僕を見て「うん、ここにね。」と言って笑った。
そう言えばニニはユニヴァの仲間なのだから・・・。
僕はそこでやっとこの茶色の小さなクマが、あの小さなシロクマのニニなのだと気がついたのだ。
それからニニははちみつパンについて説明した。
なんでもはちみつパンというものは、パンをはちみつに長い間漬け込んだものらしく、そのハチミツ漬けのパンをフライパンでバター焼きにして食べるのだと言う。
ニニは今にもよだれをたらしそうになりながら説明すると「手伝って。」と言って外に出て行った。
家の裏手に行くと、ニニは無造作にその辺りの落ち葉を蹴散らした。
すると地面に四角い木の板が敷いてあるところが出てきた。
「ビックリしないでよ。」と言って、ニニはユニヴァみたいに煙に包まれたかと思うと次の瞬間には大きなグリズリーが現れた。
僕は驚いて後ろに飛びのいて、しりもちをついてしまった。
「ビックリしないでって言ったのにな。」と大きなニニが低い声で言って、僕を起こしてくれた。
それからニニが軽々と地面に敷いてある板をのけると、そこには地下室が掘ってあった。
ニニは腹ばいになって地下室の奥に腕を入れて中から壺をつかみ出した。
そしてその壺を僕のそばにおいて、また地下室に腕を入れた。
また一つ壺をつかみ出すと「ピーちゃんはお家にどんどん運んでよ。」と言って僕の前に壺を置いた。
それから僕は続々と出てくる壺運びに奮闘した。
大きなグリズリーには片手でつかみ出せる壺でも、僕にはけっこう大仕事なのだ。
僕も煙に包まれて巨人にでもなれればいいのだが。
僕は壺を運びながら真剣に変身の術を身につけようかと考えていた。
15個ほど運んで終了した。
僕がキッチンの椅子に腰掛けて休んでいると「ご苦労様。」と誰かが言った。
シュークリームみたいな短いパーマヘアーのお姉さんがいつのまにか部屋にいた。
お姉さんは一つの壺のふたを開けて「ほら、おいしそうでしょう。」と僕に微笑んだ。
壺の中はたっぷりのはちみつに厚切りの食パンがぎっしり並んでいる。
そこに小さな茶色のクマが外から入ってきて、一緒に壺の中のはちみつパンを覗いた。
それからお姉さんは壺からはちみつパンを丁寧に取り出して、パターが解けていい香りのフライパンに3枚並べて焼いた。
つやつやのはちみつパンにこんがり焦げ目がついていっそう美味しそうになった。
その間にニニは黄色いお皿を3枚とフォークとナイフをテーブルにセットしていた。
ざくっとパンにナイフを入れて一口ほおばってみると、もうパンというよりははちみつそのもので、蜂の巣から取り出したばかりのかたまりをガリガリ齧っている気分なのだ。
お姉さんは3口ほど食べたところでお茶を入れることを思い出して、紅茶の用意をしてくれた。
ニニが「お砂糖なしで。」と言ったので、「僕も。」とついでにお願いした。
窓から見える湖の向こうの雪山は夕方の陽でピンク色に染まっている。
「帰りもママに送ってもらいなよ。」とニニが言った。
またも僕は今ごろ気がついた、白猫とこのお姉さんが同じ存在なのだと。
お姉さんはそ知らぬ顔ではちみつパンを食べていた。
暗くならないうちにと、それからすぐに帰ることになった。
僕とお姉さんがボートに乗り込もうとしていると、ニニがころころと小さな木で作った台車を引いてきた。
はちみつパンの壺が一つぐるぐるとロープで台車につけられている。
「ちょっと重いけどお土産に持って行きなよ。」とニニがボートに台車をおろした。
お礼を言っているとボートがスーと桟橋から離れた。
森の入り口の桟橋についても小さくニニの姿が見えていた。
僕は大きく手を振ってから、ころころと台車を引いてお姉さんの後について森を進んで行った。
広場に着くと、白猫が降りた時のままなのだろうか、車が扉を開けて停まっていた。
僕は壺をはずして台車をお姉さんに返してから車に乗り込んだ。
シェードをあげてお姉さんに挨拶しようとしたけれど、そこには森に向かう白猫の後姿とその後にシッポに引かれてころころとついて行く台車の姿が見えた。
【2007/02/16 10:37】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星(16)
12.夜行バスツアー
まだまだレモン星は夏で、クーさんはレモン星に滞在中だ。
僕は毎日のようにアイスキャンディー屋に行き、はちみつパンの一人旅の奮闘記など話して聞かせた。
そんなある日、僕とクーさんはガードレールに腰掛けてパインキャンディーを齧っていた。
クーさんが黒い紙切れを2枚ポケットから取り出して僕に差し出した。
銀色の文字で『夜行バスツアー』と書いてあるチケットだ。
「来週の夜は次元の歪みができて、別次元の星がちょっとの間だけ現れるんだけど、その時を狙ってその別次元の星を探検しようっていう企画でね、ちょっとヤバイけど行く?」
初めての一人旅をしてきたばかりだと言うのに、今度は別次元旅行だ。
「戻って来れなくなったりしないの?」
「たぶん・・・。」
クーさんにしては珍しく自信のない返事だ。
「知ってる人は知ってる有名なツアーなんだけどね、ヤミでしか手に入らないツアーなので保証はないんだ・・・命にもね。」そう言ってクーさんは笑った。
僕は不安を感じながらも、すごいチャンスを逃したくない気分になった。
そしてクーさんの手から一枚チケットを抜き取って眺めてみた。
『夜行バスツアー 月地下5番街cafeORE集合 新月19:00⇒』
あと5日で新月になる。
「どんな次元のどんな星なの?」
「歪みの具合によってどんな次元が現れるか予想がつかないけど、僕らの次元よりは低い次元だ。高い次元の世界では消え去ってしまった惑星なのだから、きっと怪しい星なんだろうね。僕も初めてだけど、きみが行かないならやめようと思う。」
全ては僕の決断にかかってしまった。
僕はそれから毎日アイスキャンディー屋に来るたびにチケットを眺め、結局新月の日の夕方になってコインを投げて行くことに決めたのだ。

レモン星には一つ月があって、眺める分にはおなじみの月なのだが、そこに実際に行ってみるのは僕にとっては初めてのことだ。
しかも今日は新月で月とは言ってもうっすら輪郭が見えるか見えないかなのだ。
僕らの車は飛行機の滑走路のようなライトでガイドされている道に降りて走行した。
すぐ先の左側に1の標識、右に2の標識が見えた。
それを過ぎると左側に3の標識、右に4の標識が見えて、次に現れた左側の5の標識を左折したところで車は停まった。
車を出ると地下鉄の入り口みたいな下に降りる階段があって『5番街入り口』と表示されている。
僕はクーさんについてその階段を降りて行った。
階段の下には重い鉄の扉が閉まっていて、僕らはそれを押して中に入った。
中に入ったとは言っても、外に出たようなもので、そこは地下街というよりは夜空の広がる外なのだ。街路樹と外灯が並ぶ道の先には賑やかな商店街が見える。街路樹の向こうにはマンションや住宅の明かりが見える。
こんな月の地下都市にも大勢の人が住んでいるらしい。
クーさんは商店街に入ってすぐの古びた扉に入った。
扉を入るとゆるい下り坂の人一人通れる廊下がまっすぐ奥にのびていて、突き当りまで行くと折り返してさらにゆるい坂が地下にのびていた。
さらにもう一度折り返して進んだ先にやっと扉が現れた。
扉を入ると古い貯水場の跡地のようなところで気味が悪かった。
そこはかなり広いのだが一面黒い水に満たされていて、僕らは出口の扉に続く飛び石を用心深く渡って行った。
扉を出ると石の壁の洞窟になっていて、行く先は急な上り坂になっている。
上り詰めた先は板戸でふさがれていたが、軽く開くことができた。
板戸の先も同じような石の洞窟で、たくさんの埃をかぶったワインが整然と並んでいる。
突き当たりは丸くて青い鉄の扉があるが、ダイヤルがついていて押しても引いてもびくともしない。
クーさんは一瞬立ち尽くしてから、扉をノックした。
すると向こう側から扉を操作している音が聞こえて、ゆっくりと扉が開いた。
中から厳つい赤ら顔の男と、耳の長い青白い顔の男がニコニコして顔を出した。
扉を出ると調理場になっていて、黒ウサギの女の子が薄暗い通路の向こうから「ごあんないしま~す。」と声をかけた。
僕らは黒ウサギについて行った。
薄暗い通路の先はカフェのフロアで、店はビールを飲む人で賑わっていた。
僕らは店内の様子には目もくれずガラスの自動扉から店を出た。
店のすぐ脇の路地に黒っぽいミニバスが停まっていた。
黒ウサギに促されてバスに乗り込むと、座席の半分以上は期待と不安の入り混じった顔ぶれでもう埋まっていた。
僕とクーさんは後ろから2番目の二人がけの席に並んで座った。

テーマ:詩*唄*物語 - ジャンル:小説・文学

【2007/02/28 10:23】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

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Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

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