FC2ブログ
ちゅら星(1)
1. クーさん
午前中だというのに気温32度。
きょうは誰かの誕生日パーティに行くことになっているので、きのうの夕方拾い集めた貝殻でちょっとしたプレゼントを作っている。
クーさんからのメールでは、誰の誕生日なのかは知らされていなかった。

クーさんと出会ったのは、先月の初め、初夏の海辺だった。
クーさんは、ガラスみたいなブルーの目をした少年のような人で、麦わら帽子をかぶっていた。でもけっこう大人なのだと思う。年齢は訊いたことがないのでわからない。
アイスキャンディーの旗を立てた自転車に乗ってやって来た。
アイスキャンディーを買いに来る子供がクーさんと呼んでいたので、なんとなくクーさんと呼ぶようになったのだが、ニックネームなのかなまえなのかはわからない。
僕はアイスキャンディーを買って、すぐそばのガードレールに腰を掛けて、ぼんやり海を眺めながらそれを齧っていた。
この辺りは海水浴場ではないので、それほどの賑わいではない。
クーさんは、ヒマそうに箱から一本アイスキャンディーを取り出して、僕の傍らに腰を掛けてキャンディーを齧った。
「この箱にいい絵が描けないかなぁ?」クーさんは自転車の荷台に着けた白いアイスキャンディーの箱を指して言った。
僕は時々絵を描く、たいていは晴れた海がメインの絵だ。そしてかなり自己満足な出来栄えの絵である。ただ夏の絵が描きたくなるのだ。
そんな絵をこの白い箱に描いてみてもいいかなと思った。
「海の絵がいいよ。かき氷の旗だって波の柄だからね。」と言ってみた。
クーさんは、目の前の海を指して「あの水平線がいいかもしれないな。」と言った。
「そうだ、この景色を書いてみよう。」
それからアクリル絵の具を持って来た僕は、夕方までかかって、真夏の海をキャンディー箱へ描き写した。
その間に、何本かのアイスキャンディーが売れた。
僕なりの表現のしかたで書いてみたけれど、クーさんはかなり喜んでくれた。
「お礼は必ずするつもりだけど、きょうのところはこれで悪いね。」
そう言ってクーさんは、ブルーのアイスキャンディーを僕に差し出した。
そしてまた、ふたりガードレールに腰掛けてキャンディーを齧った。
夕日に輝く海をバックに、真昼の青い海の絵を眺めた。
クーさんからは、連絡先としてメールアドレスを教えてもらったので、それから海をぶらつく時には、時々連絡を取り合って会うこともあった。
会うたびにクーさんは「この絵を描いてもらってからはよく売れるよ、お礼は必ずするからね。」と思惑ありげに言った。
クーさんがアイスキャンディー屋だけで生計を立てているかどうかはわからない。
僕らは出会っても、目の前の海の話くらいしか話さないことがほとんどだから。
とにかくクーさんからのメールでは、絵のお礼に今晩誰かの誕生日パーティに招待してくれるということで、15:00にあの海岸沿いのガードレールのところで待ち合わせなのだ。
誰かの誕生日パーティが絵のお礼だなんて、なんだか変な話だけれど、プレゼントもなしに誕生日パーティに行くわけにもいかないので、思いついたものがタカラガイで作ったカメなのだ。
なぜなら僕はインターネットで貝細工の店を開いているのだ。
ちょうどいい大きさのガラスビンに砂をひいて、作ったカメをおいてみた。
貝と一緒に拾った流木と珊瑚も飾りに入れて、海水をたっぷり満たした。
ビンのフタを空けたら潮の香りがするはずだ。
ビンの肩に絵の具で「Happy Birthday」と書いた。
みんなはデパートの包み紙に包まったプレゼントを持ってくるのだろうか?
僕は海を切り取ってプレゼントだ。
それからセロファンの袋にビンを入れて、首のところを金色のリボンでキューと縛った。
時計を見ると、もう13:00を回っていた。
昼ごはんを食べながら、着てゆくものを考えようとしたけれど、いったいどんなパーティなのか見当がつかないので、クーさんにメールで訊いてみることにした。
昼ご飯を食べ終わって、シャワーを浴びている間にクーさんからの返信メールが来ていた。
「僕はブルーのスーツに銀の蝶ネクタイと銀色の靴で行くよ。決まりもないしタキシードも必要ないけれど、素敵なジュエリーを忘れずにね。」
あのクーさんからは想像できない派手な装いにかなりビックリした。
さて、僕はと言うと・・・ジュエリー?きらきらのアクセサリーを付けてかなくちゃならないのだろうか?もう一度クーさんからのメールを読み直して、僕は首をかしげた。
しばらくクローゼットを眺めて、もう10年ものになる麻の白いスーツを出してみた。
年季の入ったクシャッと感が結構よかったりする。
それからクリーム色の地に白い透かしのハイビスカス模様が入ったアロハを着た。
それから金のネックレスをしてみたが最悪だ。
銀のブレスレットもやはりすぐ外した。
赤い珊瑚のネックレス、これは店で売るために女の子用に作ったのだけれど、なんだかきょうの僕にはよく似合う。大発見だ!
スポンサーサイト



【2006/12/24 17:19】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星 (2)
2. ユニヴァの誕生日パーティ
そして15:00頃にブルーのスーツのクーさんが待ち合わせ場所に現れた。
銀の蝶ネクタイにはびっしりダイヤモンドが埋め込まれている。
ロールスロイスでも似合っちゃうくらいの決まりようだ。
クーさんは、僕の珊瑚のネックレスをほめてくれて、僕が珊瑚の取れた場所をクーさんに説明していると、白い車が停まって、後部座席のドアが開いた。
クーさんの後に続いて乗り込んだ。
運転席と後部座席は、ぴかぴか光るこげ茶色の壁ですっかり仕切られている。
ドアが自動的に閉まると、窓にはシェードがおりている。ちょっと怪しい。
ドライバーは気配も感じない、自動運転なのかもしれない。
「それじゃ、そこまでは船で行ったほうがいいだろうね。」
クーさんは相変わらず珊瑚が取れる場所について訊いた。
「クーさん、いったい僕らはどこに行くの?誰の誕生日?」
「ちゅら星のユニヴァのパーティだよ。」
「ちゅら星って?」
「窓の外を見てみて!三ツ星のすぐ下に見えるキラキラ輝いている星だよ。」
窓にかかっているシェードを上げると、窓の外には宇宙が広がっていた。
ちゅら星って名前の星ははじめて聞く星だ。
「クーさんは、よくちゅら星に行くの?」
「僕の家は、ちゅら星の右に見える黄緑色の星、近所だからよく行くよ。」
僕は身体をひねって、リヤウィンドウから僕の星を眺めた。
青白く輝いている。特に両極からは強い光が放たれていて、宇宙からはレモン型に見える。
「それで、海底遺跡のライオンの像の近くってこと?」
「うん、ライオンの像の辺りまで行くと、珊瑚が群生しているところが見えてくるはずだから、行けばすぐわかるよ。」
「ちゅら星でも、僕のゴディ星でも赤い珊瑚は採れないと思うよ。」
「へぇ。」僕は赤い珊瑚のネックレスをつまんで眺めた。
僕らは珊瑚の話を続けた。クーさんの星には紫色の珊瑚が多いらしい。
いつかゴディ星の海底を案内してもらう約束をした。

突然車のドアが開いた。
そこはどうやら室内らしい、車はモコモコのピンク色のじゅうたんの上に停まっている。
僕が車から出て、じゅうたんの上に降り立って辺りを見回すまもなく、スピッツの着ぐるみを着た女の子からシャンパングラスを手渡された。
クーさんもプードルの着ぐるみからシャンパングラスを受け取っていた。
クーさんが僕に手招きをして歩き出したので、僕はクーさんの後を追いかけた。
クーさんは、おしゃべりに夢中な人たちを、次々すり抜けて白いぴかぴかの扉があるところにたどり着いた。
僕も遅れてたどり着くと、それを見計らって、クーさんがその扉をノックした。
クーさんはダイヤモンドの蝶ネクタイをササッと整えた。
すぐに扉は内側に開き、クーさんが目で合図をしたので一緒に中に入った。

部屋の中は真っ白な光に満たされていて、キャンディーみたいな香りが漂っている。
しばらくたたずんでいると、一面の白世界の一部がぽっかり開いて、中からヒヨコのぬいぐるみが顔を出した。
「ピヨピヨー!」
すぐにヒヨコはひっこんでヒヨコが出てきた穴もふさがって、また一面真っ白になった。
またぽっかり穴が開くと、今度は緑色のワニが顔を出して「ガオガオ!」と叫び消えていった。
この状況についてクーさんに質問しようとした時、霧が晴れるように視界が広がり、僕らは応接室らしきところにいた。床はピカピカの白い床で歩くとコツコツ音がする。
壁は黄色でさっきのピンクのじゅうたんに似ている。
触るとぬいぐるみみたいにモコモコしているのだ。
突き当たりは一面窓になっていて、青空と入道雲だけが見えた。
僕らはふかふかの空色のソファアに腰掛けた。まるで雲に乗っている気分だ。
「誰かを待っているの?」
「まずはユニヴァに誕生日おめでとうを言わないとね。」
僕はユニヴァってどんな感じの人だろうとワクワクした。

黄色いモコモコの壁から、突然黒猫が一匹飛び出してきた。
そして僕らの前のテーブル越しにあるゴージャスな肘掛椅子に飛び乗り、紫色の煙に包まれたかと思うと、次の瞬間には黒いドレスのおかっぱ頭の女の子が座っていた。
すぐさまクーさんは立ち上がると、「お誕生日おめでとう!」とうやうやしく挨拶をした。
慌てて僕も「初めましてレモン星から来ました。名前は特にありません。お誕生日おめでとう。」と早口で挨拶した。
そしてクーさんは「開けてみて!」と銀色の包み紙に銀色のリボンがかけてあるプレゼントをテーブルにコトンと置いた。
それからまたソファアに着席して、僕は様子をうかがった。
ユニヴァはゆっくりと両手でテーブルからプレゼントを取って、自分のひざの上に乗せてリボンを解いた。
箱を開けると木屑のクッションの中に高級そうなワイングラスが一つ入っている。
どこからともなく香ばしい香りがしてきたなと思っていると、クーさんが僕の耳元でささやいた。
「木屑みたいなのは、鰹節だよ。」
ユニヴァがさっき黒猫だったことを思い出した。
ユニヴァは嬉しそうにグラスを外からの光にかざしながら、鰹節をつまんで一口食べた。
僕は持ってきたプレゼントをテーブルにだまって置いた。
すぐにユニヴァは僕のプレゼントを取り上げて、透明のセロファンに包まれた海のビン詰をゆっくり眺めていた。
しばらくしてリボンを外してカサカサとセロファンの中から海のビンを取り出すと、フタを開けて中をのぞいた。
「あたし、レモン星で海水浴したことある。」
「えっ、ほんとに?」
ユニヴァは二コッと笑った。
また紫色の煙に包まれたかと思うと、今度は黒猫の着ぐるみを着ていた。
「きょうはありがとう。それじゃゆっくり楽しんでいってね。」
着ぐるみのユニヴァはプレゼントをかかえて、黄色いモコモコの壁の中に消えていった。
僕がその壁をいぶかしげに見ていると、クーさんが声をかけた。
「さて、そろそろご馳走を食べに行こう。」
クーさんはまた、ダイヤモンドの蝶ネクタイを整えた。
【2006/12/25 21:20】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星 (3)
扉を出ると、ピンク色のじゅうたんの大広間は、ますます人が増えていて、みんなのおしゃべりや笑い声は騒音に近い。
そしてまたすぐに、今度はシマリスの着ぐるみがやって来て、僕らにシャンパンを勧めた。
ユニヴァとの会見で緊張したのか、僕はのどが渇いたのでシャンパンを一気に飲み干して、シマリスのトレーに空のグラスを返した。
それを見てクーさんはクスリと笑って、シマリスからシャンパンのグラスを一つ手に取ると歩き出したので、ご馳走に期待しながらついて行った。
そしてまた違うピカピカの白い扉の前に来た。
クーさんが飲み終わったシャンパングラスを、近くにいたキツネの着ぐるみのトレーに置くと白い扉が内側に開いた。

扉を入ってすぐに下に降りる広い階段が伸びていて、部屋の中はクラッシックっぽい音楽が流れている。
階下から、ワサワサと人の話し声が聞こえてくるけれど、霞がかかっているようで状況は見えない。
僕らは階段を降りて行った。
そして美味しそうな匂いが漂って来た。
階段の下にはランプを持ったメイドが待っていてくれた。
「足元にお気をつけて、こちらへどうぞ。」
霞の中を僕らはメイドに案内されて行った。
案内された小部屋に入ると、霞はすっかり晴れた。
8人がけの大きな丸テーブルがあり、豪華なシャンデリアがきらめいている。
僕らは奥の方の席に並んで座った。
「ここには他にもまだ誰か来るの?」
「あと6人来るよ、みんな知っている人ばかりだよ。」
それはクーさんにとって知っている人ばかりということなのだろうか。
メイドが誰かを案内してきたようだ。
「いやぁ、またせたね。」
ブルーのクマの着ぐるみが入ってきた。この人は確かによく知っている人なのかもしれない気がする。この人の趣味は確か貝殻の収集で・・・。
でも、なぜ知っているのだろうか、初めて会ったとしか思えないのに。
しかもクマの着ぐるみを着ているというのに。
彼はクーさんの隣に腰掛けた。
僕がクーさんの顔を見ると、「デジャヴって知っているよね。」と言った。
そこで僕は、いつかの過去か未来で出会った人なのだろうと理解した。
さすがに初対面にもかかわらず、僕らはすぐに打ち解けた。
それからソムリエが来てクーさんが試したあと、それぞれのグラスに赤ワインを注いで行き、メイドがトマトのブルケスタの皿を置いていった。
しばらくすると、耳のとがった黒人種の双子の異性人がやって来て加わった。
その後に金髪の双子の女の子達がやって来て、最後にピンクの女の子グマが来ると全員そろったので料理も続々と運ばれてきた。
サラダとチーズに続いて、魚料理、肉料理、トマトのピザパイがテーブルに並んだ。
僕らは「いつもの食卓の家族」みたいな気分でご馳走を食べた。
ブルーのクマの着ぐるみは、魚料理をしきりにほめた。
双子の女の子達はピザパイをあっという間に2人で平らげてしまったけれど、すぐに新しいピザパイがやって来た。
僕の隣にいた耳のとがった丸顔の方が魚料理にナイフを入れながら、「君とは魚釣りによく行くよね。」と話し掛けた。
思わず僕も「あの時のブルーマリンには驚いたよね。」と返した。
なぜなら、僕の脳裏には、鮮やかにその場面が浮かび上がったのだから。
その時の僕と彼は、中年の白人種で、同じ会社の共同経営者なのだ。
すると双子のショートヘアーの方が、「あたし達はダンスのパートナーなのよ!」と、得意げに言った。
僕の脳裏にはラテンミュージックが流れて、僕はちょっと踊りだしたい気分になった。
今度はブルーのクマの隣にいたポニーテールの方が、「あら、あたし達もダンスのパートナーよね。」とブルーのクマの肩に腕をまわした。
僕の脳裏に、コンクールでワルツを踊るブルーの肌のヒューマノイドな彼らが見えた。
僕は、いろんなことがどんどん心の中に湧きあがってくるのを感じていた。
ぼんやり考えにふけっていると、耳のとがったもう一人が僕に向かって衝撃的な発言をしてきた。
「遠い昔、君は僕がとってもかわいがっていたポロンっていう白い犬だったよね。」
僕が犬だったことなんて、とても思い出せなかったけれど、彼が声を掛けてくれるとなんだかほっとした気分になって、落ち着くのを感じた。
僕は気分を変えて質問してみた。
「ところで、8人みんなで過ごしていたことはあったと思う?」
「後にも先にも、そんなのたくさんありすぎるわ。」とブルーのクマにまわした手をはずしながらポニーテールの女の子が言った。
「でもムニャムニャ島での時代は、ホントに楽しいことばかりで、あたしはあれが一番好きだよ。」とピンクの女の子グマが言うと、みんな感慨深そうに遠くを見た。
それからデザートのミント味のババロアを食べた。
【2006/12/26 20:45】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星 (4)
レストランを出ると、ピンクのじゅうたんの大広間は、相変わらずにぎわっていた。
辺りを見回しても、先ほど食事をした仲間達はどこにも見えなかった。
すぐにやって来たウサギの着ぐるみにシャンパンを断って、僕らは近くのベンチに座った。
「クーさん、素敵なパーティだけど、誕生日って感じじゃないね。」
「誕生日は明日だからね。クリスマスだってイヴの夜はにぎやかだろ。」
「ああ、そういうこと。ユニヴァはいくつになるの?」
「・・・宇宙暦で?」
「・・・いや、なんでもないよ。」僕はバカなことを訊いたと思った。
クーさんは伸びをして、「バーにでもいってみる?」と訊いた。

少し先にあったウェスタンな跳ね扉を入った。
ウェスタン映画から飛び出してきたような人もいるが、着ぐるみや見たこともないタイプのヒューマノイドもいる。
がやがやと酒場の雑音はあるが、大広間の喧騒に比べれば静かで落ち着く。
僕らはカウンターの席についた。
クーさんは、テーブルのクーさんの前と僕の前を指でコツコツと指差して、「マーメイド」
と注文した。
僕らの目の前で二つのグラスになみなみの琥珀色の液体が注がれると、グラスのフチにぼんやりと小さな人魚のホログラムが腰掛けた。
そして、めいめいの前にグラスが置かれると、人魚はするりとグラスの中に入り、琥珀色の液体の中をゆるゆると泳ぎまわっている。
クーさんは構わずグラスに口をつけた。
僕はしばらく人魚を眺めていた。
カウンターの少し離れたところにいる長い爪の女性は、もくもくと煙があふれ出る飲み物を飲んでいて、なんだか魔女みたいなムードだ、ドライアイスでも入っているのだろうか。
僕はゆっくり店内を観察しながらマーメイドを飲んだ。
僕らはまた珊瑚のことなんかを話しながらマーメイドをお代わりして、2杯飲んだところで店を出た。

相変わらず大広間はにぎわっている。
クーさんが指さす方を見ると、入り口を椰子の木のアーチで飾った扉が開いている。
入り口で腰ミノをつけた女の子グマが僕達の首にレイを掛けてくれた。
椰子の木のアーチは奥まで続いていて、それを抜けると真夏の海辺が広がっていた。
うるさいくらいの波の音も、しだいになれて気にならなくなる。
波打ち際に設けられたカウンターバーに座った。
椰子の木陰ではフラダンスショーが始まったところだ。
しばらくフラを眺めてから、クーさんが「何にする?」と僕に訊いた。
カウンターの中のブルーのアロハを着た赤い肌のヒューマノイドが上にかかっていたメニューボードを指差した。
「ドルフィンジャンプ」を注文した。
そのグラスに満たされた透明の液体の中からドルフィンが飛び出してきて、また液体の中にダイブすると、ドルフィンは消えて、液体はオーロラ色の飲み物になった。
クーさんは「ココナッツビール」を注文した。
一見普通のビールだが、グラスの中からトントコトントコ太鼓の音が聞こえてくる。
周りに広がるリアルな海の風景は、短い時間で昼から夜へと変わって行く、そしてまた朝になり、そのたびごとに足元に打ち寄せる波の水温も変化する。
僕らはお酒に酔うこともなく、疲れることも眠くなることもなかった。
僕らが常夏の海辺で何杯かの飲み物を楽しんでいると、じわじわと光があたりに溢れ出して、ユニヴァの応接室に入った時のように、一面真っ白な光に包まれてしまった。
ワサワサと話し声が聞こえている。
すぐそばでクーさんが、「朝が来たようだね。」といった。
そして一瞬で視界が開けると、僕ら全員はとてつもなく広い曇りガラス製のドームの中の一角にいるのだった。
曇りガラスを抜けてくる朝日で、部屋中がキラキラした宝石のように輝いていた。
クーさんの蝶ネクタイもひときわ輝いていた。
それから優しいハープの音色が聞き覚えのあるメロディーを奏ではじめると、みんないっせいにハミングし始めた。
つい僕も引き込まれて、一緒にハミングしていた。
ハミングの音は、いろいろな人種によってさまざまで、遠吠えのようなものや小鳥のさえずりのようなものや、楽器のようなものさえあって、ドームの中に響き渡る歌声は、天界の音楽ではないかと思われるほど優雅ですばらしいものになった。
合唱が終わって、一瞬の静寂の後に割れるような歓声と拍手が鳴り響いた。みんなそれぞれに誕生日を祝う言葉を叫んでいるようだ。
そうしているうちに辺りがまた真っ白な光に包まれてしまった。僕らは気がつくと元の常夏のバーカウンターにいた。

「さて、またユニヴァに会いたいでしょう?」とクーさんが言う。
僕はよくわからないので、クーさんの顔を見た。
クーさんは笑って席を立って歩き出したので、僕もそれに続いた。

やはり外はピンクのじゅうたんの大広間で、相変わらずの賑わいだった。
クーさんは人ごみをすり抜けながら、大広間を横断して行く。
相変わらずの扉を入り、真っ白な中で相変わらず豚のぬいぐるみやカエルのぬいぐるみに迎えられ、相変わらず入道雲の見える応接室のソファアに座った。
黄色いふわふわの壁を見ていると、ゆらゆら壁が動きだして白猫が飛び出してきた。
そして、肘掛け椅子に白いドレスのユニヴァになって現れた。
「白も似合う?」
僕はうなずいた。
「今度はパーティじゃない時にゆっくり会いましょう。」
「ああ、ぜひ。」僕は小さい声で答えた。
「クーちゃん、いいお友達連れてきてくれてありがとう。」
「喜んでくれたようだね。化け猫ちゃん。」
「まぁ失礼ね。」
「彼も化け猫パーティを楽しんでくれたはずだよ。」
「それはよかったわ。」
僕は唖然として二人の会話を眺めていた。
「それより、そのネックレスは見事ね。」ユニヴァが僕のネックレスを見て言った。
僕はプレゼントしちゃってもいいかなと思った。
ユニヴァは僕の心を読んだのか、「今はいいの、だってとってもファッションに合っているしね、おうちに帰ったら同じようなのを宇宙便で送って欲しいな。」なんていった。
僕は、もっとすばらしいのを作って宇宙便で送ることを約束した。

大広間に出て中央付近まで行くと、何台もの白い車が現れては消えていた。
僕らは一台の現れた車に乗った。
クーさんが車に呼びかけた、「帰る前に、この辺りを一回りしたい。」
そして僕に、「シェードを上げてごらん。」と言った。
シェードをあげると、一面の海が広がっていて、ある程度の間隔をあけていくつものガラスのドームが浮いているよう見える。陸地はまるで見えない、一面の海なのだ。
「今度来る時は、あのドームに行ってみないか?」
クーさんを振り返ってみると、向こうに見えるドームを指差してにっこり笑った。
「一緒に食事をしたピンクのクマが住んでいるしね。」
「またちゅら星に来たいな、かたっぱしからドームを回りたいよ。」と僕は言った。
クーさんは大笑いした。そして車はちゅら星を離れて、宇宙空間に飛び出した。
【2006/12/27 21:49】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
ちゅら星 (5)
3.珊瑚のネックレス
翌日、ユニヴァのための珊瑚を取るために、例の珊瑚の群生地に行くことにした。
せっかくだからクーさんを誘ってみたが、あいにく他に用があるようで、僕は一人で海へ出かけた。
波は静かで、少しだけ風がある絶好の珊瑚取り日和だ。
船で行くのもよいのだが、海水浴がてらに遠浅をシュノーケルでのんびり行くことにした。
途中、友達の七色イルカに会ったので、しばらくのあいだ背鰭につかまって楽をした。
天気がいいので、珊瑚の色もより鮮やかに見える。
僕はユニヴァのために、なるべく濃い赤の珊瑚を探した。
いいところを見つけて一枝採ってから、珊瑚礁の盛り上がった浅瀬で一休みした。
木陰がないのでじりじりと暑い、腰に付けてきたボトルの水を飲んで過ごした。
帰りは七色イルカにも会えなかったので、さすがに疲れた。
海岸で伸びていると午後の風が気持ちいい。
遠くでゆるい風に乗っているウィンドサーフィンをぼんやり眺めた。
家に帰ったら早速ネックレスを作ろう。

しばらくたったある日、ユニヴァへの宇宙便はもう着いただろうかと思っていると、ポストがコトンと鳴った。
すぐに見に行ってみると、ちょっと膨らんだ封筒が入っていた。
「ユニヴァより」
中には手紙とチョコレートが入っていた。
「真っ赤な珊瑚のネックレスありがとう。とっても気に入っちゃった。ラブリーカカオのチョコレートを同封するね。ちゅら星じゃ超有名なチョコパティシエだよ。」
こげ茶のチョコレートの包み紙にピンクサテンのハートのマスコットが付いている。
ただの板チョコかと思ったら、まさに超高級な味わいだ。
食べかけのチョコレートを冷蔵庫にしまっていると、クーさんからメールが届いた。
「チョコレートは好きですか?チョコレートの試食を頼まれているのだけれど、来月またちゅら星にいかないか?」
僕はすぐに短い返信メールを送った。
「もしかしてラブリーカカオ?」
【2006/12/30 11:47】 | ちゅら星物語 | トラックバック(0) | コメント(0) |
| ホーム | 次のページ
WhiteUniva∞ホワイトユニヴァ


れもんちゅらな宇宙で星散策。     エンドレスな「ちゅら星」の物語・・・  手作り黒猫や熊も紹介します。

プロフィール

れもんちゅら

Author:れもんちゅら
こにちわ~!
Contact whiteuniva@gmail.com

teddybearSHOP:lemonchura

☆ちゅら星ヴィジュアル見に来て。

記事map

*ちゅら星*を途中から読まれるのに便利です。↓↓↓

全ての記事を表示する

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

category

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブログ内検索

RSSフィード