「『めぇぇぇぇ~』をパワーアップさせた移動方法を開発したの。」ユニヴァが言う。 「それで『めぇぇぇぇ~』をパワーアップするための水晶が必用なのね。」女神がニャントロを見る。 「パワーを満たした純粋なモノはなかなか手に入らない。」ニャントロが言う。 それから女神は後ろを振り返えると、壁に向かって人さし指を動かした。 すると壁から引き出しのように箱が飛び出してきて、ゆっくりとこちらの方に空中を移動してくる。 テーブルの上まで来た箱は宙に浮いたままストップした。 箱の中には20個くらいある水晶柱がキレイに整列している。 「素晴らしいコレクションだ。」GackNtが言う。 「全てこのちゅら星で採掘したモノですよ。」女神が言う。 「キャニオンドーム辺りで採れるの?」ユニヴァが訊く。 「秘密の場所です。」そう言って、女神はクスリと可愛く笑った。 「絶対に内緒にする!」ユニヴァが女神を拝んで言う。 「特別に教えましょう・・・裏ちゅら星のマンモスの谷付近です。」 さすがにLUME星の太陽からチャージした水晶は、一つ一つがモワッとしたオーラをまとっているように見える。 女神が箱からその1つを取り出した。 そして手のひらに載せたそれをしばらく眺めた後、フタをするようにもう片方の手をのせると水晶柱を撫でるように手をすりあわせた。 「こんなのはどうかしら?」女神が手を開く。 女神の手のひらには、音叉の形をした水晶が載っていた。 そしてモワッとしたオーラは健在している。 「コレなら『めぇぇぇぇ~』のマントラでLUME星にも行けちゃうんじゃないか?」クーさんが言う。 「試してみて。」女神はそう言って、それをニャントロの手に載せた。 ニャントロがGackNtを見る。 GackNtはそれを手に取って、そしてユニヴァを見た。 「任せてよ!」ユニヴァがニヤリと笑う。 それから『✞女神の占い洞窟』を出ると、GackNtは早速音叉型の水晶を手にレインボーメタリックの多面体に入った。 「楽しみね。」ユニヴァがユニヴァの玄関先のフェンスにもたれて言う。 「本当にLUME星にいけるかなぁ?」クーさんが言う。 「それは無理な気がする。」僕が何となく言う。 「なぜ?」クーさんが言う。 「直感的に。」僕が言う。 「LUME星は無理だ。そこそこのパワーアップ程度で行けるところではない。」ニャントロがキッパリと言う。 「ですよね。」クーさんが残念そうに言う。 「それよりも、この音叉型でどのような効果があるのかを期待するところだ。」 ニャントロがそう言い終えたところでGackNtがレインボーメタリックから出てきた。 僕らの目の前に差し出されたピラミッドは、金属の線にグルグルと巻かれた音叉型の水晶が中央に鎮座していた。 「上手にできたじゃない。」ユニヴァが言う。 「どうも。」GackNtが満足そうにピラミッドを眺める。 GackNtからピラミッドを受け取ると、僕らはすぐに巨大真珠に乗り込んだ。 「行き先は?」スピーカーからGackNtの声。 「マンモスの谷!」ユニヴァは言って、レインボーメタリックの多面体にマンモスの谷の座標を送る。 「じゃあ先に行くよ。」GackNtがそう言うと、レインボーメタリックの多面体は姿を消した。 すると僕の前に音叉のピラミッドが回ってきた。 「マントラはコレよ。」 スクリーンにマントラが浮かぶ。 『めぇめぇヒツジ光渦扉スパーク!』 「ちょっと待って!マンモスの谷って、一度上から眺めただけなんだけど・・・。」僕が自信なく言う。 ピラミッドがユニヴァの前に戻って行った。 そしてユニヴァがマントラを唱え始める。 「『めぇめぇヒツジ光渦扉スパーク!』『めぇめぇヒツジ光渦扉スパーク!』『めぇめぇヒツジ光渦扉スパーク!』『めぇめぇヒツジ光渦扉スパーク!』・・・」 いきなり光がスパークした。 「着いた。」ユニヴァが静かに呟く。 今はマンモスの姿は見えない。 しかし前にここを通った時には、マンモスの群れが移動して行ったのを僕は確かに覚えている ここは日の当たることのない、氷に包まれたちゅら星の裏側だ。 研究所や工業施設などが点在しているが、ここで生活する人々は光の粒を常時摂取して過ごしているそんな場所なのだ。 「マンモスいないわね。」ユニヴァが不満そうに言う。 少し先にいたレインボーメタリックの多面体こちらに向かって来る。 「谷に降りてみるわ。」ユニヴァがモニターのGackNtに言う。 暗い谷に巨大真珠は降りて行く。 レインボーメタリックも僕らに続く。 ライトで照らしながら暗い氷の谷を降りて行く。 しばらく行くと、途中から赤茶けた土の層が現れてきた。 もう30メートルくらい降りて来たが、まだ先がありそうだ。 さらに土の層をどんどん降りて行く。 「うわっ!ちょっと・・・。」ユニヴァが巨大真珠を静止する。 横穴だ。 赤茶けた土の壁にぽっかりと直径5メートルほどの洞穴が開いている。 巨大真珠は横穴に進む。 「あるな・・・。」クーさんが小さい声で言う。 水晶のことだ。 「だってほら、もうなんか光ってる。」ユニヴァが言う。 確かに赤茶けた壁には、ライトの光にチラチラと光るガラス質の粒が見える。 更に進むと、横穴は急激に下降し始めた。 そして、ほぼ垂直に降り始めたところで突然広い空間が現れた。 「うわっ!やっぱりだ。」 巨大な水晶柱が所狭しと交差し合ってたたずんでいる。 巨大真珠とレインボーメタリックはゆっくりと水晶の森に降りていく。 「なんかココ暖かいみたいね。」ユニヴァが外気温を見て言う。 「だいぶ奥までありそうだね。」クーさんが言う。 降りてみると、更に洞窟は四方八方に横穴を何本も伸ばしているのが分かる。 「チャージしなくても十分なパワーのモノばかりだ。」ニャントロの声が言う。 「しかしあまりにも大きい、どうやって採掘しようか?」GackNtが言う。 水晶柱はあまりに巨大で、それは巨大な鍾乳石か大木のようだ。 「今、音がしなかった?」僕が言う。 みんな声をひそめる。 カ~ン・・・ カ~ン・・・ 「あの通路の奥・・・。」ユニヴァが言う。 一本の通路の奥から聞こえてくる。 カンカ~ンッ・・・ カカ~ン・・・ 「誰か採掘してるのでは?」ニャントロが言う。 ユニヴァは巨大真珠を通路の入り口に進ませる。 そしてサーチライトを照らす。 「奥にも広い部屋があるぞ。」クーさんが言う。 巨大真珠は通路を通って奥の空間へ進む。 驚いたことにその奥には最初の空間よりも更に数倍広い空間があった。 そしてその先の隅で、採掘作業をしている男がこちらを振り向いた。 「おや?・・・見たようなトレッキングボールじゃないか!」男が言う。 僕はユニヴァの方を見る。 「コレを作ったエンジニアよ。」ユニヴァがシートを指して言う。 巨大真珠を作った人と言うことなのだろうか? ユニヴァが巨大真珠から出たので、僕らも外に出る。 「久しぶりね、サーサー。」ユニヴァが言う。 「マシーンの調子はどうだい?」サーサーがユニヴァに言う。 「おかげさまで絶好調よ。」 「しかしそろそろ替え時だ、最新のがあるんだ。」サーサーは持っていた工具を置いて、足下の巨大水晶を乗り越える。 採掘していたその壁を見ると、手頃な大きさの水晶が密集している。 「この場所を知っているとは、流石だね!」サーサーは手に着いていた土埃を払う。 そしてポケットからグリーンの巨大真珠みたいなモノを取り出した。 「コレが最新のトレッキングボールだ。」サーサーがボールを軽く空中に投げる。 グリーンの巨大真珠は僕らの目の前で巨大化した。 巨大真珠の正式名称はトレッキングボールと言うようだ。 ユニヴァは早速、中に入って行く。 「入ってみて。」サーサーが僕らにも言う。 「わおっ!」クーさん。 「何コレ?」僕。 「コレは・・・。」GackNt。 「驚きだ。」ニャントロ。 そしてサーサーも入って来た。 「亜空間システムだ。」サーサーが言う。 「亜空間システム?」歩き回っていたユニヴァが立ち止まって言う。 外観からは創造できない広々としたスペースが広がっているのだ。 自慢げな顔でサーサーが微笑む。 「気に入ったようだね。」 「当然よ!!」ユニヴァの目がキラッキラッと輝く。 それからサーサーは僕らに人数分の採掘工具を差し出すと、グリーンの巨大真珠で洞窟を出て行った。 僕らは誰からともなく工具を手にすると、先ほどサーサーが採掘していた壁で採掘を始めた。 「ちゅら星にこんな場所があったとは・・・。」ニャントロが独り言を呟いて、掘り出した水晶を眺めた。 5人そろってトンカチ音を奏でると時々素晴らしい音楽のようにも聞こえる。 気がつけば相当量の水晶柱が採掘できた。 モンワリと暖かい部屋で作業していたのですっかり汗だくだ。 僕らは巨大な水晶の柱に腰掛けてサーサーの帰りを待った。 しばらくして通路の向こうに光が見えると、グリーンの巨大真珠が戻って来た。 「じゃ、コレが新しいの。」サーサーがユニヴァに新しい巨大真珠を差し出す。 それは同じように真っ白な球体なのだが、今までの巨大真珠が光沢があるのに対してマットな白色をしていた。 「ありがと!・・・今、引っ越すから。」ユニヴァはそう言うと、巨大真珠の積み荷やなんかを新しい巨大真珠へと移動し始めた。 僕とクーさんも手伝う。 「それから、こんなのはどう?」サーサーがニャントロとGackNtにも巨大真珠を差し出す。 ブルーとグリーンと紫が混ぜ合わされたマーブル模様の球体だ。 「中はさっきの通り亜空間ルームで快適だよ。」サーサーが言う。 「すぐに引っ越しするよ。」GackNtは笑ってマーブル模様の球体を受け取った。 GackNtとニャントロも引っ越しを始めた。 「サーサー!そこの包みを持っていって!」引っ越し作業中のユニヴァがサーサーに言う。 「これはありがたい!5人がかりは仕事が早いね。」サーサーはそう言って、先ほど僕らが採掘した水晶の一部をグリーンの巨大真珠に積み込む。 それから引っ越し作業を終えた僕らはサーサーが用意してくれた冷たいソーダを飲んで、広大な水晶の洞窟を堪能した。 「巨大な宝石箱ね・・・。」ユニヴァの声が広い空間に反響する。
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